Vol.465.歩行時は外部焦点に意識を向けると良い?脳卒中患者の歩行時に注意を向ける先による影響
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カテゴリー
タイトル
●歩行時は外部環境に意識を向けると良い?脳卒中患者の歩行時に注意を向ける先による影響
●原著はThe effects of different attentional focus on poststroke gaitこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●歩行練習では、意識的に足を上げている患者や足元を見ている患者、ゴールを意識している患者・・と様々な注意を向ける矛先がある。その意識の違いで歩行にどの程度影響があるのか興味を持ち本論文に至る。
内 容
背景
●先行研究の多くは、注意が運動能力に影響を与える可能性があることを示している。 注意を向ける先(焦点)において特定の運動をしながら体の内部に注意を向けることを内部焦点(IF)と呼び、外部環境に焦点を合わせることを外部焦点(EF)※外の物の結果に集中する事【ボールの起動など】と呼びます。過去の研究では、EFは一般的にIFよりも運動能力に効果的であることが示されています。 バランス制御と運動学習に関する多くの研究は、EFの利点を実証しています。
●ただし、慢性期脳卒中患者の動的状態での注意を向けた研究はほとんどありません。 この研究では、脳卒中後の歩行に対するさまざまな注意の効果を調べた。
方法
●脳卒中発症後6か月以上経過した者が本研究のために選ばれた。基準は、指示理解が良好、補助具なしで自立して歩くことができ、MMSE(韓国版)で24以上のスコアの方であった。16人の被験者(男性11名、女性5名)が自発的に研究への参加に同意し完了した。
●被験者は、運動機能評価のためにBBS、MASのテストを受けた。 3つの注意の焦点の条件は①コントロール群②IF内部焦点③EF外部焦点でした。コントロール群では注意の焦点についての指示を受けていませんでした。 IFでは下肢の動きに集中しながら歩くように指示されました。 EFでは、被験者は、健康な成人の対称的な歩行サイクルに基づいて床に描かれたマーカーと線に焦点を当てて歩くように指示されました。被験者は合計14 m歩行し、開始点から7 mの距離にある120×54 cmのマット型の歩行解析装置上を歩行しました。
結果
●歩行時の注意を内部に向ける内部焦点(IF)と外部焦点(EF)で効果を比較し、EF条件でステップ長、ストライド長、歩行速度、麻痺側荷重量等の改善が見られた。IFはコントロール群と今回有意差がなかった。
●EFが動的歩行中の麻痺側下肢への荷重に役立つことを示した研究はほとんどありません。ただし、EFは静的な姿勢制御に役立つと多くの報告があります。 EFは、IFと比較して、静止立位での姿勢の揺れを軽減するようです。また、パーキンソン病患者で、EFが静止立位と歩行時に適用されたとき、姿勢の不安定さの減少を示したと報告がある。これらの結果は、EFが荷重分布の対称性に起因する歩行機能を改善できることを示唆しています。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者において歩行時は、外部に焦点を当てた方が(課題の結果、ゴールなど)歩容の改善を促通できることが示唆された。しかし、どの場所でも視覚のサポートを受けるわけにはいかない。外部に焦点を当てた感覚【結果に集中する】が内部生成出来て来る所まで練習では繋げていきたい所である。
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)