【2-3歳】発達段階と発達障害の診断 リハビリテーションから家庭でできるトレーニングまで解説
発達段階の概要
以下は、乳幼児期の認知発達、運動発達、社会発達、言語発達の各段階を表したものです:
年齢範囲 | 認知発達 | 運動発達 | 社会発達 | 言語発達 |
---|---|---|---|---|
0-3ヶ月 | 音や視覚刺激に反応; 物体を目で追う | 反射運動; 頭を持ち上げる | やりとりに応じて笑う; 需要を伝えるために泣く | くーくーと声を出し、喜びの声を出す |
3-6ヶ月 | 手や口で物を探索; 親しい顔を認識 | 転がる; 支持付きで座る | 笑ったり、がなったりする; 社交的な遊びを楽しむ | 子音を含む音を出し始める |
6-9ヶ月 | 「いいえ」を理解; 自分の名前に反応 | 支持なしで座る; はいはいする | 見知らぬ人への恐怖が始まる; 特定の人を好む | 音の連続を発し、声で喜びや不満を表現 |
9-12ヶ月 | ジェスチャーや音をまねる; 正しく物を使い始める | 支持付きで立つ; 手助けで歩くかもしれない | さよならを手振りで示す; 単純な相互作用のゲーム | 「ママ」「パパ」といった簡単な言葉を話す |
1-2歳 | 簡単な指示に従う; 言葉を使い始める | 自立して歩く; 走り始める | 他の子どもと並んで遊ぶ; 共感を示す | 簡単な文を2語で組み合わせる |
2-3歳 | 馴染みのある物を名前で呼ぶ; 形や色で分類 | よく登る; スムーズに走る | 単純なごっこ遊びを始める; 順番を理解する | 短い文を話し、簡単な指示に従う |
3-4歳 | 数字を少し理解し、数えることができる; 質問が多い | 三輪車に乗る; 一方の足でホップする | 他の子どもと協力して遊ぶ; ルールを理解する | 質問をする; 4-5語の文を使う |
4-5歳 | 10以上を数えることができる; 時間の概念を理解 | スキップや片足でバランスをとる; バウンドボールをキャッチ | 他の子どもとの遊びを楽しむ; 性別に気づく | 完全な文を話し、簡単な物語を語る |
この表は、乳幼児期の発達段階を示しており、個々の子供によって差があるため、これらは一般的なガイドラインとして参考にされることをお勧めします。
2-3歳を詳しく
1. 馴染みのある物を名前で呼ぶ
この年齢になると、子どもは周囲の物の名前を覚え、正しく使うことができるようになります。例えば、家庭内の物(椅子、テーブル、ベッドなど)や日常でよく見る物(犬、猫、車など)の名前を覚え、それらを指さして名前を言うことができるようになります。この能力は言語発達の重要な一環であり、語彙の拡大と共に、コミュニケーション能力も向上します。
2. 形や色で分類
2-3歳の子どもは、物を形や色で分類する能力が発達します。例えば、四角形のブロックと丸いブロックを別々に分けたり、赤い物と青い物を分けたりすることができるようになります。この分類能力は、認知スキルの発達において重要な役割を果たし、後の数学的思考や論理的思考の基礎となります。
3. よく登る
この年齢になると、子どもは運動能力が向上し、よく登るようになります。家具や遊具に登ることができるようになり、バランス感覚や筋力が発達します。登ることは子どもの冒険心を育て、自信を持つことにつながります。ただし、安全に注意しながら見守ることが大切です。
4. スムーズに走る
2-3歳の子どもは、スムーズに走ることができるようになります。走る動作が安定し、転倒することが少なくなります。これは筋力やバランス感覚、協調性の発達を示すものであり、体力の向上にも寄与します。また、走ることで遊びの範囲が広がり、社会的なスキルや自信を育てることができます。
5. 単純なごっこ遊びを始める
この年齢の子どもは、単純なごっこ遊びを始めるようになります。例えば、ぬいぐるみを使ってお医者さんごっこや、料理ごっこをすることが多くなります。ごっこ遊びは、想像力を育て、社会的スキルや言語スキルの発達に重要な役割を果たします。また、他の子どもと一緒に遊ぶことで、協力や共有の概念を学びます。
6. 順番を理解する
2-3歳の子どもは、順番を理解するようになります。例えば、滑り台を使う際に「次は自分の番」と待つことができるようになります。このスキルは社会的なルールや秩序を学ぶ上で重要です。順番を待つことができるようになることで、他者との協力やコミュニケーションが円滑になります。
7. 短い文を話し、簡単な指示に従う
この年齢の子どもは、2-3語の短い文を話すことができるようになります。例えば、「ママ、見て」「おやつ、ちょうだい」などの簡単な文を作ることができます。また、簡単な指示にも従うことができるようになります。「おもちゃを片付けて」「ここに来て」などの指示を理解し、適切に応答することができます。これは言語理解と表現の発達を示しており、コミュニケーションスキルの向上に繋がります。
発達障害の徴候
関連する病気は?
2-3歳の発達段階で見られる発達障害の徴候は、いくつかの特定の疾患と関連していることがあります。以下に、主な関連疾患とその特徴をまとめました。
1. 自閉症スペクトラム障害(ASD)
特徴:
- 社会的相互作用の困難さ
- 言語や非言語コミュニケーションの障害
- 限定された興味や反復する行動
関連する徴候:
- 馴染みのある物の名前を呼ばない
- 目を合わせない、名前を呼んでも反応しない
- 単純なごっこ遊びを始めない
- 社会的な興味が低い
2. 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
特徴:
- 注意力の不足
- 多動性
- 衝動性
関連する徴候:
- 簡単な指示に従えない
- 順番待ちができない
- 注意を引くことが難しい
3. 知的障害(ID)
特徴:
- 知的機能の著しい低下
- 適応行動の障害(概念的、社会的、実践的スキルの遅れ)
関連する徴候:
- 言葉の遅れ、短い文を話さない
- 簡単な指示に従えない
- 運動能力の発達が遅い
4. 言語発達障害(SLI)
特徴:
- 言語の理解や表現における困難
- 他の認知機能が比較的正常である
関連する徴候:
- 馴染みのある物の名前を呼ばない
- 言葉の遅れ、短い文を話さない
- 簡単な指示に従えない
5. 発達性協調運動障害(DCD)
特徴:
- 運動の調整が困難
- 運動能力の発達が遅い
関連する徴候:
- よく登らない、スムーズに走らない
- 運動への興味が低い
6. 社会的(実践的)コミュニケーション障害(SCD)
特徴:
- 社会的なコミュニケーションや対人関係のスキルにおける困難
- ASDの他の特徴を持たない
関連する徴候:
- 社会的相互作用の困難さ
- 順番を理解しない
- 社会的なルールを理解しない
リハビリテーションは?
発達障害のリハビリテーションは、多角的なアプローチを用いて子どもの特定のニーズに応じたサポートを行うことが重要です。以下に、各疾患に対する具体的なリハビリテーション方法を解説します。
1. 自閉症スペクトラム障害(ASD)
- 応用行動分析(ABA): 望ましい行動を強化し、不適切な行動を減少させるための体系的な手法です。
- 言語療法: 言語の発達を促進し、コミュニケーションスキルを向上させます。
- 社会スキルトレーニング: 他者との相互作用を学び、社会的なスキルを向上させます。
- 感覚統合療法: 感覚処理の問題を改善し、適切な反応を引き出します。
2. 注意欠陥・多動性障害(ADHD)
- 認知行動療法(CBT): 注意力、衝動性、多動性に対処する方法を学びます。
- 行動管理技術: ルーチンの設定や報酬システムを用いて行動を管理します。
- 運動療法: 体を動かすことで多動性を抑え、集中力を高めます。
3. 知的障害(ID)
- 個別化教育計画(IEP): 個々のニーズに応じた教育プログラムを作成します。
- 言語療法と作業療法: 基本的な生活スキルやコミュニケーションスキルを向上させます。
- 音楽療法と芸術療法: 感覚統合を促進し、情緒的な発達をサポートします。
4. 言語発達障害(SLI)
- 言語療法: 言語理解と表現のスキルを向上させます。
- 音楽療法: 言語リズムや発音を改善します。
- 親子訓練: 親が家庭での言語発達をサポートする方法を学びます。
5. 発達性協調運動障害(DCD)
- 作業療法: 運動技能を改善し、日常生活動作を向上させます。
- 理学療法: 筋力とバランスを向上させるための運動プログラム。
- 遊びを通じたリハビリ: 遊びを通じて運動技能を自然に発達させます。
6. 社会的(実践的)コミュニケーション障害(SCD)
- 言語療法: 社会的コミュニケーションスキルを向上させます。
- 社会スキルトレーニング: 社会的な状況での適切な行動を学びます。
- グループセラピー: 他の子どもと一緒に社会的スキルを練習する場を提供します。
母親が自宅でできる支援
母親が自宅でできる具体的なサポート方法は以下の通りです。
1. 安定したルーチンの確立
- 一貫性のあるスケジュールを設定し、視覚的スケジュールを使って日常生活を予測可能にします。
2. 言語とコミュニケーションのサポート
- シンプルな言葉で話し、ジェスチャーや視覚的支援を使ってコミュニケーションを促進します。
3. 社会的スキルの強化
- ロールプレイやプレイデートを通じて社会的スキルを練習します。
- 感情の名前を教え、感情表現を学ばせます。
4. 行動管理とポジティブな強化
- 行動チャートを使用して良い行動を強化し、ポジティブなフィードバックを与えます。
5. 感覚統合のサポート
- 感覚遊びを取り入れ、静かな環境を提供します。
6. 学習活動のサポート
- 読み聞かせや教育的なアプリを活用し、ゲームや遊びを通じて学びを促進します。
7. 自己ケアとストレス管理
- サポートグループに参加し、自己ケアの時間を確保します。
8. 専門家との連携
- 定期的な評価とフィードバックを受け、家庭での療法を継続します。
自宅でできることは?
発達障害の子どもを持つ母親が自宅でできる具体的なサポート方法を以下にまとめました。これらの方法は、子どもの成長と発達を促進し、家庭環境での生活の質を向上させることを目的としています。
1. 言語とコミュニケーションのサポート
- シンプルな言葉で話す: 短くて明確な言葉を使い、子どもが理解しやすいようにします。
- 繰り返しと一貫性: 指示や説明を何度も繰り返すことで、子どもが内容を覚えやすくなります。
- ジェスチャーと視覚的支援: 言葉だけでなく、ジェスチャーや絵カードを使ってコミュニケーションをサポートします。
- 絵本の読み聞かせ: 毎日絵本を読み聞かせることで、語彙を増やし、言語理解を深めます。
2. 社会的スキルの強化
- ロールプレイ: 日常の社会的なシナリオをロールプレイすることで、子どもが適切な行動を学びやすくします。
- 友だち作りのサポート: プレイデートを設定し、他の子どもと遊ぶ機会を提供します。ただし、無理に長時間一緒にさせるのではなく、短時間から始めると良いです。
- 感情の表現と理解: 感情の名前を教え、どのように表現するかを学ばせます。絵本や絵カードを使って感情を学ぶことも効果的です。
3. 行動管理とポジティブな強化
- 行動チャート: 良い行動を示したときにシールやスタンプを貼るチャートを作ります。目標に達したら、小さなご褒美を与えるとモチベーションが高まります。
- ポジティブなフィードバック: 良い行動や努力に対して積極的に褒めることで、自己肯定感を育みます。
- 一貫したルールと期待: 家庭内でのルールを一貫して適用し、子どもが期待される行動を理解できるようにします。
4. 感覚統合のサポート
- 感覚遊び: 感覚の発達を促進する遊びを取り入れます。例えば、粘土遊び、砂遊び、水遊びなど、さまざまな感覚を刺激する活動が効果的です。
- 静かな環境を提供: 子どもが集中できるように、静かで刺激の少ない環境を整えます。
5. 学習活動のサポート
- ゲームと遊びを通じた学習: パズルやブロック、絵本などを使って楽しく学べる環境を提供します。
- 教育アプリやビデオ: 子どもの発達段階に合わせた教育的なアプリやビデオを活用します。
6. 日常生活スキルの向上
- 自立した生活スキルの練習: 服を着る、歯を磨く、食事をするなどの基本的な生活スキルを練習します。これらの活動を繰り返し練習することで、子どもが自立してできるようにサポートします。
- 順番やルーチンの練習: 朝の支度や就寝前のルーチンなど、順番に従って行う活動を練習します。
7. 自己ケアとストレス管理
- サポートグループへの参加: 同じ状況の親たちと情報交換を行い、支援を受けることでストレスを軽減します。
- 自己ケアの時間を持つ: 自分自身の健康と精神的な安定を保つために、リラックスできる時間を確保します。
8. 専門家との連携
- 定期的な評価とフィードバック: 子どもの発達状況を定期的に専門家に評価してもらい、フィードバックを受けることで、効果的な支援方法を学びます。
- 家庭での療法の継続: 言語療法や作業療法で学んだスキルを家庭でも継続して練習することが大切です。
まとめ
これらの方法を組み合わせて実践することで、発達障害の子どもの成長をサポートし、生活の質を向上させることができます。母親の積極的な関与と一貫したサポートが、子どもの発達に大きな影響を与えるため、専門家と連携しながら取り組むことが重要です。
STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)