【質問】脳卒中後に道が分からなり混乱します。見当識障害/地誌失認のリハビリ・トレーニングは? – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【質問】脳卒中後に道が分からなり混乱します。見当識障害/地誌失認のリハビリ・トレーニングは?

はい皆さんこんにちは。STROKE LAB代表の金子です。
 
今回も【脳科学に基づく】ストラボ式ニューロトレーニングを一緒にやりましょう!

質問が届いています。

質問者: 母親が多発性脳梗塞の診断を受けました。リハビリ病院入院中ですが、本人が部屋を間違えたり、自分のいる場所が分からなくなったりしています。何か改善できるリハビリはありますか?

上記質問に対して、STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。

側頭葉/ 側頭葉内側部:空間ナビゲーション
特に海馬と嗅内皮質は空間記憶とナビゲーションの符号化に重要な役割を果たします.脳の頭頂葉も関連します。これには環境の認知マップの作成と場所の記憶が含まれます.

今回の内容はYouTube動画で視聴できます

 

空間ナビゲーション訓練

空間ナビゲーションと脳の関係

空間ナビゲーションは、私たちが環境を理解し、移動するための重要なスキルです。特に、海馬と嗅内皮質は空間記憶とナビゲーションの符号化において重要な役割を果たします。これには、環境の認知マップの作成と場所の記憶が含まれます。脳卒中を経験した方が自宅で自主的に空間ナビゲーションを訓練する方法について、ストーリー形式で解説します。

 

ステップ1: ガイドツアーの準備

ある日、療法士の田中さんが患者の鈴木さんと一緒に病棟内での空間ナビゲーション訓練を始めることにしました。

  1. 目印の設定: 田中療法士は、病棟内の重要な場所(病室、食堂、リハビリ室、トイレなど)に目印となるものを設置します。例えば、病室のドアに赤いリボンを付けたり、食堂の入り口に大きなポスターを貼ったりします。
  2. 説明: 田中療法士は鈴木さんに目印の役割と位置を説明し、「赤いリボンが病室、ポスターが食堂」と覚えるように話します。

ステップ2: 初めてのガイドツアー

鈴木さんが初めてガイドツアーに参加する日がやってきました。

  1. 歩き始め: 田中療法士は鈴木さんの手を取り、ゆっくりと病室を出発します。「まずはリハビリ室まで行きましょう」と声をかけながら歩きます。
  2. 目印の確認: 道中、目印に差し掛かるたびに立ち止まり、「ここはリハビリ室の入口ですよ。見て、この青い花瓶が目印です」と説明します。
  3. 反復: リハビリ室まで何度か往復し、鈴木さんが目印を確実に覚えられるようにします。

ステップ3: 速度と複雑さを上げる

鈴木さんが基本的なルートを覚えた後、次のステップに進みます。

  1. 新しいルート: 田中療法士は、病室から食堂、食堂からトイレと、新しいルートを追加します。「次はトイレまで行きましょう。入り口には緑のポスターがあるので、それを目印にしてください」と話します。
  2. 速度調整: 徐々に歩く速度を上げて、鈴木さんがスムーズに目標地点に到達できるようにします。
  3. 道筋の変化: さらに、目印の一部を変更し、新しい目印を説明します。例えば、病室のリボンを青いものに替えるなどして、環境の変化に適応させます。

ステップ4: フィードバックとサポート

訓練の効果を確認するために、フィードバックとサポートを行います。

  1. 質問と確認: 訓練後に「病室の目印は何でしたか?」と質問し、鈴木さんが覚えているか確認します。
  2. 家族の参加: 鈴木さんの家族も訓練に参加し、家族がサポートする方法を学びます。これにより、自宅に戻った後も継続的に訓練が行えます。
  3. 継続的なサポート: 田中療法士は定期的に鈴木さんの進捗を確認し、新しい訓練方法を提案します。

結論:病棟内での訓練の重要性

病棟内での空間ナビゲーション訓練は、患者が自宅に戻った後も自信を持って生活できるようにするための重要なステップです。療法士との連携を通じて、目印を使った認知マップの作成やルートの反復訓練を行うことで、空間記憶とナビゲーション能力を向上させます。家族や療法士とのサポートを大切にしながら、継続的に訓練を続けましょう。

自宅で実施する場合は?

ステップ1: 家の中でのガイドツアーを計画する

まず、患者さんが自宅のレイアウトや重要な目印を認識できるように、家の中でガイドツアーを計画します。

  1. 計画作成: 家の中で頻繁に使う部屋(リビング、キッチン、寝室、バスルームなど)をリストアップします。
  2. 目印設定: 各部屋や通路に目印となる物を設置します。例えば、リビングの入口に大きな絵を飾る、キッチンのカウンターに色鮮やかな花を置くなど。
  3. 口頭説明: 患者さんに目印を口頭で説明し、その役割や位置を説明します。

ステップ2: ガイドツアーを実施する

次に、実際に患者さんと一緒に家の中を歩き、認知マップを作成します。

  1. ゆっくり歩く: 患者さんと一緒にゆっくりと家の中を歩きます。重要な目印に差し掛かるたびに、その目印を再度説明します。
  2. 反復: 同じルートを何度も繰り返して歩きます。これにより、患者さんが環境を記憶しやすくなります。
  3. 質問と確認: 定期的に「この目印は何?」と質問し、患者さんが覚えているか確認します。

ステップ3: 訓練の拡張

訓練が進むにつれて、次のステップに進みます。

  1. 新しいルート: 新しいルートを追加し、さらに複雑なナビゲーション訓練を行います。例えば、リビングからキッチン、キッチンから寝室など。
  2. 目印の変更: 目印の一部を変更し、新しい目印を説明します。これにより、環境の変化にも適応できるようになります。
  3. 反復と記憶強化: 新しいルートや目印を含めて、再度反復して歩きます。

ステップ4: コミュニケーションとサポート

家族や療法士との連携が重要です。

  1. 家族のサポート: 家族が患者さんの訓練をサポートし、一緒に歩くことで安心感を与えます。
  2. 療法士との連携: 定期的に療法士に進捗を報告し、アドバイスを受けます。療法士は新しい訓練方法や目標を提案してくれます。
  3. フィードバック: 訓練中に感じたことや気づいた点を共有し、改善点を見つけます。

継続が鍵

空間ナビゲーションの訓練は、毎日の少しずつの努力が重要です。家の中でのガイドツアーを繰り返し行い、目印を使って認知マップを作成することで、空間記憶とナビゲーション能力を向上させます。家族や療法士との連携を大切にしながら、楽しく続けていきましょう。

脳科学的に解説してください

解説: 初めてのガイドツアーは、患者が自宅のレイアウトや重要な目印を認識できるようにするプロセスです。この段階では、海馬と嗅内皮質が活性化され、環境の認知マップが形成され始めます。家族がサポートすることで、患者は安心感を持ち、学習の効果が高まります。

メカニズム:

  • 目印の設定により、視覚的な手がかりが提供され、海馬がこれを基にして記憶を形成します。
  • 嗅内皮質が目印の情報を統合し、海馬に伝達することで、記憶が強化されます。

ステップ2: 新しいルートの追加

解説: 患者が基本的なルートを覚えた後、新しいルートを追加することで、訓練の複雑さを増します。これにより、海馬と嗅内皮質がさらに活性化され、環境の変化に対する適応力が向上します。

メカニズム:

  • 新しいルートの追加は、海馬が新たな認知マップを作成し、既存のマップと統合するプロセスを促進します。
  • 嗅内皮質は、変化した目印の情報を再符号化し、海馬に送信することで、適応力を高めます。

ステップ3: フィードバックとサポート

解説: 訓練の効果を確認し、継続的なサポートを行うことで、患者の進捗を評価し、新しい訓練方法を導入します。家族の参加は、社会的支援と心理的安心感を提供し、学習効果を高めます。

メカニズム:

  • フィードバックにより、海馬の活動が再確認され、記憶の定着が強化されます。
  • 家族のサポートは、社会的な相互作用が脳の可塑性を促進し、リハビリの効果を高めます。

ステップ4: 継続的な訓練

解説: 毎日の少しずつの努力が、空間記憶とナビゲーション能力の向上に寄与します。定期的なガイドツアーと目印を使った認知マップの強化により、脳の健康を維持し、生活の質を向上させます。

メカニズム:

  • 継続的な訓練は、海馬と嗅内皮質の神経回路を強化し、空間記憶の長期的な保持を促進します。
  • 定期的な練習により、頭頂葉の視覚情報処理能力が向上し、空間的判断が迅速かつ正確に行われるようになります。

まとめ

空間ナビゲーションは、複数の脳領域が協力して行う複雑なプロセスです。脳卒中患者が自宅で実施する空間ナビゲーショントレーニングは、日常生活の自信を取り戻すために非常に効果的です。海馬、嗅内皮質、頭頂葉の機能を理解しながら、継続的に訓練を行うことで、脳の健康を維持し、生活の質を向上させることができます。家族や療法士との連携を大切にしながら、楽しく続けていきましょう。

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