【2024年最新ガイド】脳卒中患者に対する高圧酸素療法:うつ症状への効果と実施手順、メリット・デメリットまで徹底解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年最新ガイド】脳卒中患者に対する高圧酸素療法:うつ症状への効果と実施手順、メリット・デメリットまで徹底解説

論文を読む前に

高圧酸素療法とは

画像引用元:Wikipedia

金子先生(リハビリテーション医師):
「さて、今日は高圧酸素療法(HBOT: Hyperbaric Oxygen Therapy)について話すよ。丸山さん、少しは聞いたことがあるかな?」

丸山さん(新人療法士):
「はい、酸素を高圧下で体に取り込む治療法ですよね。でも、リハビリテーションの文脈で具体的にどう使うのかはよくわからないんです。」

金子先生:
「その通り、高圧酸素療法は、
1気圧以上の環境下で高濃度の酸素を体に取り込む治療法だ。主に酸素の供給が不足している状態、つまり低酸素症を改善するために使われる。この療法は、組織の酸素供給を増やし、炎症抑制や組織修復の促進といった作用がある。特に脳卒中後のリハビリ難治性創傷放射線治療による後遺症において有効性が期待されているよ。」

高圧酸素療法の作用メカニズム

丸山さん:
「高圧酸素療法って、どうしてそんなに有効なんですか?酸素が増えることによって具体的にどんな効果があるんでしょう?」

金子先生:
「いい質問だ。高圧酸素療法では、通常の酸素吸入では得られない
高濃度の酸素が血液中に溶け込み、血管新生や組織再生を促進する。主な作用機序としては次のような点が挙げられるよ。」


  1. 血管新生

    高圧環境下では酸素がより多く血液に溶け込み、傷ついた血管を新しく作り出すプロセスを助ける。これが脳卒中後の神経再生に寄与する可能性がある。


  2. 酸素拡散

    通常の大気圧では、酸素はヘモグロビンに結合して運ばれるが、高圧酸素療法では溶解型の酸素が血漿中に直接溶け込む。これによって、血流の悪い部分にも酸素が行き渡る。


  3. 抗炎症作用

    高圧酸素は炎症を抑える効果があり、組織の修復を助ける。特に虚血性の損傷神経炎症の軽減に寄与するという報告もある。

高圧酸素療法の適応と有効性

丸山さん:
「脳卒中後の患者にも有効なんですね。どんな場合に適応されるんですか?」

金子先生:
「そうだね、
脳卒中後の神経回復難治性創傷、特に糖尿病性足潰瘍、放射線治療後の組織損傷などが代表的な適応症だ。さらに最近の研究では、脳外傷後脳虚血に対しても期待が持たれている。ただ、適応症は明確に定義されていて、全ての患者に適用できるわけではないから注意が必要だ。」

例えば、脳卒中後のケースでは、HBOTは早期介入よりも慢性期における有効性が高いとされている。これは、長期的な脳の神経可塑性を促進するという理論に基づいているんだ。」

高圧酸素療法のメリットとデメリット

丸山さん:
「メリットはわかりましたが、何かデメリットや副作用もあるのでしょうか?」

金子先生:
「もちろん、
メリットだけでなくデメリットや副作用もある。まずメリットを整理しておこう。」

メリット:

  • 組織酸素化の向上: 損傷部位の治癒を促進する
  • 炎症の軽減: 慢性炎症や浮腫を抑制する
  • 免疫機能の向上: 感染リスクを軽減する
  • 神経再生の促進: 脳卒中後の神経可塑性を高める

一方で、デメリットや副作用も存在する。

デメリット・副作用:

  • 気圧外傷: 中耳や副鼻腔への負担がかかりやすい。特に耳抜きが難しい患者にはリスクがある。
  • 酸素中毒: 高濃度の酸素が長時間にわたって供給されると、肺や中枢神経系に影響を及ぼす可能性がある。ただし、これは稀なケースだ。
  • 閉所恐怖症: 高圧酸素療法は密閉されたチャンバー内で行われるため、閉所恐怖症の患者には心理的な負担が大きい。
  • 医療コスト: 高価な機器を使用するため、治療費が高額になることがある。

臨床応用における具体的な手順

丸山さん:
「実際の臨床でどのように導入するのでしょうか?」

金子先生:
「まず、患者が
高圧酸素療法の適応であることを確認し、次に治療の準備を進める。具体的には、次のような手順で行う。」

  1. 適応確認: 医師が患者の病歴を確認し、HBOTが適切であるかを評価。
  2. 治療計画: 治療回数、酸素濃度、圧力、セッション時間を設定する。一般的には1.5〜2.5気圧、セッション時間は60〜90分が標準。
  3. セッション開始: チャンバー内で高圧酸素を吸入。中耳や副鼻腔の圧迫感を和らげるため、耳抜きの指導を行う。
  4. 効果のモニタリング: 治療中および治療後、患者の状態を観察。特に副作用の兆候がないか注意深くチェック。
  5. 長期的なフォローアップ: 複数回の治療が必要になる場合、治療効果の評価を定期的に行う。

まとめと応用

金子先生:「高圧酸素療法は、脳卒中後のリハビリテーションにおいて、まだ広範なエビデンスが必要な部分もあるが、非常に期待されている治療法の一つだ。特に、組織の酸素供給が不十分な患者には大きな効果が期待できる。丸山さんもこれからリハビリテーションに携わっていく中で、必要な知識として覚えておくと良いよ。」

丸山さん:
「わかりました!患者さんに応じて、慎重に適用していくことが重要ですね。」

金子先生:
「その通りだ。どんな治療法でも、メリットとデメリットをしっかり理解し、適切に応用していくことが大事だよ。」

論文内容

カテゴリー

神経系

タイトル

脳卒中後うつに対する高圧酸素療法の効果

The effects of combined hyperbaric oxygen therapy on patients with post-stroke depression.?PubMed Yan D J Phys Ther Sci. 2015 May;27(5):1295-7. doi: 10.1589/jpts.27.1295.

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

・脳卒中後にうつ病を呈した利用者様に臨床でよく出会う。今回うつ病に対し高圧酸素療法の効果を検討した論文を見つけ、興味を持ったため読もうと思った。

内 容

背景・目的

・脳卒中後のうつ病(PSD)は急性期に有病率33%、慢性期で34%と言われている。
・抗うつ薬はあるが、15~33%は薬を使用しても効果が見られないと報告されている。
・高圧酸素療法(HBOT)は急性期の一酸化中毒に対して効果的と言われているが、この治療法は急性期、慢性期問わず脳卒中者の神経学的な改善に有効と報告されている。これは脳損傷部位に対して酸素供給が可能なこと、脳浮腫の改善や代謝促進につながることが理由に挙げられている。
・本研究は脳卒中者のうつ病に対し、抗うつ薬と高圧酸素療法を併用した際の効果を検討する。

方法

90名の脳卒中者

・抗うつ薬群、抗うつ薬+高圧酸素療法群と高圧酸素療法群の3群に分けた(それぞれ30名)。

Hamilton Depression Scale (HAMD:うつ病の評価) Scandinavian Stroke Scale (SSS:神経機能の評価)をアウトカムとした。

4週間の介入とした。

結果

表:実験結果 Yan D J Phys (2015)より引用

 

3群全てで介入前後のSSSHAMDの改善が見られた。

・抗うつ薬+高圧酸素療法群のHAMD群は他の2群より有意な改善が見られた。

SSSは群間の差は見られなかった。

・臨床効果は抗うつ薬+高圧酸素療法群で90%であり、他の2群より有意な改善が得られた。

高圧酸素療法を実施する患者にリハビリ介入する際のポイント

脳卒中患者に対して高圧酸素療法(HBOT)を実施している場合、リハビリテーションの介入は慎重に行う必要があります。以下に、病棟での関わりのポイントを整理します。

1. 介入時間の調整

  • 高圧酸素療法後のリハビリ時間:
    • HBOT後すぐにリハビリを行うと、治療によって疲労感が増す可能性があるため、1〜2時間の休息を取ることが推奨されます。
    • HBOTの影響で血流が良くなり、体温が上がることもあるため、体温調整が必要になる場合もあります。冷却や水分補給を促進し、適切な時間にリハビリを実施することが重要です。
  • リハビリのスケジュール:
    • HBOTセッションは通常60〜90分、1日1〜2回行われます。リハビリの計画は、HBOTとのバランスを取り、過度な疲労を防ぐように調整しましょう。患者の疲労感や集中力を考慮し、短時間で効果的なリハビリセッションを優先します。

2. 体調のチェック

  • 体調の変化に敏感になる:
    • 高圧酸素療法中や後には、耳や副鼻腔の圧迫感、軽度のめまい、一時的な倦怠感などが現れることがあります。リハビリ前にこれらの症状を確認し、必要に応じてリハビリを中止または調整することが大切です。
  • バイタルサインのモニタリング:
    • HBOT後の血圧や心拍数に異常がないか確認することが重要です。治療後は一時的な低血圧や高血圧が見られる場合があるため、リハビリ前には必ずバイタルサインをチェックし、体調に問題がないか確認してください。
  • 疲労感:
    • HBOT後は急な疲労感が出やすいため、リハビリの強度や量を個々の患者に合わせて調整します。疲労が強い場合は、リハビリの目標を再設定し、休息を優先することもあります。

3. リハビリ実施時の注意点

  • 運動強度の調整:
    • HBOT後は筋肉や神経の酸素供給が改善されるため、リハビリの効果が高まる一方で、無理をすると体力を消耗させるリスクがあります。患者の状態に合わせて、低~中強度のリハビリを行い、少しずつ負荷を増やしていきます。
  • バランスと安全性:
    • 高圧酸素療法は脳機能の回復を助ける効果がありますが、バランス能力や注意力が一時的に低下することもあります。そのため、歩行や立ち上がり訓練などを行う際は転倒防止に特に注意し、介助や補助具の使用をしっかりと行います。
  • 呼吸機能のモニタリング:
    • 高圧酸素療法は呼吸機能に影響を及ぼすことがあるため、呼吸訓練をリハビリに取り入れるのも有効です。肺機能の変化を考慮し、深呼吸や呼吸筋のトレーニングも行い、呼吸状態を適切に管理します。

4. 治療効果の評価

  • リハビリとHBOTの効果を連携して評価:
    • 高圧酸素療法とリハビリテーションの相乗効果を確認するため、患者の筋力・関節可動域・バランス能力などの回復を継続的に評価します。HBOTが患者の回復をどの程度サポートしているか、定期的にアセスメントを行い、リハビリ計画を適宜修正します。
  • 心理的サポート:
    • HBOTは長期間の治療になることが多いため、患者の心理的負担が増すことがあります。リハビリを行う際には、患者のモチベーション維持を図るために、回復の進展を共有し、治療への前向きな姿勢を支援することも重要です。

5. コミュニケーションの重要性

  • 他職種との連携:
    • HBOTは医師や看護師、作業療法士、理学療法士など複数の専門職が関わるため、チームアプローチが重要です。定期的に患者の状態やリハビリの進捗を共有し、最適な治療方針をチーム全体で検討します。
  • 患者・家族への説明:
    • 高圧酸素療法がリハビリにどう影響を与えているか、またどのような効果が期待されるかを患者やその家族に適切に説明し、リハビリの重要性を理解してもらうことが大切です。

まとめ

脳卒中患者に対する高圧酸素療法とリハビリテーションは、組み合わせることで大きな治療効果が期待されます。しかし、患者の体調や治療に対する反応をしっかりと見極め、無理なく進めることが肝心です。適切なタイミングでの介入、バイタルサインのチェック、そして患者の心理的サポートを通じて、治療の効果を最大限に引き出すことが目標です。

高圧酸素療法の準備・実施前後

高圧酸素療法(HBOT)の実施における準備、実施の手順を、詳細に説明します。これらの手順は、安全かつ効果的に高圧酸素療法を実施するために重要です。

1. 準備

1-1. 患者の評価と説明

  • 初期評価:
    • 患者の病歴、既往歴、現在の健康状態を確認します。特に肺機能中耳の疾患心疾患の既往がある場合は、治療の適応を慎重に判断します。
    • HBOTは脳卒中以外にも、外傷性脳損傷、慢性創傷、ガス壊疽、減圧症などに使用されますが、脳卒中後の患者には特に注意が必要です。
  • 患者説明:
    • 高圧酸素療法の効果やリスク、治療の流れを患者に説明し、同意書を取得します。患者が治療内容を理解し、不安を感じないように十分な説明を行います。
    • 耳抜き深呼吸の指導を行い、治療中の手順や注意点を事前に教えます。

1-2. 機器の確認

  • 高圧酸素室(チャンバー)の点検:
    • 機器が正常に作動するか確認します。特に、酸素供給システム圧力調整機構安全弁緊急停止機能などを点検し、万が一のトラブルに備えます。
    • 酸素濃度や室内温度が適切に保たれていることを確認します。
  • 必要な装備の準備:
    • 患者は純綿素材の衣服を着用します。これは静電気の発生を防ぐためで、火災のリスクを低減する目的があります。
    • 眼鏡、時計、携帯電話、金属類などの持ち込みは禁じられています。酸素は非常に可燃性の高い物質であり、火災の危険性があるためです。

1-3. バイタルサインの確認

  • 治療前のバイタルチェック:
    • 血圧、心拍数、酸素飽和度などを測定し、基準値内であることを確認します。異常がある場合は、医師に相談し、治療を中止または延期する判断をします。

1-4. 耳抜きの確認

  • 患者に対して、耳抜き(バルサルバ法やフレンツェル法など)の方法を再確認します。高圧環境では、耳の圧迫感や痛みが生じることがあるため、耳抜きの技術は非常に重要です。

2. 実施

2-1. 治療開始

  • チャンバーへの入室:
    • 患者が高圧酸素室(チャンバー)に入室します。横になる場合と座位の場合があり、患者の状態や設備に応じて調整します。
    • 看護師や技師が患者の状態を見守り、緊急時の対応ができるよう、常に連絡が取れる体制を整えます。

2-2. 加圧プロセス

  • 徐々に圧力を上げる:
    • 高圧酸素室内の圧力はゆっくりと上昇させます(通常は1.5〜3気圧)。この間、患者に耳抜きを促し、圧力変化に適応できるかどうか確認します。特に耳痛副鼻腔の圧迫感がないかをモニタリングします。
  • 患者の状態観察:
    • 圧力が上がる過程で患者に異常がないか注意深く観察します。耳の痛み、めまい、呼吸困難などが発生した場合は、すぐに圧力を調整または治療を中断します。

2-3. 酸素吸入

  • 100%酸素吸入:
    • チャンバー内で患者は通常、100%の酸素を吸入します。酸素はマスクまたはフードで供給され、治療時間は60〜90分です。この間、患者のバイタルサインや状態をモニタリングし、異常がないか確認します。

2-4. モニタリングと患者のサポート

  • 患者の快適性を確認:
    • 治療中、患者に圧迫感や不快感がないか、こまめに確認します。酸素吸入中も会話ができる場合が多いため、患者の状況をリアルタイムで把握し、必要に応じて圧力の調整や治療の中止を行います。

3. 終了

3-1. 減圧プロセス

  • 徐々に圧力を下げる:
    • 治療終了時には、徐々に圧力を減少させます。この際、耳抜きを再度促し、急激な圧力変化による不快感を避けます。通常、数分かけて圧力を元の大気圧に戻します。

3-2. 患者の観察とバイタルサインの確認

  • 減圧後のバイタルチェック:
    • チャンバーから出た後、再度バイタルサイン(血圧、心拍数、酸素飽和度など)を測定します。特にめまい疲労感がないか確認し、患者の状態を観察します。

3-3. 患者の状態確認と休息

  • 治療後の休息:
    • 高圧酸素療法後、患者は休息を取ることが重要です。疲労や軽い頭痛を感じることがあるため、無理にリハビリを行わず、1〜2時間の休養を推奨します。

3-4. 効果の確認と次回治療の調整

  • 治療効果の評価:
    • 治療後、効果や副作用の有無を確認します。脳卒中後のリハビリテーションにおいては、運動機能認知機能の改善が見られるか、リハビリチームと共有して、次回の治療計画を立てます。
  • 次回治療のスケジュール:
    • 高圧酸素療法は、数日から数週間にわたり複数回実施することが一般的です。患者の状態や治療効果に応じて、次回の治療スケジュールを調整します。

まとめ

高圧酸素療法の準備から終了までのプロセスは、患者の安全を最優先に、段階的に行うことが大切です。治療中は常に患者の状態をモニタリングし、適切な対応を取ることが求められます。また、治療後の休養やリハビリテーションとのバランスも重要で、患者の体調や回復状況に応じたリハビリの進行が効果的な治療に繋がります。

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