Vol.491.純粋な皮質脊髄路損傷または神経切断後の手指筋の選択的活性化の違い
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カテゴリー
タイトル
●純粋な皮質脊髄路損傷または神経切断後の手指筋の選択的活性化の違い
●原著はSelective Activation of Human Finger Muscles after Stroke or Amputationこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●純粋な運動麻痺の患者の回復過程、予後について学びたいと思い、本論文を見つけ読もうと思った。
内 容
健常者と脳卒中後の純粋な運動性片麻痺患者の手指の動きの比較
●人間の手の個々の指の動きの選択的活性化は、主に運動野から皮質脊髄路を介して制御される。では、皮質脊髄路病変によってを損傷すると、この選択性は失われるのか?
●健常者と他の経路に影響を与えずに皮質脊髄路を単独損傷したラクナ梗塞によって引き起こされた純粋な運動性片麻痺から回復した患者の指の動きを比較した。
●結果、脳卒中者では、正常な範囲を動かす能力は取り戻したが、他の指の意図しない不適切な収縮を伴った。
●脳梗塞から実質的に回復した後でも、個別の指の動きは、屈曲/伸展および内転/外転運動の両方で減少したままであった。脳卒中者は、指示された指を正常な範囲に動かす能力を取り戻したが、指の意図しない動きが増加した。意図した指を動かす筋の随意収縮は、他の指に作用してしまう筋の不適切な収縮を伴った。
●この観察は、正常な皮質脊髄路が特定の筋肉を選択的に活性化するだけでなく、特定の指を動かす自発的な努力中に他の筋肉の活性化を抑制することで指の動きを個別化していることを示唆している。
●指を動かすのに十分な強度がある場合でも、指を個別に動かすのに十分なだけ筋肉を選択的に活性化することはできません。この選択的活性化の機能低下は、反射や緊張の変化に起因するものではなく、通常、指の動きを個別化するために必要な筋活性化の選択的パターンを生成するM1からの制御の喪失を反映しています。
手内筋の末梢神経ブロック後の手指の選択的運動
●別の実験では、手の虚血性の神経ブロックにより、正常な被験者の手内の可逆的な神経切断が行われました。これらの条件下では、固有の筋への運動出力と感覚入力の両方がブロックされ、神経系から手を効果的に切断しました。しかし、指を曲げたり伸ばしする外在筋は、通常に神経支配されたままなので、指先で依然として屈曲運動することができます。
●手の可逆的な切断中、外在筋により細かな手指の動きが活性化し、個々の指先で屈曲力を発揮する被験者の能力は、本質的に正常な選択性を示し続けました。したがって、切断された手からの感覚入力の喪失および一次運動皮質内の再編成の両方にもかかわらず、切断後の残存の筋の自発的活性化は選択的であり続けました。切断後の皮質再編成中に、指の筋を対象とした運動出力の自発的なパターンは失われません。
私見・明日への臨床アイデア
●純粋な手指の神経障害の患者で、回復をしても不適切な筋収縮を伴いやすい点が、末梢神経障害の患者と違う事が示唆された。慢性期からでなく出来れば発症後早期の運動野の再編成の中で、どこまで適切な動きを引き出していけるか臨床で追い求めたい所である。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)