【2024年版】重症筋無力症の原因・診断・予後・リハビリテーションまで解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年版】重症筋無力症の原因・診断・予後・リハビリテーションまで解説

重症筋無力症の概要

重症筋無力症とは?

重症筋無力症 (Myasthenia Gravis, MG) は、自己免疫性疾患であり、神経筋接合部において神経伝達が障害されることにより、筋力の低下と疲労を引き起こします。この疾患は、特に眼瞼下垂(まぶたが垂れ下がる)、複視(物が二重に見える)、全身の筋力低下などの症状を特徴とします  (College Board)

病態生理

MGは、自己免疫系がアセチルコリン受容体(AChR)または筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)などの神経筋接合部のタンパク質に対する抗体を生成することにより発症します。これにより、神経から筋肉への信号伝達が阻害され、筋力が低下します (Coursera) 。

 

重症筋無力症 (Myasthenia Gravis, MG) は、自己免疫疾患であり、筋力の低下と疲労を引き起こします。症状は個々の患者によって異なりますが、主に以下のような特徴があります。

運動症状


  1. 筋力低下

    • MGの特徴的な症状であり、特に運動の繰り返しや持続的な活動によって悪化します。全身の筋肉に影響を及ぼす可能性がありますが、特に眼瞼、顔面、咽頭、四肢の筋肉が影響を受けやすいです (Kaiser Permanente) 。

  2. 眼瞼下垂と複視

    • 目の周りの筋肉が弱くなるため、まぶたが垂れ下がり(眼瞼下垂)、視界が二重に見える(複視)ことがあります。

  3. 嚥下困難

    • 咽頭や喉の筋肉が弱くなることで、飲み込むことが難しくなり、誤嚥のリスクが増加します。

  4. 呼吸筋の弱化

    • 重度のMGでは、呼吸に関与する筋肉が弱くなることがあります。これにより、呼吸困難や呼吸不全を引き起こす可能性があります  (Zotero)
  5. 発声の変化

    • 声が鼻にかかったように聞こえたり、話すのが難しくなることがあります。これは、喉の筋肉が影響を受けるためです。

疲労と日内変動

疲労
    • MG患者は、通常、活動を続けることで症状が悪化し、疲労感を感じることが多いです。
日内変動
    • 症状は日内で変動しやすく、特に夕方や夜になると悪化することが一般的です。これは、活動による筋力の消耗が原因です  (FreeCodeCamp) 。

 

原因

重症筋無力症 (Myasthenia Gravis, MG) は、自己免疫疾患として分類され、主に神経筋接合部における神経伝達の障害によって引き起こされます。この疾患では、自己免疫系が誤って体自身の正常な組織を攻撃することで症状が発生します。

主な原因

1.自己抗体の生成

画像引用元:MG united

    • MGの患者では、免疫系がアセチルコリン受容体(AChR)や筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)などの神経筋接合部のタンパク質に対する抗体を生成します。これらの抗体が神経筋接合部に結合することで、神経から筋肉への信号伝達が阻害され、筋力が低下します。

図の解説

この図は、神経筋接合部(ニューロマスキュラージャンクション)における重症筋無力症 (Myasthenia Gravis, MG) の病態生理学を示しています。以下に詳細な解説を行います。

  1. 神経終末 (Nerve terminal):
    • 図の上部にある部分で、神経終末にはシナプス小胞が含まれており、これらはアセチルコリン (Acetylcholine, ACh) を貯蔵しています。
  2. アセチルコリン (ACh):
    • 神経インパルスが神経終末に到達すると、アセチルコリンが小胞から放出され、シナプス間隙 (シナプスクリーブ) に放出されます。
  3. アセチルコリン受容体 (AChR):
    • アセチルコリンは筋肉細胞膜上のアセチルコリン受容体に結合します。これにより、筋肉収縮が引き起こされます。図では緑色のY字型の構造として描かれています。
  4. 正常なIgG抗体 (Normal IgG antibody):
    • 図では、正常なIgG抗体が示されており、通常は自己免疫反応を引き起こさないようにしています。
  5. MGの病態:
    • MGの患者では、自己免疫系が誤ってアセチルコリン受容体に対する抗体(図には描かれていません)を生成し、これらの抗体が受容体に結合してブロックするか、受容体を破壊します。
    • これにより、アセチルコリンが受容体に結合できなくなり、神経から筋肉への信号伝達が阻害されます。結果として、筋肉の収縮が不完全になり、筋力低下が生じます。

2.胸腺の異常:

    • 多くのMG患者では、胸腺(免疫系の一部)が異常に発達しているか、腫瘍(胸腺腫)が存在することがあります。胸腺はT細胞の生成と成熟に重要な役割を果たしており、その異常は免疫系の自己免疫反応を引き起こす原因と考えられています  (Kaiser Permanente)  (PhET) 。

3.遺伝的要因:

    • MGは遺伝的な要因が関与している場合もありますが、家族歴を持つケースはまれです。特定の遺伝子変異が自己免疫反応を引き起こしやすくする可能性があります  (Zotero) 。

 

予後

重症筋無力症 (Myasthenia Gravis, MG) の予後は、診断と治療のタイミング、治療の適応性、個々の患者の状況によって異なります。適切な治療と管理が行われると、多くの患者は比較的良好な生活の質を維持することができます。

予後の要因

1.治療の効果:

多くのMG患者は、コリンエステラーゼ阻害薬、免疫抑制薬、胸腺摘出術などの治療に反応し、症状の改善を経験します。早期診断と治療開始が重要であり、これにより長期的な予後が向上します (Kaiser Permanente) 。

2.重篤な症状の管理:

呼吸筋の弱化や重度の嚥下困難などの重篤な症状が現れた場合、迅速な医療介入が必要です。適切な管理により、これらの症状も制御可能です。

3.自己管理とリハビリ:

患者の自己管理能力や理学療法の取り組みも予後に影響を与えます。定期的な運動とリハビリは筋力の維持に役立ちますが、過度の運動は避けるべきです  (College Board)

長期的な見通し

MGの長期的な見通しは改善されており、治療法の進歩により、重篤な合併症のリスクは低下しています。多くの患者は治療を受けながら通常の生活を続けることができ、特に早期に適切な治療を受けた場合には、予後は良好です。

 

診断

重症筋無力症 (Myasthenia Gravis, MG) の診断は、多岐にわたるテストと評価を組み合わせて行われます。以下に、主要な診断方法とその具体的な内容を説明します。

診断方法

1.臨床評価

症状の確認: 初診では、患者の症状(筋力低下、疲労、眼瞼下垂など)を詳しく聴取します。これには、症状の発現時期、持続時間、日常生活への影響などが含まれます。

身体検査: 特に眼や顔の筋肉、四肢の筋力、反射などを評価します。持続的な動作(例:腕を上げ続ける)を行わせて筋力低下の有無を確認することもあります。

2.血液検査

抗アセチルコリン受容体抗体 (AChR抗体): この抗体は多くのMG患者に見られ、血液検査によって測定されます。

抗MuSK抗体: 一部のMG患者ではAChR抗体が検出されない場合があり、その際にはMuSK抗体の測定が行われます (PhET) 。

3.神経生理学的検査

反復神経刺激試験 (RNS): このテストでは、神経に反復的な電気刺激を与えて筋肉の応答を記録します。MG患者では、刺激を繰り返すごとに筋力が低下する傾向が見られます。

単一線維筋電図 (SFEMG): この検査は、最も高感度な方法とされ、個々の筋繊維の応答を評価します。MGでは、神経から筋への信号伝達に不規則性が見られることが多いです  (Kaiser Permanente) (Zotero) 。

4.エドロホニウム (テンシロン) テスト

エドロホニウムは、短時間作用するコリンエステラーゼ阻害薬であり、静脈内に投与されます。これにより、短期間で筋力が劇的に改善される場合、MGの可能性が高いとされます。ただし、心血管系への影響があるため、慎重に行われます  (Code.org)  (PhET) 。

5.画像診断

胸部CTまたはMRI: 胸腺の異常(胸腺腫や過形成)を確認するために行われます。これにより、胸腺摘出の適応を評価します  (Zotero) 。

 

    治療

    重症筋無力症 (Myasthenia Gravis, MG) の治療は、症状の緩和、疾患の進行抑制、および患者の生活の質向上を目指して多方面から行われます。以下に、主要な治療法とその詳細を紹介します。

    薬物療法


    1. コリンエステラーゼ阻害薬

    ピリドスチグミン (Mestinon):アセチルコリンの分解を遅らせることで、神経伝達の効果を高めます。これにより、筋力が一時的に改善されます。通常、症状の軽減に即効性がありますが、長期的な治療としても用いられます  (Code.org) 。

    2.免疫抑制薬

    プレドニゾロン (ステロイド)免疫系の過剰な反応を抑えるために使用されます。効果は高いものの、長期使用には副作用が伴うため、注意が必要です。

    アザチオプリン (Imuran):免疫反応を抑制する薬で、ステロイドの使用量を減らすために併用されることが多いです。効果が現れるまで数ヶ月かかることがあります  (Kaiser Permanente) 。

    3.モノクローナル抗体

    リツキシマブ (Rituxan):B細胞を標的とした治療法で、特に難治性のMG患者に使用されることがあります。

    4.抗体除去療法

    血漿交換療法:血液中の有害な抗体を物理的に除去する治療法です。重症の増悪期や手術前の準備に使用されることがあります。

    静脈内免疫グロブリン療法 (IVIG):高濃度の免疫グロブリンを投与し、免疫系の異常な反応を抑える方法です。効果は一時的ですが、迅速に症状を改善することができます。

    外科的治療


    1. 胸腺摘出術

    胸腺摘出術 (胸腺切除):胸腺の異常がMGに関与している場合、胸腺を摘出する手術が行われます。特に胸腺腫が存在する患者に対して効果的であり、多くの患者で長期的な症状の改善が見られます。

     

    リハビリテーション

    理学療法アプローチ

    画像引用元:myasthenia gravis news

    1.低強度の持続的運動

    筋力の維持と疲労の最小化:低強度の運動(ウォーキング、水泳、ヨガなど)は、筋力を維持しながら疲労を最小限に抑える効果があります。これにより、日常生活での活動能力が向上し、筋肉の消耗を防ぎます。持続的な軽い運動は、心肺機能の向上にも寄与します  (Kaiser Permanente) (FreeCodeCamp) 。

    2.筋力トレーニング

    筋力維持と改善:軽度から中等度の負荷を用いた筋力トレーニングは、筋力を維持し、特定の筋群の強化に役立ちます。過度の負荷を避けることで、筋肉の疲労を防ぎ、長期的な筋力維持が可能になります

    3.呼吸筋訓練

    呼吸機能の改善:呼吸筋を強化するエクササイズ(インセンティブスパイロメトリーなど)は、呼吸機能を維持し、呼吸困難を軽減します。これにより、日常生活での活動が容易になり、肺機能の向上が期待できます。

    4.ストレッチング

    1. 柔軟性の向上:

    関節の可動域の維持:定期的なストレッチングは、筋肉の柔軟性を保ち、関節の可動域を維持します。これにより、筋肉の硬直を防ぎ、日常動作のスムーズさが向上します。

    5.姿勢矯正

    姿勢の改善筋肉負担の軽減と症状悪化の防止:良好な姿勢を維持することは、筋肉の負担を軽減し、MGの症状悪化を防ぐために重要です。理学療法士による適切な姿勢の指導は、患者の日常生活における身体機能の最適化を支援します。

     

    作業療法の具体的アプローチ

    1.エネルギー保存法

    計画的な休憩:1日の活動を小分けにし、適切な休憩を取り入れることで、エネルギーを保存します。これにより、筋力の低下を防ぎます。

    活動の優先順位付け:重要な活動を優先的に行い、エネルギーを効率的に使うことを目指します。

    2.環境調整

    適応機器の使用:特殊な道具や機器(例:シャワーチェア、延長ハンドル付きの道具など)を使用することで、患者が独立して活動を行えるようにします。

    住環境の改造:家の中のバリアフリー化や手すりの設置など、住環境を患者が安全に移動できるように調整します  (Kaiser Permanente)  (College Board) 。

    3.筋力維持と強化

    軽度の筋力トレーニング:過度な疲労を避けながら、軽度の筋力トレーニングを行います。これは、筋力を維持し、機能的な独立を促進するために重要です。

    4.日常生活動作 (ADL) の訓練

    自己管理スキルの向上:患者が自分で身の回りのことをできるように、日常生活動作(例:食事、着替え、入浴など)の訓練を行います。

    代償技術の指導:特定の動作が困難な場合、他の方法で同じ動作を達成するための技術(例:片手での着替え方法など)を教えます  (FreeCodeCamp)  (DAU) 。

    作業療法の効果

    生活の質の向上

    作業療法は、患者がより自立して生活を送るためのスキルを提供します。これにより、心理的な健康も向上し、全体的な生活の質が改善されます。

    疲労管理

    エネルギー保存法と適切な休憩の取り入れにより、疲労の管理が可能となり、日常生活の活動が持続的に行えるようになります  (College Board) 。

     

    言語療法の具体的アプローチ

    1.嚥下機能の評価と訓練

    嚥下評価

    言語療法士(SLP)は、嚥下の困難さを評価するために、ビデオフルオロスコピー(VFSS)やファイバースコープ嚥下内視鏡(FEES)などの検査を行います。これにより、嚥下の各段階での問題点を特定します  (Kaiser Permanente) 。

    嚥下訓練

    特定の嚥下訓練を通じて、嚥下筋を強化し、誤嚥のリスクを減少させます。たとえば、口腔内エクササイズや嚥下リハビリテーション技術(Mendelsohn maneuverなど)が用いられます。

    2.発声および構音訓練

    発声訓練

    声帯や呼吸筋の機能を向上させるための訓練を行います。これにより、声量や音声の質を改善します。具体的な方法としては、呼吸制御訓練や共鳴発声訓練などがあります。

    構音訓練

    舌や口唇の筋力を強化し、発音の明瞭さを向上させるためのエクササイズを実施します。これには、特定の音素を反復練習する方法や、舌の位置を調整する技術が含まれます  (College Board)  (FreeCodeCamp) 。

    3.コミュニケーション支援

    代替コミュニケーション手段

    発話が困難な場合、代替のコミュニケーション手段(AAC)を導入します。これには、絵カード、文字盤、電子デバイスなどが含まれます。

    環境調整

    聴覚環境や視覚的手がかりを調整することで、コミュニケーションを支援します。これにより、患者がより効果的にコミュニケーションを取れるようにします  (DAU) 。

     

    言語療法の効果

    生活の質の向上

    言語療法は、コミュニケーション能力と嚥下機能を改善することで、患者の日常生活の質を大幅に向上させます。

    誤嚥のリスク低減

    嚥下訓練により、誤嚥のリスクを減少させることで、肺炎などの二次的な合併症を予防します (Kaiser Permanente) 。

       

      重症筋無力症のまとめ

      重症筋無力症 (Myasthenia Gravis, MG) は、神経筋接合部における自己免疫反応により、筋力低下を引き起こす疾患です。治療法には、コリンエステラーゼ阻害薬、免疫抑制薬、胸腺摘出術などが含まれます。薬物療法にはピリドスチグミンやアザチオプリンがあり、重症例にはリツキシマブや血漿交換療法が用いられます。言語療法では嚥下機能や発声を改善し、代替コミュニケーション手段も提供されます。作業療法は、エネルギー保存法や適応機器の使用を通じて日常生活の質を向上させます。予後は、治療のタイミングや効果に依存しますが、適切な管理により多くの患者が通常の生活を送ることが可能です。歴史的には、20世紀半ば以降の免疫学の進歩により、診断と治療が大きく改善されました。

       

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