【2024年版】脳卒中患者の心肺機能低下が歩行能力やADLに与える影響とリハビリアプローチ方法 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年版】脳卒中患者の心肺機能低下が歩行能力やADLに与える影響とリハビリアプローチ方法

脳卒中患者の心臓・呼吸機能が動作回復に与える影響と予後

登場人物

  • 金子医師:経験豊富なリハビリテーション専門医
  • 丸山さん:新人療法士、知識と実践力を磨くために努力中

講義の場面

金子医師が、新人療法士丸山さんに、脳卒中患者のリハビリにおける心臓・呼吸機能の重要性について講義を行う。


1. 講義の冒頭:心臓・呼吸機能の全身への影響

金子医師
「丸山さん、脳卒中リハビリの現場では、運動機能の回復に集中しがちですが、心臓・呼吸機能の重要性を見落としてはいけません。これらは動作回復だけでなく、予後の質にも直接的に関与します。今日は心臓と呼吸機能がどのように歩行や動作の回復に影響するのか、脳神経学や生理学的視点を交えて話しましょう。」


2. 脳卒中後の心臓機能の変化とその影響

2.1 心臓機能の変化

  • 左心機能低下:脳卒中後は左心室機能が低下するケースが多い。これにより運動時の酸素供給が不十分になり、全身のパフォーマンスが低下。
  • 異常な血圧調節:自律神経の損傷により、血圧の変動幅が大きくなることがある。運動中のリスクが増加。
  • 心房細動(AF):心房細動がある患者では、脳梗塞の再発リスクが高く、リハビリ中の注意が必要。

2.2 歩行や動作への影響

  • 持久力の低下:心拍出量が減少すると、歩行時のエネルギー消費効率が悪化。
  • 筋疲労の増加:酸素供給の不足は筋肉の回復を遅らせ、持続的な動作が難しくなる。

3. 呼吸機能の低下とその影響

3.1 呼吸機能の変化

  • 呼吸筋の弱化:脳卒中後、横隔膜や肋間筋の活動が低下し、肺活量が減少する。
  • 肺コンプライアンスの低下:臥床が長期化すると、肺が硬くなり換気効率が低下。
  • 酸素化の問題:血液中の酸素濃度が低下し、脳や筋肉への酸素供給が不足する。

3.2 歩行や動作への影響

  • バランス制御への影響:呼吸筋と姿勢制御筋の連動が崩れることで、歩行中の安定性が低下。
  • 歩行速度の低下:酸素供給の不足が歩行速度や距離に直接影響する。

4. 脳神経学的視点からの解説

金子医師
「心臓・呼吸機能の低下が動作に影響する背景には、脳神経学的要因も関与しています。」

4.1 自律神経の役割

  • 交感神経と副交感神経のバランス:脳卒中後は自律神経のバランスが乱れ、運動中の心拍数や呼吸調整が不適切になる。
  • 迷走神経の低下:迷走神経機能の低下により、心拍変動性が減少し、運動時の代謝効率が悪化。

4.2 大脳皮質と中枢パターン生成器(CPG)

  • 心臓・呼吸機能は大脳皮質の影響を受けるため、脳卒中による皮質損傷がこれらの機能にも波及する。特に中枢パターン生成器の機能低下が歩行効率を阻害する。

5. 効果的なリハビリアプローチ

5.1 有酸素運動の導入

  • 段階的な負荷増加:トレッドミル歩行やエルゴメーターを用いて、心拍数をモニタリングしながら負荷を調整。
  • 低強度からの開始:最大心拍数の40~60%程度の強度で開始し、徐々に上げる。

5.2 呼吸リハビリの活用

  • 横隔膜トレーニング:横隔膜の収縮を意識した腹式呼吸法を指導。
  • 呼吸筋訓練デバイス:インセンティブスパイロメーターなどを用いて呼吸筋を強化。

5.3 姿勢制御と連動させた訓練

  • 呼吸と歩行の同期:呼吸のリズムに合わせた歩行訓練を行い、効率的な酸素供給を促進。
  • 体幹強化:呼吸筋と連動する体幹筋を鍛え、安定した歩行を支援。

5.4 インターバルトレーニング

  • 短時間の高強度運動休息を交互に実施:心臓の持久力を向上させる効果がある。

5.5 医療モニタリングの徹底

  • 心電図や血圧の測定:リハビリ中にリアルタイムでモニタリングを行い、リスク管理を徹底。

6. 予後への影響と注意点

金子医師
「心臓や呼吸機能が改善されると、歩行能力だけでなく、日常生活活動(ADL)全般の向上が期待できます。ただし、急激な負荷増加は禁忌です。患者の安全を最優先に計画を立てましょう。」


7. 丸山さんの学び

丸山さん
「心臓と呼吸機能の重要性を軽視してはいけないと感じました。これらの機能をしっかりと評価し、リハビリに活かしていきます。」


まとめ

心臓・呼吸機能は脳卒中患者の動作回復において不可欠な要素であり、包括的な視点での評価とリハビリプログラムの構築が必要です。
質問があれば随時教えてください!

論文内容

カテゴリー

歩行

タイトル

脳卒中者の機能的歩行と心機能・重症度との関係

Functional walk tests in individuals with stroke: relation to perceived exertion and myocardial exertion.PubMed Eng JJ et al.(2002)

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

・脳卒中者の歩行能力を評価する際に、各検査と障害がどのように結びついているのか学ぶべく本論文に至る。

内 容

背景

・6分および12分間歩行テスト(6MWTおよび12MWT)などの機能的歩行試験は、障害により機能低下を来した個人の能力を評価するために頻用される尺度である。

・脳卒中者は、心機能によって歩行距離が制限されることがある。しかし、中枢性の筋弱化、バランス障害および痙縮などの要因が、歩行距離に影響を及ぼす可能性がある。

目的

・本研究目的は、これらの歩行テストと脳卒中者個人の障害の程度、心機能、主観的運動強度の測定とその関係を調査することであった。6MWT、12MWTと自己最適歩行速度をみる10mWTとの間の関係も評価された。

方法

・12MWT・6MWT、10mWT・足底屈力(KinCom strength dynamometer)・Berg Balance Scale・Ashworth Scale of Spasticity・Chedoke-McMaster Stroke Assessment(以下CMSA)について、脳卒中を有する25人が評価された。

・機能的歩行試験の間、心拍数(HR)、速度 、Rate Pressure Product、および主観的運動強度を評価した。機能的歩行試験中にHRを2分ごとに記録し、機能的歩行試験の終了前および終了時に血圧(BP)を記録した。RPPは、HRと収縮期血圧との積として計算された。

・相関分析は、機能歩行試験中の歩行、障害尺度、および生理学的応答との関係を定量化した。

結果

・6MWT、12MWT、および自己選択ペース歩行速度はすべて互いに高度に相関しており、すべてが障害の重症度にも関係していた。

・最大HRに最も近いレベルに到達した人は、最も低いバランススコア、最大の痙性、最も遅い歩行速度を反映する尺度を有していた。

・機能的歩行距離は、主観的運動強度(RPE)またはRPPによって測定されるような心筋酸素要求の増加に関連しなかった。

・脳卒中者の歩行距離に対する主な障害は脳卒中の特異的な障害である。機能的歩行試験を使用し時間の経過と共に個人パフォーマンスを評価する場合、RPPまたはHRの増加等および距離の両方を測定することが推奨される。

 

 
 

脳卒中発症後の患者に対する心臓・呼吸機能の評価と改善

 

1. 心臓・呼吸機能の評価方法

1.1 心臓機能の評価

  • 既往歴の確認
    心臓疾患の既往や危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症)を把握します。

  • 心電図(ECG)モニタリング

    • 安静時と運動負荷時の異常を確認。
    • 心房細動や虚血性変化を早期に発見。
  • 運動負荷試験(Exercise Stress Test)

    • 自転車エルゴメーターやトレッドミルで運動能力と循環応答を評価。
    • 最大酸素摂取量(VO₂ max)を測定し、運動許容度を定量化。
  • 心拍変動(HRV)
    自律神経バランスの評価に有用で、交感神経と副交感神経の機能を測定。

  • 血圧測定

    • 安静時、起立時、運動時に測定。
    • 起立性低血圧や運動時高血圧の有無を確認。

1.2 呼吸機能の評価

  • スパイロメトリー(肺機能検査)

    • 努力性肺活量(FVC)や1秒量(FEV1)を測定し、換気能力を評価。
  • 呼吸筋の力学評価

    • 最大吸気圧(MIP)と最大呼気圧(MEP)を測定。
    • 呼吸筋の弱化を数値化。
  • 血液ガス分析
    酸素化や二酸化炭素排泄の効率を評価し、低酸素血症や高炭酸ガス血症の存在を確認。

  • 胸郭可動性の測定

    • 胸郭の拡張範囲を測定(胸囲変化量)。
    • 胸郭の柔軟性と筋緊張を評価。
  • 動脈血酸素飽和度(SpO₂)

    • 安静時と運動時のSpO₂を継続的にモニタリング。

2. 心臓・呼吸機能改善のためのリハビリプロセス

2.1 心臓機能の改善

  • 段階的な有酸素運動

    • 初期: 低強度(最大心拍数の40~50%)でのトレッドミル歩行や自転車エルゴメーターを10~20分間実施。
    • 中期: 中強度(最大心拍数の50~70%)まで進め、持続時間を30~40分間に延長。
    • 後期: 高強度(最大心拍数の70~85%)でインターバルトレーニングを導入。
  • 抵抗運動トレーニング

    • 適切な強度で筋力トレーニングを行い、心拍出量と血流の効率を高める。
  • 運動中の心電図モニタリング
    異常を早期に検出し、リスクを回避。

2.2 呼吸機能の改善

  • 呼吸筋トレーニング(IMT, EMT)

    • インセンティブスパイロメーターを使用して、深呼吸を促進。
    • 呼吸筋トレーニングデバイスで最大吸気圧を向上。
  • 横隔膜の強化

    • 腹式呼吸を指導し、横隔膜の収縮を強調。
    • 仰臥位から座位、立位へ進め、呼吸筋の負荷を徐々に高める。
  • 胸郭モビリゼーション

    • 手技療法で胸郭の柔軟性を改善。
    • ストレッチングや体幹の回旋運動を組み合わせる。
  • 呼吸と動作の同期訓練
    歩行やスクワット動作中に呼吸リズムを意識させ、酸素摂取効率を高める。


3. 歩行能力・日常生活動作(ADL)向上への手順

3.1 歩行能力の向上

  • 段階的歩行訓練

    • 初期は免荷歩行装置(例: ロボットスーツやハーネス歩行)を用いる。
    • 自然な歩行パターンを再現するためのフィードバック(鏡やモーションキャプチャシステム)を活用。
  • 心拍と歩行速度の調整

    • 適切な心拍ゾーンを維持しつつ、歩行距離を徐々に増やす。
    • 運動強度を調整し、過負荷を避ける。
  • 姿勢制御と連動

    • 体幹の安定性を高めるためにプランクや側臥位のエクササイズを併用。
    • 歩行中の呼吸リズムを指導。

3.2 日常生活動作の向上

  • タスク指向型訓練

    • 椅子からの立ち上がりや階段昇降など、実生活に近いタスクを反復的に練習。
  • 運動プログラムの個別化

    • 患者の体力と心臓・呼吸機能に基づいて運動プランを設計。
    • 各タスク中の心拍数やSpO₂をモニタリング。
  • リラクゼーションとストレス管理

    • 呼吸法や軽いヨガを取り入れて心肺負荷を軽減。

4. 注意点

  1. 医師との連携
    心臓や呼吸機能に異常がある場合、リハビリ中の方針変更や中止を即座に判断できる体制を整える。

  2. 運動中のモニタリング
    運動中に血圧、心拍数、SpO₂をリアルタイムで監視し、異常があれば直ちに対応。

  3. 段階的進行
    過負荷や急激な進行は避け、徐々に運動強度を上げる。

  4. 患者教育
    心臓・呼吸機能が動作能力に与える影響を説明し、自主トレーニングの重要性を理解させる。


まとめ

心臓・呼吸機能の評価と改善は、歩行能力やADL向上の基盤となります。適切な評価と段階的なリハビリプログラムの導入により、患者の予後を大幅に向上させることが可能です。

新人療法士が注意すべきリスクは?

1. 安静時バイタルサインの基準を確認

  • 基準値
    • 安静時の心拍数:50~100 bpm
    • 安静時血圧:90/60 ~ 140/90 mmHg
    • SpO₂:94%以上(例外はCOPD患者など)。
  • 異常値(例: 心拍数が50 bpm以下または100 bpm以上)であれば、リハビリを開始しない。

2. 運動中のバイタルサインを常時モニタリング

  • 心拍数の許容範囲
    最大心拍数の40~70%(カリフォルニア心臓リハビリガイドラインを参考)。

  • SpO₂の低下
    運動中に90%未満に低下した場合は中断し、酸素投与の必要性を検討。


3. 異常症状の早期発見

  • 患者の自覚症状を聞く
    • 胸痛、動悸、めまい、呼吸困難感の訴えがあれば、即時中止。
  • 運動中の観察
    冷汗、蒼白、歩行のふらつきが見られた場合もリスクを想定し対応。

4. 運動強度の個別調整

  • Borgスケール(自覚的運動強度)

    • 11~13(「軽い」~「ややきつい」)を目標に設定。
    • 強度が高すぎる場合、患者は呼吸困難や疲労を感じやすい。
  • 漸進的負荷の原則
    患者の心肺能力に応じ、強度を段階的に上げる。


5. 呼吸困難への対処

  • 呼吸法の指導

    • 運動中の呼吸は「吸気で動作、呼気で力む」を基本とする。
    • 呼吸困難時は「リカバリーブレス」(ゆっくり吐く、吸う)を実施。
  • 酸素投与の必要性を判断
    呼吸困難が軽減しない場合、酸素療法を検討。


6. 起立性低血圧のリスク回避

  • 初期評価
    起立性低血圧の既往歴がある患者では、運動中の姿勢変化に注意。

  • 漸進的体位変化
    ベッド上運動から座位、立位へゆっくり進行。
    急激な立ち上がりやスクワットを避ける。


7. 運動中の突然の心停止に備える

  • 緊急対応の準備

    • 心停止対応のトレーニングを受け、AEDの使い方を熟知。
    • リハビリ室にはAEDと酸素供給装置を設置。
  • 救急連絡手順の確認
    緊急時に備え、病院内の緊急連絡手順を確認しておく。


8. 持続的な疲労と運動負荷の調整

  • 過負荷の兆候に注意
    運動後24時間以上疲労感が持続する場合、運動負荷が高すぎる可能性。

  • 運動日誌の活用
    疲労や回復状況を記録し、負荷の調整に役立てる。


9. 呼吸器感染症の予防

  • 衛生管理

    • ハンドサニタイザーの使用を徹底。
    • 機器の消毒(特に呼吸筋トレーニング器具)を怠らない。
  • 患者の体調確認
    感染症状(咳、発熱)がある場合、リハビリを延期。


10. 患者の精神的負担を軽減

  • 心理的リスクへの配慮

    • 心肺リハビリは患者にとって不安を伴うことが多い。
    • 小さな進歩を評価し、モチベーションを維持。
  • ペーシングの指導
    目標達成に急がず、少しずつ進める重要性を伝える。


まとめ

心臓・呼吸機能のリハビリは、適切なリスク管理が患者の安全を守る鍵となります。バイタルサインのモニタリング、異常症状の早期発見、適切な運動負荷設定を徹底し、リスクを最小限に抑えながら進めることが重要です。

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