【2024年版】10m歩行テストの完全ガイド:詳細な手順、助走の重要性、結果の解釈、転倒リスク評価と臨床活用法 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年版】10m歩行テストの完全ガイド:詳細な手順、助走の重要性、結果の解釈、転倒リスク評価と臨床活用法

論文を読む前に:10m歩行テスト

 

登場人物

金子先生(リハビリテーション専門医)
丸山さん(新人療法士)


講義シーン:リハビリテーション室での教育セッション

金子先生:「丸山さん、今日は10m歩行テストについて詳しく解説します。このテストはシンプルですが、歩行速度や運動機能の評価において非常に重要です。しっかり理解して、臨床での活用に役立てましょう。」

丸山さん:「よろしくお願いします!普段からよく使っていますが、注意点や解釈が難しいと感じることがあります。」


1. 10m歩行テストの基本概要と目的

金子先生:「10m歩行テストは、患者の歩行能力を定量的に評価する方法です。歩行速度は、転倒リスクやADL(日常生活動作)の予測因子として非常に有用です。このテストは、以下の2つの条件で行われることが多いです。」

  1. 通常速度:普段の速度で歩行。
  2. 最大速度:可能な限り速く歩行。

丸山さん:「同じ距離でも条件で結果が変わるんですね。それぞれどう活用すれば良いでしょうか?」

金子先生:「通常速度は日常生活における機能レベルを反映し、最大速度はリハビリの潜在的な改善余地を測るのに適しています。」


2. テストの詳細な手順

金子先生:「では、具体的な手順を確認しましょう。」

  1. 準備

    • 長さ10mの直線経路を確保。
    • 開始と終了の位置を明確にマーク(例:テープ)。
    • ストップウォッチを用意。
  2. 助走区間の設定

    • 患者が自然な速度で10m区間を歩けるよう、前後2mずつ助走区間を設定します。
    • 測定区間(10m)のみに集中し、加速や減速を除外することで、正確な歩行速度が得られます。
  3. 測定手順

    • 患者に歩行条件(通常速度または最大速度)を指示。
    • 「よーい、スタート」で歩行開始。
    • 患者のかかとが10m区間の開始ラインを越えた瞬間に計測を開始し、終了ラインを超えた瞬間に計測を停止。
  4. 記録

    • 測定時間を記録し、速度(m/s)を算出。
    • 速度 = 測定距離(10m) ÷ 測定時間(秒)。

3. 助走の重要性とその理由

丸山さん:「助走区間って、患者が動き始めるのをサポートするためだけだと思っていました。」

金子先生:「助走区間の意義はそれだけではありません。以下の理由から重要なんです。」

  1. 正確性の向上

    • 加速や減速の影響を排除し、安定した歩行速度を測定可能。
  2. 患者の安全性確保

    • 特に高齢者や脳卒中患者では、急な動作開始や終了がバランス喪失の原因となるため。
  3. データの一貫性

    • 研究や臨床評価での比較可能性を高める。

4. 結果の解釈と転倒リスクの評価

金子先生:「測定結果から得られる歩行速度は、機能的独立度転倒リスクを評価する上で非常に重要です。」

歩行速度と機能レベルの関係

  • 0.8m/s未満:転倒リスクが高い。
  • 0.8~1.2m/s:日常生活に支障が少ないが、環境変化には注意が必要。
  • 1.2m/s以上:コミュニティ内での移動が可能。

臨床的な活用例

  • リハビリ効果のモニタリング(速度の向上を指標に)。
  • ディスチャージプランの決定(在宅復帰の可否判断)。

丸山さん:「速度が遅い患者の場合、どのようにプランを立てれば良いでしょうか?」

金子先生:「歩行速度が低い場合、筋力やバランス能力、体幹安定性などの要因を分析し、それに応じたリハビリ計画を立てます。」


5. テスト実施時の注意点とポイント

金子先生:「最後に、注意点をいくつか挙げておきます。」

  1. 患者の状態確認
    • 疲労や痛みがある場合は無理に実施しない。
  2. 補助具の使用
    • 通常の歩行で使用する補助具をテスト中も使用させる。
  3. 転倒リスク管理
    • 介助者が近くで監視し、転倒防止を徹底する。
  4. 環境設定
    • 十分なスペースを確保し、障害物を除去。
  5. 複数回の測定
    • 結果の再現性を確認するため、2~3回測定して平均をとる。

6. 実践での応用

丸山さん:「10m歩行テストをうまく活用することで、患者の改善が具体的に分かりそうです!」

金子先生:「その通り。テスト結果を活用して患者の状態を客観的に評価し、適切なリハビリ計画につなげてください。歩行速度の改善は患者の生活の質を大きく向上させますよ。」


まとめ

10m歩行テストは、患者の歩行能力を定量的に評価し、リハビリの進捗を測定する上で欠かせないツールです。正確な測定手順と適切な結果解釈を行うことで、患者の転倒リスクを低減し、ADL能力を向上させる具体的なリハビリ計画を立案することが可能です。

論文内容

カテゴリー

歩行

タイトル

●10m歩行テストの助走は何m?10m歩行テストの様々なプロトコルの比較検証

●原著はInfluence of Timing Protocols and Distance Covered on the Outcomes of the 10-meter Walk Testこちら

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

●頻繁に臨床で評価されるテストであるが、勉強をしてみると行い方が自己流であったと気付くことがある。基本的な評価方法を見直すべく学習の一助として本論文に至る。

内 容

背景

●10m歩行テストにおいてスタートのタイミングと助走距離の影響を調査しました。

●10メートル歩行テスト(10MWT)は歩行速度、健康状態および機能的能力を反映するために一般的に使用されます。ただし、そのテストは現在、標準値とデータ解釈および研究間の比較に影響を与える可能性のあるさまざまなプロトコルと距離で実施されています。

方法

●この研究では、健康成人(n = 33)、健康高齢者(n = 29)、歩行能力の低下した人(n=16)が参加した。78名の参加者が10MWTの様々なタイミングプロトコルと距離の影響を調査しました。

●参加者は、助走なしおよび助走(4~10メートル)を使用して10mを歩いている間に時間を計られた。

結果

●静的な状態からスタートの群の歩行速度は約0.05-0.11 m / sで助走をつけた群の歩行速度よりも遅かった。助走は4メートルと10メートル間では有意差はなかった。

 

脳卒中患者に対する10m歩行テストの手順

以下は、患者とのやりとりを通して10m歩行テストを行う場合の具体的な手順を解説します。


1. テスト前の説明と準備

療法士(丸山さん):「こんにちは、今日は歩行能力を確認するために10m歩行テストを行います。このテストでは、一定の距離を歩く時間を計測しますが、無理をせずいつもの調子で歩いていただければ大丈夫です。」

患者:「はい、わかりました。何か特別なことをするんですか?」

丸山さん:「いいえ、特別なことはありません。普段の歩行の様子を確認したいので、補助具(杖や歩行器)が必要なら使ってください。まずはテストの内容を詳しく説明しますね。」


2. テスト内容の説明

丸山さん:「こちらに10mの直線コースがあります。まず、歩行を開始するために少し助走区間(約2m)を設けます。その後、この白い線の間(10m区間)を歩いていただきます。終了したら、また少し歩いて減速してください。」

患者:「速度はどれくらいで歩けば良いですか?」

丸山さん:「最初は、普段歩いている速度で歩いてください。それが終わったら、可能な限り速い速度でもう一度歩いていただきます。途中で疲れた場合は、無理せず教えてくださいね。」


3. テストの実施:通常速度

丸山さん:「それでは、まず普段の速度で歩いてみましょう。最初に助走区間を歩き始め、白い線を越えたところから計測を始めます。準備ができたらお知らせください。」

患者:「準備できました。」

丸山さん:「はい、ではゆっくりで構いませんので歩き始めてください。」

(患者が歩き始める)

丸山さん:「その調子です!リラックスしていつもの歩き方で進んでください。」

(患者が10mを歩き終える)

丸山さん:「ありがとうございました!こちらで一度休憩しましょう。特に痛みや疲れはありませんか?」

患者:「大丈夫です。」


4. テストの実施:最大速度

丸山さん:「次は、可能な限り速く歩いてみましょう。ただし、無理に走ったりせず、自分が安全に速く歩けるペースで構いません。」

患者:「わかりました。安全第一ですね。」

丸山さん:「その通りです。では、準備ができたら教えてください。」

患者:「準備できました。」

丸山さん:「よーい、スタート!」

(患者が速いペースで歩行)

丸山さん:「いいですね!しっかり足を運んで進んでください。」

(患者が終了ラインを越える)

丸山さん:「お疲れさまでした!座って休憩しましょう。体調は大丈夫ですか?」

患者:「はい、大丈夫です。」


5. 結果のフィードバック

丸山さん:「お疲れさまでした!結果をお伝えしますね。普段の速度での歩行は10mを12秒で、速い速度では8秒で歩かれました。」

患者:「その結果って、どういう意味がありますか?」

丸山さん:「通常の速度は約0.83m/s、速い速度は約1.25m/sに相当します。この速さだと、日常生活では支障なく歩けますし、コミュニティ内での移動も可能な範囲にあります。ただし、環境の変化や人混みの中では注意が必要ですね。」

患者:「なるほど、まだ改善の余地はありますか?」

丸山さん:「もちろんです!次のリハビリでは、歩行の安定性やスピードをさらに向上させるためのトレーニングを取り入れていきます。転倒予防も意識しながら進めましょう。」


6. 注意点と次回に向けた計画

丸山さん:「ちなみに、今後のトレーニングでは筋力強化やバランス能力向上、歩幅を広げる練習がポイントになりそうです。また、外出時に使う補助具についても再評価を行いますね。」

患者:「よろしくお願いします!」


まとめ

10m歩行テストは、患者に具体的な目標を与え、現在の状態を客観的に把握するための優れたツールです。声かけや結果のフィードバックを通じて、患者のモチベーション向上やリハビリ計画の調整につなげていくことが重要です。

10m歩行テストに加えて実施することをお勧めする評価は?

10m歩行テストに加えて実施することで、転倒リスクやバランス機能、予後を推測できる評価方法には以下のものがあります。それぞれの評価は、歩行能力や機能全体の包括的な理解を深めるのに役立ちます。


1. Timed Up and Go Test (TUG)

  • 目的: 機動性、動作の切り替え能力、転倒リスクを評価。
  • 手順: 椅子に座った状態から起立し、3m先のマーカーを回り、再び椅子に座るまでの時間を計測。
  • ポイント:
    • 10秒未満: 機動性良好。
    • 20秒以上: 転倒リスク高。
    • 10m歩行テストと併用することで、静的・動的バランスや歩行の効率性が総合的にわかります。

2. Functional Reach Test (FRT)

  • 目的: 前方へのバランス能力を評価し、転倒リスクを予測。
  • 手順: 壁際で腕を伸ばした状態から前方に体を傾け、どれだけ前に手を伸ばせるかを計測。
  • ポイント:
    • 25cm以上: バランス良好。
    • 15cm未満: 転倒リスク高。
    • 重心移動能力を10m歩行の動的評価と比較可能。

3. Berg Balance Scale (BBS)

  • 目的: バランス能力の総合的な評価。
  • 内容: 14のタスク(立ち上がり、片脚立ち、物の拾い上げなど)を実施し、合計スコアを算出。
  • ポイント:
    • 41~56点: 独立して移動可能。
    • 21~40点: 歩行補助具が必要。
    • 20点以下: 転倒リスク高。
    • 10m歩行テストで得られた歩行能力と補完的に使うと有用。

4. Five Times Sit-to-Stand Test (5STS)

  • 目的: 下肢筋力と動的バランスを評価。
  • 手順: 椅子から立ち上がり・座る動作を5回繰り返し、その時間を計測。
  • ポイント:
    • 12秒未満: 筋力良好。
    • 15秒以上: 筋力低下、転倒リスク高。
    • 10m歩行テストの加速度やペース調整能力と組み合わせると有効。

5. Mini-BESTest (Mini Balance Evaluation Systems Test)

  • 目的: バランスの詳細な評価。
  • 内容: 14項目で姿勢反応、前庭系機能、歩行中のバランスなどを評価。
  • ポイント:
    • 動的バランス評価のため、10m歩行テストの結果を補完する形で使用。

6. Dual-Task Walking Test

  • 目的: 認知的負荷が加わった状態での歩行能力を評価。
  • 手順: 歩行中に計算や言葉の課題を加え、歩行速度や安定性を測定。
  • ポイント:
    • 認知負荷により転倒リスクが高まる可能性を評価。
    • 10m歩行テストでの基本能力に加え、実生活に近い条件での予測が可能。

7. Step Test

  • 目的: 下肢のバランス機能と反応能力を評価。
  • 手順: 20秒間で台に片足をどれだけ多く上げ下げできるかを計測。
  • ポイント:
    • 側方へのバランスを評価し、歩行中のリカバリー能力を推測。

8. Gait Variability Analysis

  • 目的: 歩行中のリズムやステップのばらつきを評価。
  • 手順: 歩行中のステップ幅やタイミングの変動を測定(ウェアラブルセンサーを使用)。
  • ポイント:
    • ばらつきが大きいほど転倒リスクが高い。
    • 10m歩行テスト中の観察と連携して分析。

9. 6-Minute Walk Test (6MWT)

  • 目的: 歩行の持久力を評価。
  • 手順: 平坦なコースで6分間の歩行距離を測定。
  • ポイント:
    • 10m歩行テストが短距離の評価であるのに対し、6MWTは持久力を補足する役割を果たす。

10. Postural Stability Test (静的バランス)

  • 目的: 立位でのバランス能力を評価。
  • 手順: 安定した面・不安定な面の上で立位を保つ時間を測定。
  • ポイント:
    • 平均重心位置や体重移動パターンを分析し、歩行との関連性を検討。

これらの評価方法を10m歩行テストと併用することで、歩行能力、バランス、筋力、転倒リスクを多角的に把握できます。患者の状態や目標に応じて適切な評価を選択することが重要です。

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