【2024年版】視床下核の役割と場所は?パーキンソン病における脳深部刺激 DBS治療まで解説!
はじめに
本日は視床下核について解説したいと思います。この動画は「リハビリテーションのための臨床脳科学シリーズ」となります。
内容は、STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。
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視床下核とは?
部位
視床下核(Subthalamic Nucleus, STN)は、間脳の視床下部に位置する小さなレンズ状の核であり、視床の腹側、内包の内側、黒質の背側に位置します。
血液供給
STNへの血液供給は主に後大脳動脈(Posterior Cerebral Artery, PCA)の小枝によって行われます。具体的には、PCAの穿通枝である傍正中動脈および視床膝状体動脈から供給されます。
経路
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入力:STNは主に皮質、特に運動皮質と前頭前皮質からの興奮性グルタミン酸作動性入力を受け取ります。これにより、STNは大脳基底核の「ハイパーダイレクト経路」における重要な中継核として機能します。
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大脳基底核との相互作用:STNは淡蒼球(内節・外節)、尾状核、被殻、黒質などの大脳基底核の他の構成要素と複雑に連絡しています。これらの接続は、運動制御を調節する直接路および間接路の一部を形成します。
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出力:STNの主な出力先は淡蒼球内節(GPi)および黒質網様部(SNr)です。これらの遠心性線維は興奮性であり、神経伝達物質としてグルタミン酸を使用します。
病態像
STNに関連する主要な疾患の一つにパーキンソン病があります。STNの過活動は運動皮質の抑制を強化し、パーキンソン病で見られる運動症状の一因と考えられています。このため、STNへの脳深部刺激(Deep Brain Stimulation, DBS)は、この過活動を抑制するために進行したパーキンソン病の治療として広く用いられています。
基底核と小脳の役割の比較
基底核と小脳の違いを理解することで、パーキンソン病における姿勢戦略の理解が深まります。
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姿勢制御
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基底核:環境の変化や意図した動きに応じて、自動的に姿勢を調整する役割を果たします。例えば、歩行中に路面が突然凹んでいる場合、足元を安定させるための筋緊張の調整に基底核が関与します。
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小脳:リアルタイムに姿勢筋の活動を調整し、バランスと安定性を確保します。滑りやすい路面で足が滑った瞬間、小脳が即時のフィードバックを基に姿勢を調整します。
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運動学習
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基底核:強化学習のメカニズムを通じて、動作のシーケンスや習慣の学習を促進します。報酬の予測とフィードバックに基づいて動きを調整します。例えば、ピアノの新しい曲を習得する際、繰り返しの練習により視覚に頼らずに演奏できるようになるプロセスに基底核が深く関与しています。
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小脳:感覚的なフィードバックに基づいて動作を適応・洗練し、エラーベースの学習に従事します。例えば、野球でボールをキャッチする練習において、失敗を繰り返す中で動作の修正を行い、正確にキャッチできるようになる過程に小脳が関与しています。
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MRI画像上の識別ポイント
1. 赤核(Red Nucleus)
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位置関係: STNは赤核の下方および前外側に位置します。
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軸位断(Axial View):
- 赤核は中脳の中央部に位置し、高信号の丸い構造として見えます。
- STNは赤核の前外側にある小さな低信号のレンズ状構造です。
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読解ポイント:
- 赤核を基準にする: 赤核を明確に識別し、その前外側にSTNを探します。
- 赤核との距離と角度: 赤核からの相対的位置を確認し、左右対称性を評価します。
2. 第三脳室(Third Ventricle)
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位置関係: STNは内側で第三脳室に隣接しています。
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冠状断(Coronal View):
- 第三脳室は中央の縦長の空間として描出されます。
- STNは第三脳室の外側に位置し、左右対称の小さな構造として見えます。
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矢状断(Sagittal View):
- 第三脳室の前後方向の位置関係を確認できます。
- STNは第三脳室のやや後方に位置します。
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読解ポイント:
- 第三脳室を中心に左右対称性を評価: STNの両側性を確認し、異常がないかチェックします。
- 第三脳室との境界: STNの内側境界として第三脳室を利用します。
3. 内包(Internal Capsule)
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位置関係: STNは内包の内側に位置します。
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軸位断:
- 内包は明るい信号のV字型または湾曲した構造として描出されます。
- STNは内包の内側、つまりV字の開口部の内側に位置します。
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読解ポイント:
- 内包の後脚との位置関係: STNは内包後脚の内側に位置するため、その境界を明確にします。
- 内包の信号強度を利用: 内包は高信号であるため、STNとのコントラストが生まれます。
4. 大脳脚(Cerebral Peduncle)
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位置関係: STNは大脳脚の上部、後方に位置します。
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冠状断および軸位断:
- 大脳脚は中脳の前外側部に位置し、線維束として高信号で描出されます。
- STNは大脳脚の上方に位置する小さな低信号構造です。
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読解ポイント:
- 大脳脚をランドマークとして使用: 大脳脚の位置を確認し、その上方にSTNを探します。
- 大脳脚との境界明確化: STNと大脳脚の境界を明確にすることで、STNの下方境界を特定します。
論文トピック:強化学習、教師あり学習、教師なし学習の神経学的解説
神経内科の臨床現場では、「学習」という用語が多義的に使用され、混同されることがあります。本稿では、強化学習、教師あり学習、教師なし学習の3つの学習メカニズムを神経学的観点から解説し、それぞれが脳の特定の部位とどのように関連しているかを整理します。
強化学習(大脳基底核)
特徴:
- 報酬ベースのフィードバック:行動の結果としての報酬や罰に基づいて学習します。
- 行動や選択の学習:報酬や罰を元に、どの行動が最適かを学習します。
- 習慣形成と意思決定:繰り返しの経験を通じて習慣を形成し、意思決定プロセスに関与します。
- 結果に基づく適応:肯定的または否定的な強化に応じて行動を適応させます。
例:
脳卒中からの回復期にある運動障害の患者に対し、正しい動作を行った際に肯定的なフィードバックや報酬を提供するリハビリテーションプログラムを構築します。フィードバックは口頭での賞賛や小さな報酬など、シンプルなもので構いません。
メカニズム:
強化学習における大脳基底核の役割は、ドーパミンを介した神経伝達に深く関与しています。これは、ドーパミン作動性経路が影響を受けるパーキンソン病などの疾患において特に重要であり、患者の運動学習や習慣形成に直接影響を及ぼします。
教師あり学習(小脳)
特徴:
- 誤差修正と直接フィードバック:予測と実際の結果の差異を最小化するためのフィードバックを活用します。
- 既知の入力と出力のマッピング:入力データを既知の出力やラベルに対応させます。
- 運動制御と精度の向上:正確な運動パターンの学習と誤差修正に関与します。
- 適応的な調整:フィードバックに基づいて運動出力を適応・調整します。
例:
小脳失調症の患者に対する理学療法では、正確な動作を必要とする運動を指導します。物理的なサポートや視覚的なフィードバックを提供することで、患者はエラーを最小限に抑え、タスクの遂行能力を向上させます。
メカニズム:
小脳は教師あり学習において重要な役割を果たし、直接的なフィードバックを基に運動の微調整を行います。これは、調整機能やバランスの改善に不可欠であり、運動制御の精度を高めることに寄与します。
教師なし学習(大脳皮質)
特徴:
- データの内在的構造の探索:ラベル付けされていないデータから隠れたパターンや規則性を発見します。
- 感覚処理とパターン認識:感覚入力を解析し、特徴を抽出します。
- 自己組織化:入力データ内の構造を理解し、適応的に学習します。
- 新たな情報の統合:経験に基づいて脳内ネットワークを再構築します。
例:
脳損傷患者にカラフルな形状のパズルを提供し、明確な指示を与えずに組み立ててもらいます。患者は試行錯誤を通じて、各ピースの形状や色に基づいてどこに適合するかを自発的に学習します。
メカニズム:
大脳皮質は教師なし学習を通じて、外部からの直接的なフィードバックがなくてもパターン認識や問題解決を行います。このプロセスは、脳がパターンを特定し、タスクの本質的な構造に基づいて問題を解決する能力を強化します。
リハビリテーション現場での学習メカニズムの統合
実際のリハビリテーションでは、これらの学習メカニズムが連携して機能することが多く見られます。
例:脳卒中患者のリハビリテーション
- 教師あり学習(小脳):物体に手を伸ばす運動を指導し、視覚的・触覚的フィードバックを提供します。
- 強化学習(大脳基底核):成功した動作に対する肯定的なフィードバックにより、適切な運動パターンを強化します。
- 教師なし学習(大脳皮質):感覚フィードバックに適応し、新たな戦略やパターンを自発的に発見します。
これにより、患者は複雑な運動タスクを効果的に学習し、回復を促進します。
まとめ
神経内科医として、強化学習、教師あり学習、教師なし学習の各メカニズムと、それらに関連する大脳基底核、小脳、大脳皮質の機能を理解することは、患者のリハビリテーション戦略を最適化する上で重要です。これらの学習プロセスを統合的に活用することで、個々の患者に合わせた効果的な治療プランを提供できます。
運動計画について
大脳基底核は、運動制御や学習、習慣形成において重要な役割を果たしています。特に前頭前野との強いコネクションを持ち、運動の計画段階にも深く関与しています。本稿では、運動計画の観察ポイントや臨床へのヒント、パーキンソン病における大脳基底核の役割について詳しく解説します。
観察ポイント
1. 環境の変化への適応
観察項目:
- 家具の配置変更や物の落下など、環境に変化が生じた際に、患者が動作を適切に調整できるかを観察します。
- 新たな情報に応じて、計画した動作を柔軟に変更できない場合、運動計画の問題が示唆されます。
2. 運動の連続性
観察項目:
- 一連の動作が必要なタスク(例:着替え)において、動作を正しい順序で行えているかを確認します。
- 例:下着を着てから上着を着る、靴下を履いてから靴を履く。
3. 動作の効率性
観察項目:
- 高い場所にある物を取る際に、無駄な動きをせずに直接手を伸ばして取れるかを観察します。
- 動作パターンが複雑で効率性に欠ける場合、運動計画の問題が示唆されます。
4. 問題解決能力
観察項目:
- 進路が椅子で塞がれている場合に、椅子の周りを通るなどの代替手段を考えられるかを確認します。
- 動けなくなってしまう場合、物理的な問題解決能力に課題があると考えられます。
臨床へのヒント
1. 適応反応訓練
- 目的: 環境の急激な変化に適応する能力を高める。
- 方法: 手を伸ばそうとしている物を動かす、歩行路を変更する、課題のルールを途中で変更するなどの訓練を行います。
2. 運動順序の練習
- 目的: 一連の動作を正しい順序で行う能力を向上させる。
- 方法: 着替えやサンドイッチ作り、カードゲームなど、順序立てた動作が必要なタスクを練習します。
3. 問題解決型のアクティビティ
- 目的: 身体的な問題解決能力を養う。
- 方法: 障害物コースの作成、散らかった部屋での移動、持ち物を落とさずに物を取る方法を考えるなどの活動を行います。
パーキンソン病における大脳基底核の役割
論文紹介
この論文は、パーキンソン病における明示的(意識的・意図的)学習と暗黙的(無意識的・偶発的)学習の重要性を強調しています。また、目標指向型制御システムと習慣的制御システムの協力と競合について探究し、大脳基底核の関与に焦点を当てています。
大脳基底核の二重システムモデル
1. 目標指向制御システム(Goal-Directed System)
機能:
- 行動の結果によって駆動される行動を制御。
- 行動の選択は、期待される利益や結果の有用性に基づいて決定。
- 関与部位: 前頭前野(PFC)と背内側線条体(DMS)。
2. 習慣制御システム(Habitual Control System)
機能:
- 自動化された行動や習慣的行動を制御。
- 結果を意識的に考えずに行動を実行。
- 関与部位: 背外側線条体(DLS)と感覚運動野(SMC)。
- 繰り返しの練習により、動作の自動化が進行。
目標指向から習慣への移行
- 運動スキルの獲得は、フィッツとポズナーによるモデルに基づき、以下の段階を経て進行します。
- 認知段階
- 連合段階
- 自律段階:この段階で習慣システムが優位となり、必要な認知リソースが減少します。
パーキンソン病と制御システムへの影響
- ドーパミン神経支配の喪失により、大脳基底核の感覚運動領域が特に影響を受けます(図の赤い十字で示される)。
- 結果:
- 習慣制御システムの機能低下:自動化された動作の困難さ。
- 目標指向制御への依存増加:しかし、障害された感覚運動領域からの異常な抑制が目標指向行動の実行を妨げる可能性があります。
- 総合的な影響:運動制御の効率低下と動作のぎこちなさ。
臨床応用とリハビリテーションへの示唆
- リハビリテーション戦略の調整:
- 目標指向制御システムを活性化する訓練の強化。
- 習慣制御システムの再活性化を目指す訓練の導入。
- 具体的なアプローチ:
- 認知的負荷を適切に調整したタスクの設定。
- 運動スキルの段階的な練習と自動化の促進。
まとめ
大脳基底核の目標指向制御システムと習慣制御システムの理解は、パーキンソン病の患者に対する効果的なリハビリテーション戦略の策定に不可欠です。患者の運動計画能力を評価し、適切な訓練を提供することで、運動機能の改善と生活の質の向上が期待できます。
将棋への応用:目標指向システムと習慣的制御システム
目標指向システムの役割
機能
将棋の学習初期段階では、初心者は目標指向システムを用いてゲームに取り組みます。ルールの理解、駒の動き方、基本的な戦略の習得に重点を置き、各手を意識的な決定に基づいて選択します。これは、ゲームの目的とその達成方法を理解するためのプロセスです。
神経基盤
この段階では、**前頭前皮質(PFC)と背内側線条体(DMS)**が主に関与します。これらの脳領域は、意思決定、計画、将棋盤上での行動の結果を予測する機能を担っています。
応用例
初めて将棋をプレイする際、プレイヤーは各手を慎重に検討し、その結果や対戦相手の反応を予測しようとします。これは、目標指向システムが活発に働いている状態です。
習慣的制御システムへの移行
認知段階
将棋学習の初期段階である認知段階では、ゲームの基本ルールや構造を理解し、各動きを意識的に考える高度な認知プロセスが行われます。
連合段階
練習を重ねると、特定の盤面構成と適切な戦略や動きとの関連付けが形成され始めます。一般的なゲーム状況に対する反応が徐々に自動化されていきます。
習慣化・自律化段階
さらに練習を積むと、将棋の多くの側面が習慣化されます。**背外側線条体(DLS)と感覚運動野(SMC)**がより密接に連携し、盤上のさまざまな状況への反応が、意識的な分析ではなく、経験に基づく自動的な反応となります。
上級者における習慣的制御システム
機能
上級者の段階では、将棋の応答が自動化され、パターンを瞬時に認識し、動きを予測し、戦略を即座に採用することが可能になります。深く考え込むことなく、適切な手を選択できるようになります。
神経基盤
この段階では、DLSとSMCを含む習慣的制御システムが主導的な役割を果たします。プレイヤーは、一手一手を意識的に戦略立てるのではなく、過去の経験に基づく直感と反射的な意思決定に頼ります。
応用例
熟練した将棋棋士は、よく「フロー状態」にあると表現します。これは、各手を能動的に考えるのではなく、深い理解と広範な練習に基づいて本能的に反応している状態です。
まとめ
将棋の学習過程は、目標指向システムから習慣的制御システムへの移行として捉えることができます。初期段階では前頭前皮質と背内側線条体が主に機能し、学習が進むにつれて背外側線条体と感覚運動野が関与するようになります。このプロセスは、神経内科の視点から運動学習や習慣形成の理解を深める上で重要です。
新人が陥りやすいミス
問題解決活動における注意点
新人の医療スタッフは、患者が問題解決の課題に直面した際、過度に早く解決策を提示してしまうことがあります。しかし、患者自身が考え、問題を解決する機会を提供することが重要です。安易に解決策を与えると、患者の問題解決能力を育成する貴重な機会を奪ってしまう可能性があります。
意思決定と視床下核の関与
**視床下核(Subthalamic Nucleus, STN)**は、意思決定プロセス、特に対立する選択肢がある状況で重要な役割を果たします。衝動的な反応を抑制し、慎重に検討する機能を持っています。
- 例え:「目の前の人参を追いかける馬」ではなく、「冷静に考える」ためのブレーキ役として機能します。
観察のポイント
1. 計画した行動を中止できるか
- 観察内容:患者が座ろうとしているときに、突然椅子が動かされた場合、行動を止めることができるかを確認します。
- 意義:行動の中止が困難な場合、STNの抑制機能に問題がある可能性があります。
2. 効率的な意思決定ができるか
- 観察内容:食事、レクリエーション、衣服の選択などで、複数の選択肢から効率的に選択できるかを評価します。
- 意義:意思決定が困難、または時間がかかりすぎる場合、STNの機能障害が示唆されます。
3. 矛盾する指示への反応
- 観察内容:同時に行えない2つの行動を指示されたとき、混乱せずに対処できるかを確認します。
- 意義:柔軟な思考と行動の適応性を評価します。
4. 行動のコントロール能力
- 観察内容:衝動性が高く、順番を待つことが困難でないかを観察します。
- 意義:社会的交流や順番待ちが必要な活動での行動制御を評価します。
臨床へのヒント
1. 反応抑制のトレーニング
- 目的:反応の制御能力を向上させる。
- 方法:合図に基づいて行動を開始・停止するエクササイズを行います。
- 例:「行け」と言われたら立ち、「止まれ」と言われたら座る。
2. 選択肢を増やす訓練
- 目的:意思決定能力と思考プロセスの活性化。
- 方法:患者に選択の自由度を与え、意思決定を促します。
- 例:活動内容やタスクの順番を選んでもらう、チェスや将棋などのゲームを行う。
3. 矛盾する指示への対応練習
- 目的:柔軟な思考と反応能力の向上。
- 方法:矛盾する情報に対処するエクササイズを行います。
- 例:「左」と言われたら右腕を上げ、「右」と言われたら左腕を上げる。
4. 衝動制御のトレーニング
- 目的:衝動性の抑制と自己コントロール能力の強化。
- 方法:順番待ちや指示を待つエクササイズを実施します。
- 例:ボードゲームで順番を守る、特定の合図を待ってから行動する。
- 例:ボードゲームで順番を守る、特定の合図を待ってから行動する。
参考論文
Adam et al., 2006
概要:
この論文では、行動抑制における脳の皮質および皮質下構造の役割、特に**視床下核(STN)**の重要性が調査されています。
- 主な発見:
- STNは反応抑制ネットワークの中で重要な役割を果たし、特に右半球での活動が顕著である。
- 反応抑制課題において、右STNと右下前頭皮質(IFC)の活性化に相関関係がある。
意義:
この研究は、STNが意思決定と行動制御にどのように貢献しているかを理解する上で重要です。脳の外側部分(皮質)と深部の部分(皮質下)が協調して、行動や反応の抑制に関与していることを示しています。
①解剖学と機能: 視床下核 (STN) の位置とそれに血液を供給する主要な動脈は何ですか?
②入力および出力経路: STN の主な入力および出力経路について説明します。 どのような種類の神経伝達物質が関与しているのでしょうか?
③大脳基底核の相互作用: STN は大脳基底核の他の構成要素とどのように相互作用し、これは運動制御においてどのような役割を果たしますか?
④パーキンソン病における役割: STN の過剰活動がパーキンソン病で見られる運動症状にどのように寄与するかを説明します。 この過活動を対象とした治療法は何でしょうか?
⑤姿勢制御における大脳基底核と小脳: 姿勢制御と環境変化への反応における大脳基底核と小脳の役割を説明してください、
⑥学習メカニズム: 強化学習、教師あり学習、教師なし学習の違いを説明し、リハビリテーションの文脈でそれぞれの例を説明してください。
⑦MRIの識別: MRI 画像内の STN を識別するための主要なランドマークは何ですか?
⑧行動計画と運動計画: 特に環境の変化に対応した意思決定と運動計画における STN の役割は何ですか?
⑨目標志向と習慣的コントロール: パーキンソン病との関連で、目標志向と習慣的コントロールの違いを説明してください。 この病気はこれらのシステムにどのような影響を及ぼしますか?
⑩リハビリテーションにおけるよくある間違い: 運動障害のある患者のリハビリテーションにおいて新人が陥るよくある間違いとは何ですか?また、それらはどのように回避できるのでしょうか?
①解剖学的構造と機能: 視床下核 (STN) は、間脳、視床の腹側、内包の内側、黒質の背側に位置します。 主に後大脳動脈の枝から血液を受け取ります。
②入出力経路: STN は、皮質、主に運動皮質と前頭前野から興奮性グルタミン酸作動性入力を受け取ります。 グルタミン酸を使用して興奮性出力を淡蒼球内節と黒質網様部に送ります。
③大脳基底核の相互作用: STN は淡蒼球、尾状核、被殻、黒質と複雑な相互作用を持っており、運動機能を制御する直接的および間接的な経路の一部を形成しています。
④パーキンソン病における役割: パーキンソン病では、STN の過剰活動が運動皮質の抑制を増大させ、運動症状の一因となります。 STN の脳深部刺激 (DBS) は、進行した症例のこの過剰活動を抑制するために使用されます。
⑤姿勢制御における大脳基底核と小脳: 大脳基底核は環境の変化や意図した動きに応じて姿勢を自動的に調整し、小脳は姿勢の筋肉活動をリアルタイムで調整することでバランスと安定性を確保します。
⑥学習メカニズム: 強化学習 (大脳基底核) には、報酬と罰からの学習が含まれます。 教師あり学習 (小脳) はエラー修正または直接フィードバックに焦点を当てます。 教師なし学習 (大脳皮質) には、ラベルのないデータのパターンを発見することが含まれます。
⑦MRI 識別: MRI 画像では、STN は、赤核 (前外側に位置)、第 3 脳室 (内側を取り囲む)、内包 (隣)、および大脳脚 (位置) などのランドマークを使用して識別されます。
⑧行動計画と運動計画: STN は、意思決定と運動計画、特に環境の変化に応じて動作を調整したり、身体的問題を解決したりする際に重要な役割を果たします。
⑨目標指向型制御と習慣的制御:パーキンソン病では、感覚運動野の障害により目標指向系(前頭前野および背内側線条体が関与する)がより優位になり、習慣的制御系(背外側線条体および感覚運動野が関与する)に影響を及ぼします。 。
⑩リハビリテーションでよくある間違い: リハビリテーションでよくある間違いには、十分な意思決定の機会を提供していない、問題解決活動にすぐに介入しすぎている、反応抑制や衝動制御のトレーニングを適切に行っていないなどが挙げられます。
視床下核を意識したリハビリテーション展開例
登場人物
- 療法士:金子先生
- 患者:丸山さん
ストーリー
1. 初回セッション:評価と課題設定
場面:
リハビリテーション病院の一室。理学療法士の金子先生は、パーキンソン病の診断を受けた60歳の男性患者、丸山さんと初めてのセッションを行います。部屋には明るい光が差し込み、リラックスした雰囲気が漂っています。
会話:
金子先生:「初めまして、金子と申します。本日から一緒にリハビリを進めていきましょう。どうぞよろしくお願いします。」
丸山さん:「よろしくお願いします。最近、体の動きがぎこちなくて、自分でも困っています。」
金子先生:「そうなんですね。具体的に日常生活でどのようなことが困難ですか?」
丸山さん:「服を着るのに時間がかかったり、道を歩いているときに急な障害物に反応できなかったりします。意思決定もなかなかできなくて、些細なことで迷ってしまいます。」
金子先生:「それはお困りですね。では、いくつか動作を見せていただいて、問題点を一緒に探していきましょう。」
丸山さん:「はい、お願いします。」
評価内容:
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運動連続性の評価: 着替えの動作を観察します。丸山さんは、下着を着る前に上着を着ようとしたり、靴下を履く前に靴を履こうとするなど、動作の順序に混乱が見られます。
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環境変化への適応: 部屋に置いたコーンをランダムに移動し、その間を歩いてもらいます。丸山さんは障害物に気づかずにぶつかりそうになり、急な方向転換が難しい様子です。
-
意思決定能力の評価: 3種類のカードゲーム(トランプ、UNO、花札)を提示し、どれをやりたいか尋ねます。丸山さんは長時間悩んだ末、最終的に決められないまま困った表情を浮かべます。
2. 総合評価とリハビリ目標の設定
金子先生:「丸山さん、いくつか気になる点が見つかりました。動作の順序や環境の変化への対応、そして意思決定に少し難しさがあるようですね。」
丸山さん:「そうなんです。自分でも何をどうすればいいのか分からなくなってしまって。」
金子先生:「大丈夫ですよ。これから一緒に改善していきましょう。リハビリの目標としては、日常生活での動作をスムーズに行えるようになること、自分で選択や判断ができるようになることを目指しましょう。」
丸山さん:「はい、ぜひお願いします。」
金子先生:「具体的には、まず着替えの動作を正しい順序で行えるように練習します。また、環境の変化に適応できるよう、いろいろなシチュエーションを想定した訓練を行います。そして、意思決定の力をつけるために、選択肢を持って自分で選ぶ練習もしていきましょう。」
丸山さん:「分かりました。自分でもできるようになりたいです。」
3. リハビリの計画と実施
実施項目:
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適応反応訓練
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運動順序の練習
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意思決定と問題解決能力の向上
詳細:
1. 適応反応訓練
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内容: 環境の変化に適応する練習を行います。廊下や室内に障害物を配置し、その位置や種類をセッションごとに変えます。
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具体的な活動:
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歩行練習: 障害物を避けながら歩く練習を行います。障害物はコーン、ボール、椅子など多様なものを使用します。
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物の位置変更: 手を伸ばす位置にある物(ペンやカップなど)を突然動かし、新たな位置に適応してもらいます。
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金子先生:「丸山さん、この赤いコーンを避けて、向こうの壁まで歩いてみましょう。」
丸山さん:「わかりました。」
(歩行中にスタッフがコーンの位置を変える)
丸山さん:「おっと、コーンが動いた!」
金子先生:「そうです。変化に気づいて対応できていますね。とても良い反応です。」
2. 運動順序の練習
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内容: 一連の動作を正しい順序で行う練習を集中的に行います。特に着替えに焦点を当て、繰り返し練習します。
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具体的な活動:
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着替えの練習: 実際の衣服を使って、下着から始まり、シャツ、ズボン、靴下、靴という順序で着替える練習を行います。
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視覚的サポートの提供: 動作の順序を書いたカードやイラストを用いて、順番を理解しやすくします。
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金子先生:「次に、着替えの練習をしましょう。この順番カードを見ながらやってみましょう。まず最初は何を着ますか?」
丸山さん:「えっと、下着ですね。」
金子先生:「そうです。その調子です。次は何でしょうか?」
丸山さん:「シャツですかね?」
金子先生:「その通りです。順序を意識してできていますね。」
(練習を繰り返し行い、徐々にカードなしでもできるようサポートします)
3. 意思決定と問題解決能力の向上
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内容: 選択肢を増やし、自分で意思決定する機会を提供します。小さな決定から始めて、徐々に難易度を上げていきます。
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具体的な活動:
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ゲームの選択: チェス、将棋、オセロ、トランプなどから好きなものを選んでもらい、一緒にプレイします。
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タスクの順番決め: リハビリの活動内容をリストアップし、その日の流れを自分で組み立ててもらいます。
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金子先生:「今日はいくつかゲームを用意しました。将棋とオセロ、トランプです。どれをやってみたいですか?」
丸山さん:「そうですね…将棋をお願いします。」
金子先生:「いい選択ですね。では、早速始めましょう。どの駒から動かしますか?」
丸山さん:「まずは歩兵を前に進めます。」
金子先生:「戦略的ですね。次はどうしますか?」
丸山さん:「銀将を出してみます。」
金子先生:「良い判断です。ゲームを楽しみながら、意思決定の練習ができていますね。」
4. 結果と進展
数週間後のセッションにて:
金子先生:「丸山さん、最近の調子はいかがですか?」
丸山さん:「おかげさまで、動作がスムーズになってきました。家でも着替えが楽になりましたし、散歩中に突然の出来事があっても慌てずに対応できるようになりました。」
金子先生:「それは素晴らしいですね。具体的にはどのような場面で変化を感じましたか?」
丸山さん:「先日、道で急に犬が飛び出してきたんですが、一瞬驚いたものの、立ち止まって避けることができました。以前ならパニックになっていたと思います。」
金子先生:「環境の変化に適応できていますね。また、意思決定の方はいかがですか?」
丸山さん:「はい。買い物に行ったときも、どの商品を選ぶか自分で決められるようになりました。時間も前よりかからなくなりました。」
金子先生:「それは大きな進歩ですね。リハビリの成果が出ているようで、私も嬉しいです。」
まとめ:
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運動順序の改善: 着替えや料理など、一連の動作を正しい順序で行えるようになり、日常生活の自立度が向上しました。
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意思決定能力の向上: 活動や商品選びなど、選択に要する時間が短縮され、自信を持って判断できるようになりました。
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環境適応力の向上: 突発的な環境の変化にも冷静に対応できるようになり、安全性が高まりました。
金子先生:「この調子で、引き続きリハビリを進めていきましょう。次回からはさらに難易度を上げて、新しい課題にも挑戦してみますね。」
丸山さん:「はい、よろしくお願いします。もっとできることが増えるように頑張ります。」
おわりに
本ストーリーでは、パーキンソン病により視床下核の機能障害を持つ患者へのリハビリテーションの具体的な取り組みを詳しく描きました。新人セラピストが陥りやすいミスを避け、患者自身の問題解決能力や意思決定力を引き出すアプローチが重要であることを強調しています。特に着替えの動作に焦点を当て、詳細な練習方法とその効果を示しました。これにより、患者の自立性と生活の質が向上し、リハビリテーションの重要性と効果を具体的に示しています。
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退院後のリハビリは STROKE LABへ
当施設は脳神経疾患や整形外科疾患に対するスペシャリストが皆様のお悩みを解決します。詳しくはHPメニューをご参照ください。
STROKE LAB代表の金子唯史が執筆する 2024年秋ごろ医学書院より発売の「脳の機能解剖とリハビリテーション」から
以下の内容を元に具体的トレーニングを呈示します。
STROKE LABではお悩みに対してリハビリのサポートをさせていただきます。詳しくはHPメニューをご参照ください。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)