【2024年版】拘縮の原因・予後・治療・リハビリテーションまで解説!! – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年版】拘縮の原因・予後・治療・リハビリテーションまで解説!!

拘縮の概要

画像引用元:BMCsurgery

拘縮(こうしゅく)は、関節の動きが制限される状態を指します。これは、関節周囲の軟部組織(筋肉、腱、靭帯、皮膚、結合組織など)が異常に硬化したり短縮したりすることで生じます。拘縮は、様々な原因により発生し、日常生活の動作に重大な影響を及ぼします。

拘縮の原因

拘縮は、多くの場合、以下のような原因で発生します。

  • 長期間の不動: 病気や怪我による長期の寝たきり状態やギプス固定などで関節が動かない状態が続くと、周囲の組織が硬化し、拘縮が起こりやすくなります。
  • 神経障害: 脳卒中や脊髄損傷などの神経障害は、筋肉の緊張やトーンの変化を引き起こし、これが拘縮につながることがあります。
  • 外傷や手術: 外傷や手術によって関節周囲の組織が損傷すると、治癒過程で瘢痕組織が形成され、関節の動きが制限されることがあります。

拘縮のメカニズム

拘縮のメカニズムは、以下のような複数の要因が組み合わさって生じます。

  • 組織の硬化: 不動や神経障害によって筋肉や結合組織が硬化し、弾力性が失われます。
  • 筋短縮: 持続的な筋緊張や不適切な姿勢により、筋肉が短縮し、関節の可動域が制限されます。
  • 瘢痕形成: 外傷や手術後の瘢痕組織が関節の動きを妨げることがあります。

症状と影響

拘縮は、関節の可動域を制限し、以下のような症状を引き起こします:

  • 可動域の減少: 関節が完全に動かせなくなるため、日常生活の動作に支障をきたします。
  • 痛み: 拘縮により関節や筋肉が痛みを感じることがあります。
  • 機能障害: 拘縮は、歩行、座位からの立ち上がり、衣服の着脱などの日常生活動作に影響を与えます。

 

予後

拘縮の予後(予測される病状の進行や結果)は、原因、治療法、患者の健康状態、および介入のタイミングによって大きく異なります。拘縮は関節や筋肉が硬直して動かなくなる状態であり、早期介入と適切な治療が重要です。

予後の一般的な期間と要因

原因による影響

    • 神経筋疾患(例:脳卒中、脊髄損傷):これらの原因による拘縮は、しばしば長期的であり、完全な回復が難しいことが多いです。予後は数ヶ月から数年かかることが一般的です。
    • 外傷や手術後の拘縮:手術や外傷による一時的な拘縮は、早期のリハビリテーション介入により数週間から数ヶ月で改善することが期待されます。
    • 慢性疾患(例:関節リウマチ、変形性関節症):慢性的な原因による拘縮は進行性であり、予後は非常に個別的で、長期的な管理が必要です。

患者の健康状態

    • 年齢と全体的な健康状態:若い患者や全体的に健康な患者は、拘縮の回復が早い傾向にあります。一方、高齢者や全体的に健康状態が悪い患者は、回復に時間がかかることがあります。

予後の具体的な期間

  • 軽度の拘縮:数週間から数ヶ月で改善することが多いです。
  • 中等度の拘縮:数ヶ月から半年以上かかることが一般的です。
  • 重度の拘縮:数年単位でのリハビリテーションが必要であり、完全な回復が難しいことがあります。

実例と研究

  • 脳卒中後の拘縮:脳卒中後の拘縮は、発症から3~6ヶ月以内の早期リハビリテーションが予後を改善するとされています(Morris et al., 2011)。
  • 関節リウマチによる拘縮:関節リウマチによる拘縮は、早期の薬物療法と物理療法の併用により、1年以内に症状が軽減することがあります(Rau et al., 2007)。

このように、拘縮の予後は多岐にわたり、個々の状況に応じたアプローチが求められます。適切な治療計画を立てるためには、専門医の評価と定期的なフォローアップが不可欠です。

 

不動と拘縮

不動が引き起こす拘縮の解剖生理学的機序を詳しく説明します。

解剖生理学的機序

1. 筋肉と結合組織の硬化

長期間の不動は、筋肉や結合組織の硬化と短縮を引き起こします。このプロセスには以下の要因が関与します。

  • 筋フィブリルの再編成: 筋繊維(フィブリル)は、長期間の不動により、収縮性タンパク質であるアクチンとミオシンの配列が変化します。この変化は、筋繊維の弾力性を失わせ、硬化を引き起こします。
  • コラーゲンの増加: 不動によって筋肉や結合組織内のコラーゲン産生が増加し、これが組織の柔軟性を減少させます。過剰なコラーゲンは、結合組織の硬化と短縮を促進します。

2. 関節包と靭帯の変化

関節包や靭帯も不動の影響を受けます。

  • 関節包の収縮: 不動によって関節包が収縮し、関節の可動域が制限されます。関節包の内部では、線維芽細胞が活性化し、コラーゲンやその他の結合組織成分の産生が増加します。
  • 靭帯の短縮と硬化: 長期間動かさないと、靭帯も同様に短縮し、柔軟性を失います。これにより、関節の動きが制限され、拘縮が進行します。

3. 筋肉の萎縮と脂肪変性

不動は筋肉の萎縮を引き起こし、これが拘縮の発生を助長します。

  • 筋肉の萎縮: 長期間の不動は、筋肉の萎縮(サイズと強度の減少)を引き起こします。萎縮した筋肉は、正常な伸縮機能を失い、拘縮を引き起こしやすくなります。
  • 脂肪変性: 筋肉組織が脂肪組織に置き換わることがあります。これにより、筋肉の機能がさらに低下し、関節の動きが制限されます。

4. 血流と代謝の変化

不動による血流の変化も拘縮の発生に寄与します。

  • 血流の減少: 不動によって血流が減少し、組織への酸素と栄養素の供給が不足します。これにより、組織の修復能力が低下し、硬化が進行します。
  • 代謝活動の低下: 不動は、組織の代謝活動を低下させ、細胞の再生と修復が遅れる原因となります。これにより、結合組織の硬化と短縮が促進されます。

予防と管理

不動による拘縮を予防し、管理するためのアプローチには以下が含まれます。

  • 定期的な運動: 関節と筋肉を定期的に動かすことは、拘縮の予防に非常に重要です。ストレッチングや軽い運動が推奨されます。
  • 物理療法: 理学療法士による評価と治療は、拘縮の予防と治療に効果的です。ROMや関節モビリゼーションが含まれます。
  • 温熱療法: 温熱療法は、筋肉と結合組織の柔軟性を向上させ、ストレッチングの効果を高めます。

 

拘縮と自律神経

自律神経系(交感神経系および副交感神経系)は、筋肉の緊張状態や血流、代謝活動などを調節する役割を持っています。交感神経系の過活動は、筋肉の緊張を増加させ、拘縮を引き起こす要因となります。逆に、副交感神経系が優位になると、筋肉の緊張が緩和され、リラクゼーションが促進されます

1.交感神経系の影響

交感神経系は、自律神経系の一部であり、身体の「闘争または逃走」(fight-or-flight)反応を調節します。この系は、ストレスや緊張、恐怖などの状況で活性化され、心拍数や血圧の上昇、血流の変化、筋肉の緊張の増加を引き起こします。

交感神経系と筋肉の関係

交感神経系が過度に活性化されると、筋肉が緊張しやすくなります。この筋緊張の持続は、長期間続くと拘縮を引き起こす可能性があります。拘縮は、以下のメカニズムで発生します。

持続的な筋収縮:
    • 交感神経の過活動は、筋肉の持続的な収縮を引き起こし、筋肉の硬直や柔軟性の低下をもたらします。これにより、関節の可動域が制限される可能性があります。
血流の変化:
    • 交感神経系の活性化は、血管の収縮を引き起こし、筋肉への血流を制限します。この血流制限は、筋肉や結合組織の酸素供給を減少させ、組織の硬化や短縮を促進することがあります。
痛みと防御反応:
    • 交感神経系は痛みの感覚を増幅することがあり、これにより患者が痛みを避けるために特定の関節を動かさなくなる可能性があります。動かさないことが続くと、関節周囲の組織が硬化し、拘縮が進行します。

具体的な例

例えば、脳卒中後の患者において、交感神経系の異常な活性化が見られることがあります。これにより、スパスティシティ(筋肉の過剰な緊張)が生じ、最終的には拘縮につながることがあります。このような場合、交感神経系の制御を改善することが、拘縮の予防や治療に役立つとされています。

 

2.副交感神経系の影響

  • リラクゼーションの促進: 副交感神経系が優位になると、筋肉の緊張が緩和され、血流が改善されます。これにより、筋肉の柔軟性が維持され、拘縮のリスクが減少します

3.体力と自律神経の影響

  • 体力低下は、交感神経系の活性化を増加させる可能性があります。体力が低下すると、ストレスや疲労が増えやすくなり、交感神経系が過剰に活性化されやすくなります。

4.ストレスと自律神経の影響

  • 交感神経の活性化は、筋肉の緊張を増加させ、拘縮のリスクを高めます。特に、慢性的なストレス状態にある人々では、交感神経系の活性化が持続しやすく、これが拘縮の発生に寄与することがあります。

医学的治療

拘縮に対する医学的治療には、いくつかのアプローチがあります。以下に、最新の研究に基づく治療方法を詳述します。

手術療法

手術は、拘縮が進行した場合や他の治療法が効果を示さない場合に用いられます。Dupuytren拘縮に対する手術では、収縮した組織を除去し、指の可動域を回復させることが一般的です。手術には、直接的な切開手術や、場合によっては皮膚移植を伴う大規模な切開が含まれます。手術後の回復には時間がかかり、理学療法が必要になることがあります。

ニードルファシオトミー

ニードルファシオトミーは、針を用いて収縮した組織を切断する非侵襲的な手法です。この方法は、手術と比べて回復が早く、外来で行えるため、患者にとって負担が少ないです。ただし、一部の部位では神経や腱を損傷するリスクがあるため適用が制限されます。

コラゲナーゼ注射

コラゲナーゼ注射は、酵素を用いて収縮した結合組織を分解する方法です。注射後に手を特定の方法で動かすことで、収縮を解消します。この方法は非侵襲的であり、数年にわたって拘縮を改善する効果があります。

ステロイド注射

初期段階の拘縮に対しては、ステロイド注射が有効です。ステロイドは結節を柔らかくし、痛みを軽減する効果がありますが、完全な拘縮の解消には至りません。

放射線療法

低線量の放射線療法は、初期段階の拘縮の進行を遅らせるために用いられることがあります。これは、結合組織を形成する線維芽細胞の増殖を抑制することで効果を発揮します。

 

    リハビリテーション

    関節可動域訓練

    1. 他動的ROM(PROM)

    療法士や介護者が患者の関節を動かすことで、関節の可動域を維持し、拘縮を防ぐ方法です。これは、特に脳卒中や脊髄損傷の患者に有効です。適切な支持と穏やかな動きで、痛みを伴わない範囲で関節を最大限に動かします。

    Point:筋肉をただストレッチするだけでは効果が不十分なことが多いです。筋肉や筋膜がさまざまな方向へ滑らかに動けるか、また筋肉同士の滑走性がどうかも重要です。これを筋膜の観点からも考える必要があります。他動運動だけでなく、自動運動による筋肉の収縮と弛緩で滑走性を促すことも重要です。また、痙縮やストレス、体力低下、不動といった根本的な問題を解決することが、可動域訓練の効果を引き出す前提となります。

    2. 自動ROM(AROM)

    患者自身が自力で関節を動かす方法です。これにより、筋力の維持と関節の柔軟性を高めることができます。日常生活動作を通じて実施することが多いです。

    3. 筋膜リリース

    筋膜リリースは、筋膜の癒着を解消し、筋肉の柔軟性を改善するための手法です。これには、フォームローリングや手技療法を使用します。筋膜リリースは、拘縮の原因となる筋肉の硬直を緩和し、関節の可動域を改善します。

    体力と交感神経系への対応

    体力の向上は、拘縮の予防と治療において重要です。体力を維持することで、筋肉の柔軟性と強度を保ち、関節の可動域を確保することができます。具体的な方法としては、有酸素運動や筋力トレーニングが推奨されます。

    交感神経系の調整は、筋肉の過緊張を防ぎ、拘縮の進行を抑えるために重要です。深呼吸や瞑想、ヨガなどのリラクゼーション技法が有効です。これらは、交感神経の過活動を抑え、副交感神経を優位にすることで、筋肉の緊張を緩和します。

    物理療法

    温熱療法は、筋肉の柔軟性を改善し、ストレッチの効果を高めます。温熱は血流を増加させ、組織の弾力性を向上させます。

    電気刺激療法(TENSなど)は、痛みの軽減と筋肉のリラクゼーションに役立ちます。これにより、ストレッチやエクササイズがより効果的に行えます。

     

    拘縮のまとめ

    拘縮は、長期間の不動、神経障害(脳卒中や脊髄損傷など)、外傷や手術後の瘢痕形成などによって引き起こされます。これらの要因により、筋肉や結合組織が硬化し、関節の可動域が制限されます。予後は原因と治療の早期介入に依存します。早期のリハビリテーションと適切な治療により、可動域の回復が期待できますが、重度の場合や治療が遅れると、完全な回復は難しいことがあります

    治療法には、手術(組織の除去や皮膚移植を伴う)、ニードルファシオトミー(針を用いた組織の切断)、コラゲナーゼ注射(酵素による組織分解)、ステロイド注射、低線量放射線療法などがあります。治療法の選択は症状の重症度や患者の健康状態によります。リハビリテーションは拘縮の予防と回復において重要です。ストレッチングや筋力トレーニング、理学療法士による関節モビリゼーション、適切な生活習慣の指導(例:工具のグリップ改良やパッド入り手袋の使用)が推奨されます。これにより、関節の柔軟性を維持し、再発を防ぐことができます

    これらの治療とリハビリテーションを組み合わせることで、拘縮の進行を防ぎ、患者の生活の質を向上させることができます。

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