Vol.441.MoCAは歩行能力との相関がある!?認知症スクリーニングスコアと三次元歩行分析による歩行パラメーターとの相関
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タイトル
●MoCAは歩行能力との相関がある!?認知症スクリーニングスコアと三次元歩行分析による歩行パラメーターとの相関
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●認知症患者の数は増え、転倒との関連も言われている。実際、認知症により歩行のどのようなパラメーターに影響を与えるのか学びたいと思い本論文に至る。
内 容
背景
●過去数十年にわたり認知機能低下の患者の歩行障害はかなりの注目を集めています。ただし、認知症の歩行障害はしばしば過小診断されます。The Mini Mental State Examination (MMSE)は認知症の最も広く使用されているスクリーニング検査であり、the Montreal Cognitive Assessment(MoCA)は軽度認知機能障害(MCI)のより正確な評価のために開発された。本研究目的は、歩行能力と認知症のこれらのスクリーニング検査のスコアとの相関関係を調査することでした。
方法
●MCI患者18名と初期段階の認知症患者19名を募集した。すべての参加者は、認知症のスクリーニング用に開発されたMMSEおよびMoCAの韓国語版(それぞれMMSE-DSおよびMoCA-K)と認知機能を決定するための神経心理学テストを使用して検査された。
● 3次元動作分析装置を使用して、すべての参加者の歩行を客観的に測定しました。スクリーニングスコアと歩行パラメーターの相関を評価しました。
結果
●MoCA-Kスコアは、歩行速度および歩幅と有意な相関がありました。年齢を調整した後、MoCA-Kスコアは歩行速度と相関したままでしたが、MMSE-DSスコアと歩幅は相関していませんでした。神経心理学テストは、歩行速度と歩幅が記憶と前頭葉機能と有意に相関していることが明らかとなりました。
●MoCA-Kは、MMSE-DSよりも認知機能低下のある患者の歩行状態をより正確に反映していることがわかりました。
●結果は、MoCA-KがMCIとADを区別でき、歩行状態と前頭葉機能の定量化に使用できることを示しています。天井効果はMMSE-DSよりもMoCA-Kは小さいため、MoCA-Kは歩行状態を決定するためのより良いツールである可能性があります。実際、本研究のMoCA-KスコアはMCI間で大幅に異なりました。MoCA-Kには前頭葉機能を評価するための項目が含まれています。前頭葉の機能、特に実行機能は、人間の歩行パフォーマンスの開始と変調に密接に関連しています。
私見・明日への臨床アイデア
●前頭葉機能の低下によりAP方向の動揺が強まるとの論文も以前目にしたことがあるが、歩行速度と歩幅が前頭葉機能と相関する事が示唆された。認知機能低下の早期には,前頭前野の血流低下が関係していると言われ、歩行において前頭前野の血流が増大し歩行速度を増すと優位に増大することを報告されている。歩行速度や歩幅を広げる運動はそのような認知症初期の患者には適しているか臨床で試みていきたい。
下肢・歩行のハンドリングに役立つ動画
https://youtu.be/ObeFqDpO0vE
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)