【2025年最新】アームスリングの効果を徹底解説!バランス・歩行への影響、メリット・デメリット、選び方のポイント – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2025年最新】アームスリングの効果を徹底解説!バランス・歩行への影響、メリット・デメリット、選び方のポイント

脳卒中患者のアームスリングのメリット・デメリットに関する講義

登場人物

  • 金子先生(リハビリテーション医師)

  • 丸山さん(新人療法士)


イントロダクション

金子先生: 「丸山さん、今日は脳卒中患者におけるアームスリングの活用についてお話ししましょう。このテーマは臨床で多くの議論があります。姿勢や動作、拘縮への影響など多岐にわたるため、深く理解しておくことが重要です。」

丸山さん: 「よろしくお願いします!患者さんの状態に応じて適切に使用したいと思っています。」


アームスリングのメリット

金子先生: 「まずはメリットから見ていきましょう。以下の点が主に挙げられます。」

メリット 具体的効果 考察
肩の亜脱臼予防 麻痺側上肢の重みによる亜脱臼リスクを軽減する 靭帯や関節包への負担を減らし、痛みの予防につながる
姿勢の安定化 上肢の重心を身体に近づけ、座位や立位のバランスを改善する 特に座位姿勢での安定感が向上する
歩行時の安全性向上 上肢が体幹に固定されることで、歩行時のバランス維持が容易になる 動作中の過剰な代償運動を抑制する
動作時の痛み軽減 筋肉や靭帯の引き伸ばしによる痛みを軽減 痛みによる不安感が少なくなる

丸山さん: 「確かに、痛みやバランス改善の観点からは有用そうですね。」


アームスリングのデメリット

金子先生: 「ただし、アームスリングにはデメリットもあります。それを理解せずに使用すると、患者の回復を妨げる可能性があります。」

デメリット 具体的問題 考察
筋力低下のリスク 長時間の使用で筋活動が減少し、麻痺側の筋力低下を助長する可能性がある 特に三角筋や肩甲帯の筋群に影響
拘縮の促進 上肢の可動域が制限され、関節拘縮のリスクが高まる 肘や手首、指関節の拘縮が生じやすい
動作の学習機会の喪失 麻痺側上肢の使用頻度が低下し、神経可塑性が抑制される 動作学習や感覚入力の減少が懸念される
体幹の左右非対称の強化 一側への負荷が偏り、体幹の筋活動のバランスが崩れる 立ち上がり動作や歩行に悪影響を及ぼす可能性

丸山さん: 「拘縮や筋力低下のリスクがあるのですね。適切な使用時間や頻度を設定する必要がありそうです。」


姿勢や動作への影響

金子先生: 「アームスリングが姿勢や動作に与える影響を、具体的なシチュエーションで考えてみましょう。」

  1. 立ち上がり

    • メリット: 麻痺側の上肢が安定するため、体幹への集中が可能になり、立ち上がりのバランスが改善。

    • デメリット: 上肢の推進力が使えないため、健側への過剰な負荷がかかる。

  2. 歩行

    • メリット: 上肢が固定されることで、動作中のバランスが取りやすくなる。

    • デメリット: 麻痺側のスイング動作が制限され、自然な歩行パターンが阻害される。

  3. 座位姿勢

    • メリット: 麻痺側の上肢が体幹に近づくことで、体幹のバランスが安定。

    • デメリット: 長時間使用すると、体幹の筋活動が低下し、拘縮や疼痛のリスクが増加。

丸山さん: 「動作ごとにメリットとデメリットがあるのですね。状況に応じた選択が大切ですね。」


臨床応用のポイント

金子先生: 「最後に、アームスリングを臨床で応用する際のポイントを挙げておきます。」

  1. 使用時間の制限: 長時間の使用を避け、必要な場面でのみ使用する。

  2. 定期的な筋活動の促進: アームスリングを外して、筋力トレーニングや可動域訓練を行う。

  3. 患者の意識向上: 患者に目的や使用方法を十分に説明し、自主的な参加を促す。

  4. 適切なサイズの選定: 患者の体型に合ったスリングを選び、違和感や過剰な圧迫を避ける。

  5. 装着後の動作評価: スリングを装着した状態で、動作やバランスへの影響を評価する。

丸山さん: 「具体的なポイントが分かりました。患者さんの状態に応じて柔軟に対応します。」

金子先生: 「その意識が大切です。アームスリングは適切に使えば強力なツールになりますが、不適切な使用は回復を妨げるリスクもあります。患者の個別性を常に意識してください。」

論文内容

カテゴリー

神経系

タイトル

●アームスリングがバランス・歩行に及ぼす影響とは?「ないよりはあった方が‥」と口にする方が多い印象。その効果は世界的にはどんな結果が出ているのか気になり本論文に至った。

●原著はThe use of shoulder orthoses post-stroke: effects on balance and gait. A systematic reviewこちら

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

●アームスリングを装着する片麻痺患者はまずまず散見される。

内 容

背景

●脳卒中患者の肩の亜脱臼または肩の痛みの予防または軽減におけるアームスリングの使用に関する明確な結論はなく、その有益な効果を調査することは重要であるようと思われます。

●以前の研究では、脳卒中患者の効率的なバランスと歩行に上肢がかなりの役割を果たす可能性があることが示唆されていました。したがって、このシステマティックレビューの目的は、脳卒中患者のバランスおよび歩行に対するアームスリングの着用の影響を調査することでした。この情報は、脳卒中後の肩装具の使用に関する意思決定をサポートする可能性があります。

方法

●Pubmed含む4つの電子データベースにおいて2019年4月8日まで検索されました。脳卒中患者のバランスと歩行に対する上肢装具の装着の影響を調べるすべての研究が含まれていました。

●軽度~中等度の上肢障害を有する283人の脳卒中患者を調査した10件の研究が、結果の定量的統合に含まれました。脳卒中からのプールされた平均時間は21.88±9.03ヶ月でした。

結果

●これまで脳卒中患者のバランスと歩行にアームスリングを着用することの潜在的なメリットに関する強力なエビデンスはありませんでした。しかし、より長期介入でのさらなる研究は、脳卒中後の初期段階の脳卒中患者または持続的な上肢障害の患者がアームスリングを着用することから利益を得る可能性があるかどうかを判断するのに役立つ可能性があります。

●今回の結果では、アームスリング着用にてバランスまたは歩行に関連するパラメータのわずかな効果を検出したが、MCIDを超えませんでした。

明日の臨床へ向けての感想

●パワー的に上肢の重さを保持できず姿勢に影響を及ぼしている患者においては効果をいくらか実感するかもしれない。あくまで上肢の重みを除すことが出来ていればである。装着時の姿勢にもこだわる必要があり、アームスリングがただのお飾りにならないよう病棟や家族ともしっかり情報共有を図りたい部分である。装着に手間はかかるため、できれば運動療法で解決したい部分である。

脳卒中患者の歩容を改善するためのアームスリングの処方手順

以下は最新の研究論文を基にした、脳卒中患者の歩容を改善するためのアームスリングの処方手順です。この手順は、患者個々の症状や状態に応じた調整を行う必要があります。


1. 初期評価

  • 歩行時の問題点の特定
    例:麻痺側の肩関節亜脱臼、腕の揺れによる体幹の不安定性、歩行リズムの乱れなど。
  • 筋緊張の評価
    肩周囲筋、体幹、下肢の筋緊張状態を確認します。過緊張または低緊張に応じて介入法を調整します。
  • 歩行解析
    ストップウォッチやウェアラブルセンサーを使用し、歩行速度、歩幅、左右対称性などを評価します。
  • 患者の主観的評価
    アームスリング装着時・非装着時の感覚や快適性を確認します。

2. アームスリングの選択

  • 種類の選択
    • 肩の保護目的:重度の亜脱臼がある場合、クッション付きスリングを使用。
    • 歩容改善目的:軽量で肩の動きを適度にサポートするスリングを選択。
  • 調整可能性
    スリングが簡単に調整可能か確認します。患者が自立して装着・取り外しできるものが望ましい。

3. スリングの装着

  • 装着時の姿勢調整
    患者が立位または座位で正しい姿勢をとれるようサポートします。特に体幹の中立位を保つことが重要です。
  • 適切なストラップの調整
    スリングが肩を過度に引き上げず、また腕が不自然に曲がらないように調整します。

4. 歩行練習

  • スリング装着時の歩行指導
    • 姿勢を安定させるために体幹と骨盤の動きを意識させる。
    • 歩行中の腕の揺れを最小限に抑え、自然なリズムで歩けるよう支援します。
  • 下肢運動の調整
    • 歩行周期の左右差を評価し、必要に応じて麻痺側の股関節屈曲や膝伸展を促すアプローチを取り入れます。
  • 段階的負荷
    スリングを使用した歩行練習から、スリングなしでの歩行へ段階的に移行します。

5. 再評価

  • 機能的評価
    スリング使用後、歩行速度や歩行距離、Berg Balance Scale (BBS)などの指標で効果を測定します。
  • 患者のフィードバック
    スリングの快適性、効果、長時間装着時の不快感について聞き取りを行います。
  • スリングの調整または変更
    評価結果に基づき、スリングの種類や調整を見直します。

6. 使用頻度の指導

  • スリングの使用時間を患者の状態に合わせて設定します。
    • 軽度の問題:リハビリ中や歩行訓練時のみ使用。
    • 中等度以上の問題:日常生活でも一時的に使用し、効果を確認。

7. 注意点

  • 長時間の使用による影響
    • 肩周囲の筋萎縮や拘縮を防ぐため、定期的にスリングを外してリラクゼーションやストレッチを行うよう指導します。
  • 転倒リスクの管理
    スリングの装着がバランスや重心移動に与える影響を確認し、必要ならば装着方法や姿勢を修正します。

8. 補足アプローチ

  • 他の装具との併用
    • 足部の装具や体幹ベルトと併用することで歩行安定性をさらに向上させることができます。
  • 心理的サポート
    患者がスリングを装着することで不快感や自信喪失を感じる場合、積極的に説明を行い、安心感を与えます。

表:アームスリングの種類と特徴

種類 特徴 適応
クッション付きスリング 肩の保護と安定を目的としたデザイン 重度の肩亜脱臼、重い腕の支持
軽量スリング 最小限のサポートで自然な動きを可能にする 歩行リズム改善、軽度の支持
調整可能スリング ストラップで簡単に調整可能 患者の活動レベルが変動する場合

これらの手順を用いることで、患者の個別ニーズに対応した適切なアームスリングの処方が可能になります。また、再評価を繰り返し、最適なリハビリテーションを提供してください。

新人療法士がアームスリングを処方する際の注意点やポイント

新人療法士がアームスリングを処方する際の注意点やポイントについて挙げます。これらは特に患者の状態を把握し、適切に対応するために重要です。


1. 麻痺側肩関節の可動域の確認

  • 注意点: アームスリングが肩関節の動きを制限しすぎると、拘縮や関節可動域の低下につながる可能性があります。
  • ポイント: 定期的に肩関節の可動域を確認し、必要ならば肩周囲のストレッチを併用してください。

2. 患者の皮膚状態の観察

  • 注意点: スリングの装着部分で皮膚トラブル(発赤、圧痕、かゆみ)が起きやすくなります。
  • ポイント: 装着中に皮膚の状態を定期的に観察し、適宜パッドや調整を加えることで圧力を軽減します。

3. 麻痺側上肢の重量とスリングの選択

  • 注意点: 麻痺側の上肢が重い場合、不適切なスリングの使用は首や肩への負担を増大させる可能性があります。
  • ポイント: 上肢の重量に応じたスリングを選択し、肩部の負担を最小限に抑えるデザインを採用してください。

4. 患者の日常生活動作(ADL)の考慮

  • 注意点: スリング装着が日常生活の動作(食事、トイレ動作、着替え)を妨げる可能性があります。
  • ポイント: 日常生活動作中の妨げを最小限にする設計や装着時間を調整し、必要に応じて患者と家族に指導します。

5. 姿勢の歪みや代償動作の確認

  • 注意点: スリングが原因で体幹の歪みや代償動作が生じることがあります。
  • ポイント: スリング装着中の全身姿勢を定期的にチェックし、代償動作を抑えるための調整を行います。

6. 使用時間の管理

  • 注意点: 長時間の装着により筋力低下や運動機能の低下が起こるリスクがあります。
  • ポイント: 装着時間を制限し、筋力強化やリラクゼーションの時間をバランス良く組み込むようにします。

7. 運動プログラムとの統合

  • 注意点: スリングの装着によりリハビリテーション運動が制限される場合があります。
  • ポイント: スリング使用後のリハビリ運動を計画的に組み込み、可動域や筋力の維持を図ります。

8. 患者の心理的影響

  • 注意点: スリングの装着により「障害の見える化」が進むことで、患者が心理的に落ち込む場合があります。
  • ポイント: スリングの目的や期待される効果を患者に丁寧に説明し、不安を軽減します。

9. 他の装具との干渉の確認

  • 注意点: 足装具や体幹ベルトなど他の装具と干渉する場合があります。
  • ポイント: 全身の装具配置を確認し、干渉がないように調整します。

10. チームアプローチの実践

  • 注意点: スリングの使用目的や適応について、多職種間で情報共有が不足する場合があります。
  • ポイント: 医師、作業療法士、看護師と連携し、スリングの使用目的や方法を共有することで、統一されたケアを提供します。

これらの注意点を踏まえて、患者個別の状態に合わせたスリングの処方とフォローアップを行うことで、安全で効果的なリハビリテーションを提供できます。

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