脳卒中リハビリテーションにおける論文読解と臨床応用 ヒトの脳と運動制御~脳の理解とリハビリテーションの発展のために~高草木薫 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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脳卒中リハビリテーションにおける論文読解と臨床応用 ヒトの脳と運動制御~脳の理解とリハビリテーションの発展のために~高草木薫

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金子コメント:今日は日本語の論文からの臨床アイデアですね。もう随分前の論文です。当時は高草木先生が研究部門からリハビリテーションの分野に積極的に関わり始めた初期だったと思います。
美しいビジュアルのfigureなど、医師・研究者でありつつアーティストのようにこだわる姿勢は本当にすごいですね。

今日は脳の全般に対する表面的なアイデアです。いっぱい出しているようですが、アイデアが生まれても臨床は上手くなりません。臨床で活用してみてうまくいくところ、いかないところを何度も整理しながら継続するしかありませんね・・・

 

本文contents

文献抄読と治療への応用

ヒトの脳と運動制御~脳の理解とリハビリテーションの発展のために~高草木薫:長崎理学療法:2006の一文を抜粋して治療への応用を考えたいと思います。

論文は→こちら

 

 

以下抜粋

姿勢制御に必要な3つの条件

 

 

1重力環境下において定常的に身体の平衡維持を可能にすること

2目的とする運動や行動に随伴する姿勢反応(姿勢反射と姿勢筋緊張)を誘発すること

3姿勢制御の仕組みが適応的であり、即ち、姿勢制御を獲得する認知と学習の過程が適応的な行動を発現する神経基盤である

 

最近は膨大すぎる量の論文を読むよりも、論文の数行でもいいから治療にどう応用できるかを考えています。

1については、おもに脳幹網様体レベルでの姿勢活動と捉えれるのではないでしょうか?

つまり、重力に負けない筋緊張を保つことだと思い、除脳猫の実験のように、重力に打ち勝つだけの能力で言えば脳幹機能で十分担えるというところです。

 

<臨床応用>

1

 

視覚情報や言語情報を入れないで、純粋に接触のリファレンスや姿勢場面の変更(臥位or坐位or立位or四つ這いなどなどのどの場面でセッティングするか?どう組み合わせるか?(臥位立位あるいは、立位から始めて坐位など)あるいは治療の時間帯などの工夫)また、corestabilityへの介入による内臓や呼吸などの安定

を中心に踏まえた治療が必要だということ考えました。

 

患者さんで重力に打ち勝てないくらい屈曲を強めて座れない患者さんや、立位姿勢を保てない患者さん(特に急性期の患者さんやパーキンソン病患者さん)などには上記のような脳幹レベルでの処理を踏まえたセッティングの方を考察して組み入れた方が効率的だと自分は考えています。

 

2はより脳幹よりも上の基底核や小脳といった調整系のシステムを踏まえた治療展開が必要なのではないかと考えました。

 

<臨床応用>

2

 

大脳基底核(basal ganglia)の作用は、あらゆる情報から適切な情報処理を選択する抑制作用やそれを取り除く脱抑制作用なので、治療で考えると・・・

患者さんによると思いますが、例えばジスキネジアが過剰なパーキンソン患者さんには、薬物治療と同時に、どのような情報が入るとジスキネジアが弱まるのかを評価する必要があります。

自分の経験の中で、

・筋からの感覚情報が適切に入ると落ち着くタイプの患者さん(足底感覚が得やすいようアライメントを改善したり、腹部のinstabilityを徒手的に改善することで、不安定性が改善し、ジスキネジアが弱まる患者さん)

・視覚情報が入ると落ち着く患者さん(例えば、「そこの車いすに座りましょう」と支持して、車いすを見て運動に企画された瞬間にジスキネジアが落ち着く患者さん)には視覚情報を工夫した治療が重要です。

ジスキネジアが原因で歩行がふらつく患者さんに、トイレまでのちらかっていた導線を整理して、伝い歩きがしやすい条件下を作ると、わざわざ伝わなくても、安心感からかジスキネジアが軽減した患者さんを経験したことがあります。

 

・聴覚情報でも意識的に止められる患者さん(家族の患者さんへの声掛けの仕方やタイミングの工夫で軽減した患者さんがいました。)

などなど、患者さんの個性を見抜いた治療が重要だと思います。外界や本人の意図とする情報を適切に処理できる感覚情報の提供がセラピストに求められると思います。

 

中脳から大脳基底核に投射するドーパミン作動系の働きを意識するならば・・・

「快」「不快」を考慮した治療が重要だと思います。もちろん言語による称賛から、気持ちよく座れたり寝れるような環境のセッティングなどのアイデアも生まれます。

 

一方小脳はリアルタイムに感覚性フィードバックを用いて正確な運動を制御を可能にしてくれるので

 

<臨床応用>

3

位置覚や運動覚、触覚や圧感覚、固有受容感覚を正確にフィードバックできる条件づくり、例えば、筋のアライメントを修正したり、関節覚が入りやすい骨的なアライメントの修正、単に静的なフィードバックだけでなく、運動を介したフィードバック(方向やタイミング、適度な出力の調整など)に工夫が必要なのではないでしょうか?風船やスポンジなどは筋出力の調整が視覚でフィードバックできるので使えると思います。もちろん視覚に頼らない筋出力も段階的に調整していく必要があるのではいでしょうか?

 

3はより大脳皮質(cortex)の認知過程を考慮した治療が重要になるのではないでしょうか?

つまり随意運動を交えた治療を中心にしながら、思考、理性、社会性、空間認知、言語、道徳、記憶、注意などの過程を意識した治療です。

 

<臨床応用>

5

多くのアイデアがあると思いますが、認知神経リハなどの概念はかなり参考になるのではないかと思います。認知と姿勢制御なので、例えば起き上がりなどでの手順の整理や各パーツへの意識、どれくらいの筋や圧情報を知覚しているか?起き上がっていく際のベッドスペースの考慮、起き上がる前のメンタルプラクティスなど・・  

ただ大脳皮質の活動は辺縁系や脳幹などの古い脳との相互作用により維持されていると高草木先生は述べられているので、意識障害があったり、体幹がぐらぐらの低緊張で座れないような脳幹レベルの制御がうまくいっていない患者さんには、認知過程からの治療には注意が必要なのではないでしょうか(患者さんによると思いますが・・・)?

 

今回まとめたことで、より実感したことは、患者さんの主要問題点がどのレベルなのか?ということを捉え、それに直結した効率的な治療を選択することがセラピストには重要であるということをあらためて認識できました。

 

 

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