【質問】ラムゼイハント症候群(ハント症候群)の原因や治療、予後やリハビリテーションを教えてください
ハント症候群とは?
ハント症候群(ラムゼイハント症候群II型)は、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)の再活性化によって引き起こされる神経疾患です。このウイルスは、帯状疱疹や水痘の原因となる同じウイルスで、体内に潜伏したまま何年も経過することがあり、免疫力の低下などによって再活性化されると、この症候群が発症します。特に**顔面神経(第VII脳神経)**に影響を及ぼし、顔面麻痺を引き起こすのが特徴です。加えて、耳周辺や口内の発疹や痛み、さらには聴力障害を伴うことが一般的です。
症状の概要とVZVウイルスによる神経影響
水痘帯状疱疹ウイルスが再活性化すると、主に顔面神経に影響を及ぼし、痛みや麻痺、発疹などが現れます。ウイルスは神経節内で増殖し、神経の炎症を引き起こします。その結果、ウイルスが神経経路を損傷し、顔面の動きや感覚に影響を与えます。これが顔面神経麻痺や耳鳴り、難聴を引き起こす原因です。VZVの再活性化は、免疫機能の低下やストレスが引き金となり、特に高齢者や免疫力が低下している人に多く見られます。
ラムゼイハント症候群 II 型のメカニズム
ラムゼイハント症候群は、ウイルスが顔面神経とその分枝に感染することで発症します。この神経は、顔の動きや表情を制御する役割を持ち、麻痺が起こると顔の片側が動かなくなり、まばたきや口の動きが困難になります。また、ウイルスが内耳にも影響を及ぼすことがあり、その結果、耳鳴りや平衡感覚の喪失、さらには難聴を引き起こすことがあります。内耳への影響が大きい場合、目眩を伴うこともあり、日常生活に支障をきたすことがあります。
顔面神経麻痺の主な症状は?
初期症状(発疹、耳の痛み、顔面の衰弱)
ハント症候群の初期症状は、一般的に耳の痛みや顔面の一部の衰弱から始まります。発疹は耳の周囲や耳の中、口の中にも現れることがあります。患者は、顔面の片側に麻痺が生じ、笑顔を作ることや目を閉じることが困難になります。この麻痺は、数時間から数日間で急速に進行することが多く、発症直後に適切な治療が行われないと回復が難しくなる場合があります。
症状が進行するパターンと重症度
発症後の症状は、軽度の顔面の衰弱から重度の麻痺に至るまで、個々のケースによって異なります。軽度の場合、顔面の筋肉が部分的にしか麻痺しないことがありますが、重症例では完全な顔面麻痺が見られることもあります。また、耳周辺の激しい痛みや聴覚の問題、耳鳴りなどが併発し、日常生活に大きな支障をきたすことがあります。症状が進行すると、耳の痛みが慢性化し、帯状疱疹後神経痛が残るケースもあります。
治療の重要性とタイミングは?
72時間以内の治療の重要性
ハント症候群の治療では、症状発現から72時間以内の早期治療が極めて重要です。この期間内に治療を開始することで、ウイルスの増殖を抑制し、神経へのさらなる損傷を防ぐことができます。早期の治療が行われない場合、神経損傷が進行し、回復が困難になる可能性が高くなります。
抗ウイルス薬とコルチコステロイドの役割
治療には抗ウイルス薬(アシクロビルやバラシクロビルなど)とコルチコステロイドの併用が推奨されます。抗ウイルス薬はウイルスの再活性化を抑え、神経の損傷を最小限に抑える効果があります。一方、コルチコステロイドは神経の炎症を軽減し、顔面麻痺の回復を促進します。これらの薬物治療は、症状の進行を抑え、回復率を大幅に向上させるため、発症後すぐに行われるべきです。
適切な治療を受けた患者の多くは、数週間から数ヶ月以内に顔面神経の機能が回復しますが、早期治療が予後を大きく左右するため、迅速な対応が非常に重要です。
リハビリテーションは?
論文は?
Diagnostic and Prognostic Relevance of Magnetic Resonance Imaging and Electrophysiological Findings in Acute Spinal Ischemia
Movérareらによる研究「末梢性顔面神経麻痺:言語、コミュニケーション、および口腔運動機能」。 片側末梢性顔面神経麻痺が言語、コミュニケーション、口腔機能に及ぼす影響を調べます。 この疾患を患う27人の患者を対象とした研究では、影響を受けた患者は健康な人に比べて唇の力が著しく低く、咬合力が低下し、食事や唾液のコントロールが困難であることが明らかになった。 顔面麻痺の程度は唇の力と有意に相関していましたが、構音神経や摂食能力などの他の側面とは相関していませんでした。 この研究は、従来の顔面麻痺の等級付けでは患者が経験する困難の範囲を完全に把握できない可能性があるため、特定の音声言語病理学的介入の必要性を強調しています。
Prognostic factors of peripheral facial palsy: multivariate analysis
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)