Vol.420.麻痺手は自分で思うより力が出ていない?筋出力マッチング課題での主観と実際の不一致
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カテゴリー
タイトル
●麻痺手は自分で思うより力が出ていない?筋出力マッチング課題での主観と実際の不一致
●原著はEffects of Weakness on Symmetrical Bilateral Grip Force Exertion in Subjects With Hemiparesis こちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●手の麻痺を有する脳卒中患者様に関わることが多く、患者様の臨床像をより理解する学習の一助として本論文に至る。
内 容
背景
●両手の力を一致させる課題では、片側の手に弱さを有する被験者は、同じ力を発揮していると主観的に認識しているにも関わらず、弱い側に出力低下が観察されることが示されている。
●研究目的は、片麻痺の被験者が両側の最大握力課題中に非対称の力を生み出したかどうか、およびこの非対称性が麻痺した四肢のweaknessに関連しているかどうか、また体性感覚障害の影響はあるかを検証することであった。
方法
●片麻痺患者15人の健康な被験者15人がこの研究に参加した。次に、被験者は、2つの動力計を使用して、まず、非麻痺手または利き手から始め、両手で交互に3回の自発的な最大握力を生み出した。試験間に1分の休止期間を設け、測定の最後に5分の休止期間を設けた。次に、被験者は、3つの準最大力レベル(最高値の約25、50、および65%)で両手で同時に等しい握力を発揮するように求められた。
指示内容☞「最初の音が聞こえたら、両手でハンドルを弱く(または中程度・強く)握ります。 2番目の音が聞こえるまでこれらの等しい力を維持し、次にそれらを解放するようにしてください。」
結果
●両手での課題では、力の比率は(麻痺側と/非麻痺側または非利き手と利き手)はグループ間で異なっていた。
●重度麻痺の被験者は、軽度麻痺の被験者と健康な被験者よりも力の差が大きくなったが、軽度麻痺の患者と健康な被験者間では力の比には違いはなかった。
●片麻痺の被験者では、両手間の課題の力の比は最大の随意的な筋出力の比に関連しており、体性感覚障害の存在はこれらの関係に影響しなかった。
私見・明日への臨床アイデア
●麻痺手の随意運動をする際に、麻痺の程度の重い方ほど手の練習をしていても他の部位に力が入る、非麻痺側が頑張っているなど上手く麻痺手単独で運動できない方は多い。単純に麻痺側主動作筋の随意性の問題、拮抗筋の過緊張や短縮等の影響による麻痺側の出力の相反的抑制、非麻痺側の過活動による半球間抑制、課題難易度が高いなどもあり得る。麻痺の程度から達成できそうな目標を定め、何を抑制すべきで、何を促通すべきなのか丁寧に評価して介入することは重要。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)