【質問】脳梗塞後に父が靴紐を結ぶ、更衣動作ができません。課題指向型アプローチ/失行や失認/ – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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【質問】脳梗塞後に父が靴紐を結ぶ、更衣動作ができません。課題指向型アプローチ/失行や失認/

はい皆さんこんにちは。STROKE LAB代表の金子です。
 
今回も【脳科学に基づく】ストラボ式ニューロトレーニングを一緒にやりましょう!

お悩み相談が届いています。

私の父が現在、リハビリを行っているのですが、日常生活の動作において困難を感じています。例えば、靴を履く際に正しい順序で手順を実行することが難しいのです。具体的には、靴下を履く前に靴を履こうとしたり、靴のひもを結ぶ前に立ち上がろうとしたりします。

また、服を着る際も問題があります。シャツを手に取っても、袖を通してボタンを留めるといった一連の動作がスムーズに行えず、混乱することがあります。このような状況で、どうすれば日常生活をよりスムーズに送れるようになるのか、ご教示いただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

上記質問に対して、STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。

前頭葉/補足運動野:運動計画
複雑で協調的な運動を計画するために重要です.例えば,カップを把握するために手をリーチし,それを口元へ持ってくるという一連の動作を決定する際に関与します。

 

質問者の方に対する解決策として書籍では以下の内容を呈示しています。

課題指向型アプローチを活用: 自発的動作が難しくても,課題難易度や環境を上手く調整することで動作開始が円滑になり,運動パターンに変化が見られます.重度の場合は,外部からの合図(言語,視覚,聴覚,触覚)を使用し,動作の開始を促すことができます.

 

今回の内容はYouTube動画で視聴できます

ニューロトレーニング

今回具体的に課題指向型アプローチを当事者やご家族の方に分かりやすいよう解説していきます。

課題型アプローチとは?

動きの調整と順序を改善するために、特定のタスクに集中することが重要です。以下の手順を取り入れることで、自信を持って日常生活を送るサポートになります。

1. 困難を克服!日常活動の分解法

重要な課題を特定する

まずは、日常生活の中で特に困難を感じる活動をリストアップします。例えば、靴を履くことや服を着ることなどが挙げられます。これにより、どの部分で改善が必要かが明確になります。

ステップに分割する

次に、各タスクをより小さく管理しやすいステップに分割します。タスクを細分化することで、一度に全てを行おうとするプレッシャーを軽減し、成功体験を積み重ねることができます。例えば、靴を履く場合のステップは以下の通りです:

ステップに分割する 各タスクを、より小さく管理しやすいステップに分割します。例えば、靴を履く場合:

  1. 座ります。

    • 安全で安定した椅子に座ります。
    • 必要であれば、背もたれに寄りかかります。
  2. 靴下を履きます。

    • 靴下を手に取り、つま先から足にかぶせます。
    • 靴下を足首まで引き上げ、しわを伸ばします。
  3. 片方の靴を履きます。

    • 靴を手に取り、足を靴の中に入れます。
    • かかとがしっかりと靴の中に収まるようにします。
  4. 靴紐を結びます。

    • 靴紐を両手で持ち、クロスさせます。
    • 片方の紐をもう一方の紐の下から通し、引っ張って締めます。
    • ループを作り、もう一方の紐で結び目を作ります。
    • 結び目が緩まないように、しっかりと引っ張ります。
  5. もう一方の靴でも同じ手順を繰り返します。

    • 反対側の足に靴を履き、同様に靴紐を結びます。

    2. ステップごとの練習で動作をマスターしよう

    一度に一つのステップに集中する

    各ステップを個別に練習し、自動的に実行できるようになるまで繰り返します。これにより、複雑な動作が一つ一つ確実に身につきます。例えば、靴を履くタスクの最初のステップである「座る」を完全に習得してから次のステップに進むといった具合です。

    図表などを使用する

    口頭、視覚、または触覚による手がかりを利用して、各ステップをガイドします。例えば、各ステップを順番に示す図表を作成し、それを見ながら実行することで、視覚的な確認ができ、手順を守りやすくなります。具体的には、ステップごとのイラストや写真を用意し、目につく場所に配置することで、視覚的なサポートを提供します。また、口頭で指示を出したり、触覚を通じて誘導したりすることも効果的です。

    各ステップを確認しながら実行する方法

    ステップ 1: 座ります。

    • 手がかり: 座る場所に明確な目印(例:クッションや色付きテープ)を置く。
    • アドバイス: 背もたれにしっかり寄りかかり、安全に座っていることを確認。

    ステップ 2: 靴下を履きます。

    • 手がかり: 靴下のつま先部分に目印を付けて、正しい向きを示す。
    • アドバイス: 靴下を足首まで引き上げる際にしわを伸ばすことを意識。

    ステップ 3: 片方の靴を履きます。

    • 手がかり: 靴のかかと部分に色付きテープを貼って、正しい位置を示す。
    • アドバイス: 足が靴にしっかり収まるように、かかとを確認。

    ステップ 4: 靴紐を結びます。

    • 手がかり: 靴紐を結ぶ手順を示す図表を用意し、目につく場所に置く。
    • アドバイス: 各ステップごとに確認しながら、結び目をしっかり作る。

    ステップ 5: もう一方の靴でも同じ手順を繰り返します。

    • 手がかり: 左右の靴に異なる色のマークを付けて、混同しないようにする。
    • アドバイス: 片方の靴と同じ手順で、慎重に行う。

    3. 手がかりを活用して動作をスムーズに

    言葉による合図

    明確で簡単な口頭指示を提供します。例えば、「まず靴下を履いてください」と具体的に指示します。このようにシンプルで具体的な指示を出すことで、次に何をすべきかが明確になります。

    視覚的な手がかり

    各ステップを説明する写真やビデオを使用します。例えば、靴の近くに靴紐を結ぶ方法を示す画像を配置することで、視覚的に確認しながら手順を進めることができます。これにより、記憶に頼らずに手順を確認でき、安心して進めることができます。

    聴覚的合図

    音やアラームを使用して、次のステップに移るタイミングを示します。例えば、タイマーを使って靴下を履いてから靴を履くタイミングを知らせます。これは、タイミング感覚の強化に役立ちますし、一定のリズムを保つことで作業をスムーズに進める手助けとなります。

    触覚の手がかり

    動きを開始するように手を優しく誘導します。例えば、靴下を足に履く際に手を軽く触れて誘導することで、動作の感覚を身につけることができます。このような触覚のサポートは、動作の正確さを高めるのに役立ちます。

    4. 環境を整えて動作を楽にしよう

    衣類やアイテムの整理

    服や道具を使用する順番に並べます。例えば、靴下、靴の順に並べることで、次に何をすべきかが明確になります。これにより、ステップを一つ一つ順序良く進めることができます。

    適応型機器を使用する

    結ぶ必要のない伸縮性のある靴紐やシャツ用のボタンフックなど、適応ツールの使用を検討します。これにより、複雑な動作が簡単になり、ストレスが軽減されます。例えば、伸縮性のある靴紐を使用することで、靴を履く際の負担を軽減できます。

    5. シンプルな工夫で日常を楽に

    衣服を改造する

    スリッポンシューズやボタンの代わりにベルクロが付いたシャツなど、留め具の少ない衣類を使用します。これにより、着替えがスムーズになります。例えば、スリッポンシューズを履くことで、靴紐を結ぶ手間が省けます。

    バランスを必要とする場面を減らす

    動きの複雑さを軽減するために、立った状態で着替えるのではなく座ることを奨励します。これにより、転倒のリスクを減少させることができます。例えば、座って靴を履くことで、バランスを崩すリスクを減らします。

    6. 毎日の小さな一歩が大きな成果に

    定期的な練習

    毎日少しずつ練習を続け、小さな成功を祝いましょう。自信とスキルが向上するにつれて、徐々にタスクの複雑さを増していきます。定期的な練習が成功の鍵です。小さな成功を積み重ねることで、モチベーションを維持しやすくなります。

    7. 専門家の力を借りて目標達成

    専門家の助けを求める

    作業療法士などの専門家に相談し、カスタマイズされた戦略とサポートを提供してもらうことを検討します。専門家のサポートは、最適な方法を見つけるために非常に有益です。彼らのアドバイスや支援を受けることで、より効果的にトレーニングを進めることができます。

    課題指向トレーニングチェックシート

    課題 理解できた 相談できた やれた
    1. 課題を細分化する
    2. 各ステップを練習する
    3. 外部からの合図
    4. 環境の適応
    5. タスクを簡素化する
    6. 定期的な練習と忍耐
    7. 専門的なサポート

    理解できた: トレーニングの目的と方法を理解し、何をどのように行うべきかが明確である。

    相談できた: 練習中に疑問や不安があった場合、セラピストや指導者に相談し、適切なアドバイスを受けることができた。

    やれた: トレーニングを実際に自分で実行し、練習を完了できた。

    このチェックシートを使用することで、個々の進捗を具体的に追跡し、トレーニングの効果を最大化することが目指されます。

    STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。


    これらの戦略を取り入れることで、日常生活のタスクがよりスムーズに、そして独立して実行できるようになります。少しずつ進歩することで、自信を持ち、自分のペースでリハビリを進めていきましょう

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    課題指向トレーニングまとめ

    課題指向トレーニングは、日常生活の中で動きの調整と順序を改善するために、特定のタスクに集中することが重要です。以下の手順を取り入れることで、自信を持って日々の活動を行えるようサポートします。

    1. 課題を細分化する: 日常生活で困難を感じる活動をリストアップし、具体的なステップに分けて取り組みます。
    2. 各ステップを練習する: 各ステップを個別に練習し、視覚、口頭、触覚による手がかりを利用して動作を確実に身につけます。
    3. 外部からの合図: 言葉、視覚、聴覚、触覚の手がかりを活用して、次のステップに移るタイミングを示します。
    4. 環境の適応: 衣類やアイテムを整理し、適応型機器を使用することで動作を簡単にします。
    5. タスクを簡素化する: 衣服を改造し、バランスを必要とする場面を減らすことで、動作の負担を軽減します。
    6. 定期的な練習と忍耐: 毎日の練習を続け、小さな成功を祝いながら、徐々にタスクの複雑さを増していきます。
    7. 専門的なサポート: 作業療法士などの専門家に相談し、カスタマイズされた戦略とサポートを提供してもらいます。

      最後に

      このトレーニングを続けることで、日常生活の中で自立性を高め、自信を持って活動できるようになることが期待できます。毎日の練習は小さな一歩かもしれませんが、その積み重ねが大きな成果につながります。次回のトレーニングも楽しみながら取り組みましょう。小さな成功を積み重ねて、前向きな気持ちで挑戦を続けることが大切です。あなたの努力が確実に成果を生むことを信じて、一緒に頑張りましょう!

      エビデンスは?

      活動ベースの課題指向訓練の有効性:

      この研究は、脳卒中患者の上肢回復を改善するための課題指向訓練の重要性を強調しています。この研究は、特定の意味のあるタスクに焦点を当てることで、日常活動の遂行能力を大幅に向上させることができると示唆しています​​ (American Journal of Occupational Therapy)​.

      課題指向訓練が上肢機能と日常生活活動に与える効果:

      このランダム化比較試験では、慢性脳卒中患者に対する8週間の課題指向ADL訓練プログラムの影響を調査しました。結果は、上肢機能、ADLパフォーマンス、および生活の質において有意な改善を示し、課題指向訓練が機能回復を促進するのに効果的であることを示しています​ (MDPI)​.

      課題指向訓練と視覚認知:

      急性脳卒中患者を対象とした別の研究では、課題指向訓練が上肢機能、視覚認知、およびADLパフォーマンスを改善することが示されました。このパイロット研究は、従来の方法と比較して、課題指向訓練がより良い機能的成果をもたらすことができることを発見しました (MDPI)​.

      課題指向訓練の強度:

      ある研究は、脳卒中生存者に対する異なる強度の課題指向訓練の効果を探りました。訓練の強度(50%、75%、100%)を変えることで、運動機能やセルフケア能力に影響を与えることが分かりました。より高い強度の訓練はより良い治療効果をもたらす傾向がありましたが、疲労を避けるために強度のバランスを取ることが重要でした(BMJ Open)​.

      これらの研究は、脳卒中リハビリテーションにおける課題指向訓練の有効性を強調しており、日常生活活動と全体的な生活の質の向上におけるその役割を強調しています。このようなエビデンスに基づく実践を取り入れることで、脳卒中生存者のためのリハビリテーションプログラムの開発に大きく貢献できます。

      詳細については、以下のリンクから完全な記事にアクセスできます:

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