【2025年版】電気刺激が亜脱臼を軽減させる!?脳卒中患者の肩周囲筋に対するNMESの効果と臨床活用術 – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2025年版】電気刺激が亜脱臼を軽減させる!?脳卒中患者の肩周囲筋に対するNMESの効果と臨床活用術

脳卒中後の亜脱臼と電気刺激療法の活用について

講義形式:新人療法士丸山さんとリハビリテーション医師金子先生の対話

導入:亜脱臼の概要

金子先生:「さて、丸山さん。今日は脳卒中後の肩関節の亜脱臼と、それに対する電気刺激療法(FES: Functional Electrical Stimulation)の活用についてお話しします。まず、亜脱臼とは何か説明できますか?」

丸山さん:「肩関節の亜脱臼は、肩甲骨と上腕骨の関節が部分的にずれてしまう状態です。脳卒中後の筋力低下や麻痺によって、特に重力の影響で発生しやすいと理解しています。」

金子先生:「その通り。脳卒中後の亜脱臼は、特に肩関節で多く見られます。上腕骨が下方に移動してしまう『下方亜脱臼』が一般的ですね。この現象の背景には、脳神経学的な要因とバイオメカニクス的な要因が関与しています。」


亜脱臼の原因:多角的視点からの理解

  1. 脳神経学的視点

    • 脳卒中後、三角筋や棘上筋の麻痺による支持機能の喪失が主因。
    • 中枢神経の再編成遅延により、上肢の随意運動が低下。
    • 反射異常や痙縮による動的安定性の欠如も、二次的に影響。
  2. バイオメカニクス的視点

    • 上腕骨頭を関節窩に押し込む筋群(棘上筋、三角筋)の働きが低下。
    • 肩甲骨の動き(肩甲胸郭リズム)の不全により、安定性が損なわれる。
    • 重力が関節にかかる力を強調し、下方へ牽引する形に。
  3. 臨床的要因

    • 誤ったポジショニングや不適切な介助動作が亜脱臼を悪化させる。
    • 車椅子やベッド上での姿勢が不適切だと、重力の影響が強調される。

電気刺激療法(FES)の活用

金子先生:「ここからが本題です。亜脱臼の改善には電気刺激療法が有効な場合があります。そのメカニズムと具体的なアプローチを説明しましょう。」

  1. FESのメカニズム

    • 麻痺した筋肉(特に三角筋と棘上筋)に電気刺激を与え、筋収縮を誘発。
    • 筋収縮により、上腕骨を関節窩へ引き寄せ、関節の安定性を高める。
    • 皮質脊髄路への促通効果も期待されるため、運動学習を補助。
  2. FESの具体的な手順

    • 電極配置: 肩の三角筋前部と棘上筋をターゲットにする。
    • 刺激パラメータ: 30-40 Hzの周波数、持続時間は15-20分が目安。
    • タイミング: リハビリ中のアクティビティ(例:上肢挙上動作)に合わせて使用。
    • 進行: 週2-3回から開始し、患者の反応に応じて頻度を調整。
  3. 臨床応用の工夫

    • 座位での練習: 正しい肩甲骨の位置を確認し、重力の影響を最小化する。
    • 運動イメージトレーニング: 電気刺激と併用し、神経可塑性を促進。
    • 動作誘発: 電気刺激とともに、患者自身が動作を試みることで効果を最大化。

実際の症例:電気刺激療法の効果

金子先生:「例えば、70歳男性、右片麻痺の患者Aさんの場合を見てみましょう。」

  • 背景: 発症3ヶ月後、右肩の亜脱臼(約1.5cmの関節裂隙)が確認。上肢は完全麻痺状態。
  • 介入:
    • FESを週3回、1回20分実施。
    • 同時に、正しいポジショニングと上肢挙上練習を指導。
  • 結果: 4週間で裂隙が約1.0cmに減少。患者の痛みも緩和し、日常動作の改善が見られた。

注意点と課題

金子先生:「FESを用いる際の注意点も押さえておきましょう。」

  1. 過剰刺激を避ける: 筋疲労や皮膚炎のリスクがある。
  2. 効果判定を継続的に実施: 裂隙の変化や痛みの軽減を定期的に評価。
  3. 患者の意欲を高める: 電気刺激だけでなく、目標設定と心理的サポートも重要。
  4. 総合的な治療計画に組み込む: 他の治療(鏡療法、関節モビライゼーションなど)と併用する。

まとめと今後の展望

丸山さん:「先生、FESが亜脱臼改善だけでなく、神経可塑性にも影響を与える可能性があるのですね。これから積極的に活用してみたいです!」

金子先生:「その意気です。FESはあくまでツールの一つですが、適切に使用すれば患者さんのQOL向上に大きく寄与します。これからの臨床でも、常に新しいエビデンスに基づいて柔軟に対応していきましょう。」

論文内容

タイトル

●肩関節亜脱臼を軽減!?上腕二頭筋長頭に対する電気刺激治療の効果

●原著はEffect of electrical stimulation to long head of biceps in reducing gleno humeral subluxation after strokeこちら

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

●臨床において肩関節の亜脱臼を有する患者は多く、その対処法の引き出しを増やすべく本論文に至る。

内 容

背景

●肩関節の亜脱臼は脳卒中片麻痺患者において最も頻繁な合併症であり、その軽減は重要な目標と考えられています。

●三角筋後部と棘上筋の周期的な電気刺激が亜脱臼を軽減できることが実証されていますが、上腕二頭筋に実施した際の効果は十分に検討されていません。

●研究目的は、上腕二頭筋長頭への電気刺激が肩関節の亜脱臼をより効果的に軽減できるかどうかを判断することです。

方法

●24人の患者を選択し、グループ1(棘上筋および三角筋後部への電気刺激)およびグループII(棘上筋、三角筋後部および上腕二頭筋長頭への電気刺激)に分け継続的に理学・作業療法を実施しました。

●すべての患者は、研究への募集時および治療の5週間後に、肩の亜脱臼、痛み、および肩のアクティブな外転可動域について評価されました。

結果

●両方のグループは、測定されたパラメーターの有意な改善を示しました。テューキーの検定による事後分析ではグループIIでより有意であることを示しました。

●棘上筋および三角筋後部とともに上腕二頭筋長頭への電気刺激は、肩関節の亜脱臼をより効果的に軽減することが出来ると結論づけます。

●上腕二頭筋の長頭の近位は肩関節に対する上腕骨頭の安定に寄与します。近位は安定しつつも、遠位は遠心性に伸びる活動が必要です。長頭の近位に電気刺激を入れるのも一つの手ですが、ただ入れれば良いというわけではありません。電気を入れるだけでは受動的刺激となってしまうため、上腕二頭筋長頭が働くタイミングで促通していくことが肝となります。そして、電気のありなしで変化を見ながら介入していきましょう。

亜脱臼に対する電気刺激療法の詳細なアプローチ手順

1以下に、脳卒中後の肩関節亜脱臼患者に対する電気刺激療法の具体的な手順を詳しく説明します。


1. 電気刺激療法の目的

  • 筋収縮の促進: 主に三角筋(特に後部)と棘上筋をターゲットに、筋のサポート力を回復させる。
  • 関節安定化: 上腕骨頭を関節窩に適切な位置へ戻す。
  • 疼痛軽減: 軽度の筋収縮で過剰な負担を軽減し、痛みを緩和する。

2. 電気刺激の設定

  1. パラメータ

    • 周波数: 25–35 Hz(持続的な筋収縮を得るのに適している)
    • パルス幅: 200–300 µs
    • 刺激強度: 観察可能な筋収縮が得られる最小限度(不快感がない程度)
    • オン/オフ比: 1:3~1:5(例: 刺激2秒、休止6~10秒)
    • 総時間: 15~30分
  2. モード選択

    • 持続収縮モード(中等度の亜脱臼): 筋を安定させるため。
    • 断続モード(重度の亜脱臼): 筋疲労を防ぎながら運動学習を促進。

3. 電極配置

  • 部位:

    • 三角筋後部: 上腕骨を後上方へ牽引する力を補助する。
    • 棘上筋: 肩甲骨上部から関節窩へ収縮力を伝える。
  • 貼付方法:

    1. 患者を座位または半座位にし、肩関節のニュートラルポジションを確保。
    2. 電極を消毒した皮膚上に貼付。以下の位置に設定:
      • 棘上筋用: 肩甲棘の内側1/3と外側1/3の間。
      • 三角筋用: 上腕骨の外側部、三角筋付着部の約3cm上方。

4. 電気刺激療法中の具体的な訓練

  1. 静的訓練

    • 肩関節のポジショニング保持:
      • 患者は電気刺激中に軽く肩を挙上するよう意識。
      • 刺激による筋収縮が感じられる範囲で保持練習を行う。
  2. 動的訓練

    • アクティブアシスト運動:

      • 患者が自力で動かせる範囲で肩の挙上や外転運動を実施。
      • 必要に応じてセラピストがサポート。
    • 負荷付き運動:

      • 軽量のセラバンドやボールを使用して、適度な抵抗下で肩関節を動かす。
  3. 機能的タスク練習

    • タオルスライド練習:
      • テーブル上でタオルを滑らせる動作を行い、肩関節の可動域と筋活動を向上。
    • 日常生活動作(ADL)の模倣:
      • 食事動作や物を持ち上げる動作を電気刺激と組み合わせる。

5. 注意点とリスク管理

  1. 皮膚トラブルへの対応

    • 電極貼付部位の皮膚を常に確認。赤みやかぶれが見られる場合は休止。
  2. 過剰な筋疲労の回避

    • 休止期間を十分に取り、筋疲労のリスクを軽減。
  3. 適切な目標設定

    • 患者の個別ニーズや身体機能に応じた目標を設定。
  4. 効果の継続的な評価

    • 裂隙の改善、痛みの軽減、動作能力向上などを定期的にモニタリング。

補足情報

電気刺激療法は他のアプローチ(例: 関節モビライゼーション、テーピング、ミラーセラピー)と併用することで、さらなる効果が期待されます。患者ごとの状態に応じた柔軟な計画を立てることが重要です。

新人療法士が脳卒中後の亜脱臼に対して電気刺激治療を行う際の注意点とポイント

1. 筋収縮の質に注目

電気刺激による筋収縮は患者の随意運動と異なるため、不自然な収縮が関節にストレスをかける可能性があります。刺激後、肩関節の動きに違和感や痛みがないか確認することが重要です。


2. 適切な刺激設定

脳卒中後の筋緊張や麻痺の程度によって、刺激強度やパルス幅を調整する必要があります。

  • 刺激周波数: 20~50Hz(高周波数は筋疲労を引き起こしやすい)。
  • パルス幅: 200~400μs(筋活動を促進するための標準設定)。
  • 強度: 可視的な筋収縮が得られる最小限の強度。

3. 電極の貼付位置の最適化

肩甲上腕リズムを考慮して、三角筋後部線維棘上筋をターゲットにします。電極の位置は患者ごとに微調整し、最も効率的に筋収縮が得られる配置を探ります。


4. 皮膚の状態確認

電極貼付部位の皮膚状態を事前に確認し、湿疹や炎症、損傷がないことを確かめます。皮膚障害がある場合は別の治療法を選択する必要があります。


5. 筋疲労のリスク管理

電気刺激による筋収縮は、自然な運動よりも筋疲労を引き起こしやすいです。

  • セッション時間は10~20分以内。
  • セッション間に十分な休息時間を確保。

6. 刺激に対する感覚異常への配慮

脳卒中患者は感覚異常を抱えることが多いため、刺激が不快に感じられる可能性があります。患者のフィードバックを丁寧に聞き取り、不快感を最小限に抑える設定を行います。


7. 姿勢の適正化

電気刺激中の姿勢は肩関節のアライメントに影響を与えるため、亜脱臼が軽減されるような適切なポジショニングを行います。座位ではなく半仰臥位や支持のある姿勢を選択することが推奨されます。


8. 随意運動との併用

電気刺激のみでは筋再教育が不十分になる場合があります。患者が刺激に同期して肩を自動運動させるよう促すと、随意的な筋活動の再学習が期待できます。


9. 治療効果のモニタリング

亜脱臼の軽減効果を定期的に評価します。例えば、

  • X線による肩関節のギャップ測定。
  • 触診やメジャーで肩の亜脱臼を測定(例: アクロミオンと上腕骨頭間距離)。
    改善が見られない場合、治療法の見直しが必要です。

10. 患者教育の実施

電気刺激治療の目的、予想される効果、注意点を患者に説明し、治療に積極的に参加してもらうことが大切です。また、治療を継続する意義を強調して、治療へのモチベーションを維持します。


補足

電気刺激治療は他のリハビリ手法(例: テーピングやスリング療法)と組み合わせることで効果が向上する場合があります。患者の状態に合わせて柔軟にアプローチを組み立てることが重要です。

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