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【2024年版】脳室内穿破の原因・予後・治療・画像MRI・リハビリテーション時のリスク管理まで解説!!

脳室内穿破とは

脳室内穿破(Intraventricular Hemorrhage, IVH)は、脳の脳室系に出血が起こる状態を指します。この状態は、特に新生児や早産児において一般的に発生しますが、成人にも発生することがあります。IVHは、脳室系に血液が漏れ出し、脳脊髄液の流れを阻害し、脳内圧を高めることで、神経学的損傷やその他の重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

IVHの分類

IVHは、出血の範囲と重症度に基づいて、以下のように4つのグレードに分類されます。

  1. グレードI:脳室内ではなく、脳室周囲の出血。
  2. グレードII:脳室内への出血があるが、脳室の拡張はない。
  3. グレードIII:脳室内出血に加え、脳室の拡張が見られる。
  4. グレードIV:脳室内出血と脳実質内への出血が見られる。

成人の脳卒中後のIVHの原因

  1. 脳卒中(特に脳内出血): 脳内出血(ICH)が脳室に広がることで、IVHが発生します。特に、基底核や視床出血が脳室に穿破するリスクが高いです。これらの出血は、血管の脆弱性や高血圧などによって引き起こされます。
  2. 脳動脈瘤の破裂: 脳動脈瘤が破裂すると、出血が脳室内に広がることがあります。動脈瘤は脳の血管壁が弱くなり、膨らんで形成されることが多く、破裂すると大量の出血を引き起こします。
  3. 血液凝固異常: 抗凝固療法中の患者や血液凝固障害を持つ患者では、脳内出血が起こりやすく、それが脳室に広がることがあります。これには、ワルファリンやDOAC(直接経口抗凝固薬)の使用が含まれます。
  4. 外傷: 頭部外傷が原因で脳内出血が発生し、それが脳室に広がることがあります。外傷による出血は、脳組織や血管の損傷から起こります。

小児におけるIVHの原因

  1. 早産: 早産児は脳の血管が未熟で脆弱なため、出血が起こりやすいです。特に脳室周囲の脈絡叢からの出血が一般的です。
  2. 低出生体重: 低出生体重児は、血管の発達が不完全であり、出血のリスクが高いです。低出生体重と早産が重なると、IVHの発生リスクがさらに高まります。
  3. 新生児呼吸窮迫症候群(RDS): 呼吸器の問題により脳への酸素供給が不十分になると、血管が脆弱になり出血を引き起こすリスクが高まります。人工換気が必要な場合も同様です。
  4. 出血性素因: 新生児の血液凝固系は未熟であり、血小板減少症や凝固因子欠乏症などの血液凝固障害が存在すると、出血のリスクが高まります。

これらの要因は、適切な医療管理と予防策を講じることで、IVHの発生を減少させることが可能です。特に早産児に対しては、出生前および出生後のケアが重要となります。

 

予後

成人の脳卒中後のIVHの予後

成人の脳卒中後に発生するIVHは、一般的に予後が悪いとされています。以下に、研究に基づく主要な予後要因を示します。

  1. 高い死亡率: 脳卒中後にIVHを発症した患者は、高い死亡率に直面します。特に、出血の広がりや脳室の拡張、血液の蓄積による圧迫などが予後を悪化させる要因です。
  2. 水頭症のリスク: IVHは水頭症を引き起こすリスクが高く、これは長期的な神経機能の低下や慢性的な脳圧の上昇をもたらす可能性があります。水頭症の発症は予後に大きな影響を与え、治療が必要です。
  3. 神経機能障害: IVHは、神経機能障害の原因となることが多く、これにより日常生活の自立が難しくなることがあります。特に、運動機能、認知機能、言語機能に影響を与えることが多いです。

 

小児におけるIVHの予後

小児、とりわけ新生児のIVHは、その後の発達に重大な影響を及ぼすことがあります。以下に小児におけるIVHの予後について説明します。

  1. 神経発達障害: 早産児や低出生体重児に見られるIVHは、神経発達における遅れや障害のリスクを高めます。これには、運動発達の遅れ、言語発達の遅れ、認知機能の低下などが含まれます。
  2. 長期的な健康問題: IVHは、長期的に見ると脳性麻痺やてんかんなどの神経学的疾患のリスクを高めることがあります。また、注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害の発症リスクも高くなります。
  3. 重症度の影響: IVHの重症度に応じて予後は大きく異なります。軽度のIVH(グレードI-II)では比較的良好な予後が期待できますが、重度のIVH(グレードIII-IV)では長期的な障害のリスクが高まります。

成人の脳卒中後のIVHと小児におけるIVHの予後は、それぞれの年齢層と発症原因に応じて異なります。成人では高い死亡率と神経機能障害のリスクが高く、小児では神経発達障害や長期的な健康問題が主要な懸念となります。早期の診断と適切な治療、継続的なケアが予後改善に重要です。

 

診断・検査

成人の脳卒中後のIVH

1.臨床評価

    • 神経学的評価: 意識レベル、神経機能の評価(例:Glasgow Coma Scale、NIH Stroke Scale)が重要です。
    • 症状の観察: 頭痛、意識障害、嘔吐、急性の神経学的変化などの症状が現れることがあります。

2.画像診断

    • CTスキャン: 急性期にはCTが迅速かつ効果的で、出血の部位と広がりを評価します。特に、脳室内の出血の有無を確認するために使用されます。

画像引用元BMC

    • MRI: MRIは、脳の詳細な画像を提供し、出血の範囲や脳室の拡張、周囲の脳組織への影響を評価するために使用されます。
画像解説

このMRI画像は、脳室内穿破(IVH)の様々なグレードと範囲を示しています。それぞれの画像について解説します。

A. 軽度のIVH
  • 説明: 画像Aは軽度の脳室内出血を示しています。矢印で示された領域に、脳室内に小さな血液の蓄積が見られます。
  • 特徴: 脳室の拡張は見られず、出血量は少ないです。この段階では、神経機能の損傷が最小限である可能性が高いです。
B. 中等度のIVH
  • 説明: 画像Bは中等度の脳室内出血を示しています。矢印で示された領域に、脳室内により多くの血液の蓄積が見られます。
  • 特徴: 脳室のわずかな拡張が見られ、出血量が増加しています。この段階では、神経機能の損傷リスクが高まり、さらなる治療が必要となる場合があります。
C. 重度のIVH
  • 説明: 画像Cは重度の脳室内出血を示しています。矢印で示された領域に、脳室内に大量の血液の蓄積が見られます。
  • 特徴: 脳室の明らかな拡張が見られ、出血量が多いです。この段階では、神経機能の損傷が深刻であり、緊急の医療介入が必要です。
D. 非常に重度のIVH
  • 説明: 画像Dは非常に重度の脳室内出血を示しています。矢印で示された領域に、脳室内だけでなく脳実質内にも血液の蓄積が見られます。
  • 特徴: 脳室の著しい拡張と脳実質への出血が見られ、神経機能の深刻な損傷が予想されます。外科的介入や集中治療が必要となる場合があります。

3.追加検査

    • 脳脊髄液の分析: 水頭症や感染症を評価するために行われることがあります。

小児におけるIVH

1.臨床評価

    • 新生児の観察: 特に早産児や低出生体重児では、呼吸困難、嘔吐、意識低下、けいれんなどの症状に注意が必要です。
    • 神経学的評価: 新生児期には反射や筋緊張、行動の変化を詳細に観察します。

2.画像診断

    • 頭部超音波検査: 新生児においては、頭蓋骨が未発達なため、頭部超音波が第一選択となります。これにより、脳室内の出血や脳の構造異常を評価します。
    • CTスキャン: 超音波では評価が困難な場合や詳細な画像が必要な場合に使用されます。
    • MRI: 長期的な予後評価や詳細な脳損傷の評価のために使用されることがあります。

3.追加検査

    • 血液検査: 血小板数や凝固因子を評価し、出血のリスクを判断します。

これらの診断・検査方法を組み合わせることで、IVHの早期発見と適切な治療が可能となり、予後の改善に繋がります。成人と小児のIVHは、その原因や臨床経過が異なるため、適切な診断アプローチが重要です。

 

    治療

    成人の脳卒中後のIVH

    1.緊急対応

      • 血圧管理: 高血圧が原因であることが多いため、血圧のコントロールが重要です。降圧薬が使用されます。
      • 止血処置: 血液凝固異常がある場合は、凝固因子の補充や抗凝固薬の中止が必要です。

    2.外科的治療

      • 外部脳室ドレナージ(EVD): 脳室内の血液を排出し、脳圧を減少させるためにドレナージが行われます。これにより、脳室の圧迫を軽減し、神経機能の保護を図ります。
      • 血腫除去手術: 出血が大量である場合、外科的に血腫を除去することがあります。これにより、出血の再発を防ぎ、神経学的予後を改善します。

    3.薬物療法

      • 抗血栓療法: 出血リスクを考慮しつつ、血栓予防のために抗血栓薬を調整します。出血が安定した後には、抗血小板薬や抗凝固薬の再開が検討されます。

     

    小児におけるIVH

    1.新生児集中治療

      • 安定化: 呼吸機能のサポート、酸素供給、適切な体温管理などが重要です。これにより、全身の安定を図り、二次的な合併症を予防します。
      • 栄養管理: 早産児は栄養状態が脆弱であるため、適切な栄養管理が必要です。

    2.外科的治療

      • 脳室ドレナージ: 成人同様、脳室内の血液を排出するために外部脳室ドレナージ(EVD)が使用されます。
      • 脳室洗浄: 血液や老廃物を除去するための脳室内洗浄が行われることがあります。これにより、水頭症の発生を防ぎ、神経学的予後を改善します。

    3.予防的治療

      • コルチコステロイド投与: 早産リスクが高い妊婦に対して、胎児の肺成熟を促進し、出血リスクを低減するためにコルチコステロイドが使用されます。
      • 遅延臍帯クランプ: 出生時の血流を安定させ、IVHのリスクを減少させるために、遅延臍帯クランプが推奨されます。

    成人と小児のIVH治療は、その原因と年齢特有のリスク要因に応じて異なるアプローチが求められます。早期の診断と適切な治療が、予後を大幅に改善するために重要です。成人では血圧管理と外科的介入が、小児では新生児集中治療と予防的介入が重要な役割を果たします。

     

    リハビリテーション時のリスク管理

    成人の脳卒中後のIVHにおけるリスク管理

    1. 初期の安静とモニタリング:初期段階では、安静を保ちながら血圧と神経学的状態の厳密なモニタリングが重要です。これにより、急性期の出血や脳圧の変動を管理します。
    2. 頭部のポジショニング: 頭部の位置を適切に保つことは、脳室内圧をコントロールするために重要です。患者の頭部を30度上げた状態で保持し、脳室内の圧力を安定させます。
    3. リハビリテーションの早期開始:血液が安定した後、可能な限り早期にリハビリテーションを開始します。リハビリテーションは、ベッド上の軽度な運動から始め、徐々に強度を増やしていきます。早期のリハビリテーションは、機能回復を促進し、長期的な予後を改善します。
    4. 過度な運動負荷の回避: 初期段階では、過度な運動負荷を避け、徐々に強度を増加させることが必要です。これは、再出血や他の合併症のリスクを低減するためです。
    5. 凝固異常の管理: 血液凝固異常を持つ患者には、適切な薬物療法と連携しながら理学療法を進める必要があります。抗凝固薬を服用している場合は、医師と協力して安全な範囲での運動を計画します。
    6. 心理的サポート: 精神的な健康状態をサポートすることも重要です。理学療法中に心理的なサポートを提供し、不安やストレスを軽減することで、全体的な治療効果を高めます。

     

    小児におけるIVHにおけるリスク管理

    1. 頭部の適切なポジショニング: 小児の場合も、頭部の位置を適切に保つことが重要です。頭部を30度上げた状態で保持することで、脳室内圧をコントロールし、二次的な損傷を防ぎます。
    2. 慎重な体位変換: 体位変換時には慎重に行い、急激な動作を避けることが求められます。これにより、脳内の圧力変動を最小限に抑え、出血のリスクを低減します。
    3. 早期介入と継続的モニタリング: 早期の理学療法介入が推奨されますが、常に継続的なモニタリングを行い、症状の悪化や新たな症状の発生を早期に発見することが重要です。
    4. 発達段階に応じた運動プログラム: 小児の発達段階に応じた運動プログラムを作成し、無理のない範囲での運動を行います。これにより、正常な発達を支援し、運動機能の向上を図ります。
    5. 家族への教育とサポート: 家族に対して、適切なケア方法やリスク管理について教育し、家庭でのケアを支援します。家族のサポートは、長期的な予後改善において重要な役割を果たします。

    これらのリスク管理戦略を適用することで、成人および小児のIVH患者に対して安全で効果的な理学療法を提供し、長期的な健康と生活の質の向上を目指すことができます。

       

      まとめ

      脳室内穿破(Intraventricular Hemorrhage, IVH)は、脳の脳室内に出血が発生する状態であり、成人および小児の双方で重大な神経学的合併症を引き起こす可能性があります。成人の脳卒中後に発生するIVHは、高血圧、脳動脈瘤の破裂、血液凝固異常、外傷などが主要な原因です。これらの要因による出血は、脳室内の圧力を上昇させ、神経機能障害や死亡リスクを高めます。

      小児では、特に早産児や低出生体重児に多く見られ、未熟な脳血管が破裂しやすいことが原因です。また、新生児呼吸窮迫症候群や血液凝固障害もリスクを増加させます。診断には、CTスキャンやMRI、頭部超音波検査が使用され、出血の範囲と影響を評価します。

      治療としては、成人には血圧管理や外科的ドレナージが必要であり、小児には安静と慎重な体位管理が求められます。また、リハビリテーションや適切な栄養管理も重要です。理学療法におけるリスク管理には、血圧の変動を避けることや適切な頭部のポジショニング、過度な運動負荷の回避が含まれます。早期の介入と継続的なケアにより、長期的な予後の改善が期待されます。

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