【2024年最新版】サルコペニアの原因・メカニズムから運動療法による改善効果まで:最新研究とアプローチ – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年最新版】サルコペニアの原因・メカニズムから運動療法による改善効果まで:最新研究とアプローチ

論文を読む前に

サルコペニアのメカニズム

金子先生(リハ医):
「丸山さん、今日はサルコペニアについて詳しく話しましょう。サルコペニアは加齢に伴う筋肉量の減少や筋力の低下を指します。近年、運動機能の低下や身体機能障害、そして要介護の主要因として注目されていますね。まず、サルコペニアのメカニズムについて説明しましょうか。」

丸山さん(療法士):
「はい、お願いします。」

金子先生:
「サルコペニアのメカニズムは多因子性です。筋肉の量と質が加齢により低下する過程には、以下のような要因が関与しています。」

1. 筋タンパク質合成と分解のバランスの破綻

「筋肉は日々、タンパク質の合成と分解がバランスを取りながら維持されていますが、加齢とともにこのバランスが崩れ、分解が優位になります。特に筋肉タンパク質の合成率が低下し、筋量が減少していきます。」

2. ホルモンの変化

「ホルモンの変化も大きな要因です。テストステロン、成長ホルモン、インスリン様成長因子(IGF-1)の分泌が減少することで、筋肉の維持や修復が難しくなります。」

3. 炎症性メディエーターの増加

「また、加齢に伴い、全身的な慢性炎症が進行します。炎症性サイトカイン(例えばTNF-αやIL-6)は、筋タンパク質の分解を促進し、筋肉の代謝に悪影響を及ぼします。この過程は『インフラメイジング』とも呼ばれます。」

4. ミトコンドリア機能の低下

「筋肉細胞のエネルギー生産に不可欠なミトコンドリアの機能も加齢とともに低下します。ミトコンドリアが適切に機能しないと、筋細胞の代謝や修復能力が低下し、筋肉の萎縮が進行します。」

5. 神経系の変化

「筋肉を支配する運動神経の機能低下もサルコペニアに寄与しています。特に運動ユニット(運動神経とそれに支配される筋線維の単位)の数が減少することで、筋肉の収縮力が弱まり、筋力低下が進行します。さらに、運動神経の再生が減少することで筋肉との連携が不完全になります。」

運動の効果とメカニズム

丸山さん:
「サルコペニアの進行を遅らせるためには運動が効果的と聞いていますが、具体的にどのようなメカニズムで筋肉に作用するのでしょうか?」

金子先生:
「いい質問ですね。運動、特に筋力トレーニングがサルコペニアに与える影響は非常に大きいです。いくつかのメカニズムを挙げましょう。」

1. 筋タンパク質合成の促進

「運動、特にレジスタンストレーニングは、筋タンパク質合成を促進します。運動後に筋肉が損傷し、その修復過程で新たなタンパク質が合成され、筋肉量が増加するのです。また、栄養摂取、特に十分なアミノ酸(特にロイシン)を補給することで、この効果が増強されます。」

2. 神経筋システムの改善

「運動は筋肉だけでなく、神経筋システムにも影響を与えます。特に筋肉と神経の連携が強化され、運動ユニットの再構成や神経の興奮性が高まります。これにより、少ない筋肉量でも効率よく筋力を発揮できるようになります。」

3. ミトコンドリアの機能向上

「運動はミトコンドリアの量と機能を向上させます。特に有酸素運動によって、ミトコンドリアの活性が高まり、エネルギー代謝が改善されます。これにより、筋肉細胞が効率よくエネルギーを生成し、疲労しにくくなります。」

4. ホルモンの分泌促進

「運動によってテストステロンや成長ホルモンの分泌が促進されます。これにより筋肉の合成がさらに強化され、加齢に伴う筋力低下を緩やかにします。」

5. 抗炎症作用

「運動は炎症性メディエーターの産生を抑制し、抗炎症作用を発揮します。特にインターロイキン-10(IL-10)のような抗炎症性サイトカインが増加し、慢性炎症を軽減します。」

臨床での運動プログラムの設計

金子先生:
「では、サルコペニア患者に対する具体的な運動プログラムを設計する際のポイントについても話しましょう。まず、どのような運動が最も効果的か理解しておく必要があります。」

1. レジスタンストレーニング

「サルコペニアに最も効果的なのはレジスタンストレーニングです。特に大筋群を対象とした運動(スクワット、レッグプレス、チェストプレスなど)が推奨されます。強度は中等度から高強度で、個々の患者の体力レベルに応じて漸進的に増やします。」

2. バランストレーニング

「サルコペニア患者は筋力低下だけでなく、バランス機能の低下にも悩まされることが多いです。バランストレーニングを併用することで、転倒リスクを低減し、歩行の安定性を向上させます。」

3. 有酸素運動

「筋力だけでなく、心肺機能の改善も重要です。有酸素運動(ウォーキング、サイクリング、水中運動など)を取り入れることで、全身の持久力が向上し、日常生活での活動性が向上します。」

4. 神経筋電気刺激(NMES)

「サルコペニアが進行しており、運動が困難な患者には、神経筋電気刺激(NMES)が有効です。筋収縮を誘発することで、筋肉の維持や筋力強化が期待されます。」

5. 個別化アプローチ

「最後に、患者ごとに状態が異なるため、リハビリプログラムは個別に調整することが不可欠です。患者の筋力レベルや痛み、可動域制限に合わせて、運動の種類や強度を最適化します。」

まとめ

丸山さん:
「サルコペニアは複雑なメカニズムで進行するけれど、運動による介入でその進行を遅らせ、機能回復が期待できるということですね。筋肉だけでなく、神経やホルモン、炎症、ミトコンドリアの機能にも影響があることが分かりました。今後のリハビリ計画を立てる際に、これらの要素を考慮していきたいです。」

金子先生:
「その通りです。患者に合わせた包括的なアプローチが必要です。サルコペニアに対する運動療法の効果は明らかですが、定期的な評価と調整が重要です。今後の臨床でもしっかりと学んでいってくださいね。」

サルコペニアについて~メカニズムおよび運動による効果~

タイトル

●サルコペニアについて~メカニズムおよび運動による効果~

●原著はSarcopenia–consequences, Mechanisms, and Potential Therapiesこちら

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

●サルコペニアは世界的な問題として取り上げられている。その背景や対処法をより学ぶべく本論文に至る。

内 容

背景

●世界的に、高齢者人口は増加しています。米国だけでも、現在の国勢調査によると、65歳以上の米国人は約3900万人いることがわかります。

わずか10年以内に、この数は600万人以上増加すると予想されています。

その結果、介護の需要と支出が増加すると思われます。加齢に伴う筋の損失の背景にあるメカニズムを理解することは、基礎科学の観点と治療の観点の両方から重要です。

●複数の研究により、筋肉量と筋力の相関関係が示されています。

加齢に伴って発生する筋肉量の減少を補正しても、ピークトルクは大幅に低下し、骨格筋の質または筋肉量あたりの筋力の効率が加齢とともに低下することが示唆されている。

●60歳を過ぎると運動ニューロンが失われ、一部の高齢者では若年または中年者と比べ運動ニューロン数が約50%となるります。

年齢に関連した筋力低下は劇的であり、30歳から80歳の間に等速性の膝伸展トルクの強度はほぼ50%低下する。

●生活の独立性の喪失は多くの問題が原因となりますが、1つの疑いなく重要な要素は、筋肉量、筋力および持久力の喪失による移動性の低下です。

筋肉量、筋力、持久力の低下は、サルコペニアと呼ばれています

サルコペニアに続く多くの代謝の影響は、加齢に伴う障害にさらに寄与します。

●さまざまな研究に基づいて、筋肉量の平均5%が40代から10年ごとに失われると推定されています。

この減少は65歳以降はさらに急速になる可能性があります。サルコペニアは、筋疲労の増加と関連しているとしばしば報告されていますが、人間の筋疲労を測定するための有効な手法がないため、実験的な証拠はありません。

サルコペニアは、加齢の結果としてある程度すべての個人に発生しますが、不活動、栄養不良、慢性疾患などのさまざまな要因によって加速される可能性があります。

サルコペニアのメカニズム

タンパク質合成の減少:骨格筋を維持および修復するには、構造的に重要なタンパク質を継続的に合成し、変化したタンパク質を分解する必要があります。筋肉量を維持するには、これらのタンパク質の分解速度が合成速度を超えないことが重要です。

タンパク質の効率的な合成により、筋量だけでなく筋肉の質も維持されます。

いくつかの研究では、タンパク質の合成が年齢とともに約30%減少することが示されています。

タンパク質合成と分解速度の不均衡は、確かに加齢に伴う筋量と筋肉の質の損失の重要な原因である可能性があります。

水に続く筋肉の主成分はタンパク質です。筋タンパク質合成の選択的減少は、加齢に伴う筋肉量の減少を説明する可能性があります。

ミトコンドリアの機能障害:細胞レベルでは、ミトコンドリアの数または活動の減少が、筋の疲労性、持久力の低下および場合によっては筋力の低下の原因であるとの仮説が立てられています。

ミトコンドリアはATPを生成するため、収縮力の生成に不可欠です。継続的なATP生産は、繰り返し収縮活動を維持するために不可欠です。

げっ歯類とヒトの有酸素運動はミトコンドリアの酵素活性を大幅に増加させることができます。

栄養とサルコペニア:高齢化による食物摂取量の減少は十分に確立されています。

食物の摂取に関しての制御は中枢および末梢メカニズムの両方が関与する複雑なプロセスです。

高齢者のこのプロセスの複数のポイントで調節不全があることが研究で示唆されています。

ホルモンとサルコペニア:いくつかのホルモンは、筋タンパク質の代謝回転の重要な調節因子であることが知られています。

テストステロン、成長ホルモン(GH)、インスリン様成長因子1(IGF-1)、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)を含む4つの同化ホルモンに集中します。

運動による効果

●65歳以上の地域在住の男女を対象とした研究では3か月の筋トレを行った被験者は、下肢筋力と歩行持久力の両方で大幅な改善を示した。

●特別養護老人ホームの居住者では、平均年齢87歳、10週間のレジスタンストレーニングおよび栄養補給により、筋力が125%以上改善したが、対照群では3%未満の変化でした。

さらに、訓練されたグループでは、歩行速度、階段を上る力、および自発的な身体活動がすべて改善されました。

●持久力トレーニングプログラムにより56~65歳の男性のI型およびII型の筋線維のサイズを大幅に拡大できることを示した。

●足伸筋力が階段登り速度と力だけでなく歩行速度を含む複数の機能的パラメーターと相関しました。

多くの個人にとって、階段の上り、歩行、座位からの立ち上り、および立ち下がりの問題は、自立心の喪失を意味します。

明日への臨床アイデア

サルコペニアを改善させるための具体的なリハビリアプローチは、生理学的および脳科学的な背景を考慮しつつ、個々の患者に合わせた包括的な計画が必要です。以下に、サルコペニア改善のためのリハビリアプローチの具体的な手順と、それに関連する生理学的および脳科学的背景を詳しく説明します。

1. 初期評価と個別プログラムの作成

  • 手順: 患者の筋力、柔軟性、バランス能力、持久力、心肺機能を評価し、日常生活での身体機能や転倒リスクを把握します。筋肉量の減少がどの程度進行しているかを評価し、患者の年齢や健康状態に応じた個別化された運動プログラムを作成します。
  • 背景: サルコペニアの進行度は個々の患者で異なるため、筋力や機能の初期評価が重要です。筋肉は可塑性を持っており、適切な刺激を与えることで回復力を発揮しますが、高齢者や活動量が低い患者では、筋力の回復に時間がかかることがあります。個別プログラムの作成は、神経-筋機能の個人差を反映した効果的なアプローチです。

2. レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)

  • 手順: 中等度から高強度のレジスタンストレーニングを行います。患者に応じてダンベル、エクササイズバンド、マシンを使用し、スクワット、レッグプレス、チェストプレスなどの大筋群を対象とした運動を中心に行います。週に2~3回の頻度で行い、漸進的に負荷を増やしていきます。
  • 背景: レジスタンストレーニングは筋タンパク質合成を刺激し、筋肉量の維持や増加を促進します。筋肉を使うことで、筋細胞内のmTOR(機械的刺激を感知し、筋タンパク質合成を促進するシグナル伝達経路)が活性化し、筋肉の成長と修復が促進されます。また、神経系も同時に強化され、運動単位の再組織化が進みます。

3. 有酸素運動

  • 手順: 心肺機能の向上を目的とした有酸素運動を実施します。ウォーキング、サイクリング、水泳など、患者の体力に応じた活動を週に3~5回、20~60分程度行います。徐々に運動強度や時間を増やしていきます。
  • 背景: 有酸素運動は、筋肉の酸素供給を改善し、心肺機能を高めることで全身の運動耐性を向上させます。特に、ミトコンドリアの活性化を促し、エネルギー代謝が効率化されます。これにより、日常生活での疲労感が軽減され、持久力が向上します。また、脳科学的には有酸素運動がBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促進し、神経可塑性が高まることも知られています。

4. バランストレーニング

  • 手順: 転倒リスクを軽減するために、バランストレーニングを取り入れます。立位での片足立ちや、ゆっくりしたステップ動作、プロプリオセプションを意識したトレーニングを行います。バランスボールや安定性の低い表面での運動も効果的です。
  • 背景: 加齢とともにバランス機能が低下する理由の一つは、前庭系小脳の機能低下です。バランストレーニングにより、前庭系や体性感覚の再教育を行い、姿勢制御能力を向上させます。また、脳の可塑性を促進し、小脳や前頭前野の活動を高めることで、バランス能力が改善されます。

5. 神経筋電気刺激(NMES)

  • 手順: 筋力トレーニングが難しい場合や重度のサルコペニア患者には、神経筋電気刺激(NMES)を活用します。特定の筋肉に電気刺激を与えることで、筋収縮を誘発し、筋肉の維持や強化を図ります。NMESは座位や寝た状態でも実施可能です。
  • 背景: NMESは、筋収縮を促すことで筋肉量の維持や筋力向上を助けます。特に、脳卒中や運動機能の低下が著しい患者にとっては有効です。電気刺激は、運動神経を介して脳からの指令がなくても筋収縮を引き起こすため、神経-筋連携が弱まっている患者でも筋力改善が期待できます。

6. 柔軟性トレーニング

  • 手順: 筋肉の柔軟性を高めるために、ストレッチやモビライゼーションを行います。大腿四頭筋、ハムストリング、ふくらはぎなど、主要な筋群の柔軟性を維持し、関節の可動域を改善します。運動前後にストレッチを取り入れることが効果的です。
  • 背景: 筋肉や関節の柔軟性が低下すると、筋力トレーニングや有酸素運動が効果的に行えません。筋肉や結合組織の柔軟性を維持することで、運動時の負荷を均等に分散し、筋肉や関節のストレスを軽減します。さらに、柔軟性トレーニングは、筋紡錘やゴルジ腱器官を刺激し、中枢神経系の運動制御にも良い影響を与えます。

7. 認知トレーニングと運動の併用

  • 手順: 認知機能の低下がある場合、運動中に認知タスクを同時に行う「デュアルタスクトレーニング」を導入します。例えば、歩行中に数を数えたり、簡単な質問に答えたりすることで、認知機能と運動機能を同時に鍛えます。
  • 背景: 認知機能と運動機能は脳内で密接に関連しています。特に前頭前野が認知機能と運動制御に関わっており、デュアルタスクトレーニングによって前頭前野の活性化が促進されます。これにより、認知機能の維持とともに、運動の質も向上し、サルコペニア患者の全体的な機能改善に寄与します。

8. 栄養管理と運動の併用

  • 手順: 運動療法と並行して、タンパク質やビタミンD、アミノ酸の適切な摂取をサポートします。運動後にはプロテインサプリメントやアミノ酸補給を推奨し、筋タンパク質の合成を最大化します。
  • 背景: 栄養素、特にタンパク質は、筋タンパク質合成をサポートし、運動効果を最大化します。運動後30分以内にタンパク質を摂取することで、筋肉の修復と成長が促進されます。また、ビタミンDは骨格筋機能にも影響を与えるため、日光浴やサプリメントの摂取も推奨されます。

9. 心理サポート

  • 手順: サルコペニア患者に対して心理的なサポートを提供し、モチベーションを維持します。定期的に運動の進捗を確認し、励ましながら治療を進めます。グループ運動や家族の参加も励みになります。
  • 背景: サルコペニアの改善には、身体的なアプローチだけでなく、精神的なサポートも不可欠です。運動への意欲や治療へのモチベーションは、脳内の報酬系や神経伝達物質(ドーパミンやセロトニン)に影響します。ポジティブなフィードバックや目に見える進歩は、患者の継続的な参加を促進します。

10. 定期的な評価とフィードバック

  • 手順: 定期的に筋力、バランス、柔軟性などの機能を評価し、必要に応じて運動プログラムを修正します。進捗に応じてフィードバックを提供し、患者の意欲を保ちながらアプローチを調整します。
  • 背景: 運動による筋肉や神経の変化は、数週間から数か月かかるため、定期的な評価とアプローチの調整が重要です。神経可塑性の観点からも、定期的な刺激と調整が脳の学習・適応に貢献します。

これらのアプローチを適切に実施することで、サルコペニア患者の筋力、機能、生活の質を大きく改善することが可能です。

サルコペニアを自宅で評価するには?

サルコペニアを自宅で簡単に評価するためには、いくつかの基準とテストを使って筋肉量、筋力、身体機能を評価することが重要です。ここでは、サルコペニアの簡単な自己評価方法を紹介します。これらの手順は高齢者やその家族が自宅で行うことができ、サルコペニアの兆候を早期に発見するのに役立ちます。

1. 握力テスト

握力はサルコペニアの診断で重要な指標です。自宅でも簡単に評価できます。

手順:

  • 準備物: 握力計(デジタル握力計があれば理想的です)
  • 測定方法:
    1. 椅子に座り、背筋を伸ばし、肘を直角に曲げた状態で測定します。
    2. 握力計を片手でしっかり握り、できるだけ強く握ります。
    3. 右手と左手の握力をそれぞれ2回ずつ測定し、最高値を記録します。

基準:

  • 男性は26 kg未満、女性は18 kg未満の場合、サルコペニアのリスクがあると考えられます。

2. 椅子立ち上がりテスト(5回立ち上がりテスト)

下肢筋力の低下を評価する簡単な方法で、サルコペニアの指標の一つです。

手順:

  • 準備物: 座面の高さが約43 cmの椅子
  • 測定方法:
    1. 椅子に深く座り、両腕を胸の前で交差させます。
    2. できるだけ早く5回、完全に立ち上がり、また座る動作を繰り返します。
    3. 5回の立ち上がりにかかった時間を計測します。

基準:

  • 5回の立ち上がりに15秒以上かかる場合、下肢筋力の低下が示され、サルコペニアのリスクがある可能性があります。

3. ふくらはぎの周径測定

ふくらはぎの筋肉量を簡単に評価できる方法です。サルコペニアの兆候はふくらはぎの筋肉量低下に現れることが多いです。

手順:

  • 準備物: メジャー(巻尺)
  • 測定方法:
    1. 座った状態で、足を床に置き、膝を直角に曲げます。
    2. ふくらはぎの一番太い部分を巻尺で測定します。
    3. 両足のふくらはぎの周径をそれぞれ記録します。

基準:

  • ふくらはぎの周径が男性で34 cm未満、女性で33 cm未満の場合、筋肉量が低下している可能性があり、サルコペニアのリスクが考えられます。

4. 歩行速度テスト

歩行速度は身体機能全体の指標となり、サルコペニアのリスク評価に有効です。

手順:

  • 準備物: メジャー、ストップウォッチ
  • 測定方法:
    1. 自宅の廊下や屋外で、4メートルの直線距離を測定します。
    2. 普段の歩行速度でその4メートルを歩き、その時間をストップウォッチで計測します。
    3. 歩行速度(メートル/秒)を計算します(4メートルを歩くのにかかった時間を4で割ります)。

基準:

  • 歩行速度が1.0メートル/秒未満の場合、身体機能の低下が示され、サルコペニアのリスクがあると考えられます。

5. SARC-F質問票

SARC-Fは、サルコペニアのリスクを評価するための簡単な自己評価質問票です。5つの質問に答えることでサルコペニアのリスクを評価できます。

手順:

以下の質問に対して、「なし=0点」「少し困難=1点」「非常に困難=2点」の3段階で評価します。

  1. 筋力: 5 kgの物を持ち上げたり運んだりすることができますか?
  2. 歩行: 1部屋分の距離を歩けますか?
  3. 椅子立ち上がり: 椅子から立ち上がるのが難しいですか?
  4. 階段昇降: 階段を10段昇れますか?
  5. 転倒: 過去1年間に何回転倒しましたか?

基準:

  • 合計スコアが4点以上の場合、サルコペニアのリスクが高いとされます。

6. 自己チェックリスト

日常生活での筋力や機能低下の兆候を以下のようにチェックします。

  • 以前よりも階段を昇るのが難しくなった。
  • 重いものを持ち上げたり、運ぶことが困難になった。
  • 歩行速度が遅くなった。
  • 疲れやすくなり、長時間歩けなくなった。

基準:

これらの項目のうち2つ以上が該当する場合、筋力や身体機能の低下が疑われ、サルコペニアのリスクが高まっている可能性があります。

これらの自宅での簡単な評価手順は、サルコペニアの兆候を早期に発見し、専門医による診断やリハビリ介入の必要性を確認するのに役立ちます。特に高齢者は、筋力や機能が徐々に低下することが多いため、定期的にこれらの評価を行い、サルコペニアの予防や治療を行うことが重要です。

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