【2025年版】高齢者の前庭機能低下とめまいの原因・メカニズムから体操・リハビリアプローチまで完全ガイド – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2025年版】高齢者の前庭機能低下とめまいの原因・メカニズムから体操・リハビリアプローチまで完全ガイド

高齢者の前庭機能低下と全身状態の関係

金子先生:
「丸山さん、今日は高齢者の前庭機能の低下について詳しく話します。前庭機能の低下は、高齢者のめまいや転倒リスクを高め、生活の質にも大きな影響を与えます。その背景には、退行性変化や全身状態の悪化が関与しています。」


1. 前庭機能低下の基本メカニズム

退行性変化による影響

  • 加齢による前庭神経の変性: 高齢者では有毛細胞の数が減少し、耳石器や半規管の感度が低下します。
  • 血流の低下: 内耳への血流が減少すると、有毛細胞の機能がさらに低下します。
  • 神経伝達の遅延: 前庭神経核の機能低下が平衡感覚の処理能力を弱めます。
前庭機能低下の要因 具体的変化
有毛細胞の減少 感覚情報の入力が弱まる
耳石器の退行性変化 重力感知が鈍化する
内耳血流の低下 組織の栄養不足
神経伝達の遅延 バランス制御の遅延

2. 前庭機能低下が全身状態に与える影響

転倒リスクの増加

  • 体幹筋の反応遅延: 前庭からの入力が遅れるため、姿勢制御が困難に。
  • 協調性の低下: 視覚、体性感覚との統合が不十分になり、動揺が生じやすくなる。

身体活動の低下

  • 活動量の減少: めまいや転倒への恐怖が身体活動を制限。
  • 筋力低下: 活動量が減少することで、サルコペニアが進行する。

循環器系への影響

  • 低血圧との関係: めまいが起立性低血圧と関連し、脳血流が一時的に不足する。
  • 動脈硬化: 内耳の血流障害が動脈硬化に起因する場合もある。

3. 病理学的関連

全身疾患との関係

  • 糖尿病: 血糖値のコントロール不良が内耳の微小血管に影響を与える。
  • 高血圧: 内耳血管への負荷が増大し、血流不足を引き起こす。
  • 腎疾患: 電解質バランスの崩れが前庭機能に影響。

神経疾患との関連

  • アルツハイマー型認知症: 前庭機能の低下と認知機能低下は関連が示唆されています。
  • パーキンソン病: バランス障害が前庭機能の低下を悪化させる。

4. 高齢者の前庭機能低下に対するアプローチ

評価手法

  1. 前庭機能検査:
    • 温度眼振検査(Caloric Test)
    • 頭部衝撃テスト(Head Impulse Test)
  2. バランス評価:
    • Time Up and Go(TUG)
    • バーグバランススケール

治療的介入

  • リハビリテーション:
    • 視覚補正: 固定視を利用したトレーニング。
    • 体幹筋強化: バランスボールやプロプリオセプションを活用。
    • 感覚統合訓練: 前庭、視覚、体性感覚の統合を促す。

薬物療法

  • 抗めまい薬: ベタヒスチンやジフェニドールなど。
  • 循環改善薬: 血流を改善する薬剤(例:カルシウム拮抗薬)。

5. 新人療法士が知るべき注意点

リハビリ時の配慮

  1. 患者がめまいを訴えた場合は即座に中断し、安静を確保。
  2. 転倒防止のため、常にサポートを行う。

患者教育

  1. 「めまいの悪化を防ぐための体位変換の工夫」を説明。
  2. 起立性低血圧を予防するための動作(ゆっくり起き上がるなど)を指導。

丸山さん:
「先生、高齢者の前庭機能低下がこれほど多岐にわたる問題と関連しているとは知りませんでした。特に全身疾患との関連を理解することで、より包括的な介入が可能になる気がします。」

金子先生:
「その通りです。丸山さん、次はリハビリの具体的なプログラム設計に挑戦してみましょう!」

論文内容

カテゴリー

神経系、前庭系、骨折

タイトル

●前庭機能と転倒・股関節骨折の関係性とは?

●原著は[Vestibular function, falls and hip fracture in elderly–a relationship study]こちら

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

●患者と共に前庭機能に対する練習を実施していた際に、私自身機能低下を感じた。高齢者では、前庭系の病変がなくとも機能低下を来している方が多いのではないかと思い、前庭系と高齢者に関わる論文を読もうと思い本論文に至る。

内 容

背景

●70歳以上の人が救急治療室に到着する主な理由は転倒です。股関節骨折の90%以上の要因は転倒です。

●本論文は転倒した高齢者の前庭系の機能と股関節骨折との関係を調べること。

方法

●研究群(n = 84)は転倒の結果として股関節手術を受け入院した。対照群(n = 85)は股関節骨折の病歴がなく老人ホームに住んでいます。

●前庭系の障害を見つけるため、前庭動眼反射検査(VOR検査)、良性発作性頭位めまい症(BPPV)検査を実施しました。 4つの臨床検査のうち3つはVORの検査に集中し、4番目の検査は特にBPPV(良性発作性頭位めまい症)の評価をしました。社会人口統計学的状態と病歴が取られました。

結果

●VORの機能、年齢、内分泌疾患、糖尿病治療薬に関して2群間(股関節骨折のある群とない群)の間に有意差が見つかりました。ただし、BPPVの検査では有意差は見られませんでした。 

●結論として高齢者の前庭機能障害の正しい診断と早期治療は、次の転倒を防ぐことができます。

私見・明日への臨床アイデア

●前庭感覚は頭頚部運動時の加速度を感知します。そのため、課題難易度において加速度はポイントの一つです。

●「恐怖心」という心理面も前庭脊髄反射や前庭動眼反射の活動に影響を与えると報告されています。安定した環境下での練習は前庭系に対する課題難易度としては易しいと言える。

●脳卒中等での前庭機能障害を呈する患者以外でも、多くの高齢者が前庭系の機能低下を来している可能性があり、半規管はじめ刺激を入れるような練習は重要と思われる。

併せて読みたい【前庭系】関連論文

Vol.499.踵接地が重要!!歩行における前庭神経活動のタイミング

vol.43:歩行開始時の何処に前庭情報が寄与しているのか? 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

vol.388:前庭脊髄反射が下肢に及ぼす影響について 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

vol.64:前庭系システムの概要とリハビリテーションへの応用 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

前庭機能の体操とめまい体操の具体的な手順

以下に、前庭機能を改善する体操と、めまいを軽減するための体操の詳細な手順を説明します。これらはリハビリテーションの現場で実施可能な具体的アプローチです。


1. 前庭機能の体操

目的:

  • 前庭機能を活性化し、バランス能力を改善する。
  • 視覚・体性感覚・前庭感覚の統合を促す。

(1) 固定視訓練

  • 手順:
    1. 患者は座位または立位をとる。
    2. 目の高さに患者の腕を伸ばして、親指を立てた状態で目標にする。
    3. 親指を注視しながら、ゆっくりと頭を左右に振る。
    4. 次に、頭を上下に動かす。
  • 回数: 各方向で10回ずつ、1日2セット。
  • ポイント:
    • 速度を徐々に速くする。
    • めまいや不快感が生じたら即座に中断。

(2) バランスボールを用いた前庭刺激

  • 手順:
    1. バランスボールに座り、両足を地面につける。
    2. 軽く体を前後、左右に揺らす。
    3. バランスを保ちながら、目を閉じて同じ動作を繰り返す。
  • 回数: 1セット5分間、1日2セット。
  • ポイント:
    • 揺れを大きくしすぎないよう注意する。
    • 安全のため、後ろから支えるサポートをつける。

(3) ジャンプ着地訓練

  • 手順:
    1. 軽いジャンプを行い、両足で着地する。
    2. 着地時にバランスを保つように意識する。
    3. 頭を少し揺らしながらジャンプを行う。
  • 回数: 5回を1セット、1日2セット。
  • ポイント:
    • 初心者には高さを低めに設定する。
    • 体幹を安定させる意識を持つ。

2. めまい体操

目的:

  • 内耳の適応を促し、前庭性めまいの症状を軽減する。
  • 動作時のめまいを抑えるためのリハビリを行う。

(1) ブラント・ダロフ法 (Brandt-Daroff Maneuver)

  • 手順:
    1. ベッドに座位で腰掛ける。
    2. 頭を45度左右どちらかに向けて、反対側に横になる。
    3. この姿勢で30秒間またはめまいが治まるまで保持。
    4. 起き上がり、元の座位姿勢に戻る。
    5. 頭を逆方向に向けて反対側に横になる。
    6. 同じように30秒間保持する。
  • 回数: 1セット5往復、1日3セット。
  • ポイント:
    • ゆっくり動作を行い、急激な頭の動きを避ける。
    • めまいが激しい場合は即座に中止。

(2) エプリー法 (Epley Maneuver)

  • 手順:
    1. 患者をベッドに座らせ、首を約45度右に回す。
    2. この姿勢を保ちながら、ゆっくり仰臥位になる。
    3. 頭を左に90度回し、30秒保持。
    4. さらに体ごと左側を向き、30秒間保持。
    5. ゆっくり座位に戻る。
  • 回数: 1回で十分な効果が期待できるが、医師の指示で必要に応じて繰り返す。
  • ポイント:
    • 専門家の指導下で行う。
    • めまいが一時的に強くなる場合があるが、通常はすぐ治まる。

(3) 姿勢移行訓練

  • 手順:
    1. 座位から立位への移行を反復する。
    2. 立ち上がる際に目を閉じる。
    3. 立位で頭を左右にゆっくり動かす。
  • 回数: 1セット10回、1日2セット。
  • ポイント:
    • 目を閉じる動作時は必ず補助者が付き添う。
    • 動作をできるだけスムーズに行う。

表: 体操の比較

体操名 目的 適用例 回数/頻度 注意点
固定視訓練 視覚と前庭感覚の統合 めまい軽減、平衡感改善 各方向10回、1日2セット 頭の動きをゆっくりする
ブラント・ダロフ法 BPPVによるめまい軽減 良性発作性頭位めまい症 1セット5往復、1日3セット 動作中に安全を確保する
エプリー法 耳石位置の正常化 後半規管型BPPV 必要時繰り返す 専門家の指導下で行う
バランスボール訓練 体幹安定性の向上 バランス不良 5分間、1日2セット サポートをつけて行う

これらの体操は、前庭機能を効果的に活性化させ、症状軽減を促すリハビリプログラムとして活用できます。患者の状態に応じて調整しながら進めることが重要です。

耳周りの血流を改善するために口を動かす運動や側頭筋のマッサージ

めまいの患者に対して、耳周りの血流を改善するために口を動かす運動や側頭筋のマッサージを行うことは有効な場合があります。特に、前庭機能に関連する耳周囲の循環改善は、症状緩和やリハビリの準備に役立つ可能性があります。ただし、症状や原因によっては個別対応が必要です。

以下に手順を示します。


1. 口を動かす運動(顎関節の動きを活性化)

目的:

耳周囲の血流促進、筋緊張緩和、顎関節や側頭部のリラックスを促す。

手順:

  1. ゆっくりとした開閉口運動

    • 口をゆっくり開け、完全に閉じる動作を10回繰り返します。
    • 開ける際には「あ」の発音を意識して、顎の動きを滑らかに。
  2. 側方運動

    • 下顎を左右に動かします(右にスライド→元に戻す→左にスライド)。
    • 各方向で5回ずつ、スムーズに行います。
  3. 前後運動

    • 下顎を前に突き出し、元に戻します。
    • 5~10回行い、無理のない範囲で動かします。
  4. 唇を尖らせて伸ばす運動

    • 唇を「お」の形に尖らせ、次に「い」の形で伸ばします。
    • 10回繰り返します。

2. 側頭筋マッサージ

目的:

耳周囲の筋緊張を和らげ、頭部の血流を改善する。

手順:

  1. 準備

    • リラックスした姿勢で椅子に座ります。
    • 手指を清潔にし、手のひらを温めておきます(両手をこすり合わせる)。
  2. マッサージ手順

    • 側頭部に触れる:
      両手の指を側頭部(こめかみ部分)に軽く当てます。耳の少し上あたりが目安です。

    • 軽い円を描く:
      指を使って、こめかみ部分をゆっくりと円を描くように10回ほどマッサージします。力を入れすぎないことがポイントです。

    • 耳の周りをケア:
      指先を使い、耳の周り(耳たぶの付け根や耳の裏側)を軽く押しながら円を描きます。各部位を5~10回行います。

  3. 仕上げ

    • 両手のひらを耳全体に当て、優しく包み込むように圧を加えます。
    • 温かさを感じながら、10秒間保持します。

注意点

  1. 患者の状態確認:
    強いめまいや吐き気がある場合は、これらの方法を行わないでください。まず休息を優先し、医師の診察を受けることが重要です。

  2. 軽い圧で行う:
    痛みや不快感が出ないよう、動作やマッサージの圧力は控えめにします。

  3. めまいがひどくなる場合は中止:
    手技中にめまいが悪化する場合は直ちに中止し、医師に相談してください。


これらの方法は、血流改善を促し、前庭リハビリの前に患者をリラックスさせるために役立ちます。リハビリの一環として実施する場合は、他の訓練と組み合わせることを推奨します。

新人療法士が前庭機能低下やめまいの患者に関わる際の注意すべきポイントとコツ

以下に、前庭機能低下やめまいの患者への介入時に新人療法士が考慮すべきポイントを挙げます。これらは、患者の安全を守りながら効果的なリハビリを提供するために重要です。


1. 患者の自覚症状を詳細に聞き取る

  • 注意点:
    めまいの種類(回転性・浮遊感など)、発生時の状況、持続時間、悪化因子などを詳細に確認。
  • コツ:
    症状がどの程度日常生活に影響しているかを患者に具体的に尋ね、優先的に解決すべき問題を明確化する。

2. 心理的な影響に配慮する

  • 注意点:
    めまいは心理的ストレスを伴いやすく、患者が不安や抑うつを抱えている場合が多い。
  • コツ:
    傾聴姿勢を大切にし、リハビリが症状を軽減できる可能性があることを優しく説明して安心感を与える。

3. 姿勢変化の際のサポートを徹底する

  • 注意点:
    座位から立位、臥位から座位などの体位変換時にめまいが誘発されやすいため、転倒リスクが高い。
  • コツ:
    患者の側に常に補助をつけ、必要に応じて患者の動作を完全に誘導する。

4. 視覚的手がかりを活用する

  • 注意点:
    前庭機能が低下した患者は視覚情報に頼る傾向が強い。
  • コツ:
    明るい環境でリハビリを行い、壁や床の目印を使って患者のバランスをサポートする。

5. 過度な刺激を避ける

  • 注意点:
    強い光や大きな音、急激な頭部の動きは患者のめまいを悪化させる可能性がある。
  • コツ:
    環境刺激を最小限に抑え、動作もゆっくりと進める。

6. 前庭機能検査結果をもとに個別化する

  • 注意点:
    温度刺激検査(カロリックテスト)や頭部衝撃試験(HIT)などの結果を考慮してプランを立てる。
  • コツ:
    検査結果を医師やチームメンバーと共有し、患者の症状に最適化したプログラムを作成する。

7. 疲労を考慮したプログラム設計

  • 注意点:
    前庭リハビリでは短時間でも疲労が蓄積しやすく、過負荷が症状を悪化させることがある。
  • コツ:
    訓練時間を10~15分程度の短時間から開始し、患者の耐久力に応じて徐々に延長する。

8. 薬物療法との併用を意識する

  • 注意点:
    抗めまい薬や抗不安薬を服用中の場合、それがリハビリに影響を与えることがある。
  • コツ:
    処方医師と連携し、薬物の影響を把握した上で訓練内容を調整する。

9. 前庭以外の感覚系統も評価する

  • 注意点:
    体性感覚や視覚の障害がバランス機能に影響を及ぼしている場合がある。
  • コツ:
    足底の感覚や視覚検査を取り入れ、前庭以外の補完的機能も積極的に活用する訓練を行う。

10. 患者自身が行えるセルフエクササイズを指導する

  • 注意点:
    自宅でのリハビリが不十分だと、リハビリの進展が遅れる。
  • コツ:
    患者が簡単に行える固定視訓練や体位変換練習などを指導し、その重要性を説明する。

これらのポイントを踏まえて介入することで、新人療法士でも安全かつ効果的に前庭機能低下やめまいの患者に対応できます。

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