【2024年版】脳卒中片麻痺患者のペダリングトレーニング法と効果:種類別リハビリ方法の比較ガイド – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年版】脳卒中片麻痺患者のペダリングトレーニング法と効果:種類別リハビリ方法の比較ガイド

論文を読む前に:ペダリング/エルゴメーターの効果

金子先生(リハビリテーション医)丸山さん、今日は脳卒中患者に対するペダリング、具体的にはエルゴメーターなどの自転車運動がどのように効果的なのか、最新の論文を基に解説していきます。これを理解することで、患者に対するリハビリテーションのアプローチがさらに広がります。

丸山さん(新人療法士)よろしくお願いします。ペダリングが脳卒中リハビリで効果的という話を耳にすることはありますが、具体的なメカニズムや臨床応用についてもっと詳しく知りたいです。

1. 筋力の回復とペダリング

金子先生まず、ペダリングが筋力回復にどう寄与するかについて話しましょう。脳卒中後の患者は、特に下肢の筋力低下が問題となります。エルゴメーターを用いたペダリングは、負荷を調整することで特に下肢の大筋群、つまり大腿四頭筋やハムストリングスに直接的な負荷をかけられます。

脳卒中後の筋力低下は、主にタイプII線維(速筋繊維)の減少によるものです。ペダリングは、この速筋繊維を含む筋肉の動員を促進し、筋断面積の増加や筋力の回復をサポートします。研究では、エルゴメーターを使った定期的なトレーニングが、脳卒中後の下肢の筋量と筋力を有意に改善することが示されています。

2. 心肺機能の改善と循環器への影響

金子先生次に、ペダリングが心肺機能に与える効果です。脳卒中後の患者は、全身の運動能力が低下しており、心肺機能も著しく低下しています。エルゴメーターの使用は、持久力トレーニングとしても優れており、心拍数や酸素消費量を効果的に上げることができます。実際のところ、持続的なペダリング運動は、最大酸素摂取量(VO2 max)を向上させる効果があります。これにより、患者の日常生活活動(ADL)の改善や、活動参加が向上する可能性があります。

また、循環器への負担を軽減するという面も見逃せません。高齢者や心血管リスクを抱える脳卒中患者にとって、循環器系の健康維持は重要です。エルゴメーターによるペダリングは心臓に対して無理のない負荷をかけることができ、安全性が高い運動法です。

3. 神経可塑性の促進と脳の再組織化

金子先生そして、最も興味深いのは、ペダリングが神経可塑性、つまり脳の再組織化を促進する可能性がある点です。脳卒中による神経損傷は、失われた機能の再獲得を阻害しますが、運動による神経可塑性の促進が大きな役割を果たします。

ペダリングのリズミカルな運動は、脳の運動野に対して強い刺激を与え、運動経路の再活性化を促します。特に、反復的な動作が脳卒中後の回復において重要な役割を果たすことが知られています。研究では、エルゴメーターを用いたリズミカルなペダリング運動が、運動機能の改善に大きく寄与することが確認されています。

また、下肢の対称的な動きは、歩行などの機能的な動作パターンにも良い影響を与えます。反復的なペダリングにより、脳が新しい運動パターンを学習しやすくなるのです。

4. ペダリングによる姿勢制御の向上

金子先生次に、姿勢制御への影響についても考えましょう。ペダリングは、下肢の筋活動だけでなく、骨盤や体幹の安定性にも関与します。特に、骨盤と体幹の制御が重要で、これが歩行や立ち座り動作にも繋がるんです。体幹の安定性が改善されることで、転倒リスクの軽減にも寄与する可能性があります。

5. ペダリングによる精神的な効果

丸山さん身体的な効果だけでなく、ペダリングは精神的な側面にも影響を与えるんですね?

金子先生その通りです。脳卒中患者は、運動に対する自信を失いやすく、うつ状態や意欲の低下が問題となることがあります。ペダリングは、比較的簡単に運動を開始でき、成功体験を積みやすいです。この成功体験が、患者のモチベーションや自己効力感を向上させ、リハビリに対する積極性を促します。

また、エルゴメーターなどの装置は、モニターを使って運動量や進捗を可視化できるため、患者自身が目標を立てやすく、達成感を得ることができます。これは精神的な回復にも繋がりますね。

6. 臨床での応用:注意点と実施方法

金子先生最後に、臨床でペダリングを使用する際の注意点を説明します。まず、ペダリングは患者の体力や麻痺の程度に合わせて負荷を調整することが重要です。過負荷をかけると、筋肉や関節に負担をかけるだけでなく、疲労が蓄積し逆効果になることがあります。

また、初期段階では、ペダリングに神経筋電気刺激(NMES)を併用することで、筋活動の促進や運動単位の動員を補助することができます。このアプローチにより、筋力回復と神経可塑性の促進が期待できるため、特に麻痺が強い患者に対して有効です。

丸山さんNMESとの併用は効果的なんですね。負荷設定はどのように決めるのが良いのでしょうか?

金子先生患者の最大筋力の50〜70%を目安に負荷を設定し、時間や強度を徐々に増やすのが一般的です。また、モニタリングしながら心拍数や疲労の状態をチェックし、患者に合ったペースで進めることが大切です。

まとめ

金子先生脳卒中患者に対するペダリングは、筋力回復、心肺機能の向上、神経可塑性の促進、姿勢制御の改善、精神的効果といった多方面にわたる効果が期待できます。これらを理解し、患者の状態に合わせた適切な負荷設定と進行を行うことで、リハビリ効果を最大化することができるでしょう。

丸山さん先生、非常に勉強になりました。早速、明日からペダリングをリハビリに取り入れてみたいと思います。

金子先生頑張ってください。患者一人ひとりに合わせたアプローチを行うことで、最良の結果が得られるはずです。

論文内容

カテゴリー

神経系

タイトル

片麻痺患者のペダリングの効果

After-effects of pedaling exercise on spinal excitability and spinal reciprocal inhibition in patients with chronic stroke.?PubMed Tanuma A et al.(2017)

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

・職場でエルゴを用いる際の神経系への影響を学習したいと思ったため。

内 容

目的

・脳卒中後の痙縮の強い(脊髄の興奮性の高い)片麻痺患者においてペダリングの効果を評価すること。

方法

・重度の片麻痺患者を有する20人の脳卒中患者がこの研究に参加した。

・快適な速度でエルゴメータを用いて7分間のアクティブペダリングと7分間のパッシブペダリングを行うよう指示された。

・H反射および麻痺側のヒラメ筋のM波は、能動的および受動的ペダリングの前、直後、および後30分に休息時に記録された。

・Hmax / Mmax比(最大振幅比)および H recruitment curveを測定した。

・相反抑制は、ヒラメ筋のH reflex conditioning testを用いて評価した。

結果

・Hmax / Mmax比(最大振幅比)は、能動的および受動的ペダリング訓練後に有意に減少した。

・能動的ペダリング後のHmax / Mmax比の低下は、少なくとも30分間持続した。

・H recruitment curve および相反抑制は、アクティブまたはパッシブペダリング後にはあまり変化しなかった。

結論

・ペダリング運動は重度の片麻痺患者の脊髄興奮性を低下させた。ペダリングは、脳卒中後のリハビリに有効であるかもしれない。

明日への臨床アイデア

ペダリング運動の臨床応用:具体的なトレーニング方法と手順・効果

1. 脊髄興奮性の低下と正常化

重度の片麻痺患者に対して、ペダリング運動(エルゴメーターなど)は脊髄興奮性の低下に寄与し、異常な筋緊張を軽減する効果が期待されます。特に、脳卒中後の患者は筋緊張が高まりやすく、異常共収縮がみられるため、これを再学習することが重要です。

具体的なトレーニング方法と手順
1. エルゴメーターを用いたペダリングの実施手順
  1. 初期設定:
    • ペダリング負荷は患者の状態に応じて設定し、低負荷(5-10%の最大負荷)から開始します。負荷を少なくし、無理なく反復的な動きを導入することが大切です。
    • エルゴメーターは、患者が背筋を伸ばし骨盤を安定させた状態で座れるよう調整します。骨盤や体幹が不安定になると、ペダリング動作が不正確になり、効果が減少します。
  2. 準備運動と体位の確認:
    • トレーニング前には、下肢のストレッチや軽い体幹の準備運動を行い、可動域を確認します。足首や膝の動きをスムーズにし、ペダリングが始めやすいように整えます。
    • 体幹と骨盤の位置が安定していることを確認します。姿勢制御が不安定な場合は、体幹サポートを活用し、正しいペダリング動作を行えるようにします。
  3. トレーニングの実施:
    • 低速ペダリング(30-40回転/分)からスタートし、動作のリズムやタイミングを確認しながら実施します。
    • 初めは5分程度の短時間のセッションを行い、徐々に時間を延ばしつつ、患者の耐久力を向上させます(最終的には15-20分を目標に)。
    • 両脚でのペダリングが難しい場合、麻痺側と健側で別々にトレーニングを行うことも検討します。これは、非対称性を改善し、左右の筋活動のバランスを整えるために有効です。
  4. 反復的なタイミングの再学習:
    • ペダリング運動はリズミカルな動作であり、異常な共収縮を抑制しながら、適切な筋活動のタイミングを再学習する機会を提供します。
    • 視覚フィードバック音響フィードバックを併用し、患者が正しい動作タイミングを感覚的に理解できるようサポートします。例えば、画面に表示されるペダリング速度や負荷を確認しながら、適切な速度や負荷で継続することを促します。
2. 効果とリハビリへの応用
  1. 脊髄興奮性の低下と正常化:
    • ペダリングは、脊髄の興奮性を低下させるため、痙縮や異常な筋収縮を抑制する効果が期待されます。これは、特に重度の片麻痺患者において、麻痺側の筋緊張を軽減し、動作の自由度を高める一助となります。
    • 脊髄興奮性が低下することで、日常生活動作や歩行動作においても筋活動の調整がしやすくなります。
  2. 異常共収縮の再学習:
    • ペダリングは、共収縮の再学習を促進します。これは、脳卒中後に不適切に発生する筋肉同士の収縮パターンを正常化するプロセスです。リズミカルなペダリングによって、筋肉の協調性やタイミングを再学習し、自然な筋活動を取り戻すことが期待されます。
    • 筋肉の収縮タイミングが改善されることで、歩行や他の運動機能にも良い影響を与えます。
  3. 筋活動のタイミングの再学習:
    • ペダリングは反復動作を通じて、筋活動のタイミングを効果的に再学習します。これにより、歩行や立ち座りの際に必要な筋肉の収縮タイミングが改善され、よりスムーズで効率的な動作が可能になります。
3. ペダリング運動から歩行や動作への応用:次のステップ

エルゴメーターによるペダリング運動は、筋活動の再学習や脊髄興奮性の調整に有効ですが、ペダリング運動と歩行動作は使用される筋群や動作パターンが異なります。これを考慮した次のステップとして、ペダリング運動の効果を歩行や日常生活動作にどう繋げていくかが重要です。

  1. ステップ動作の導入:
    • ペダリングで得られた筋活動の再学習を、ステップ動作に転移させるためのトレーニングを行います。例えば、段差を使った足の持ち上げや踏み込み運動を導入し、下肢の筋活動を実生活の動作に関連づけます。
  2. 歩行訓練との併用:
    • ペダリング運動で得られた筋活動や協調性を歩行訓練に応用するため、トレッドミルでの歩行練習やバランストレーニングを併用します。これにより、ペダリングによって再学習された筋活動が歩行動作に応用され、実際の移動機能を改善することが期待されます。
  3. バランス練習の強化:
    • ペダリングによる体幹と下肢の協調性を活かし、バランス練習を強化します。特に片足立ちや体幹の回旋運動を取り入れ、ペダリング動作からの学習効果を全身のバランス能力に転移させます。

4. 機器の限界と活用方法

エルゴメーターは、脊髄興奮性の低下や筋活動の再学習に有効ですが、その限界も理解しておくことが重要です。ペダリング運動はあくまで座位での運動であり、立位での動作や歩行には異なる筋肉やバランスの要求が発生します。したがって、ペダリングだけでは歩行や他の動作機能に直接的な改善をもたらすわけではありません。

機器の効果と限界を認識し、以下のように併用することが有効です。

  • ペダリング運動をベースに、次の段階として立位や歩行に関連するトレーニングを段階的に進める
  • ペダリングと並行して、リズム感やバランス感覚を向上させるための動作訓練を導入する

ペダリングは脊髄興奮性の低下や筋活動の再学習を効果的にサポートし、リハビリテーションの初期段階で有用な手段の一つとなりますが、それを歩行や日常生活動作にどう結びつけるかが、リハビリの成功に繋がるという視点が重要です。

新人療法士がペダリングを指導する際のコツ

姿勢の確認

患者がペダリングを始める前に、骨盤と体幹の位置が安定しているか確認。姿勢が崩れると、動作の効率が落ちるため、適切なサポートを提供します。

ペダル負荷の設定

初回は軽い負荷でスタートし、患者の体力や麻痺側の筋力に合わせて負荷を調整。無理な負荷は筋肉の疲労や関節への負担を増やします。

ペダリング速度の調整

ゆっくりした速度(30-40回転/分)から始め、患者がリズムを維持できるよう指導。速度を急に上げると筋肉が過剰に緊張することがあります。

片側麻痺に合わせたアプローチ

麻痺側の脚が弱い場合は、非麻痺側の脚が過剰に働かないよう注意。必要に応じて、麻痺側の足をサポートしながら動作を行います。

視覚フィードバックの活用

ペダリング中の画面フィードバックリアルタイムモニタリングを使い、患者が動作のリズムやタイミングを自覚できるようにします。これにより正確な動きをサポート。

ペダリング前後のストレッチ

関節可動域を広げ、筋肉の柔軟性を高めるため、ペダリング前後にストレッチを行う。特に足首や膝の動きに重点を置きます。

足部の位置調整

患者の足がペダルにしっかりと乗るように足部の位置を調整。足が滑ったり、位置がずれると、関節や筋肉に無理な負担がかかることがあります。

セッション時間の調整

初期段階では、ペダリング時間を5-10分程度に設定し、患者の耐久力に応じて徐々に増やす。長時間のペダリングは疲労を引き起こすことがあります。

呼吸法の指導

ペダリング中に規則的な呼吸を指導。呼吸が浅くならないように注意し、酸素供給を意識させます。

フィードバックを活用した目標設定: 患者に小さな達成感を与えるため、ペダリングの回数や距離を記録し、目標を段階的に設定。ポジティブなフィードバックでモチベーションを高めます。

ペダリング/エルゴメーターの種類:メリット・デメリット

表は、リハビリテーションで使用される代表的なペダリング機器の種類、各機器のメリットとデメリットを整理しています。新人療法士がこれらを理解し、患者に適したペダリング機器を選ぶ際に役立つ情報が含まれています。

リハビリテーションで使用されるペダリングの種類の比較

ペダリングの種類 メリット デメリット
エルゴメーター(静止型)
  • 負荷調整が容易で、軽度から重度の麻痺に対応可能
  • 関節への負担が少ない
  • 心肺機能の向上に効果的
  • 足部や体幹の固定が必要であるため、姿勢保持が難しい患者には適さない
  • 歩行動作への直接的な影響が少ない
リカンベントバイク(座位型)
  • 背もたれ付きで体幹サポートがあるため、姿勢が安定しやすい
  • 関節に優しく、膝や腰への負担が少ない
  • 心肺トレーニングと筋力強化の両方に適している
  • 下肢のみの運動に限定され、上半身のトレーニングが難しい
  • 負荷の細かい調整が難しいことがある
上肢エルゴメーター
  • 上肢の筋力と心肺機能の改善に有効
  • 下肢を使用できない患者にも使用可能
  • 車椅子利用者に適している
  • 下肢のリハビリには使用できない
  • 肩や肘に負担がかかることがある
反復歩行型エルゴ(ペダル付き)
  • 歩行動作に似た運動を提供できる
  • 下肢の協調性と筋力強化に有効
  • 歩行訓練の準備段階として使用可能
  • 機器が高価であり、スペースを取る
  • 技術的な操作が複雑な場合がある
電動アシスト付きペダル(電動自転車型)
  • 麻痺側の筋力が弱い場合にアシストができる
  • 無理なく持続的な運動が可能
  • 可動域訓練にも有効
  • アシストの依存性が高くなる可能性がある
  • 機器の設定が複雑で、調整が必要
バランス型ペダル訓練装置
  • バランス感覚とペダリングを同時に鍛えられる
  • 動的な姿勢制御に有効
  • 体幹の強化も可能
  • 難易度が高く、重度の麻痺患者には不向き
  • 転倒リスクがあるため、安全対策が必要

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