【2025年版】脳卒中後の筋萎縮の特徴とリハビリ、看護・栄養などチームアプローチのコツは? – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2025年版】脳卒中後の筋萎縮の特徴とリハビリ、看護・栄養などチームアプローチのコツは?

脳卒中後の筋萎縮

【講義設定】

登場人物

  • 金子先生(リハビリテーション医師):新人療法士教育に熱心な専門医。
  • 丸山さん(新人療法士):脳卒中リハビリの基礎を学びながら実践に励む。

シナリオ
ある病院のリハビリテーションルームで、金子先生が丸山さんに脳卒中後の筋萎縮について指導します。


1. 脳卒中後の筋萎縮の定義と特徴

金子先生
「丸山さん、脳卒中後の筋萎縮について説明できますか?」

丸山さん
「麻痺側の筋肉が痩せることですよね。ただ、その詳しい原因やメカニズムまでは…」

金子先生
「正解だね。ただし、筋萎縮は単に筋肉が痩せるだけでなく、筋繊維の構造的・機能的変化が関与しているんだ。具体的には以下のような特徴がある。これを基に考えてみてほしい。」

特徴 具体的な数値や所見
筋量の減少 麻痺側では非麻痺側に比べて約25-30%の筋量減少が一般的。特にタイプⅡ(速筋繊維)が顕著に減少する。
筋繊維の転換 タイプⅡ速筋繊維からタイプⅠ(遅筋繊維)への変化が観察される。
筋出力低下 麻痺側の筋出力は健常者の同年齢層と比較して50%以上の低下が報告されている。
筋収縮速度の遅延 筋収縮速度が遅延することで、立ち上がりや歩行中の素早い動作が困難に。
組織構造の変化 MRIや超音波で観察されるように、筋肉内の脂肪浸潤や結合組織の増加が確認される。

2. 筋萎縮の原因:脳神経学的視点

丸山さん
「脳卒中で筋萎縮が起こる原因には、何が関係していますか?」

金子先生
「脳神経学的には以下のポイントが重要だ。」

  1. 中枢神経系の損傷

    • 脳卒中後の上位運動ニューロンの損傷が麻痺側の筋肉への指令伝達を低下させる。これにより、不使用萎縮が進行。
  2. 神経-筋連関の破綻

    • 運動ニューロンの減少やシナプス結合の減弱が、筋繊維に直接影響を与える。
  3. 感覚情報の低下

    • 感覚障害が存在すると、体性感覚を介した筋活動が制限され、筋萎縮が進行。
  4. スパスティシティ(痙縮)の影響

    • 痙縮による筋の過剰緊張状態が筋繊維に負荷を与え、筋繊維構造に変化を引き起こす。

3. 筋萎縮の原因:運動生理学的視点

丸山さん
「運動生理学的にはどうですか?」

金子先生
「こちらも重要な要因がいくつかあるよ。」

要因 具体例
不使用萎縮 麻痺側の不使用による筋タンパク質合成の低下。
代謝の低下 筋肉内のATP産生能力が低下し、エネルギー不足により筋萎縮が進行。
炎症性サイトカインの影響 脳卒中後に体内で炎症性サイトカイン(例:IL-6、TNF-α)が増加し、筋タンパク質の分解が促進される。
筋収縮の頻度低下 筋活動が減少することで、筋収縮による筋の代謝活性化が起こらなくなる。

4. 筋萎縮改善のリハビリアプローチ

(1)運動療法

  1. 荷重練習

    • 麻痺側に意識的に体重をかけることで、筋活動を引き出す。
    • 筋電図のバイオフィードバックを利用するのも効果的。
  2. 低強度運動

    • 筋出力を促すために、軽い負荷での反復練習(例:セラバンドを用いた練習)。
  3. 神経促通法

    • PNF(固有受容性神経筋促通法)を用いて、筋活動を引き出す。

(2)物理療法

  • 電気刺激療法
    • 低周波の電気刺激を筋肉に与えることで、筋収縮を促進。

(3)環境調整

  • 重力を利用したポジショニング
    • 臥位や座位で麻痺側に重力がかかる姿勢を取らせる。

5. 筋萎縮の改善と注意点

丸山さん
「筋萎縮を改善するリハビリで、注意すべき点はありますか?」

金子先生
「以下のポイントに注意しよう。」

  1. 過剰な負荷を避ける

    • 筋損傷を防ぐため、負荷の設定は慎重に行う。
  2. 筋疲労に配慮

    • 脳卒中後の筋疲労耐性は低下しているため、運動量を調整。
  3. 感覚障害への対応

    • 感覚情報が制限されている場合、視覚や聴覚を用いた補助が効果的。
  4. 痙縮とのバランス

    • 痙縮が強い場合は、リラクゼーションを優先する。
  5. 患者のモチベーション向上

    • 成果を共有し、運動への興味を維持する。

金子先生
「丸山さん、これらを意識しながら、患者さんに適したアプローチを選択してください。深い理解があれば効果的な治療が可能になります。」


丸山さん
「ありがとうございます!明日から早速活用してみます。」

論文内容

カテゴリー

神経系、脳卒中、筋萎縮

タイトル

●脳卒中患者における麻痺側の筋萎縮について

●原著はParetic muscle atrophy and non-contractile tissue content in individual muscles of the post-stroke lower extremityこちら

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

●臨床で脳卒中患者のほとんどの方で全身的な筋萎縮を有していることが観察され、脳卒中患者の筋萎縮について今一度学ぼうと思い学習の一助として本論文に至った。

内 容

背景

●「筋萎縮」は、脳卒中後の運動麻痺が原因として起こります。 筋力は筋の大きさと相関します。個々の筋の筋萎縮の量は、脳卒中後の全身的な力生成能力に影響を及ぼします。

●この研究では、15人の脳卒中患者の麻痺側下肢を用い筋萎縮をMRIを使用してその量を定量化しました。

方法

●すべての筋の体積は15人の両下肢で、非収縮性の組織の含有量を除外するように調整され、筋萎縮は麻痺側と非麻痺側の間の体積を比較することによって定量化されました。

●非収縮性の組織または筋肉内の脂肪の量は、筋量測定から除外された組織の量を決定することで計算されました。

結果

●薄筋を除いて、調べたすべての麻痺側の筋は、非麻痺側の体積と比べて小さいことが示されました。 これらの麻痺側の筋の体積の減少量の平均は23%でした。一方、薄筋の体積は麻痺側で約11%大きいことが分かりました。

●非収縮性の組織の量は、薄筋を除くすべての麻痺側の筋で大きく、両側で差は観察されませんでした。

●麻痺側の足関節底屈筋の弱化を補うために、麻痺側薄筋を使用すると、筋のサイズが大きくなり、筋内脂肪が発生しないという考えがあります。

●不均一な筋萎縮が筋全体で観察され、脳卒中後の歩行に対する筋萎縮の影響を評価する際に重要な手がかりを提供する可能性があります。

私見・明日への臨床アイデア

●薄筋は腓腹筋の低緊張を代償しようと過活動になる事がある。麻痺側の股関節が上手く使用できていない場合にも、骨盤の回旋で代償した際に相対的に膝関節部で薄筋が過活動となる可能性もある。薄筋の過活動の背景には他部位の弱化があるため、臨床では根本的原因を改善したい。

●脳卒中患者では筋萎縮が生じやすい。根本的に筋力がなければ、自身の体重をコントロールするのが大変となる為、ベースアップは重要であると思う。

併せて読みたい【脳卒中・筋萎縮・サルコペニア】関連論文

Vol.539.脳卒中は体幹の脂肪量を増加させる!?

Vol.526.脳卒中が両側性にサルコペニアを引き起こす!?

Vol.490.サルコペニアについて~メカニズムおよび運動による効果~

脳卒中後の筋萎縮に対するトータルアプローチ:運動・栄養・看護の具体的手順

91. トータルアプローチの基本的な考え方

脳卒中後の筋萎縮を効果的に改善するには、運動療法栄養管理看護ケアの多面的アプローチが必要です。これにより、筋量の維持・回復とともに、全身の健康状態を改善できます。


2. 運動療法の具体的手順

(1)リハビリ初期(急性期:発症後1~2週間)

  • 目標:筋の廃用萎縮を防ぐ、血行促進、関節可動域を維持する。
  1. 関節可動域運動(ROM)
    • 麻痺側の関節に対して、他動的・自動的な可動域運動を1日2回以上実施。
    • 例:膝関節や肩関節の屈伸運動。
  2. 筋収縮の促進
    • 電気刺激療法(NMES)を用いて、筋収縮を補助。特に大腿四頭筋や腓腹筋への適用が推奨される。
  3. ポジショニング
    • 麻痺側に重力がかかるような体位を設定し、筋に適度な負荷をかける。

(2)リハビリ中期(回復期:発症後2週間~6か月)

  • 目標:筋力の回復、日常生活動作(ADL)に必要な筋の強化。
  1. 荷重練習
    • 麻痺側に荷重をかける歩行練習や立ち上がり練習を実施。
    • バランスボードを利用し、荷重移動を反復練習。
  2. 筋力強化トレーニング
    • 軽い負荷でのエクササイズ(例:セラバンドや低負荷マシンを使用)。
    • 週3回程度、10~15分のセッションから開始。
  3. 協調性の改善
    • PNF(固有受容性神経筋促通法)を利用して、麻痺側の筋群の協調性を向上。

(3)リハビリ後期(維持期:6か月以降)

  • 目標:筋量の維持とADLの向上。
  1. 有酸素運動
    • トレッドミルでの歩行やエアロバイクを用いた低強度運動を実施。
  2. 実生活動作の練習
    • 階段昇降や料理動作など、患者の生活に即した運動課題を設定。
  3. 筋肉への直接刺激
    • 振動刺激を用いた筋活性化(例:振動機器でのトリートメント)。

3. 栄養管理の具体的手順

(1)初期(急性期)

  • 目標:エネルギー不足を防ぎ、筋タンパク質の分解を抑える。
  1. エネルギー摂取の確保
    • 必要エネルギー量は、体重1kgあたり25~30 kcal/日。
    • 経口摂取が困難な場合、経管栄養を導入。
  2. タンパク質摂取
    • 体重1kgあたり1.2~1.5g/日のタンパク質を目安に摂取。
    • アルギニンやロイシンを含む高品質タンパク質を選択(例:大豆プロテインやホエイプロテイン)。

(2)中期(回復期)

  • 目標:筋合成の促進と抗炎症効果。
  1. アミノ酸摂取
    • 筋合成を促進する分岐鎖アミノ酸(BCAA)を含む食品を摂取。
    • 例:鶏肉、魚、乳製品。
  2. 抗酸化物質の摂取
    • ビタミンC、E、オメガ3脂肪酸(例:サーモン、クルミ)を取り入れる。
  3. 水分補給
    • 適切な水分摂取を指導し、血流を改善。

(3)後期(維持期)

  • 目標:筋量維持と全身の健康管理。
  1. バランスの取れた食事
    • 炭水化物、タンパク質、脂質のバランスを保つ(例:主食+主菜+副菜)。
  2. ビタミンD補給
    • 筋量維持に関与するビタミンDを日光浴や食品(例:卵、魚)で補充。

4. 看護ケアの具体的手順

(1)体位管理

  • 適切な体位交換
    • 2時間ごとに体位交換を行い、血流を促進。
  • ポジショニング用具の活用
    • クッションやポジショニングピローを使用し、麻痺側の筋肉を保護。

(2)皮膚・血流ケア

  1. マッサージ
    • 軽いマッサージを麻痺側に施し、血行を促進。
  2. 皮膚の観察
    • 筋萎縮部位の褥瘡や浮腫の早期発見を目指す。

(3)メンタルケア

  1. 声かけと動機付け
    • リハビリに前向きに取り組めるよう、患者の目標を共有。
  2. リハビリ意欲の維持
    • 達成した目標を褒めることで、患者の自己効力感を高める。

5. トータルアプローチのスケジュール例

時期 運動療法 栄養管理 看護ケア
急性期 他動運動、電気刺激 経管栄養、タンパク質補給 体位交換、皮膚観察
回復期 筋力トレーニング、荷重練習 高品質タンパク質、抗酸化物質 マッサージ、リハ意欲向上
維持期 有酸素運動、生活動作練習 バランスの取れた食事、ビタミンD 日常生活サポート、心理的支援

6. 注意点とまとめ

  1. 過負荷を避ける
    • 運動療法で負荷が高すぎると筋損傷のリスクがある。
  2. 栄養状態のモニタリング
    • 定期的な血液検査で、タンパク質やビタミンDの不足を確認。
  3. 患者個別性を尊重
    • リハビリ計画を患者の状態に応じて柔軟に調整。

新人療法士が脳卒中後の筋萎縮に対して介入する際の注意点やポイント

1. 運動負荷の適切な調整

  • ポイント: 筋萎縮が進行している患者には低負荷で始め、段階的に強度を上げる。
  • 理由: 過剰な負荷は筋損傷や患者のモチベーション低下につながる。

2. 患者の疲労サインに注意する

  • ポイント: 運動中に顔色や呼吸状態、言語反応を観察し、疲労が見られたら即座に休憩を指導。
  • 理由: 過度な疲労は血圧上昇や筋力回復の妨げになる。

3. 麻痺側と健側のバランスを重視

  • ポイント: 麻痺側の筋力を重点的に強化するが、健側の過負荷も防ぐ。
  • コツ: 荷重練習では麻痺側に意識を集中させるよう声かけを行う。

4. 痛みのモニタリング

  • ポイント: 運動中に関節や筋肉に痛みが出ていないか確認する。
  • コツ: 「どの動きで痛みを感じますか?」と具体的に尋ね、負荷や方法を調整する。

5. 実生活に即した課題設定

  • ポイント: 日常生活動作(ADL)に必要な筋をターゲットに運動を設定する。
  • コツ: 「この動きは〇〇(例:椅子からの立ち上がり)に役立ちます」と説明することで患者の理解を促す。

6. 栄養サポートとの連携

  • ポイント: 管理栄養士や看護師と連携し、患者の栄養状態を把握。
  • コツ: 運動後に適切なタンパク質補給が行えるようタイミングを指導する。

7. 定期的な評価とフィードバック

  • ポイント: 筋力や筋量の変化を定期的に評価し、成果を患者に伝える。
  • コツ: 「〇〇が改善してきていますね」とポジティブなフィードバックを行い、モチベーションを高める。

8. 小さな成功体験を積ませる

  • ポイント: 患者に短期目標を設定し、達成した際に褒める。
  • 理由: 自己効力感が向上し、リハビリへの意欲が維持される。

9. 看護師との情報共有

  • ポイント: 体位変換や皮膚ケアの情報を看護師と共有。
  • コツ: 麻痺側の浮腫や褥瘡の兆候をリハビリ時に観察し、看護師に報告する。

10. 自己学習と反省の習慣化

  • ポイント: 介入後にその日の成果と課題を記録し、自己学習に役立てる。
  • コツ: 同僚や指導者にフィードバックを求め、より効果的なアプローチを模索する。

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