【2024年版】脳卒中患者の視覚的追従能力:特徴、加齢による変化、車の運転、バランス、効果的リハビリアプローチの全解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年版】脳卒中患者の視覚的追従能力:特徴、加齢による変化、車の運転、バランス、効果的リハビリアプローチの全解説

脳卒中患者と高齢者におけるEye Trackingの特徴と応用

登場人物

  • 金子医師:リハビリテーションの専門医。新人療法士への教育に情熱を注ぐ。

  • 丸山療法士:新人の理学療法士。視覚情報とバランスの関連に興味を持つ。


講義の始まり

金子医師:「丸山さん、今日は脳卒中患者や高齢者におけるEye Tracking(視線追跡)の特徴について学びながら、それがバランス、転倒リスク、さらには車の運転能力にどう関係するか、包括的に解説していきます。準備はいいですか?」

丸山療法士:「はい!視線追跡がリハビリにどう活用できるか、ぜひ教えてください!」


1. Eye Trackingとは

金子医師:「まず、Eye Trackingについて簡単におさらいしましょう。Eye Trackingは、眼球の動きや視線の位置を計測する技術です。これにより、視覚的注意の方向や視覚処理のタイミング、さらには視覚認知の特性を評価できます。」

丸山療法士:「脳卒中や高齢者では視線の特性に何か変化があるのですか?」

金子医師:「その通りです。次に詳しく説明します。」


2. 脳卒中患者におけるEye Trackingの特徴

金子医師:「脳卒中患者では、視覚的注意や視覚追従機能に異常が見られることがあります。特に、半側空間無視(Hemineglect)視覚探索の遅延がよく報告されています。」

特徴的な異常

  1. 半側空間無視

    • 右脳損傷により左側の視覚情報を無視。

    • Eye Trackingでは、視線が右側に偏る特徴が確認される。

  2. 視覚追従機能の低下

    • 移動する物体をスムーズに追跡できず、視覚探索に時間がかかる。

  3. 視覚認知とバランスの関連

    • 視覚的な情報処理が遅延し、バランス戦略に影響を与える。

    • 例えば、視線が身体重心の偏移に適応できないことで転倒リスクが増加します。

脳神経学的視点

「これらの視線の特徴は、脳の損傷部位に依存します。例えば、頭頂葉や視覚性運動領域(V5)の損傷が視覚認知やEye Trackingに影響します。」

丸山療法士:「つまり、視線が偏っていたり、追従が遅れていたりする場合、患者の転倒リスクが高まる可能性があるということですね。」

金子医師:「その通りです。また、リハビリでこの視線の特性を評価し、改善することが重要です。」


3. 高齢者におけるEye Trackingの特徴

金子医師:「次に高齢者です。高齢者では、脳卒中患者と異なり加齢そのものが視覚認知に影響を与えます。」

特徴的な異常

  1. 視覚探索の速度低下

    • 加齢に伴い、視覚刺激に対する反応時間が遅れる。

  2. 周辺視野の縮小

    • Eye Trackingでは、視線の動きが中心視野に集中しやすいことが示されている。

  3. 視覚認知と反射時間の遅延

    • バランス維持や歩行中の障害物回避に必要な視覚情報処理が遅れる。

バランスや転倒との関連

「高齢者では、視覚依存が強くなるため、視覚情報が不十分だとバランスを崩しやすくなります。夜間や暗所での転倒が増える理由の一つですね。」


4. Eye Trackingと車の運転能力

金子医師:「視線追跡は、車の運転能力の評価にも役立ちます。」

車の運転における視線の役割

  1. 視線スキャンパターン

    • 健常者は道路標識、ミラー、歩行者などに視線をスムーズに移動させる。

    • 一方、脳卒中患者や高齢者では、視線のスキャンパターンが狭くなる傾向があります。

  2. 視覚的反応の遅延

    • 信号や交差点での判断が遅れる。

  3. 運転適性評価への応用

    • Eye Trackingを活用することで、運転中の視線パターンや注意配分を評価し、適切な指導や制限を設けることが可能です。

丸山療法士:「運転シミュレーターで視線を評価することも役立ちそうですね。」

金子医師:「その通りです。運転再開のリハビリにおいて、視線の改善は非常に重要です。」


5. Eye Trackingを活用したリハビリの提案

金子医師:「では、これらの特徴を踏まえ、Eye Trackingを活用したリハビリの実際を考えてみましょう。」

リハビリの具体例

  1. 視覚探索トレーニング

    • コンピュータベースのEye Trackingデバイスを使用し、視線を画面上のターゲットに誘導。

  2. 視覚とバランスの統合トレーニング

    • スタンディングボードや動的バランス訓練とEye Trackingを組み合わせ、視線と体重移動の同期を促進。

  3. 転倒予防プログラム

    • 視線が偏りがちな患者に対して、環境探索や視覚フィードバックを用いたトレーニングを提供。

  4. 運転シミュレーションリハビリ

    • シミュレーターで視線パターンを分析し、注意力の改善を図る。

丸山療法士:「視線の改善が直接、バランスや運動機能の改善につながるということですね。」

金子医師:「その通りです。視線は単なる情報の入力だけでなく、全身の運動制御と密接に関わっています。」


6. まとめ

金子医師:「今日はEye Trackingが脳卒中患者や高齢者のバランスや転倒リスク、さらには車の運転にどう関係するかを学びました。視線の評価は単なる診断ツールではなく、リハビリの有効な指標にもなります。」

丸山療法士:「視線を意識したリハビリをぜひ実践してみたいです!」

金子医師:「その意欲は素晴らしい。視覚認知の改善はリハビリ全体の質を向上させる重要な鍵ですよ。」

論文内容

年齢と視覚的追跡能力(見出し)

カテゴリー

神経系・アイトラッキング・視覚的注意

タイトル

●視覚的な追跡能力(Visual tracking・アイトラッキング)に及ぼす加齢の影響とは? 脳卒中リハビリ論文サマリー

●原著はVisual Tracking in Development and Agingこちら

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

●臨床では視野やある方向への眼球の動きづらさなど眼球運動の問題を抱える方を多く見受ける。そもそも退行性変化としてどのように変わっていくのか学びたく本論文に至る。

内 容

背景

●動くターゲットを追跡する際は、スムーズな追跡とサッカードの組み合わせを使用します。人間の視覚的な追跡運動は注意に依存するものであり、発達するのに何年もかかります。この機能的成熟は少なくとも思春期半ばまで達成されません。成熟後、追跡パフォーマンスは老化とともに低下し、50歳以上の被験者では観察可能な変化が起こります。本研究では標準化された手順と幅広い年齢範囲のサンプルを使用し、視覚的な追跡パフォーマンスの年齢依存性を説明しようとしました。

方法

●7〜82歳(男性39%)の186名の被験者が研究に参加しました。すべてのテストは、米国ニューヨーク州ニューヨークのワイルコーネル医科大学(WCMC)にあるCitigroup Biomedical ImagingCenterで実施されました。被験者は、視覚追跡と単純な視覚操作の反応時間テスト(simple reaction time:SRT)パフォーマンスについてテストされました。視覚追跡テストは、予測可能な方法で動くターゲットを追跡しながら、被験者の目の動きを測定しました。

●被験者は、刺激提示と統合されたビデオベースのアイトラッカーで円形の視覚追跡タスクを実行しました。キャリブレーションで使用された固定点に視線を戻すようにしました。タスクは、被験者が顎頭を安定させて座った状態で通常の照明のある部屋で実行されました。

結果

視覚的追跡能力と年齢の関係性の結果

●予測可能な視覚追跡課題においての年齢依存の改善とパフォーマンスの低下を特徴づけました。視覚追跡パフォーマンスの大きな個人間の変動は年齢を超えて見られました。最も速い視覚追跡能力の発達は幼児で起こりました。パフォーマンスの変化は加齢により再び低下しましたが、子供の頃よりも遅い速度でした。視覚追跡の予測能力は生後1年以内に急速に発達し、今回の結果はこの能力が老後まで十分に維持されていることを示しています。

● 同じ被験者内においてSRT(反応時間テスト)のパフォーマンスの年齢依存性の改善と低下、および性差を示した大規模研究の本質的な発見を再現することができました。視覚追跡能力とSRTパフォーマンスも両方とも注意力に依存しています。年齢の影響を差し引くと視覚追跡能力とSRTパフォーマンス間に相関関係は見つかりませんでした。SRTのパフォーマンスはほとんど独立しており、このような分離は2つの行動の予測的性質と反応的性質の違いを示している可能性があります。

私見・明日への臨床アイデア

●高齢者では、中心視のまわりの明瞭に認識できる範囲である「有効視野」が通常4~20度ほどの範囲に、狭小しそれとは別に反応時間も遅延すると言われる。最近では、子供の周辺視野の狭小化も見られている。つまり加齢による要因だけではない。車社会の現在、そのような有効視野・周辺視野等の評価練習も重要である。

併せて読みたい【視覚、加齢(年齢)】関連論文

Vol.547.脳卒中患者の加齢に伴う視覚的問題への介入

Vol.498.脳卒中者は眼球運動に無駄が多い!?視覚が動作に及ぼす影響

Vol.503.眼球運動障害と脳卒中 -視機能の基礎を学ぼう-

明日への臨床アイデア

脳卒中者や高齢者における視覚的注意と運動制御の関係性を強調し、バランス、歩行、車の運転スキルを向上させるためのリハビリテーション手順を以下に示します。これらの手順は、視覚的要素を組み込むことで、より効果的なリハビリ介入を可能にします。


1. サッカード訓練

目的:
視線移動(サッカード)をスムーズに行う能力を向上させ、視覚情報の効率的な処理を促進。

手順:

  • 準備:
    患者を椅子に座らせ、正面のモニターまたは壁に取り付けたターゲットを用意。ターゲットは点灯するLEDやカラーカードを使用。

  • 実施:

    1. 患者に「赤→青」のように、指示に従って視線を移動させる。サッカード距離は短距離(15°)から開始し、徐々に長距離(30°以上)に広げる。
    2. ペースを速めたり、ランダムな順序で点灯するターゲットを追わせる。
  • 進化:
    サッカードに加え、頭部回旋や軽い体幹動揺を加え、視覚と姿勢制御の連携を強化。

注意:
患者がめまいや視覚疲労を訴える場合、頻度と強度を調整。


2. バランス訓練と視覚的注意の統合

目的:
視覚依存バランスの向上と、視覚的干渉への適応力の向上。

手順:

  • 準備:
    安全な環境を整え、バランスパッドや不安定面、または動的なサポートツール(バランスボードなど)を用意。
    目の高さにターゲット(動くボール、光るパネルなど)を設置。

  • 実施:

    1. 静止状態(安定面)でターゲットを目で追いながら姿勢を維持。
    2. 不安定面でサッカードを行わせ、視覚情報処理と姿勢制御を同時に訓練。
    3. ターゲットが点滅する方向に視線を移動しながら重心移動を指示。
  • 進化:
    ・複雑な動的タスク(例: 同時に軽い腕の動作を行う)を加える。
    ・床面に置かれた障害物を避けながら視覚的タスクを継続。

注意:
転倒防止のため常にサポートを行う。バランス能力が低い患者には低難度から。


3. 歩行と視覚的干渉訓練

目的:
視覚と運動の統合を強化し、障害物回避や歩行中の視覚依存課題への対応能力を向上。

手順:

  • 準備:
    歩行訓練用トレッドミル、ランダムに動くターゲット、またはVR環境。
    歩行安全帯やハーネスを使用。

  • 実施:

    1. 歩行中に目の高さに設置したターゲットを追尾させる。
    2. ターゲットを見つつ、ランダムな音声指示に応じて歩行のペースを変化。
    3. 進行方向に配置された障害物を避けながら、視線移動を行わせる。
  • 進化:
    ・複数ターゲットを動的に切り替え、視覚的干渉タスクを追加。
    ・歩行速度を調整して課題の難易度を変化させる。

注意:
視覚情報処理が低下している場合は、速度と刺激量を調整。


4. 車の運転シミュレーション

目的:
視覚的注意、視線移動の柔軟性、および空間認知を強化し、安全な運転技能を再獲得。

手順:

  • 準備:
    運転シミュレーターや大型モニターを使用し、仮想運転環境を構築。シート位置は患者の体幹安定性に配慮して調整。

  • 実施:

    1. 初期段階では単純な運転タスク(直進、簡単な曲がり角)で視線の固定と移動を練習。
    2. サッカードを必要とする課題(信号や道路標識の読み取り、横断歩道確認)を追加。
    3. 複数の注意要素(例: 他車の接近、歩行者の動き)に対する視覚反応を強化。
  • 進化:
    ・シナリオを複雑化し、視覚干渉が増える状況(例: 夜間運転、雨天など)を設定。
    ・「ハザードテスト」(例: 突然現れる障害物)を組み込む。

注意:
視覚刺激が過剰になると混乱や疲労を招くため、進行は患者の反応を観察しながら慎重に。


5. 訓練効果の評価

各訓練後、以下の項目を評価し、進捗を確認する:

  • サッカードの正確性と速度。
  • バランス能力(静的・動的)。
  • 歩行の安定性と障害物回避能力。
  • 運転シミュレーションのスコアや注意分散への対応力。

これらの手順は、脳卒中後や高齢者特有の視覚依存性や運動制御の障害を効果的に改善するための包括的なアプローチです。適切なリスク管理と進行調整を行いながら、患者個別の目標に合わせて訓練を進めてください。

新人療法士がアイトラッキングを意識したリハビリを行う際のポイント

アイトラッキングを活用するリハビリは、視覚機能と運動機能の統合を重視する高度な訓練です。以下に、新人療法士が知っておくべき具体的な注意点や実践ポイントを挙げます。


1. 患者の視覚機能の事前評価を徹底する

  • 背景: 患者に視力低下や眼球運動障害(内斜視・外斜視、眼球麻痺など)がある場合、訓練の効果が制限される可能性があります。
  • ポイント: 訓練前に眼科医と連携し、視覚機能や眼球運動の状態を確認。必要に応じて修正レンズの使用を検討。

2. 眼球疲労に配慮する

  • 背景: 長時間の視覚刺激や複雑なタスクは、眼球疲労や頭痛を引き起こす場合があります。
  • ポイント: 訓練は短時間(5~10分)のセッションから始め、徐々に負荷を上げる。定期的に休憩を挟むことが重要。

3. 視覚と体幹・四肢の動きを連動させる

  • 背景: アイトラッキング単独の訓練では全身運動との統合が不十分になる可能性があります。
  • ポイント: 視覚タスクに加えて、体幹や四肢の動きを伴う訓練を組み合わせる(例: 目でターゲットを追いながら体重移動を行う)。

4. ターゲット位置と環境光を適切に調整

  • 背景: 光の反射や位置の不適切さが訓練効果に影響を与えることがあります。
  • ポイント: ターゲットは患者の正面からやや下方に設置し、環境光を適切に調整して目の疲労を軽減。

5. 視覚処理速度に合わせた課題設定を行う

  • 背景: 高齢者や脳卒中患者では視覚処理速度が低下していることが多いです。
  • ポイント: タスクの提示速度や頻度を調整し、患者が適切に反応できるペースで進める。

6. めまいやバランス不良をモニタリングする

  • 背景: サッカードやスムーズパーシュートのタスクはめまい(特に前庭障害のある患者)を誘発することがあります。
  • ポイント: 患者の顔色や反応を観察し、めまいや不快感を訴えた場合は訓練を中断し負荷を軽減する。

7. 認知課題を同時に行うデュアルタスクを慎重に進める

  • 背景: 視覚タスクと認知課題を組み合わせると、患者の集中力や反応が低下する場合があります。
  • ポイント: デュアルタスクは単一タスクの熟達後に追加し、難易度を徐々に上げる。

8. 患者の興味に基づいた課題選定

  • 背景: 興味が薄い課題ではモチベーションが低下しやすいです。
  • ポイント: 趣味や日常生活のニーズに関連するターゲット(例: 車の運転に必要な道路標識)を使用して訓練内容をカスタマイズ。

9. 機器やソフトウェアの動作確認を事前に行う

  • 背景: アイトラッキングデバイスの誤作動や不具合が訓練の進行を妨げる場合があります。
  • ポイント: 使用前に機器の校正を行い、患者の顔の位置やモニターの角度を調整して最適化する。

10. 訓練の目的と進捗を患者に共有する

  • 背景: 患者が訓練の目的を理解していない場合、積極性が低下する可能性があります。
  • ポイント: 訓練の目標(例: 歩行時の障害物回避能力向上)を説明し、小さな進歩を具体的にフィードバックすることでモチベーションを維持。

まとめ

これらの注意点を踏まえ、患者の安全を最優先しながら進行度に応じた柔軟な対応が求められます。アイトラッキングのリハビリは、視覚機能と運動制御の統合を効果的に促進するための重要なツールです。丁寧な観察とフィードバックを心がけてください。

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