【2022年最新版】アームスリング療法が脳卒中後の肩の亜脱臼を改善させる!?原因と治療効果まで
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亜脱臼に対するトレーニングに役立つ動画
https://youtu.be/hiKDO-vFMio
カテゴリー
タイトル
●スリング療法が肩の亜脱臼を改善させる!?急性期脳卒中患者の肩の亜脱臼、固有感覚および上肢機能に対するスリング療法の効果
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●麻痺側上肢のパワー不足という点であれば、スリングで麻痺側の重さを免荷するのも一つの手である。スリングセラピーが一般的にどのような効果が示されているのか学ぶべく本論文に至る。
内 容
背景
●研究目的は、急性期脳卒中患者における肩の亜脱臼、固有受容感覚、および上肢機能に対するスリング療法のアクティブな肩の運動の効果を調査することであった。
●肩の亜脱臼は、脳卒中片麻痺患者の頻繁に見られる合併症です。脳卒中患者における肩の亜脱臼の発生率は7〜81%であり、73%は急性期に発生します。 10か月の追跡調査で、67%の患者で肩の亜脱臼がさらに悪化することが示されています。片麻痺患者の肩の亜脱臼は、肩峰と上腕骨頭の間の距離を広げ、上肢機能の回復を遅らせ、固有感覚を低下させる可能性があります。急性脳卒中患者における上肢機能を回復するための肩関節亜脱臼の積極的な管理とリハビリは、脳卒中の発症直後に開始する必要があります。
●片麻痺患者の肩の亜脱臼を減らす試みとしてのアームスリングを使用すると、歩行中の両腕の対称的な動きが制限され、歩行が困難になる可能性がある。また、肩の関節が固定されて屈筋シナジーが増加するため、正常な感覚入力が妨げられます。
●最近では、スリング療法が使用されています。これは、体の一部をスリングにぶら下げることで重力を補ったり、床との接触時の摩擦を減らして動きに対する抵抗を最小限に抑えることができます。脳卒中患者の上肢に適用される重力を調整することにより、肩関節周辺の筋肉に選択的な活動的な筋収縮を誘発することができます。フィルは、肩関節周辺の筋肉の活発な収縮による筋力強化が肩の亜脱臼を減らすために重要であると報告しました。
方法
●急性期脳卒中患者かつ肩関節亜脱臼(9.5 mm以上)を有する36人の患者がランダムに2つのグループに割り当てられた。研究グループ(n = 18)は、スリングによるアクティブな肩の運動を実施し、対照グループ(n = 18)は、40分間、週5日間、4週間の両側上肢を用いてのトレーニングを受けた。介入前後のアウトカムは、肩の亜脱臼距離、肩関節の固有受容感覚、Fugl-Meyer評価(FMA)および手機能テスト(MFT)の測定が含まれた。ただし、急性脳卒中後の片麻痺患者の肩関節周辺の筋肉のアクティブな運動を調査した研究はほとんどありません。
【完全版】ヒューゲルメイヤー評価/上肢編/FMA/fugl meyer assessment/脳卒中↓↓↓ https://youtu.be/kJHzElQSmvM
●スリングプログラムは、肩関節周囲筋を強化するために設計された方法です。まず、座位で肘を伸ばした状態で、肩の水平内外転運動を行った。次に、肘を90°に曲げ肩の内外旋運動を行った。第三に、肘を完全に伸ばした状態で、側臥位で肩の屈曲伸展運動を行った。第四に仰臥位で肩の内外転運動を肘の伸展位で行った。吊り下げの位置と重錘(重量、1〜3 kg)が運動の強度を決定した。
結果
●研究群と対照群の比較では、介入後すべての結果スコアに有意差を示した。研究群は、対照群と比較し、肩の亜脱臼距離、肩の固有受容感覚、FMAスコアおよびMFTに有意な改善があった。
●スリングを使用したアクティブな肩の運動は、急性期脳卒中患者の肩の亜脱臼の減少、固有受容感覚の改善、および上肢機能に効果的です。
●肩の亜脱臼の距離の変化は、対照群よりも研究群で有意に大きかった(4.71±1.72mm 対 2.86±2.16 mm)。 肩関節の固有感覚の変化は、対照群と比較し研究群で有意に大きかった(3.83°±1.72°対1.56°±0.61°)。 Fugl-Meyer評価(FMA)ツールによって測定された上肢の手動機能のスコアの変化は、対照群と比較して研究群で有意に高かった(12.22±6.31 対 3.83±2.87)。MFTによって測定された上肢機能のスコアの変化は、対照グループよりも研究グループで有意に大きかった(6.39±3.05 対 2.39±1.50ポイント)。
私見・明日への臨床アイデア
●本論文でスリングを用いての上肢リハの亜脱臼の改善をはじめ効果が示された。スリングは、筋収縮はあるも自身の腕の重みをコントロールできないような方は有用であると思われる。スリングで動かせる範囲が増え、リーチ距離が伸びたりするとと意外とスリングの補助量が減じ、筋収縮で定位したりしているものである。肩が定位できてくれば、スリングなしでの空間上でのコントロール練習も進められると良い。
上肢のハンドリングに役立つ動画
https://youtu.be/yTBHRQYoa_I https://youtu.be/x6Wf2BU6pyY
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)