【2024年版】家族で実践!効果的な呼吸リハビリの方法とコツ:ポジショニング・胸郭ストレッチ・症例別アプローチ・パルスオキシメーター活用術 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年版】家族で実践!効果的な呼吸リハビリの方法とコツ:ポジショニング・胸郭ストレッチ・症例別アプローチ・パルスオキシメーター活用術

家族でもできる呼吸リハビリの多角的アプローチ

金子医師:呼吸リハビリテーションに精通したリハビリテーション科の医師。

丸山さん:新人療法士。呼吸リハビリテーションの家族支援について学ぶ。

ある日、金子医師と丸山さんは、病院の研修室で呼吸リハビリについて話し合っていました。丸山さんは、退院後の患者さんの家族が自宅で行える呼吸リハビリに興味を持っています。特に、家族が「どのように安全で効果的に支援できるのか」を理解し、実践できる内容を知りたいと相談しました。

1. 呼吸リハビリの意義

「呼吸リハビリは、患者さんの生活の質(QOL)を改善する上で重要だ。特に脳卒中後や呼吸機能低下を伴う患者では、呼吸筋の強化や呼吸パターンの改善が生命維持に直結する。家族が積極的に関与できる内容を含めて指導することが、治療効果を長続きさせる秘訣だよ。」

2. 家族ができる呼吸介助の具体的手順

(1)基本的な呼吸介助

  • 目的:患者の呼吸筋活動を促進し、酸素供給を改善。
  • 手順
    • 胸郭拡張のサポート
      • 患者が仰臥位や半座位になるよう調整。
      • 吸気時に胸郭の外側を軽く押し上げるようにサポートし、呼気時に胸郭をゆっくり押し戻す。
    • 横隔膜呼吸の促進
      • 手を患者の腹部に軽く置き、呼吸を感じ取りながらリズムを整えるように誘導する。

(2)気道クリアランスの補助

  • 目的:痰の排出を促進し、肺感染のリスクを低下させる。
  • 手順
    • 軽い体位ドレナージ(体位変換による肺の排出促進)。
    • 手掌を軽くカッピングして胸部を叩き、痰の動きを促す。

3. ストレッチを用いた呼吸筋の柔軟性向上

「呼吸に関与する筋群(横隔膜、肋間筋、胸鎖乳突筋など)を柔軟に保つことは、呼吸の効率化に大切だ。」

(1)側屈ストレッチ

  • 患者を椅子に座らせ、片手を頭の上に持ち上げて反対側に倒す。
  • 胸郭の伸展を感じられるように家族がゆっくりとサポート。

(2)胸部の伸展ストレッチ

  • ベッドに仰臥位で寝かせ、胸部に軽い圧を加えながら伸展を促す。
  • 深呼吸を合わせることで効果を高める。

4. ポジショニングによる呼吸効率の改善

「ポジショニングも重要な支援方法だ。適切な姿勢は肺活量を増加させ、血液酸素濃度を改善するよ。」

  • (1)側臥位
    • 健側を下にした側臥位をとることで、麻痺側の胸郭拡張を促進する。
  • (2)半座位
    • 30~45度の半座位が、肺への血流分布を最適化。
  • (3)前屈位
    • 座った状態で前屈する姿勢が呼吸補助筋を有効活用しやすい。

5. 環境調整による呼吸機能の支援

「環境要因も見逃せない。特に自宅でのケアでは、周囲の環境が患者の呼吸に与える影響を意識することが必要だ。」

  • 空気の質:空気清浄機を利用し、室内の湿度を50%程度に保つ。
  • 姿勢補助具:ポジショニングを補助するクッションや枕を利用。
  • 音楽療法:リラックスした呼吸を誘導するために穏やかな音楽を流す。

6. 家族が注意すべき点

  • 無理な介助や力のかけ過ぎは避ける。
  • 呼吸パターンに異常がある場合は専門医に相談。
  • 痰が増えたり、息切れが強くなった場合は介入を中断。

丸山さんの疑問

丸山さん:「呼吸介助やストレッチには効果があることがわかりましたが、家族が無理なく行える頻度やタイミングの目安はありますか?」

金子医師:「基本的に1日2~3回、各10分程度から始めると良い。患者の状態を観察しながら、負担を感じるようであれば減らすことも必要だ。」

7. 呼吸リハビリの成果を確認する方法

  • 酸素飽和度のモニタリング:リハビリ中にパルスオキシメーターで評価。
  • 呼吸パターンの観察:努力性呼吸が減少しているか確認。
  • 患者の主観的評価:呼吸のしやすさ、疲労感の軽減についてヒアリング。

まとめと次のステップ

金子医師:「丸山さん、家族でもできる呼吸リハビリは簡単なように見えて、科学的根拠が重要だ。家族に説明するときは、具体的な手順だけでなく、なぜそれが必要なのかをしっかり伝えることが大切だね。」

丸山さん:「はい、呼吸のメカニズムを基にした訓練方法や注意点を含めて指導します!」

論文内容

       

タイトル

肺がん患者の呼吸筋力と呼吸困難に対する介護者教育の効果 Effect of caregiver education on pulmonary rehabilitation, respiratory muscle strength and dyspnea in lung cancer patients.?PubMed Jeong JH J Phys Ther Sci. 2015 Jun;27(6):1653-4. doi: 10.1589/jpts.27.1653.  

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

介護者に運動時のポイントを教えて、ご本人が自主トレーニングを正しく行っているか介護者に管理していただくことは多い。今回、介護者が呼吸リハを実施した場合に効果があるかを検討した論文を見つけ、興味があったため読もうと思った。  

内 容

背景・目的

・肺がん患者に対して呼吸リハビリテーションを自宅で行うこともある。 ・介護者に教育をし、介護者が呼吸リハビリテーションを患者に対して行った場合の効果を検討した論文は少ない。よって本研究は介護者による呼吸リハビリテーションが呼吸筋筋力と呼吸困難にどう影響するか検証する。  

方法

41名の肺がん患者 ・実験群(22名)と対照群(19名)の2群に無作為に分けた。 ・実験群は介護者に対し以下の教育を行った。①咳嗽練習、②気道確保、③呼吸練習、④ストレッチ、⑤筋力トレーニング ・対照群は一般的なアドバイスを行った。 ・アウトカムは肺がん手術後2週間と6週間に計測した。 ・呼吸筋筋力、最大吸気圧(MIP)、最大呼気圧(MEP)を計測した。呼吸困難感は改訂版Borg scaleで評価した。    

結果

表:実験結果 Jeong JH (2015) より引用   ・実験群のMIPMEPBrog scaleは介入後に有意な改善が得られたが、群間の有意差は得られなかった。  

家族が自宅で行う呼吸リハビリの具体的手順:症例形式で解説

症例1:脳卒中後の呼吸筋弱化患者への介入

患者プロフィール

  • 年齢:70歳
  • 診断:右片麻痺を伴う脳卒中後、肺活量低下
  • 症状:呼吸が浅く、軽度の努力性呼吸が見られる

目標

  • 横隔膜機能の改善
  • 胸郭の可動性向上

手順


  1. ポジショニング
    • 半座位(30~45度)を基本とし、背中をクッションで支える。
    • 足元を軽く挙上し、リラックスした姿勢を促す。

  2. 横隔膜呼吸の促進
    • 家族が患者の腹部(みぞおちの少し下)に手を軽く置く。
    • 吸気時に腹部が膨らむ感覚を確認し、ゆっくりと呼気を促す。
    • 1セット10回、1日3セットを目安に行う。

  3. 胸郭拡張の支援
    • 家族が両手を患者の肋骨下部に置き、吸気時に外側に軽く押し広げるようにサポート。
    • 呼気時は軽い圧を加えながら肋骨を元の位置に戻す。

  4. 観察と記録
    • 呼吸の深さ、疲労感の変化を記録。必要に応じて医師に報告。

症例2:COPDを伴う患者の気道クリアランス支援

患者プロフィール

  • 年齢:65歳
  • 診断:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、痰の貯留あり
  • 症状:頻繁な咳嗽、痰の排出困難

目標

  • 痰の排出を促進
  • 気道閉塞の改善

手順


  1. 体位ドレナージ
    • 家族が患者を側臥位に寝かせ、健側を下にする。
    • 肺の痰が貯留しやすい部位を考慮し、体位を5~10分ごとに変更。

  2. 叩打法(カッピング)
    • 手のひらをカップ状にして、胸部や背部を軽く叩く。
    • 叩くリズムを一定に保ち、1セッションあたり5分を目安に実施。

  3. 咳嗽支援
    • 家族が患者の腹部に軽い圧を加えながら咳を促す。
    • 特に痰が多い場合は、吸引機や蒸気吸入を併用。

  4. 水分摂取の促進
    • 日中の水分摂取量を増やし、痰を柔らかくする。

症例3:軽度の呼吸不全を伴う筋力低下患者への全身調整

患者プロフィール

  • 年齢:60歳
  • 診断:筋萎縮性側索硬化症(ALS)初期
  • 症状:横隔膜や呼吸補助筋の筋力低下

目標

  • 呼吸筋の筋力維持
  • 胸郭と肩甲帯の柔軟性向上

手順


  1. 呼吸筋ストレッチ
    • 患者を座位にさせ、両腕を頭上に挙げるストレッチを家族がサポート。
    • 息を吸いながら腕を挙げ、呼気時にゆっくり戻す。

  2. 肩甲帯のモビライゼーション
    • 患者の肩甲骨を家族が手で掴み、軽く動かす。
    • 前後や回旋方向に柔らかく動かし、血流と柔軟性を促進。

  3. インセンティブスパイロメーターの使用
    • 器具を用い、吸気時に一定の圧を保ちながら練習。
    • 1回3~5分、1日3回程度行う。

  4. 環境調整
    • 室温や湿度(50%前後)を整え、呼吸の負担を軽減。

共通の注意点


  1. 安全性の確保

    • 疲労感が強い場合は中断。
    • 呼吸困難やチアノーゼが見られる場合は速やかに医師へ連絡。

  2. 記録と共有

    • 呼吸の深さ、咳嗽回数、酸素飽和度などを記録し、定期的に医師に報告。

  3. 家族への指導

    • リハビリを実施する家族にも事前に十分な説明を行い、正しい介助法を指導。

まとめ

これらの症例形式は、患者の状態に応じて柔軟に対応可能です。家族が呼吸リハビリを行う際、適切な指導とモニタリングを行うことで効果を最大限に引き出すことができます。医師として、患者と家族が自信を持ってリハビリを続けられるよう、具体的で分かりやすい指導を心がけましょう。

 

新人療法士が家族に呼吸リハビリを指導する際のポイント

 


  1. 患者の状態に基づいた目標設定の共有

    • 呼吸リハビリの具体的な目的(痰の排出、肺活量向上、呼吸筋の維持など)を家族に説明し、目標を共有します。
    • 「なぜこのリハビリが必要か」を明確にすることで、家族の理解と協力を得やすくなります。

  2. 正しいポジショニングの指導

    • 呼吸リハビリでは患者の姿勢が重要です。半座位や側臥位など、目的に応じた姿勢の取り方を具体的に教えます。
    • ベッドや椅子、クッションを使ったサポート方法も示します。

  3. 安全確認とリスク管理

    • リハビリ中に呼吸困難、チアノーゼ、疲労が見られた場合は中断することを家族に強調します。
    • 酸素飽和度測定器があればその使い方も指導し、安全性を確保します。

  4. 実技を通じた横隔膜呼吸の指導

    • 横隔膜呼吸の重要性を説明し、実際に家族が患者の腹部に手を置いて練習をサポートする方法を教えます。
    • 「吸うときにお腹が膨らみ、吐くときにへこむ」感覚を家族自身が理解できるようにします。

  5. 胸郭ストレッチの方法のデモンストレーション

    • 肋骨を動かし胸郭の可動性を高めるストレッチを、家族が無理なく行えるよう、段階的に教えます。
    • 力加減や手の位置、動かす方向について具体的に説明します。

  6. カッピング(叩打法)の適切な方法

    • 手をカップ状にし、患者の背中を軽く叩く方法を家族に実演します。
    • 力を入れすぎず、一定のリズムで行うよう指導し、叩く位置とタイミングを説明します。

  7. 機器の活用と取り扱い方法の説明

    • インセンティブスパイロメーター(呼吸トレーニング器具)やパルスオキシメーターなどを使用する場合、家族が正確に使えるよう手順を指導します。
    • 器具の衛生管理も忘れずに説明します。

  8. 患者とのコミュニケーションの重要性の強調

    • リハビリ中に患者が「やりたくない」「疲れた」と感じることが多いため、家族がポジティブな声掛けを行い、安心感を与えることを教えます。
    • 例えば「よく頑張っているね」「あと2回やってみよう」などの具体的な例を挙げます。

  9. 日々のモニタリングと記録の重要性

    • リハビリの成果や変化(呼吸の深さ、疲労感、痰の出やすさなど)を日々記録することを勧めます。
    • 医師への報告内容を整理しやすくなるため、観察のポイントを具体的に示します。

  10. 家族自身の負担軽減の工夫を提案

  • 長期的な介助には家族の疲れやストレスが影響するため、無理のない範囲でリハビリを続ける方法を考えます。
  • 他の家族メンバーと交代する仕組みや、訪問リハビリの利用も含めて提案します。

指導の際の注意

新人療法士として、家族が安心してリハビリに取り組めるよう、丁寧かつ簡潔に説明することが重要です。初めての家族には専門用語を避け、実技を通じて理解を深めてもらいましょう。また、リハビリが楽しく感じられるような工夫(ゲーム要素の導入など)も効果的です。

 

パルスオキシメーターの酸素飽和度の仕組みを分かりやすく解説

画像引用元:Nature

パルスオキシメーターは、指や耳たぶに挟むだけで血液中の酸素飽和度(SpO₂)を測定できる機械です。この酸素飽和度は、血液がどれくらい酸素を運んでいるかをパーセントで表しています。家族の方に分かりやすく説明するために、以下のように解説します。

1. 血液と酸素の関係

  • 血液中には、酸素を運ぶ「赤血球」というものがあります。この赤血球の中には「ヘモグロビン」という物質があり、酸素と結びついて全身に運びます。
  • 酸素飽和度は、このヘモグロビンがどれだけ酸素を運んでいるかを示します。
    • 100%に近いほど、ヘモグロビンが酸素をしっかり運んでいる。
    • 90%以下になると、酸素が不足している可能性があります。

2. パルスオキシメーターの仕組み

  • パルスオキシメーターは「光」と「センサー」を使って測定します。具体的には次のような仕組みです。

(1) 赤い光と赤外線を使う

  • 機械の中に「赤い光」と「赤外線」が出る小さなライトが付いています。
    • 赤い光:目で見える光。
    • 赤外線:目には見えませんが、ヘモグロビンに反応します。
  • これらの光が指や耳たぶを通ると、血液中のヘモグロビンの量を反射的に測ることができます。

(2) 酸素がついたヘモグロビンとついていないヘモグロビンを見分ける

  • 酸素がついたヘモグロビンは「赤外線」を吸収しやすい。
  • 酸素がついていないヘモグロビンは「赤い光」を吸収しやすい。
  • この2種類の光の吸収量を比べることで、ヘモグロビンの中で酸素がどれくらい結びついているかを計算します。

3. 脈拍も一緒に測定する理由

  • ヘモグロビンの酸素飽和度を測るとき、動いている血液(つまり脈拍に合わせて流れる血液)を測定します。
  • これによって、血液が流れていない部分(皮膚や静脈など)を無視して正確な数値を出せる仕組みになっています。

4. 日常での活用方法

  • 酸素飽和度が 95%〜100% であれば正常範囲です。
  • 90%以下 になると酸素不足の可能性があり、医師に相談が必要です。
  • 呼吸器疾患(例:喘息や肺炎)の管理、手術後の経過観察、高山病のチェックなど、さまざまな場面で活用されます。

5. 安全に使うためのポイント

  • 指や耳たぶをしっかり機械に挟む。
  • 爪にマニキュアがついている場合は、測定が正確でなくなることがあるため注意。
  • 極端に寒い場所では血流が少なくなり、測定が不安定になることがあります。

「パルスオキシメーター」は、簡単に酸素の状態を確認できる便利な機械です。体調が悪いときや呼吸が苦しいときに活用することで、早めの対応ができます。家族で使い方を覚えておくと安心ですね。

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