【2024年最新版】脳卒中後の病的筋シナジーを改善!効果的リハビリ法とアプローチを徹底解説 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2024年最新版】脳卒中後の病的筋シナジーを改善!効果的リハビリ法とアプローチを徹底解説

論文を読む前に

リハビリテーション医の金子先生がデスクで資料を広げているところへ、新人療法士の丸山さんが訪れる。

丸山さん: 「金子先生、筋シナジーについて教えていただきたいのですが、特に生まれつきのシナジーと、経験から形成されるもの、そして脳卒中後にどのように変化するかについて理解を深めたいです。」

金子先生: 「筋シナジーは、私たちの運動制御の中核にある非常に重要な概念ですね。では、今日はその基本から脳卒中後の変化に至るまで詳しくお話しましょう。」

1. 生まれつきの筋シナジー

金子先生: 「まず、生まれつきの筋シナジーについて話しましょう。生まれたばかりの赤ちゃんが持つ基本的な運動パターン、例えば吸い付く動作や手を握る反射などは、脳の発達とともに自然に出現するものです。これらは大脳皮質や脳幹、脊髄といった神経システムが協調的に働いて、特定の筋群を同時に動員することで生じます。」

金子先生: 「これを『基本的筋シナジー』と呼びます。新生児期の反射的な動きや、成長に伴って学習される歩行の初期段階などは、この基本的な筋シナジーに基づいています。これらのシナジーは、遺伝的要因や発達プロセスによって自然に獲得されるもので、ほぼすべての個体が共通して持っている運動制御の基礎です。」

丸山さん: 「そうなんですね。つまり、赤ちゃんが歩く前に見せる歩行反射も、この生まれつきのシナジーに含まれるんですね。」

金子先生: 「その通りです。これらの生まれつきのシナジーは、私たちが動作を学習していく上での土台になります。」

2. 経験から生じる筋シナジー

金子先生: 「次に、経験を通じて形成される筋シナジーについて話しましょう。日々の動作や運動を通して、脳は特定の動作に必要な筋群を効率よく協調させるパターンを学びます。これが『経験的筋シナジー』です。」

金子先生: 「たとえば、スポーツをしているとき、私たちは経験を重ねることで特定の筋肉の動きが自動化され、効率よく身体を動かすことができるようになります。これは運動単位の再編成や神経回路の再結合によって生じます。脳の大脳皮質や小脳が重要な役割を果たしており、特定の動作や課題に適した筋シナジーが発達します。」

金子先生: 「このシナジーの獲得は、プラスチック性(可塑性)とも関連しています。学習やトレーニングを通じて、筋肉の動員パターンが最適化され、より効率的で正確な動作が可能になります。こうして経験を通して発展する筋シナジーは、特に専門的な動作やスキルの獲得に関わってきます。」

丸山さん: 「そうすると、アスリートや職業によって特定の筋シナジーが発達するということですね。トレーニングやリハビリでも、このシナジーを強化できるというわけですね。」

金子先生: 「その通りです。リハビリにおいても、特定の動作を繰り返し行うことで、患者の経験を基に新しい筋シナジーを作り上げていくことが重要です。」

3. 脳卒中後の筋シナジーの変化

金子先生: 「さて、脳卒中後の筋シナジーについてお話ししましょう。脳卒中により脳の神経回路が損傷を受けると、従来の筋シナジーが崩れ、下記の表(一例)のような非効率な運動パターンが出現します。これを『病的筋シナジー』と呼びます。」

部位 特徴
上肢
  • 屈曲シナジーが優位:肩関節屈曲、肘関節屈曲、前腕回外、手関節屈曲、指屈曲
  • 伸展シナジーが見られる場合:肩関節内転、肘関節伸展、前腕回内、手関節伸展、指伸展
  • 日常生活動作において手の操作が難しくなる
体幹
  • 側屈が顕著になる:脳卒中の影響を受けた側への体幹の傾き
  • 体幹回旋が制限され、体の前後や左右のバランスが取りにくい
  • 前屈や後屈の動作が非対称になる
下肢
  • 伸展シナジーが優位:股関節伸展、内転、膝関節伸展、足関節底屈
  • 歩行時に足の持ち上げが困難:股関節や膝の柔軟な屈曲ができない
  • 足底が浮きやすく、つま先が引っかかり転倒リスクが高まる

金子先生:  「例えば、脳卒中後の片麻痺では、肩や肘、手首の動きが非協調的になり、患者は目的の動作を行おうとしても、関節をうまくコントロールできなくなります(下図参照)。脳の損傷部分により異なりますが、特定の筋群が過剰に緊張し、他の筋群が十分に働かない場合があります。」

金子先生: 「病的な筋シナジーの一例として、歩行時の足の過剰な内転や、腕の屈曲が強調される動作などがあります。これらは、脳の損傷によって適切な運動パターンが形成されなくなり、代償的に不自然な筋シナジーが現れるものです。」

丸山さん: 「つまり、脳卒中後は元々の筋シナジーが崩れて、新しい、そして不適切な筋シナジーが生まれることがあるということですね。」

金子先生: 「その通りです。これを改善するためには、健全な筋シナジーを再形成するためのリハビリテーションが重要です。特に、神経可塑性を利用して、非効率なシナジーを正しいものに再編成することがリハビリの目的となります。」

4. 臨床応用へのヒント

金子先生: 「筋シナジーに関連するリハビリの臨床アイデアをいくつか示しますね。」

  1. 課題指向型トレーニング
    脳卒中患者に特定の機能的タスクを反復させ、効率的な筋シナジーを再形成させる。この際、患者の個別の動作パターンに合わせた課題設定が重要。
  2. バイオフィードバック
    筋電図(EMG)や重心計測器を使用し、患者に筋シナジーの適切さを視覚的にフィードバック。これにより、意識的に非効率な筋活動を抑制し、正しいパターンを学習させる。
  3. ミラーセラピーや運動イメージトレーニング
    視覚や運動イメージを用いた訓練により、麻痺側に直接刺激を与えずとも筋シナジーを強化することができる。脳の神経回路に影響を与えるため、麻痺側の再学習を促す。
  4. CI療法
    非麻痺側を拘束し、麻痺側に負荷をかけることで、適切な筋シナジーを形成させる。これは、非麻痺側に頼りすぎる患者の運動習慣を変えるために有効です。

丸山さん: 「筋シナジーの変化とその再形成には、リハビリが大きな役割を果たすんですね。経験的なシナジーをうまく引き出すことができれば、患者の運動機能を大きく改善できる可能性があると感じました。」

金子先生: 「その通りです。患者の筋シナジーを理解し、適切な介入を行うことが、運動機能の回復において非常に重要です。これからのリハビリにぜひ活用してください。」

論文内容

カテゴリー

脳科学

タイトル

脳卒中後の異常筋シナジーを考える

A Neuroanatomical Framework for Upper Limb Synergies after Stroke?PubMed Angus J. C. McMorland et al.(2015)

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

・脳卒中後の慢性期の方を担当する事が多い。それぞれの方特有の運動パターンが観察される。「synergy」についてより洞察を深めるべく本論文に至る。

内 容

「soft synergy」と「hard synergy」

・生物学的現象として、筋シナジーの一般的に受け入れられている一般的な定義は、運動の実行に同時に関与する筋全体にわたる活動的な時空間的な活動パターンである。

・いくつかのシナジーは、純粋に高次構造の機能的調整(functional synergies)から生じ得る。これらの機能的シナジーは、それらを支持するために存在する解剖学的構造が存在しないという意味で「ソフト」と考えることができる。例えば、解剖学的基盤が片手・両手で同じでも上肢運動の時空間的ダイナミクスはdual taskの文脈において著しく変化する。

・解剖学的側面から見た「anatomical synergies」は、関与する筋肉の組み合わせが比較的固定されるという意味で「ハード」と考えられる。例えば、カエルの脊髄へのマイクロ刺激は、正確な刺激位置に依存する筋肉の組み合わせを活性化し、指向性運動を生成し、跳躍や水泳のような自然な行動を形成するために組み合わせることができる。

・ソフトシナジーは、ハードシナジーより潜在的により動的であり、文脈依存である可能性があります。

・Overduinら(2012)は、運動皮質の微小刺激が、自然な把持で観察されたものと非常に類似したシナジーの組合せを活性化することを見出した。

脳卒中と筋シナジー

・筋シナジーは、運動中に起こるco activationまたは相反関係の共通パターンを表わす。脳卒中後、筋シナジーは変化する。ここでは、これらを「abnormal synergies」と呼ぶ。

・脳卒中後の初期の障害がより重度な患者は、最も障害を3ヶ月まで残存させている患者であり、異常な筋シナジーを最も発症する可能性のある患者である傾向があります。

・脳卒中後の異常筋シナジーを調べるほとんどの研究は、慢性期に行われています。この障害の多くは、独立して関節を制御する能力の喪失に起因しており、作業空間上の動きを妨げます。異常シナジーの複雑な病因および病態生理を理解するためには、空間および時間パラメータの双方を考慮する必要があります。

・皮質脊髄路(CST)を介して下降することが、自発的行動の主な推進要因である。脳卒中後に脳が損傷を受けた場合、他の下行経路はこれを補うためにアップレギュレーションすることができる。これらの経路の寄与より、神経軸に沿った可塑性の結果として、脳卒中後の慢性期に新たなシナジーが現れる可能性がある。

・理学療法の処方は、機能不全の運動パターンの強化を回避しながら、機能的な運動能力を最大にする有用な筋シナジーを誘導していく必要があると考え得る。

・残存している下行運動経路の完全性を考察していくことは、新しいリハビリテーション療法の構築をサポートする。

明日への臨床アイデア

脳卒中後の異常筋シナジー(病的筋シナジー)を、より機能的な筋シナジーに変化させるためのリハビリテーションには、筋活動を再教育し、適切な運動パターンを学習させることが重要です。これにより、患者の運動機能を回復させ、日常生活の動作を向上させることができます。以下にリハビリテーションの具体的なアプローチを解説します。

1. 上肢に対するリハビリのアイデア

脳卒中後の上肢における病的筋シナジーは、肩の挙上や肘の過剰な屈曲、手首や指の硬直といった不適切な協調運動がみられることが多いです。これに対して、以下のアプローチが有効です。

A. リーチングトレーニング

  • 目的: 肩、肘、手首の協調的な運動パターンを再学習させる。
  • 方法: 患者に特定のターゲットに向かって手を伸ばす(リーチング)動作を繰り返し行わせます。初期段階では、身体の重心移動を伴わない、安定した座位や立位で実施し、徐々に難易度を上げます。重要なのは、肘を適切に伸ばし、過剰な屈曲を抑えることです。
  • 工夫: ターゲットまでの距離や高さを変化させ、異なる方向へのリーチングを行わせることで、より多様な筋シナジーの再学習を促します。

B. ミラーセラピー

  • 目的: 鏡を使用して、麻痺側の動作を視覚的にフィードバックし、脳内の正常な運動パターンを再構築する。
  • 方法: 健側を動かしながら、その動きを鏡越しに麻痺側として認識させることで、麻痺側に対する運動イメージを強化します。これにより、病的筋シナジーを抑え、正しい動作パターンを再形成します。

C. 課題指向型訓練

  • 目的: 実際の生活動作に即した運動パターンを再学習する。
  • 方法: 日常生活のタスク(例: コップを持ち上げる、ドアノブを回す)を反復的に行わせることで、目的に応じた筋シナジーを改善します。麻痺側の不適切な筋シナジーを排除し、正しい運動の協調性を高めます。

2. 体幹に対するリハビリのアイデア

脳卒中後の体幹では、回旋運動や前後左右への重心移動が不安定になることが多く、これによりバランス障害や姿勢の崩れが発生します。

A. 姿勢制御トレーニング

  • 目的: 体幹の安定性を向上させ、異常な筋シナジーを改善する。
  • 方法: 座位での骨盤の前傾・後傾、側方への移動訓練を行い、体幹の柔軟な運動を促します。初期段階では補助具(例: バランスボール)を使って不安定な表面で行い、体幹の筋群を活性化させると良いでしょう。
  • 工夫: 前方および側方へのリーチングを組み合わせることで、体幹の筋シナジーと上肢の協調を同時に強化します。

B. 呼吸トレーニングと体幹強化

  • 目的: 横隔膜や腹筋群を含む呼吸筋と体幹筋の連携を改善し、姿勢安定性を向上させる。
  • 方法: 深呼吸をしながら体幹を回旋させる運動や、息を吐く際に腹筋群を意識的に収縮させる運動を行います。これにより、呼吸と体幹の筋シナジーを改善します。
  • 工夫: 仰臥位や座位で行い、次第に負荷を増やすために抵抗バンドを使ってトレーニングを強化します。

C. クロスモビリティエクササイズ

  • 目的: 体幹と四肢の協調を再学習させ、バランスを向上させる。
  • 方法: 四つ這いポジションでの対角線上の手と足を伸ばす動作を行い、体幹の安定性と動的バランスを同時に改善します。この運動は、病的筋シナジーの抑制と正常なシナジーの再構築に効果的です。

3. 歩行に対するリハビリのアイデア

脳卒中後の歩行では、過剰な股関節屈曲や膝の伸展制限、足関節の底屈が強調される病的筋シナジーが見られます。これを改善するためには、機能的な歩行パターンを再学習するアプローチが必要です。

A. 荷重移動トレーニング

  • 目的: 歩行中の重心移動を改善し、病的な筋シナジーを抑制する。
  • 方法: 片脚荷重や側方への重心移動を反復的に行うことで、歩行時に必要な適切な重心移動を再学習させます。初期段階では手すりなどの支持を用い、徐々に自発的に重心を移動させる訓練へと移行します。
  • 工夫: バランスパッドなどの不安定な面を利用して荷重移動を行うことで、歩行時のバランス機能を強化します。

B. トレッドミル歩行訓練(BWS: Body Weight Support System併用)

  • 目的: 病的な歩行シナジーを抑制し、より正しい運動パターンを学習させる。
  • 方法: トレッドミルとBWS(体重支持システム)を併用し、歩行の訓練を行います。体重を軽減することで、患者が自然な歩行パターンを再学習しやすくし、筋シナジーの改善を促します。歩行中に適切な筋活動を感じるために、視覚的フィードバックやミラーを使用すると効果的です。

C. 電気刺激療法(FES: Functional Electrical Stimulation)

  • 目的: 特定の筋肉の活動を促し、歩行中の異常な筋シナジーを抑制する。
  • 方法: 歩行時にFESを使用して、足関節背屈や膝の伸展をサポートします。これにより、適切な筋シナジーが形成され、より自然な歩行パターンを促します。

脳卒中患者の病的筋シナジーに対して介入する際のポイント

脳卒中患者に対するリハビリを進める際、病的筋シナジーを改善するための治療には、いくつかの重要なポイントがあります。これらのポイントを押さえることで、新人療法士でも効果的なリハビリテーションを提供できるようになります。

1. 患者の個別性を考慮する

脳卒中後の病的筋シナジーは患者ごとに異なるため、リハビリ計画は個別にカスタマイズする必要があります。患者の症状や能力に応じて、どの筋群に焦点を当てるかを決定し、適切な介入を選択することが重要です。

2. 段階的なアプローチを取る

治療は段階的に進めることが重要です。初期段階では、患者が過剰な筋緊張を和らげ、病的な動作パターンを抑制するための基本的な運動から始め、徐々に難易度を上げます。例えば、座位での安定性を確保してから、リーチ動作や立位でのバランス訓練に進むと良いでしょう。

3. 適切なフィードバックを提供する

患者が自身の動作パターンを理解し、改善するためには、視覚的や触覚的なフィードバックが有効です。ミラーセラピーやビデオフィードバックを使用して、患者に正しい運動パターンを視覚的に確認させると、効果的な学習が促進されます。

4. タスク指向型訓練を取り入れる

実際の日常生活で必要な動作を反復的に訓練するタスク指向型訓練は、病的筋シナジーを改善するために非常に効果的です。具体的には、コップを持つ、ボタンを留めるなどの動作を繰り返し行わせ、日常生活の中で使用する筋シナジーを再学習させます。

5. 協調性を高める訓練を行う

病的筋シナジーを改善するためには、筋肉同士の協調性を高める訓練が必要です。たとえば、リーチングやクロスモビリティエクササイズを行い、上肢や体幹、下肢の筋肉が連携して動くことを意識させることで、運動機能が向上します。

6. 患者のモチベーションを高める

リハビリを続けるためには、患者のモチベーションが重要です。達成可能な短期目標を設定し、患者が小さな進歩を実感できるようにしましょう。また、治療中に肯定的なフィードバックを与えることも、患者のやる気を引き出すために効果的です。

7. 家庭での自主トレーニングを促す

リハビリテーションの効果を最大化するために、患者が自宅でできる簡単なエクササイズを指導することも大切です。これにより、病的筋シナジーの改善が持続し、患者の回復をサポートします。自宅での訓練の進捗状況を定期的に確認し、必要に応じてアドバイスを与えることが重要です。

これらのポイントを踏まえて治療を進めることで、新人療法士でも効果的に脳卒中患者の病的筋シナジーに対するリハビリを行うことが可能になります。

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