【2023年版】脳卒中後の麻痺症状に対する再生医療って効果あるの?メリット・デメリット・リハビリ
再生医療は脳卒中後の麻痺に効果はあるの?
再生医療は、麻痺の根本原因である脳の神経組織の損傷に対処する能力があるため、脳卒中後の麻痺に対する治療法として有望視されています。脳卒中後、酸素や栄養が不足することで脳細胞が死んでしまい、運動機能、感覚機能、認知機能の喪失が起こることがあります。再生医療は、損傷した組織や細胞を修復または置換し、回復を促進し、失われた機能を回復することを目指しています。以下に、再生医療が脳卒中後の麻痺に対して効果的であるとされています。
1神経保護:再生医療のアプローチの一つとして、神経保護薬や成長因子などの神経保護剤を使用して、脳組織へのさらなる損傷を防ぎ、既存のニューロンの生存をサポートする方法があります。残存する神経組織を保護することで、麻痺の程度が最小限に抑えられ、患者の全体的な回復が向上する可能性があります。
2神経新生:再生医療は、神経新生によって新しいニューロンの成長を促進することもできます。幹細胞療法のような技術では、様々な細胞タイプ(ニューロンを含む)に分化できる幹細胞を移植し、脳内の損傷した細胞や死んだ細胞を置き換えます。これにより、神経回路が再構築され、麻痺に寄与する機能障害が回復される可能性があります。
3血管新生:脳卒中後、脳の血流が悪くなることがあり、組織修復に必要な酸素や栄養が不足することがあります。再生医療は、脳内で新しい血管(血管新生)の形成を促進し、血流を改善し、回復プロセスをサポートすることができます。
4組織工学:再生医療は、組織工学も含んでおり、ハイドロゲルやスキャフォールドなどのバイオマテリアルを使用して、新しい神経組織の成長と統合をサポートします。これらのバイオマテリアルは、移植された細胞や成長因子に適した環境を提供し、それらの生存と宿主組織との統合を向上させることで、最終的に機能改善につながります。
5免疫応答の調節:再生医療は、脳卒中後の免疫応答も調節することができます。脳卒中後には炎症が一般的に生じ、さらなる脳損傷を引き起こすことがあります。免疫応答を調節することで、再生療法は炎症を減少させ、全体的な回復プロセスが改善する可能性があります。
全体として、再生医療は、損傷した脳組織を修復または置換し、新しいニューロンの成長と生存を促進することで、脳卒中後の麻痺の根本原因に対処することを目指しています。神経損傷の根本原因に対処することで、再生医療は失われた機能を回復し、脳卒中患者の生活の質を向上させる可能性を提供します。
再生医療のメリット・デメリットは?
再生医療のメリット | 再生医療のデメリット |
---|---|
1. これまで治療困難だった病気への対処可能性 | 1. 高コストで利用が制限されることがある |
2. 疾患や損傷の根本原因への対処 | 2. 倫理的懸念および規制上の課題 |
3. 機能の回復と生活の質の向上が期待できる | 3. 免疫反応や副作用の潜在的リスク |
4. 臓器移植への依存度低減 | 4. 長期的な安全性と効果の不確定性 |
5. 個別化された治療アプローチが可能 | 5. 技術的および科学的な制約 |
利点:
これまで治療困難だった病気への対処可能性:再生医療は、脊髄損傷や変性疾患など、これまで治療困難だった病気の患者に希望を提供します。
疾患や損傷の根本原因への対処:再生医療は、損傷した組織を修復または置換することで、病気の根本原因に対処することを目指しています。
機能の回復と生活の質の向上が期待できる:再生医療は、損傷した組織を修復または置換することで、患者の機能回復や生活の質の向上を目指します。
臓器移植への依存度低減:再生医療は、臓器移植の代替手段を提供し、待機時間の短縮や臓器拒絶のリスクを低減する可能性があります。
個別化された治療アプローチが可能:再生医療は、患者の個別のニーズや状況に合わせた治療計画を立てることができます。
欠点:
高コストでアクセスが制限されることがある:再生医療の治療は高額であり、すべての患者に広く提供されていない場合があります。
倫理的懸念および規制上の課題:幹細胞やその他の再生医療技術の使用は、倫理的懸念を引き起こし、厳格な規制監督に直面することがあります。
免疫反応や副作用の潜在的リスク:移植された細胞や組織は患者の免疫システムによって拒絶されることがあり、副作用や治療失敗につながる可能性があります。
長期的な安全性と効果の不確定性:多くの再生医療療法が比較的新しいため、これらの治療の長期的な安全性と効果はまだ十分に理解されていません。
技術的および科学的な制約:現在の科学的知識と技術は、一部のケースで再生医療の有効性を制限する可能性があります。
再生医療と脳卒中後の麻痺に対するリハビリテーションを併用するメリットは?
再生医療とリハビリテーションを組み合わせることによって、脳卒中やその他の神経損傷を経験した患者の全体的な回復プロセスが向上する相乗効果が得られます。以下に、これらのアプローチを組み合わせる利点をいくつか示します。
機能回復の強化:
再生医療は、損傷した神経組織を修復または置換することに焦点を当てており、リハビリテーションは、対象となる運動や療法を通じて患者の運動、感覚、認知能力を向上させることを目指しています。これらのアプローチを組み合わせることで、回復の構造的および機能的側面の両方に対処し、機能回復が強化されます。
神経可塑性の改善:
神経可塑性とは、脳が損傷や新しい経験に対応して神経回路を再編成・適応させる能力のことを指します。再生医療は、損傷した神経組織を修復し、新しいニューロンの成長を促進することで、神経可塑性を促進します。リハビリテーションは、新しい神経接続の形成と既存の接続の強化を促すターゲット指向のトレーニングを提供することで、神経可塑性をさらに向上させることができます。
個別化された治療計画:
再生医療とリハビリテーションを組み合わせることで、患者の個別のニーズと状況を考慮した個別化された治療計画を作成することができます。これにより、回復へのより効果的で適応したアプローチが可能になります。
回復の促進:
再生医療は、組織の修復と再生を促進することで回復プロセスを加速する可能性があり、リハビリテーションは機能能力の向上を助けます。これらのアプローチを組み合わせることで、患者の回復プロセスがより迅速に進む可能性があります。
生活の質の向上:
再生医療とリハビリテーションを組み合わせることで、神経損傷によって引き起こされる構造的な損傷と機能的な障害の両方に対処する、より包括的な回復アプローチが可能となります。これにより、患者の生活の質が向上することが期待できます。
STROKE LABで再生医療を受けている患者さんはいますか?
当施設でも日本の再生医療を近隣のクリニックで受け、併用して自費リハビリを希望される方が多いです。2-3週間の集中リハビリを受ける方もいます。効果は様々ですが、再生医療により体幹など低緊張が軽減される方などいらっしゃいます。
STROKE LABのセラピー動画の一例を紹介します↓↓↓
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)