【2024年版】多発性硬化症の原因・予後・診断・治療・リハビリテーションまで解説 – 脳卒中/神経系 自費リハビリ施設 東京 | STROKE LAB
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【2024年版】多発性硬化症の原因・予後・診断・治療・リハビリテーションまで解説

多発性硬化症 (MS)の概要

多発性硬化症 (Multiple Sclerosis, MS) は、中枢神経系(脳および脊髄)の慢性疾患です。この病気は、免疫系が誤って神経線維を覆うミエリン鞘を攻撃することで引き起こされ、結果として神経伝達が妨げられます。MSの症状は多岐にわたり、運動障害、感覚異常、視力低下、疲労感、認知障害などが含まれます。症状の種類や重篤度は患者ごとに異なり、進行の速度も個人差があります。

定義と病態

  • 自己免疫疾患: MSは自己免疫疾患であり、免疫系が自己の組織を攻撃することによって発症します。具体的には、T細胞とB細胞が中枢神経系のミエリンを標的とします。
  • 脱髄と神経変性: ミエリン鞘の損傷(脱髄)が神経伝達を阻害し、神経細胞自体の損傷(神経変性)も進行します。これがMSの進行とともに症状を悪化させる原因です。
  • 再発・寛解型と進行型: MSには主に二つの型があります。再発・寛解型 (RRMS) では症状が悪化し、次いで部分的または完全に回復する周期が繰り返されます。一方、進行型 (PPMS, SPMS) では症状が持続的に悪化します。

参考リンク

原因

多発性硬化症 (MS) は、中枢神経系に影響を与える自己免疫疾患であり、正確な原因はまだ完全には解明されていませんが、複数の要因が関与していると考えられています。

1. 遺伝的要因

  • 家族歴: MSは遺伝的な要因が影響することがあり、MS患者の家族には発症リスクが高まることが知られています。特定の遺伝子変異がMSの発症に関連していることが研究で示されています。

2. 環境要因

  • ビタミンD欠乏: 日照時間が少ない地域に住む人々では、MSの発症率が高いことが観察されています。これはビタミンDの欠乏が免疫系に影響を与える可能性があるためです。
  • ウイルス感染: エプスタイン・バーウイルス (EBV) などの特定のウイルス感染がMSの発症リスクを増加させる可能性があります。

3. 免疫系の異常

  • 自己免疫反応: MSは免疫系が誤って自己の神経細胞を攻撃することで発症します。特に、ミエリン鞘という神経を保護する構造が攻撃されることで、神経信号の伝達が妨げられます。

4. 生活習慣

  • 喫煙: 喫煙はMSのリスクを高める要因の一つとされており、喫煙者は非喫煙者に比べてMSを発症するリスクが高いとされています。

5. その他の要因

  • 性別と年齢: MSは女性に多く見られ、通常は20歳から50歳の間に発症します。女性ホルモンが免疫系に影響を与えることが示唆されています。

 

予後

多発性硬化症 (MS) の予後は個々の患者によって大きく異なり、いくつかの要因によって影響されます。MSは進行性の神経変性疾患で、病気の進行と症状の重症度は個人差があります。

予後の影響要因


  1. 病型

    • 再発・寛解型MS (RRMS): 最も一般的な形態で、症状が出現する「再発期」と、症状が軽減または消失する「寛解期」が交互に現れます。早期の治療介入により、再発の頻度を減少させ、長期的な予後を改善することができます。
    • 一次進行型MS (PPMS): 症状が一貫して悪化するタイプで、予後は一般的に不良です。治療の選択肢は限られていますが、新しい薬剤が登場しつつあります。

  2. 発症年齢と性別

    • 若年発症(20〜30歳)および女性は、より良い予後を示す傾向がありますが、早期に進行型に移行するリスクも存在します。

  3. 初期症状

    • 視神経炎や感覚異常などの軽度の初期症状を持つ患者は、運動障害を主症状とする患者に比べて予後が良好です。

  4. 治療と管理

    • 早期診断と継続的な治療は、症状の進行を遅らせ、生活の質を向上させるのに役立ちます。特に、病態修飾療法 (DMT) は再発頻度を減少させ、長期的な神経保護効果を持つことが示されています。

生活の質と長期的な見通し

  • 生活の質: 適切なリハビリテーション、心理的サポート、症状管理が重要です。運動療法や作業療法は機能の維持に寄与します。
  • 合併症: 進行に伴い、歩行困難、疲労、筋痙攣、認知障害などの二次的な問題が発生する可能性があります。

     

    診断・検査

    多発性硬化症 (MS) の診断には、複数のアプローチが必要です。以下に、主要な診断および検査方法を詳しく説明します。

    1. 臨床評価

    • 症状の評価: 運動失調、視力障害、感覚異常などの症状を詳細に評価します。
    • 神経学的検査: 反射、筋力、協調運動、感覚などを評価するための神経学的検査が行われます。

    2. MRI (磁気共鳴画像法)

    • 目的: 中枢神経系の損傷や脱髄病変を視覚化します。MSでは、脳や脊髄に多発する病変が見られます。
    • 利点: 非侵襲的であり、MSの診断に非常に高い精度を持ちます。

    3. 脳脊髄液検査 (CSF)

    • 目的: 炎症マーカーやオリゴクローナルバンドの存在を確認するために脳脊髄液を分析します。
    • 利点: MSの診断に有用であり、他の疾患との鑑別に役立ちます。

    4. 視覚誘発電位 (VEP)

    • 目的: 視神経の伝導速度を測定し、視覚路の障害を検出します。
    • 利点: 非侵襲的であり、視神経の損傷を早期に検出できます。

    5. 血液検査

    • 目的: 他の疾患を除外するために使用されます。
    • : ビタミンD欠乏症やライム病などを除外するための検査が含まれます。

    このMRI画像は、多発性硬化症(MS)を示しています。MSは中枢神経系に影響を与える自己免疫疾患で、神経のミエリン鞘が攻撃され、損傷を受けます。

    MSのMRI画像例

    画像の説明

    • 画像A(T2加重画像):
      • 明るく見える病変(高信号域)は、脳の白質内の脱髄病変を示しています。T2加重画像は水分含量の高い病変を強調するため、MSの病変が明瞭に見えます。
    • 画像B(T1加重画像):
      • T1加重画像では、病変は低信号(暗く)見えます。これは慢性期の脱髄病変や、神経軸索の損傷を示します。
    • 画像C(FLAIR画像):
      • FLAIR(Fluid-attenuated inversion recovery)画像は、脳脊髄液の信号を抑え、脳内の病変を強調します。ここでは、白質内の脱髄病変がさらに明瞭に見えます。
    • 画像D(造影T1加重画像):
      • 造影剤を用いたT1加重画像では、血液脳関門の破壊を示す病変が強調されます。造影剤が病変部位に集積すると、炎症が活発な領域が明るく見えます。

    多発性硬化症の診断と評価

    MRIはMSの診断において重要な役割を果たします。特に、MSの病変の位置、数、進行度を評価するために使用されます。以下の特徴がMSに典型的です:

    1. 多発性病変:
      • 脳や脊髄の白質に広がる多発性の病変が見られます。
    2. 時間的および空間的分布:
      • 病変は時間とともに変化し、新しい病変が出現することがある。
    3. 造影効果:
      • 造影剤を使用すると、活動中の病変が強調され、炎症の活発な領域を特定できます。

    このようなMRI画像の特徴により、医師はMSの診断をサポートし、病気の進行状況をモニタリングすることができます。詳細な診断や評価には、神経学的検査や他の診断ツールとの組み合わせが必要です。

     

      治療

      多発性硬化症 (MS) は、治療法が多岐にわたり、病態修飾療法 (Disease-Modifying Therapies, DMTs)、症状緩和治療、リハビリテーション、生活習慣の改善などが含まれます。以下に、主要な治療法を詳しく説明します。

      1. 病態修飾療法 (DMTs)

      • 目的: MSの再発を減少させ、病気の進行を遅らせる。
      • 薬剤: インターフェロンベータ (例: Avonex, Rebif)、グラチラマーアセテート (例: Copaxone)、ナタリズマブ (Tysabri)、フマル酸ジメチル (Tecfidera)、オクレリズマブ (Ocrevus) など。
      • 効果: 再発率を減少させ、MRIで見られる新しい病変の形成を抑制します。

      2. 急性増悪の治療

      • ステロイド療法: メチルプレドニゾロンなどの高用量コルチコステロイドが急性増悪時に使用され、炎症を抑え、症状の回復を促進します。
      • 血漿交換療法 (Plasmapheresis): ステロイド治療が効果を示さない場合に使用されることがあります。

      3. 症状緩和治療

      • 筋痙攣: バクロフェン、チザニジン、ボツリヌス毒素などが使用されます。
      • 疲労: アマンタジンやモダフィニルが処方されることがあります。
      • 疼痛: 抗うつ薬や抗けいれん薬が疼痛管理に使用されます。
      • 排尿障害: 抗コリン薬や筋弛緩薬が症状緩和に役立ちます。

      4. リハビリテーション

      • 理学療法: 筋力維持、バランス改善、運動機能向上を目指す訓練。
      • 作業療法: 日常生活の活動を支援し、生活の質を向上させる技術を提供。
      • 言語療法: 言語障害や嚥下障害に対する治療。

      5. 生活習慣の改善

      • 食事と栄養: 抗酸化物質やビタミンDを含むバランスの取れた食事が推奨されます。
      • 運動: 定期的な運動が症状の管理と生活の質の向上に役立ちます。
      • ストレス管理: ストレスはMSの症状を悪化させる可能性があるため、ストレス管理技術が重要です。

       

      リハビリテーション

      多発性硬化症(MS)に対するの理学療法

      1. 個別化された運動プログラム: MSの患者一人ひとりの症状や移動の課題に対応するために、個別に設計された理学療法プログラムです。これには、筋力トレーニング、バランスエクササイズ、有酸素運動が含まれ、全体的な機能改善と疲労軽減を目指します (Multiple Sclerosis News Today)
      2. ロボット支援歩行訓練: この先進技術は、患者の歩行能力を向上させるために、制御された動作パターンを提供します。ロボット装置は患者の能力に合わせて調整され、支援とフィードバックを提供することで、歩行訓練の効果を高めます。
      3. 水中療法: 水中での運動は筋肉や関節への負担を軽減しつつ、抵抗を提供することで筋力を鍛えます。水中療法は、特にMS患者にとって有益であり、移動能力を改善し、過熱を引き起こすことなく痙性を減少させます (MyMSTeam) 。
      4. 機能的電気刺激(FES): FESは電流を使って神経と筋肉の活動を刺激し、筋力強化と再教育を助けます。これにより、歩行や手の機能、全体的な移動性が向上します (Neurology live) 。
      5. バーチャルリアリティ(VR)療法: VRを利用した理学療法は、エクササイズを行うための魅力的な方法を提供し、患者のモチベーションと継続性を高めます。VRはバランス訓練、協調運動、さらには認知機能のエクササイズにも使用でき、MSリハビリに包括的なアプローチを提供します。

       

      多発性硬化症(MS)に対する作業療法

      1. 個別化された治療計画: 患者一人ひとりのニーズに合わせた個別化された治療計画が重要です。作業療法士は、患者の目標を理解し、それに基づいて治療プランを設計します。これには、日常生活動作(ADL)の管理、補助具の選定と使用、環境の調整などが含まれます (myotspot.com)
      2. エネルギー保存技術: MS患者は疲労を感じやすいため、エネルギー保存技術が重要です。これには、活動の優先順位付け、休憩の取り方、効率的な動作方法の指導が含まれます。これにより、患者は日常生活をより楽に過ごせるようになります(MyMSTeam) 。
      3. 認知機能の訓練: MS患者の多くは認知機能に問題を抱えています。作業療法では、記憶力、注意力、計画能力の向上を目指した訓練を行います。これには、メモリーゲームや計画・組織化の活動が含まれます。
      4. 視覚補償技術: MSは視覚にも影響を与えることがあります。作業療法士は、視覚の問題を早期に発見し、視覚補償技術を導入します。これには、視覚補助具の使用や、視覚的な適応戦略の指導が含まれます。
      5. 疼痛管理: MS患者の多くは慢性的な痛みに悩まされています。作業療法では、物理的エージェントモダリティや手動療法技術を用いた疼痛管理が行われます。これにより、患者の生活の質を向上させることができます。

       

      多発性硬化症(MS)に対する言語療法

      1. 呼吸筋強化トレーニング: 吸気筋および呼気筋の強化トレーニング(IMSTとEMST)は、MS患者の呼吸筋力と呼吸困難を改善するためのエビデンスに基づくエクササイズです。これにより、コミュニケーション能力も向上することが報告されています (ADULT SPEECH THERAPY) 。
      2. LSVT LOUD: LSVT LOUDは、呼吸サポートと声の強度を増加させるための集中プログラムです。研究によれば、MS患者において音声強度の改善が見られますが、維持には継続的な治療が必要です。
      3. 補助代替コミュニケーション(AAC): AACは、話すこと以外のコミュニケーション方法を提供します。これには、ジェスチャー、アルファベットボード、テキスト読み上げアプリなどが含まれ、エネルギーの節約にも役立ちます。
      4. 共鳴療法: 共鳴療法は、MS患者の発声に関する問題を改善するための治療法です。これには、共鳴の機能を高めるエクササイズが含まれ、コミュニケーション能力の向上が期待されます。
      5. 嚥下障害治療: MS患者の多くは嚥下障害を抱えており、嚥下機能の改善のためのエクササイズが有効です。呼吸トレーニング、口腔運動、電気刺激などが嚥下障害の改善に役立つことが示されています。

       

      多発性硬化症(MS)のまとめ

      多発性硬化症(MS)は、中枢神経系の慢性疾患であり、免疫系が誤って神経線維を覆うミエリンを攻撃することで炎症と損傷が生じます。これにより、神経伝達が妨げられ、多様な身体的、認知的症状が現れます。症状は個人差が大きく、視力障害、筋力低下、運動失調、感覚異常、疲労、痛みなどが含まれます。

      診断には、MRI検査による脳および脊髄の病変の確認、脳脊髄液検査による炎症マーカーの検出、神経伝導速度検査が利用されます。これらの検査結果と臨床症状を総合して診断が行われます。

      治療には、症状緩和と進行抑制を目的とした複数のアプローチが用いられます。病態修飾療法(DMT)としては、インターフェロンベータ製剤、グラチラマー酢酸塩、免疫抑制薬などがあり、これらは再発率の低減や病気の進行遅延に効果的です。急性増悪時には、ステロイドパルス療法が用いられます。また、理学療法や作業療法、言語療法は、患者の日常生活の質を向上させるために重要です。

      さらに、心理的サポートや栄養管理も、MSの総合的な治療計画において不可欠な要素です。MSは個々の患者に応じた多面的な治療が求められる疾患であり、定期的な医療チェックと適切な治療調整が重要です。

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