Vol.542.アームスリングがバランス・歩行に及ぼす影響とは?
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カテゴリー
タイトル
●アームスリングがバランス・歩行に及ぼす影響とは?「ないよりはあった方が‥」と口にする方が多い印象。その効果は世界的にはどんな結果が出ているのか気になり本論文に至った。
●原著はThe use of shoulder orthoses post-stroke: effects on balance and gait. A systematic reviewこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●アームスリングを装着する片麻痺患者はまずまず散見される。
内 容
背景
●脳卒中患者の肩の亜脱臼または肩の痛みの予防または軽減におけるアームスリングの使用に関する明確な結論はなく、その有益な効果を調査することは重要であるようと思われます。
●以前の研究では、脳卒中患者の効率的なバランスと歩行に上肢がかなりの役割を果たす可能性があることが示唆されていました。したがって、このシステマティックレビューの目的は、脳卒中患者のバランスおよび歩行に対するアームスリングの着用の影響を調査することでした。この情報は、脳卒中後の肩装具の使用に関する意思決定をサポートする可能性があります。
方法
●Pubmed含む4つの電子データベースにおいて2019年4月8日まで検索されました。脳卒中患者のバランスと歩行に対する上肢装具の装着の影響を調べるすべての研究が含まれていました。
●軽度~中等度の上肢障害を有する283人の脳卒中患者を調査した10件の研究が、結果の定量的統合に含まれました。脳卒中からのプールされた平均時間は21.88±9.03ヶ月でした。
結果
●これまで脳卒中患者のバランスと歩行にアームスリングを着用することの潜在的なメリットに関する強力なエビデンスはありませんでした。しかし、より長期介入でのさらなる研究は、脳卒中後の初期段階の脳卒中患者または持続的な上肢障害の患者がアームスリングを着用することから利益を得る可能性があるかどうかを判断するのに役立つ可能性があります。
●今回の結果では、アームスリング着用にてバランスまたは歩行に関連するパラメータのわずかな効果を検出したが、MCIDを超えませんでした。
私見・明日への臨床アイデア
●パワー的に上肢の重さを保持できず姿勢に影響を及ぼしている患者においては効果をいくらか実感するかもしれない。あくまで上肢の重みを除すことが出来ていればである。装着時の姿勢にもこだわる必要があり、アームスリングがただのお飾りにならないよう病棟や家族ともしっかり情報共有を図りたい部分である。装着に手間はかかるため、できれば運動療法で解決したい部分である。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)