【質問】脳卒中後に歩行が不安定になりました。理想の姿勢への意識トレーニングを解説!姿勢制御
お悩み相談が届いています。
こんにちは。私の父は脳卒中を経験し、その影響で歩行中に速度やリズムが不安定になることが多く、頻繁につまずいたり、歩行が不規則になってしまいます。これにより、日常生活が非常に不便で、安全面でも大きな心配があります。運動の調整がうまくいっていないことが原因だと思われますが、どのような方法でこれを改善できるのか、ご意見をお聞かせいただけないでしょうか。
上記質問に対して、STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。
(APAs)
引用:https://radiopaedia.org/articles/supplementary-motor-area
質問者の方に対する解決策として書籍では以下の内容を呈示しています。
これには,頭部,肩甲帯,脊柱,骨盤を適切に配置することがバランスにどのように貢献し,身体の負担を軽減するかについての説明も含まれ
ます.
身体のマッピング: 視覚補助や図を使用して,自分の姿勢を視覚化する.ガイド付きフィードバック: リハビリ中に,患者に「背筋をまっすぐに保
つ」ことなどを想起してもらうと,正しい姿勢がどのようなものか理解するのに役立ちます.
今回の内容はYouTube動画で視聴できます
ニューロトーレニング
今回は具体的に5つのトレーニングをご紹介しま
アプローチの概要:姿勢意識(Postural awareness)の向上
1. 理想的な姿勢を理解とトレーニング
正しい姿勢とは、頭、肩、背骨、骨盤が適切な位置にあり、身体のバランスが最適化されている状態です。これにより、身体への負担が最小限に抑えられます。正しい姿勢を保つことで、筋肉や関節への負担が減り、痛みや疲れが軽減されます。これからの毎日がもっと楽になりますよ。
具体例:
- 説明: 正しい姿勢とは、頭、肩、背骨、骨盤が適切な位置にあり、身体のバランスが最適化されている状態です。
- 練習方法: 鏡の前に立ち、自分の姿勢をチェックします。頭が肩の上にまっすぐ乗っているか、肩が前に出ていないか確認しましょう。
- 実践: 毎日数回、壁に背をつけて立ち、後頭部、肩甲骨、臀部、かかとが壁に接していることを確認します。この姿勢が理想的な姿勢です。
更なる応用トレーニング
1. 壁スクワット
- 壁に背をつけて立ちます。頭、肩甲骨、臀部、かかとが壁に接するようにします。
- ゆっくりと膝を曲げてスクワットをします。背中をまっすぐに保ち、膝がつま先を超えないようにします。
- 姿勢が崩れていないか、鏡を使って確認しましょう。
2. 壁プッシュアップ
- 壁から腕の長さだけ離れて立ちます。
- 手のひらを壁につけ、腕を肩幅に広げます。
- 体をまっすぐに保ちながら、肘を曲げて体を壁に近づけます。
- ゆっくりと元の位置に戻ります。
- 10回を1セットとし、3セット行います。
3. 壁を使ったふくらはぎ強化
- 壁に手をついてバランスを保ちながら立ちます。
- ゆっくりとかかとを上げ、つま先立ちになります。
- かかとをゆっくりと下ろします。
- 15回を1セットとし、3セット行います。
4. 壁を使った肩の柔軟性確保
- 壁に背をつけて立ち、後頭部、肩甲骨、臀部、かかとが壁に接するようにします。
- 腕を肩の高さで左右に広げ、肘を90度に曲げて手のひらを壁に向けます。
- ゆっくりと腕を上に滑らせ、できるだけ高く上げます。
- ゆっくりと元の位置に戻ります。
- 10回を1セットとし、3セット行います。
2. あなたの姿勢を可視化!ボディマッピングでチェック
姿勢を視覚化するために、図やアプリを使って自分の姿勢を確認してみましょう。例えば、写真に自分の姿勢を書き込んでみたり、アプリを使って現在の姿勢と理想的な姿勢を比較してみましょう。これにより、自分の姿勢の改善点が一目でわかります。
具体例:
- 説明: 図やアプリを使って自分の姿勢を視覚化します。
- 練習方法: スマートフォンで自分の姿勢を横から撮影し、アプリを使って理想的な姿勢と比較します。
- 実践: 毎週同じ場所で写真を撮り、前回と比較して改善点を確認します。アプリがない場合は、紙に自分の姿勢を書き込んでみましょう。
例2: デスクワークの姿勢チェック
- デスクで作業する前に、椅子に深く腰掛け、背中をまっすぐに保ちます。
- モニターが目の高さにあるか確認し、肩がリラックスしていることを意識します。
- 1時間ごとに立ち上がり、壁に背をつけて姿勢をリセットします。
3.ガイド付きフィードバック:歩行時の具体例
リハビリ中に、まっすぐな背中、リラックスした肩、そして頭の位置を意識しながら歩行を行います。
練習方法
- 姿勢を整える: 立った状態で、手を腰に当て、肩を後ろに引いて背筋を伸ばします。
- 頭の位置: 肩の上に耳を置くように意識して、頭をまっすぐに保ちます。視線は遠くの一点を見つめます。
- 歩行開始: その姿勢を保ったまま、ゆっくりと歩き始めます。
実践
-
鏡を使用する:
- 鏡の前で、まっすぐな姿勢を確認し、歩行を始めます。
- 鏡に映った自分の姿勢を見ながら、「肩の上に耳を置く」、「背中をまっすぐに保つ」と声に出して確認します。
-
チェックポイント:
- 歩行中に時々立ち止まり、再度姿勢を確認します。
- 姿勢が崩れていないか、肩が緊張していないか、頭が前に出ていないかをチェックします。
-
伴走者のサポート:
- リハビリスタッフや家族に一緒に歩いてもらい、姿勢が崩れたときに声をかけてもらいます。「背中をまっすぐに」、「肩をリラックスして」と具体的に指示をもらいます。
-
フィードバックループ:
- 歩行の練習が終わったら、鏡の前に戻り、最初と最後の姿勢を比較します。
- どこが改善されたか、どこがまだ課題かを自分で確認し、次の練習に活かします。
4.人間工学に基づいた環境調整:仕事環境を変えて健康アップ!
具体例:
説明
生活環境や職場環境を見直して、正しい姿勢をサポートする調整を行いましょう。例えば、人間工学に基づいた椅子や、適切な高さのデスク、サポートクッションなどを活用することで、自然と良い姿勢が保てるようになります。
練習方法
-
椅子の調整:
- 背もたれが自然なカーブをサポートする椅子を選びます。
- 座面の高さを調整し、膝が90度になるようにします。
-
デスクの調整:
- デスクの高さを調整し、モニターが目の高さに来るようにします。
- キーボードとマウスは肘が90度に曲がる位置に配置します。
-
サポートクッションの使用:
- 腰のサポートが必要な場合は、ランバークッションを使用します。
- 足が浮かないように、フットレストを使用します。
実践
- ワークスペースの見直し: デスクと椅子を最適な位置に調整し、定期的に見直します。
- リマインダー: 姿勢を意識するために、タイマーをセットし、1時間ごとに姿勢をチェックします。
5.姿勢追跡アプリの活用:ウェアラブルで姿勢改善!毎日の習慣に
具体例:
説明
姿勢を改善するために、姿勢追跡アプリを活用してみましょう。これらのアプリは、リアルタイムでフィードバックを提供し、正しい姿勢を維持するためのエクササイズやリマインダーを提供します。ウェアラブルセンサーを使ったアプリは、姿勢が悪くなったときに知らせてくれるので便利です。
練習方法
-
アプリのインストール:
- スマートフォンに姿勢追跡アプリをインストールします。
- アプリが提供するチュートリアルに従って設定を行います。
-
ウェアラブルセンサーの使用:
- ウェアラブルセンサーを装着し、姿勢をリアルタイムで監視します。
- センサーが姿勢の崩れを検出した際に通知が来るように設定します。
-
エクササイズの実践:
- アプリが提供する姿勢改善エクササイズを実践します。
- 毎日のルーチンに組み込むことで、継続的に姿勢を改善します。
Upright GO
説明: Upright GO は、ウェアラブルセンサーを使用して姿勢をモニタリングする姿勢トレーニングデバイスです。 リアルタイムのフィードバックを提供し、前かがみになったときに優しく振動します。 このアプリは、パーソナライズされたトレーニング プログラムを提供し、時間の経過とともに進捗状況を追跡します。
練習方法:
アプリをインストールする: Upright GO アプリをスマートフォンにダウンロードします。
チュートリアルに従ってください: アプリの指示に従って Upright GO デバイスを背中上部に取り付け、セットアップ チュートリアルに従ってデバイスを調整します。
実践
- 日常での使用: デスクワーク中や移動中にアプリとセンサーを使用し、姿勢が崩れた際には通知を受け取ります。
- 記録と分析: アプリが提供する姿勢データを定期的に確認し、自分の姿勢の改善点を分析します。
アップルウォッチも長時間座るとバイブレーションで座りすぎを教えてくれるのでお勧めです。
これらの具体例を通じて、日常生活の中で姿勢を意識し、改善することで、より健康的で快適な生活を送ることができます。
これらのアプローチを実践して、毎日の生活をもっと快適に、健康的にしていきましょう。自分自身で取り組むことで、成果が実感でき、より前向きなリハビリ生活が送れるようになります。
今日のニューロトレーニングをチェックしよう!
項目 | 理解できた | 相談できた | やれた |
---|---|---|---|
理想的な姿勢を理解しつつ、壁での練習 | |||
あなたの姿勢を可視化!ボディマッピングでチェック | |||
ガイド付きフィードバック:歩行時の具体例 | |||
人間工学に基づいた環境調整:仕事環境を変えて健康アップ! | |||
姿勢追跡アプリの活用:ウェアラブルで姿勢改善!毎日の習慣に |
理解できた: トレーニングの目的と方法を理解し、何をどのように行うべきかが明確である。
相談できた: 練習中に疑問や不安があった場合、セラピストや指導者に相談し、適切なアドバイスを受けることができた。
やれた: トレーニングを実際に自分で実行し、練習を完了できた。
終わりに
これらの具体例を通じて、日常生活の中で姿勢を意識し、改善することで、より健康的で快適な生活を送ることができます。自分自身で取り組むことで、成果が実感でき、より前向きなリハビリ生活が送れるようになります。
姿勢改善は一度に全てを完璧にする必要はありません。毎日の小さな積み重ねが大きな変化を生み出します。次回もこのチェックシートを使って、自分の進歩を確認しながら楽しく取り組んでいきましょう!姿勢を整えることで、心も体もリフレッシュされ、新たなエネルギーを得ることができます。あなたの健康と快適さをサポートするための一歩一歩を楽しんでくださいね。
一緒に前向きに取り組み、健康的な姿勢を手に入れましょう!
STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。
これらの戦略を取り入れることで、日常生活のタスクがよりスムーズに、そして独立して実行できるようになります。少しずつ進歩することで、自信を持ち、自分のペースでリハビリを進めていきましょう
当事者やご家族にもわかる自主トレ書籍は↓↓↓Amazon購入は→こちら
エビデンス
-
Recovery from Stroke: Current Concepts and Future Perspectives
- 概要: この論文では、脳卒中後の回復に関する現在の概念と将来の展望について述べています。特に、シナプス接続の形成と神経回復における役割に焦点を当てています。神経回復のプロセスが、どのように新しいシナプス接続の形成を通じて進行するかを示しています。
- ポイント: 神経再生のメカニズムの理解が、個別化された治療法の開発に重要であることが強調されています (BioMed Central)。
-
A Comprehensive Review of Physical Therapy Interventions for Stroke Rehabilitation: Impairment-Based Approaches and Functional Goals
- 概要: このレビューは、脳卒中後のリハビリテーションにおける理学療法の介入方法について詳述しています。感覚機能の障害、運動学習プログラム、偏視や片側無視、柔軟性と関節の整合性、筋力トレーニング、過緊張、姿勢制御、歩行訓練など、多岐にわたるリハビリテーション戦略が紹介されています。
- ポイント: 特定の機能的制限に対処するための個別化されたリハビリプログラムの重要性が強調されています (MDPI)。
-
Wearable Technology in Stroke Rehabilitation: Towards Improved Diagnosis and Treatment of Upper-Limb Motor Impairment
- 概要: この論文は、脳卒中患者の上肢運動障害の診断と治療におけるウェアラブル技術の利用について論じています。動作追跡と評価のための技術の進歩がリハビリテーションに与える影響について詳述しています。
- ポイント: ウェアラブルセンサーを使用した運動機能の評価が、リハビリテーションの効果を高める可能性があることが示されています (BioMed Central)。
-
Gait Analysis in Neurorehabilitation: From Research to Clinical Practice
- 概要: この論文では、神経リハビリテーションにおける歩行分析の研究から臨床実践への応用について述べています。歩行分析システムの使用により、神経疾患患者の歩行とバランスの評価が可能となり、個別化されたリハビリテーション計画の作成が支援されます。
- ポイント: 歩行分析が、神経疾患患者の機能的回復を促進するために重要であることが強調されています (MDPI)。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)