前大脳動脈領域の出血に対するボバースアプローチ: 脳卒中(脳梗塞・脳出血)片麻痺のリハビリ
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金子コメント:今日は「覗いてみたい!!セラピストの頭のなか」シリーズですね(^^)。
7年前当時は画像と良く「にらめっこ」しながら、症例の症状と画像の照合を良くやっていました。もちろん今も自費ですが、画像データをお持ちの方には持ってきてもらい確認しています。
当時の患者さんのことはよく覚えています。詳細は下記に任せますが、今思うと意識障害のような少しボーッとしていた印象は、帯状回への侵入に伴う意欲減退や感情鈍麻だったのかと・・この部分は中心傍小葉あたりなので4野にも1野や5野にも当たってきますね。
運動も感覚も両者を考える必要がありますが、下肢に運動障害が強くなることは間違いなさそうです。脳梁失行を調べたのですが、古い論文ばかりひっかかりますね→こちら つまり現代で脳梁失行と診断をつける神経内科医はかなり減っているのかもしれません。
後大脳動脈領域で脳梁が障害されると書いてある文献もありましたが、前大脳動脈領域でも枝は伸びているみたいです→こちら
本文contents
重度麻痺の患者さん?
今日は新患さんが出たのでベッドサイドへ訪問。 訪問前に既往と画像を確認。 脳出血による右片麻痺。上肢、下肢ともにMMT0から1レベル。表在感覚は軽度鈍麻、深部感覚は重度鈍麻・・・と医師のカルテにあり。 画像は↓ image
上記のような画像
上記から
・前大脳動脈領域の脳出血 で、内包後脚や放線冠のような錐体路線維をダイレクトにやられていない
・左頭頂葉出血なので、高次脳機能障害が予測される(失行など)
・出血は頭頂葉の内側よりなので下肢優位か? などを予測・・・
患者さんのベッドサイドへ伺うと。表情が硬いが、あいさつはでき、応答や日常会話の比較的スムーズで流暢な会話。
失語の影響は少なそう・・(やはり左頭頂葉であっても内側よりだから、側頭葉との連携障害は少ないと納得(´∀`)
指示による随意性を確認 「右が動かないんです」と言い・・・肩や肘、手首の運動は0です。
しかし、手指は中等度の屈伸やぎこちないが分離運動が可能・・・ 下肢は足部も動かない・・・画像通り下肢の症状が強い。
しかしこの手指の能力。
皮質脊髄路「背外側脊髄路系」の影響は少ないか?と予測 そうなると、画像と現象から、この肘や肩も運動線維というよりも感覚線維の障害が大きくて麻痺症状に見えるのではないか?と予測
ここで プレーシング評価!! やはりプレーシングへの追従がめちゃくちゃ早い!
これは皮質脊髄路が直でやられているひとにはありえない(((( ;゚д゚)))
つまり、感覚、知覚は良好、認知機能に疑いあり・・・ 感覚チェック!!
表在は軽度鈍麻。運動覚、位置覚を確認・・・ 運動感覚は正答率もよい。
固有受容感覚はやはり効いている。
しかし、 位置感覚は、正答率が悪いです。
チェックの仕方が、麻痺側の位置を非麻痺側で真似してもらう方法で行ったのです。
つまり、非麻痺側に変換する際に何らかのエラーがあるのでは?
言語ではピースのような形を説明できています、 非麻痺側のチェックをします。
非麻痺側で「ピースなのでやってみてください」と尋ねると 「ピース・・・・??」
ピースの言語的な意味はわかっているようですができません。
麻痺側のピースを見てもらい、非麻痺側で真似してもらうと時間がかかるがなんとか可能。 (聴覚情報から意味記憶と照合し、概念化していくことが難しいようです。
(視覚だと時間はかかりますがなんとか可能でした。これは聴覚情報と運動との統合が苦手ということから画像の内側よりの出血とは矛盾します。
視覚から頭頂葉への線維は障害は少ないということは画像と矛盾しない。
このような考え方は自分流なので皮質下の連絡線維を考えればどちらも矛盾しないと思います)
このことから非麻痺側に失行が出現しやすい脳梁失行を予測。
↑石合純夫:高次脳障害学より今日は訪問と軽い検査だったので、細かい治療はできませんでしたが、検査から、視覚情報を豊富に用いながら左右のintegrationを行っていきました。
(左で運動をやってもらったあと、右上肢の運動をやってもらったり、セラピストの模倣を交えながら逆も・・・その後、両手でタオルをたたむなど実際のADLをアシストしながら実施)。
わずか5分程度でも肩や肘の屈伸は50%程度できるようになりました。
やはり動かなかった肩や肘も麻痺の要素は少なかったです。
月曜からは、安静度が上がっていれば立位での下肢機能チェックや細かい道具操作も見てみようと思います。
下肢もMMT0で動いてはいませんが予想は、床反力がしっかり入れば、下肢の出力がでるのではないでしょうか?
「あら?歩けるわね?」というコメントが出るのを期待しています。(´・ω・`)
*Tap up TVにて僕の講義と実技が公開されています。あと2本公開される予定です。お楽しみに。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)