Vol.2: めまい・眼振に対する理解とリハビリアイデア 脳卒中/脳梗塞論文サマリー
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執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
内容
今回はめまいに関連する論文です。最近は日本の教科書でも前庭を取り扱うものが出てきていますが、6年前は皆無でした。
一方で海外ではvestibular rehabilitationという数百ページにも及ぶ教科書があり、日本との差を感じていたことを覚えています。
僕はメニエールなどの患者さんを担当することはないですが、脳血管に伴うめまいの方は多く担当してきました。その方にはやはり頭部や眼球などの調整がとても重要になりますし、即効性もかなりあります。頭頸部の伸展位で頸部を回旋して眼振を評価するなど、様々なアプローチがあります。
是非勉強と患者さんへの応用を実施してリハビリテーション領域を拡大させていくべき分野であると思います。ちなみに本文の日本語の図をより詳細に書いている図を発見したのでいかに添付しておきます。各脳領域で生じる平衡に関連する病態が整理されてあるので参考にしてみてください。
論文は→Towards a concept of disorders of “higher vestibular function 2014
前庭の機能が整理されてあり非常に読みやすくお薦めの論文と言えます。
また入力の3大システムをバランスにより整理してある図があったので掲載します。
下記の図から考える重要な事は「頭部の位置」×「眼球」×「身体の姿勢」を組み合わせてセラピーすることだと考えます。
本文contents
めまいの発生機序と姿勢制御
月1回のMRIカンファが近く、自分は小脳障害に生ずる「めまい」について勉強することになりました。
文献を調べていると面白い文献を見つけました。
「めまいの発生機序と分類」
角南貴司子・山根英雄大阪:医学と薬学・第58巻第2号・2007年8月
抜粋↓
「めまい」とは,前庭系,視覚系,体性感覚系よりなる体平衡系の不一致または矛盾により生じる症状である。
どこかで聞いたことのあるフレーズです。
そうです ・・・バランスの定義と同じなのです。
healthy persons rely onsomatosensory (70%), vision (10%) and vestibular (20%)information.
健常人は体性感覚(70%)、視覚(10%)、前庭系(20%)でバランスを担っている。
Peterka RJ.Sensorimotor integration in human postural control.
J Neurophys 2002; 88: 1097–118.より
以下図 ↓
上記の図を整理してみて興味深いところは??
①頭頂ー側頭皮質がめまいを認知
これは姿勢制御で考えると、平衡制御やステッピング戦略といった、大脳皮質で担われるバランス戦略と照らし合うことができます(勝手ですが・・・)
確かに「眼が舞う」と認知してはじめて「めまい」となるのですから、頭頂葉や側頭葉皮質の関与には納得します。
②脳幹の障害では「眼振」
眼振は認知できないので、脳幹レベルで納得できます。
ここはバランス戦略では「立ち直り」に相当する部位です。立ち直りは認知する前のバランス戦略ですし、頭部の立ち直りはかなり前庭一眼反射(VOR)が重要となるので、眼振と照らし合うことができます。
③脊髄の障害は「失調」
「前庭一脊髄反射は脊髄小脳(小脳前葉,下部虫部,前庭小脳より構成される)により制御されている。としています。」
脊髄レベルのバランス制御は、伸長反射や屈曲、伸展反射などをでしょうか?失調と組み合わせることはよくわかりませんが、上記から単なる脊髄反射ではなく、前庭系と組み合わせた脊髄反射のことを書いていることがわかりました。
以下は↓バランス制御を階層的に図面化したものです。
・皮質レベルのバランス制御をlong latency
・脳幹レベルのバランス制御をmediam latency
・脊髄レベルのバランス制御をshort latency
としています
ちなみに今担当しているパーキンソン病患者さんは、立ち直り(中脳レベルでの制御)はまったくでませんが、皮質は障害されていないのでステッピングはでます(かなり遅いですが←おそらく大脳基底核loopの障害のためだと思います。)
めまい・眼振に関する関連論文はこちら
●vol.69:前庭機能障害と高次脳障害の関係!? 脳卒中(脳梗塞)リハビリに関わる論文サマリー
●vol.69:前庭機能障害と高次脳障害の関係!? 脳卒中(脳梗塞)リハビリに関わる論文サマリー
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)