Vol.421.非麻痺側への不快刺激を与えるインソールで対称性が改善する?姿勢対称性に対するアプローチの提案
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カテゴリー
タイトル
●非麻痺側への不快刺激を与えるインソールで対称性が改善する?姿勢対称性に対するアプローチの提案
●原著はThe Effect of a Single Textured Insole in Gait Rehabilitation of Individuals With Strokeこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●非麻痺側への不快刺激という今まで実施したことのない手法での介入に、興味を持ったため。
内 容
背景
●脳卒中による片麻痺を有する人は、非麻痺側下肢への依存が強まり、バランスと歩行の非対称性に繋がります。文献上では、地域在住の脳卒中者の約30%が、従来のリハビリテーションへの参加後も歩行の非対称性を示し続けていると報告されている。これは、従来のリハビリテーションが歩行の対称性を回復するのに効果的でない可能性があることを示唆し、歩行の非対称性の軽減に焦点を当てた新しいリハビリテーションアプローチの開発が推奨されます。
●アプローチの1つとして、片側に突起のついたインソールを使用することです。非麻痺側への不快感を引き起こすことで、麻痺側への負荷を増加させる「負の」フィードバックを提供する。以前の研究の結果では、突起のあるインソールを使用した結果、脳卒中者の歩行対称性が改善される可能性があり、改善が短期間持続したことを示しましたが、観察された改善が長期間にわたって維持されているかどうかは不明でした。
●したがって、研究目的は、突起のついたインソールを使用し、脳卒中者で歩行対称性が改善されるかどうか、および改善が維持されるかどうかを調査することでした。
方法
●非対称性の立位を示した26人の脳卒中患者は、主治医から紹介され、脳卒中片麻痺患者10人(男性6人、女性4人)が、体重負荷評価の結果に基づいて研究に参加することが決定した。年齢は59.33±5.12年、体重は86.64±14.92 kg、身長は1.70±0.10 mおよびFugl-Meyer下肢スコア(FMA-LE)は60.78±3.01であった。7人は右半球に病変があり、3人は左側に病変があった。脳卒中発症からの時間経過は6.28±2.75年でした。個人個人はランダムに実験群と対照群に割り当てられた。
●実験グループに含まれる患者には、小さなピラミッド型の突起(高さ3 mm)が埋め込まれたインソールが提供された。実験群は、理学療法セッション中にインソールを着用した。 対照群にはインソールは提供されなかった。参加者全員が同様の6週間の理学療法を週3回60分間受けた。
●参加者は、リハビリテーション介入前、治療の6週間後および介入の終了後4か月で同一のテストを受けた。すべてのテストはインソールなしで行われた。 立位での体重負荷の評価は、フォースプラットフォームシステム(バランスマスター:NeuroCom International)を使用して評価され、歩行は4.5mのGaitRiteウォークウェイ(CIR Systems Inc.米国ペンシルバニア州)を使用して評価された。 臨床評価には、FMA-LE、Timed-Up and GoテストおよびABCスケールが含まれていた。
結果
●すべての患者は、最初のテスト時に非対称の体重負荷率を示した。麻痺側への平均体重負荷率は、両方のグループの介入で増加した。 6週間の治療終了後、実験群では麻痺側体重負荷率(%)は48.90±6.51%、対照群では45.50±7.32%に達した。4か月後の体重負荷率は、実験群と対照群でそれぞれ体重の46.31±8.35%と42.25±6.74%でした。
●麻痺側の体重負荷は、介入後と比較し4か月後のテストで減少しましたが、減少は有意差がないことが明らかになった。治療開始前は、実験群と対照群の歩行速度は、それぞれ40.27±3.01および44.96±8.2 cm / sでした。グループ間の差は統計的に有意ではなかった。治療後、歩行速度は実験群で増加し、45.2±4.33 cm / sに達したが、対照群では変化しなかった(44.95±6.99 cm /s)。終了後4か月のテストの結果では、実験グループで歩行速度が増加し、さらに53.49±4.41m /sに達したことが示された。同時に、対照群の保持期間中の歩行速度は同じであった(44.40±8.02 cm/s)。TUG、ABC、またはFMA-LEスコアへの介入の影響はありませんでした。
【完全版】ヒューゲルメイヤー評価/上肢編/FMA/fugl meyer assessment/脳卒中↓↓↓ https://youtu.be/kJHzElQSmvM
●今回の研究での主な発見は、非麻痺側の靴に突起のあるインソールを使用することで体重負荷の対称性、歩行速度、および歩行対称性指数の改善が見られたことであった。突起付きインソールを6週間使用した脳卒中者は歩行速度を改善しましたが、対照群に含まれる参加者は改善しなかった。 さらに、歩行速度は、インソールを使用しなかった4か月間の保持期間でさらに改善された。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中片麻痺患者へのインソールの効果の報告は増えてきている。脳卒中者では感覚障害や痙縮・麻痺の影響等もあり、整形疾患の患者が使用する1mm~3mm程のパッド等では十分な効果を示さない可能性もあり得る。インソールでの麻痺側・非麻痺側への構造的な問題への介入や感覚入力からの上行性の姿勢連鎖の促通と明日からの臨床にて挑戦していきたい。
図参照:Chicago Tribune:Stroke patients’ walking improved with insoles – Chicago Tribune
脳卒中後の感覚障害に役立つ動画
https://youtu.be/wawfqtshER8
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)