【2024年最新版】長・短下肢装具のメリット・デメリットは何? 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
装具のメリットデメリット
今回の記事では以下のメリットデメリットの詳細や、そもそもの装具の目的などを具体的に解説していきます。
利点 | 欠点 |
---|---|
1. 安定性とバランスの向上 | 1. 不快感や皮膚刺激の可能性 |
2. 短縮や変形の予防 | 2. 運動範囲と機能の制限 |
3. 転倒やけがのリスク軽減 | 3. ブレースへの依存 |
4. 筋力の低下に対するサポート | 4. 過度の依存による筋萎縮 |
5. 歩行能力の回復を助ける | 5. 費用とアクセスの問題 |
6. 歩行と姿勢の改善 | 6. 着脱の困難 |
7. 自信と自立の向上 | 7. 潜在的な心理的影響 |
8. 個々のニーズと快適さに合わせてカスタマイズ可能 | 8. 定期的なメンテナンスと調整が必要 |
論文に入る前に
装具の目的は?
装具の目的は、急性または長期的な損傷や障害時において機能の効率を高めることです。
これには、軟部組織や骨の損傷、および神経学的変化が含まれます。
装具は、筋力強化やストレッチ、歩行やバランスの再訓練、手を伸ばしたり握ったりする方法などの理学療法の補助手段として有効です。
必要な装具のタイプを決定する前に、以下の8項目について検討を行うことをお勧めします。
-
患者の目標は何か?
- 患者がどのような機能回復を望んでいるか、具体的な目標を明確にします。
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患者の機能に影響を与えている特定の障害は何か?
- 頭からつま先までの歩行分析を行い、機能障害の特定を行います。
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障害は軟部組織の変化の結果なのか?セラピーによって変化させることができるか?
- 障害が軟部組織の変化に起因している場合、理学療法で改善できるかを評価します。
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歩行補助具は必要なのか?
- 装具以外に、杖や歩行器などの補助具が必要かどうかを検討します。
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保護すべき運動や部位は何か?
- 特定の運動や体の部位を保護する必要がある場合、それに対応した装具を選択します。
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装具は活動の効率を向上させることができるか?
- 装具が日常活動の効率をどの程度向上させるかを評価します。
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患者はどのような補助具に適応できるか?
- 患者が装具に適応できるか、装着の容易さや快適さを考慮します。
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装具は、患者のニーズに応じて、既製品またはカスタマイズすることができるか?
- 患者のニーズに最も適した装具が既製品かカスタム型かを判断します。
既製品かカスタム型か?
ー”既製品”の装具ー
多くの患者は、既製の装具を利用することができます。これらの装具は患者のサイズに合わせて調整可能で、小、中、大のサイズがあります。ベルクロストラップなどでサイズを調整し、軽い素材で作られていることが多いです。これらはカスタム装具を作る前に、療法士や技師装具士の見解を確認するための評価にも適しています。
ーカスタム型ー
人によっては、より複雑な怪我や複数の関節構造への変化に対応するために、カスタマイズされた装具が必要となります。
これは特に、脳卒中、脳性麻痺、パーキンソン病などの神経疾患や、外傷性脳損傷などに当てはまることがあります。
これらのケースでは、筋肉の痙縮・クローヌスが患者の機能に影響を与える可能性があります。
装具は、痙縮の影響を改善したり、拘縮のリスクを減らしたりするために、安静時と運動時の両方に使用することができます。
この場合、装具は個人に合わせて特別に測定され、成長(小児の場合)や関節構造の変化に合わせて再作成されることになります。
メリットは?
歩行の遊脚相と立脚相の両方に影響を与える
変形の予防や修正、体重負荷時の痛みの軽減
歩行の効率化とバランスの維持
支持基底面/側方支持の向上
同側および対側の手足の補正の必要性と二次的な痛みの軽減
スキルのトレーニングを促進する
上肢
怪我をした後に使用することで、さらなる怪我を防いだり、怪我をした手足を支えることで痛みを軽減する
変形を防止または修正することで、痛みを軽減し、手を伸ばしたり掴んだりする作業の機能を最大化する
リーチや把持の効率性を高める
負傷した手足の治癒を促進するための負荷軽減
同側および対側の手足の補正の必要性と二次的な痛みを軽減
バランス維持における上肢の役割の向上
脊椎骨折などを安定させて、患者が通常の活動に戻れるようにし、脊髄を保護できます。
脊椎装具は、脊椎骨折をサポートするために使用することができます。
装具を着脱する際の患者さんの姿勢について、明確な指示があることが重要です。この指示は、CT、MRIスキャンと、脊椎骨折の安定性に関する多職種間の話し合いに基づいて行われます。
デメリットや注意すべきポイントは?
①感覚の喪失(定期的に皮膚をチェックして、圧迫される部分がないか確認してください)
②同側または対側の手足の代償
③痙縮への影響
④不適切な角度での設定による合併症【足の変形、立位での膝の屈曲の増加、筋肉の過剰収縮など】
⑤感覚のフィードバックの欠如、固有受容感覚の喪失
⑥可動域の制限
⑦自然な衝撃吸収が失われ、長期的な関節の損傷を引き起こす
他にも考慮すべき視点
・見た目
・素材
・重さ/硬さ
・脱ぎ履きのしやすさ
・代償への管理/教育
・装具の種類
まとめ
メリット | デメリット |
---|---|
1. 安定性とバランスの向上 | 1. 不快感や皮膚刺激の可能性 |
2. 短縮や変形の予防 | 2. 運動範囲と機能の制限 |
3. 転倒やけがのリスク軽減 | 3. ブレースへの依存 |
4. 筋力の低下に対するサポート | 4. 過度の依存による筋萎縮 |
5. 歩行能力の回復を助ける | 5. 費用とアクセシビリティの問題 |
6. 歩行と姿勢の改善 | 6. 着脱の困難 |
7. 自信と自立の向上 | 7. 潜在的な心理的影響 |
8. 個々のニーズと快適さに合わせてカスタマイズ可能 | 8. 定期的なメンテナンスと調整が必要 |
機能的電気刺激との併用
中枢神経系の障害や病気を持つ患者では、機能的電気刺激【FES】を動的装具として使用することが可能であり、安全である場合があります。
末梢神経の電気信号をシミュレートするために、多くの筋群に使用することができます。
筋力低下による下垂足や膝の過伸展の衝撃を軽減するためによく使用されます。また、FESが筋肉の強化に寄与するという証拠もいくつかあります。
このようにして、FESは患者の転倒リスクを低減し、QOLスコアを向上させることが示されています。
機能的電気刺激の記事は↓↓↓
一般の方向け解説動画
装具に関する論文紹介
カテゴリー
装具系
タイトル
下肢装具使用のメリット・デメリットNon-velocity-related effects of a rigid double-stopped ankle-foot orthosis on gait and lower limb muscle activity of hemiparetic subjects with an equinovarus deformity.?PubmedへStefan Hesse et al.(1999)
本論文を読むに至った思考・経緯
回復期に勤めるにあたり、装具のメリット・デメリットを理解すべく、本論文に至る。他論文で得たものと合わせて検討する。
論文内容
研究目的・方法
•この研究は、明白な機能的利益があるにも関わらず、AFOの使用を躊躇するセラピストに対し、そのメリット・デメリットを示すべく、AFOおよび裸足で歩行する片麻痺患者における下肢筋肉の筋活動について研究した。
•本研究では、麻痺側下肢の筋活動に特に重点を置き、硬性の短下肢装具(AFO)の効果を検討した。装具は80°(背屈-10°)から90°(中立位置)の範囲に設定された。背屈はばねによって補助される。
結果
•歩行において、麻痺下肢の単脚支持期の持続時間を長く、スイングの対称性を良好にし、足関節の動きを改善させる等よりダイナミックでバランスのとれた歩行と関連していた。
•麻痺側下肢の足底の荷重面積は、装具の使用で44.2%増加し、非麻痺側も30.4%増加した。 下肢の荷重率の著明な変化は観察されなかった。
•装具は、より動的でバランスのとれた歩行をもたらし、外側広筋の機能的活性化が促進されたが、前脛骨筋の活性低下が観察された。長期装着により、前脛骨筋などの活性低下と廃用萎縮、装具への依存などが懸念される。
他論文による追記
•AFOを有する患者は、AFOを使用しなかったグループの患者と比較して、有意に高いFIMを有した。AFOを有する患者は、使用しない患者よりも独立した運動を行った。
Effects of Ankle–Foot Orthoses on Functional Recovery after Stroke: A Propensity Score Analysis Based on Japan Rehabilitation Database(2015)
•長期的に見ると、AFOを使用し自宅に帰られた群の方が、FIM・バランスなどスコアが低下したと報告する文献もある。
Physical and functional correlations of ankle-foot orthosis use in the rehabilitation of stroke patients.(2001)
私見・明日への臨床アイデア
•退院後に装具とどう付き合っていくかということが重要になると思われる。
•自宅外では装着するが、外で長く着けていたから自宅では外したい、自宅内では衛生・浮腫・装具が重い等様々な理由から外したいという方も多いと思われる。
また、装具を着脱するのに時間がかかるというのは、面倒だと感じることがある。そのため、生活する際に装具を外すことが原因となることがある。その結果、入院中に装具を使って日常生活動作の支援を受けても、自宅に戻れば素足での日常生活動作が求められることになると思われる。
その状態で動作することで、姿勢不良や緊張が高まってきてしまうなど身体機能に変化が出てくるのではと思われる。
また、装具を装着しての生活を維持できていても、装具にて補う部分の廃用進行が懸念される。どちらにせよ、退院後の定期的なリハビリでのケアが必要なのではないかと思われる。
•装具を提案するのはエビデンスからも悪い事ではない。しかし、装具を装着して退院へ向かうのであれば、その後長い人生が待ち受けるため、そこまで考えて退院後の指導をした方が良いと思われる。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)