vol.312:脊髄損傷患者と骨密度 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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タイトル
脊髄損傷患者の骨密度低下に対する縦断的研究
Longitudinal study of bone loss in chronic spinal cord injury patients.?PubMed Karapolat I J Phys Ther Sci. 2015 May;27(5):1429-33. doi: 10.1589/jpts.27.1429.
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
・脊髄損傷患者の骨密度に対して縦断的に研究した論文を見つけ、意義深いと感じたため読もうと思った。
内 容
背景・目的
・脊髄損傷(SCI)患者に骨粗鬆症が合併する可能性が高く、発症から3~6カ月が有病率のピークである。
・SCIに伴う骨粗鬆症は不動や神経系・循環器の障害、ホルモンバランスの不良などが原因と言われている。
・原因はある程度調査されているが、縦断的に骨密度を調べた研究は少ない。したがって、本研究はSCI患者の骨密度(BMD)と骨代謝マーカーを3年間追跡研究する。
方法
・20名の外傷性SCI患者
・臨床データは受傷から0、6、12、36カ月で計測した。
・骨密度は腰椎1~4番、大腿骨頸部、大腿骨全体、手首を計測した。骨粗鬆症、骨減少症の程度はTscoreで表した(骨密度から算出。-1SD以下は骨減少症、骨粗鬆症と診断される)。
・その他、ホルモンマーカー、血液検査、骨代謝マーカーを計測した。
結果
・20名のうち15名が36カ月までフォローアップでき、残り5名は12カ月までだった。
・受傷後36カ月のTscoreは有意に受傷後0カ月より低い値だった。
・腰椎と手首の骨密度に有意な差は見られなかった。
・受傷後12カ月と36カ月はパラトルモン(血中のカルシウム濃度を上昇させる働き)とビタミンD(カルシウムの吸収を助ける働き)が受傷後0カ月に比べて有意に高かった。
・オステオカルシン(骨の非コラーゲンタンパク質)とデオキシピリジノリン(骨基質内のタンパク質)は受傷後有意に減少していった。
・その他の検査値に有意差はなかった。
私見・明日への臨床アイデア
・Tscoreから脊髄損傷患者は大腿骨頸部骨折のリスクが高いことがわかる。転倒した際の骨折リスクが高いことを把握し、転倒予防を意識した生活を促せるように関わりたい。また、歩行に実用性がなくとも骨に荷重をかけ骨形成を促す目的で歩行は意義があるのではないかと感じた。
・骨吸収を示すマーカーであるオステオカルシンとデオキシピリジノリンは受傷から時間が経つにつれ減少傾向で、最終的に正常値に落ち着いていた(オステオカルシン:3.1~12.7ng/ml、デオキシピリジノリン2.8~7.6nmol/mmol・Cr)。受傷から6カ月間が骨吸収の進行しやすい時期と理解して介入すると良いと思う。
(以下参考URL。平成29年11月14日)
http://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/index.cgi?c=speed_search-2&pk=248
http://primary-care.sysmex.co.jp/speed-search/index.cgi?c=speed_search-2&pk=300
職種 理学療法士
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)