【2022年版】脳卒中患者の運転再開の評価と予測因子とは?リハビリテーション・車の改造まで丁寧に解説! – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2022年版】脳卒中患者の運転再開の評価と予測因子とは?リハビリテーション・車の改造まで丁寧に解説!

学生さん
学生さん
実習先で入院中に運転をまたしたいという方は非常に多かった印象でした。でも、何が運転復帰を妨げるのかイメージが湧きませんでした・・

 

ストロボ君
ストロボ君
高次脳機能障害だけでなく、運転中に意識が飛んでしまったりとか、発作のようなものが起こるのも危険だよね。今回は、運転について詳しくまとめていこうか。

 

学生さん
学生さん
はい!お願いします!

 

脳卒中後の車の運転再開

 

 

 

 

脳卒中後の運転は、脳卒中による二次的障害が人それぞれ異なるため、複雑な問題です。脳卒中の重症度や脳卒中後に生じる独特の二次的障害によって、運転復帰が可能であるかが決まります。

 

平成26年の道路交通法改定にて、運転免許の更新には健康状態の報告が規則となり、虚偽の報告をすると罰則対象となります。

 

脳卒中後に運転を再開するためには、①医師の診断と②公安委員会の許可が不可欠です。この2点を理解してまずは主治医に相談のもと、

以下の内容を読んでいただきたいです。

 

軽度の脳卒中の場合、脳卒中後すぐに運転復帰ができるようになる人は少なくありません。しかし、運動機能、視力、認知機能などに障害がある中程度から重度の二次的障害がある場合は、運転免許試験に合格する前にリハビリテーションが必要になる場合があります。

 

 

 

脳卒中の後、どのくらいで運転できますか?

 

 

軽度の脳卒中後の運転に関する多くのガイドラインでは、少なくとも1か月待ち、医療専門家の許可を得てから再び運転することを推奨しています。これは、脳が回復するのに十分な時間を確保するためです。

 

 

しかし、重度な脳卒中後の場合、運転復帰にはより長い時間がかかります。

 

医師は、運転能力を阻害する可能性のある身体的、視覚的、認知的な問題が残っていないかどうかを調べます。脳卒中後に運転することを許可する前に、医師が考慮する主な問題が5つあります。

 

①身体的問題

②視力的問題

認知的問題

④疲労

⑤てんかん

 

 

 

運転再開:身体的問題

 

片麻痺は最も一般的な脳卒中の二次的障害の一つであり、脳卒中後の運転にとって恐らく最大の障害となるものです。脳卒中が運動皮質に発生した場合、手、腕、脚に重度の障害が生じることがあります。

 

 

他にも、疼痛、感覚障害、眩暈・平衡感覚など、運転に危険を及ぼす身体的問題があります。痙性も脳卒中の一般的な症状であり、動作が大きく制限されることがあります。

 

 

これらの問題の多くは、運転補助具や治療によって克服することができます。また、適切な運動療法をすることで筋機能を回復させ、早期運転復帰ができるようになります

 

STROKE LABではハンドル操作に難渋する利用者の方にセラピーを実践し、楽に運転できるケースがいらっしゃいます。

 

 

運転再開:視力的問題

 

脳卒中患者の約3分の2は、何らかの視力障害を抱えています。安全運転には健康な視力が必要なため、脳卒中後の視力問題の治療は不可欠です。

 

脳卒中後に経験する可能性のある様々な視力障害には、以下のようなものがあります。

 

・視界がぼやける、二重に見える(複視)

・奥行きの知覚問題

・中心視力の低下

・周辺視野の喪失(視野欠損)

 

周辺視野の欠損 

画像引用元:GLASS FACTORY様 https://glassfactory-shop.jp/

 

 

視覚療法はこれらの問題を治療することができますが、脳卒中後に運転をする前に、医療専門家と地元の運転免許機関から許可を受ける必要があります。

 

 

運転再開:認知的問題

 

 

車を運転するには、体力や持久力だけでなく、素早い思考力も必要です。脳卒中の後に安全に運転するためには、記憶力、集中力、問題解決能力、マルチタスク能力が必要です。脳卒中後には、空間や距離の認知に変化が生じたり、記憶に問題が生じたりすることもあります。

 

残念ながら、脳卒中患者は運転に必要な認知能力知能力が損なわれる可能性があるため、運転が非常に危険です。しかし、認知トレーニングを実践することで、認知能力を向上させ、脳卒中後の運転復帰に一歩近づくことができます。

 

 

運転再開:疲労の問題

 

脳卒中後疲労は「早期疲労感、倦怠感、エネルギー不足、身体的または精神的な活動への嫌悪感など症状があり、通常休息によって改善されないものである。」と言われています。

 

脳卒中後の疲労は、運転中の集中力や注意力を低下させ、迅速な判断を下すことが難しくなり、最悪な場合には、運転中に居眠りをしてしまうこともあります。

 

したがって、脳卒中後に運転を始める前には、疲労を自己管理できるかを確認することが重要です。最初は疲労を自己管理することは難しいですが、脳卒中後の疲労を自ら克服することが必要になります。

 

Christensen1は脳卒中の発症後、それぞれ10日、3ヶ月、1年、2年で、脳卒中患者の59%、44%、38%、40%において病的な疲労を報告しました。

 

脳卒中後疲労について下記記事で触れています。

 

 

 

運転再開:てんかん

 

脳卒中患者の約510%が発作を経験すると言われています。中には、何度も発作を起こし、脳卒中後てんかんを発症する方もいます。

 

脳卒中後の発作が1回だけであり、他の障害がない場合、医師と運転免許機関の許可があれば、運転することができます。しかし、てんかんがある場合は、運転免許の認可を受けるのが難しくなります。

 

 

脳卒中後に運転すべきでない自己判断のサイン

 

 脳卒中患者は、自分の能力がどのように変化したかを自覚できないことがよくあります。その結果、患者さんは自分が運転に適さなくなったことに気づかないことがあります。

 

そのため、家族や介護者は、脳卒中後に運転すべきでないことを示す兆候がないかを注意深く見守る必要があります。このような兆候には、次のようなものがあります。

 

 

・同乗者の指示が必要

・イライラしやすい、混乱しやすい

・車線を越えて走行する

・自分の家の近所で迷子になる

・法定速度より速い、または遅い速度で運転している

・判断が遅い、または判断に迷う

・ハンドルや車内の操作に支障がある

 

 

 

これらの兆候のいずれかが見られる場合は、運転リハビリテーションの専門家による技能評価を受けるまで、運転をしないようにする必要があります。

 

 

医師や運転教官による運転能力の評価方法

 

医師またはセラピストは、運転能力を測定するために、いくつかの簡単なテストを行うことができます。これらのテストは次のとおりです。

 

・視覚的な理解力と交通知識を評価する道路標識認識テスト

 

・視力、認知能力、注意力を調べるコンパス課題

 

・視覚運動追跡と視覚スキャン能力を測定するトレイルメイキングテスト

 

 

 

1,700人以上の脳卒中患者を対象とした30の研究2のレビューによると、脳卒中患者の半数以上は運転安全試験に合格することが報告されています。しかし、ほとんどの患者さんは、運転能力を回復させる時間が必要なため、脳卒中発症から約9ヶ月後まで試験を受けるのを待ちます。

 

 

脳卒中後の車の調整・カスタマイズ

 

脳卒中後に慢性的な身体的制限がある場合でも、二度と運転できなくなるわけではありません。実際、脳卒中後でも運転できるように車を調整させることは可能です。

 

身体的制限のある方にとって、運転を容易にするための様々なツールがあります。車への適応の例としては、以下のようなものがあります。

 

スピナー:ハンドルに取り付けて、片手でも運転できるようにする。

 

ハンドルスピナー:写真引用 HONDA https://www.honda.co.jp/welfare/purpose/for-drive/one-hand.htmlより

 

左足用アクセル(右半身が不自由な方用)

 

・乗り降りをサポートする回転シート

 

 

運転再開のためのリハビリテーション

 

脳卒中患者の中には、運転補助具の使用により運転復帰が可能な人もいますが、運転補助具に頼りすぎないよう、リハビリを行う必要があります。

 

脳には神経可塑性と呼ばれるプロセスを通じて自己修復し、失われた機能を回復する能力があります。神経可塑性とは、脳が実際に神経回路を再配線することで、脳の損傷していない領域が、損傷した領域の機能を引き継ぐことです。

 

集中的に運動療法をすることで、神経可塑性を活性化することができます。脳卒中後に再び運転するために必要な能力に対する治療法には、以下のようなものがあります。

 

視機能訓練目の運動は、脳卒中後の視覚の明瞭さとスキャニング能力を回復させます。視力療法士が視力の問題を診断し、必要とするエクササイズを提案します。

 

認知機能訓練記憶ゲームなど、特定の認知エクササイズを行うことで、神経可塑性と運転に必要な認知的能力を高めることができます。

 

下垂足に対する介入下垂足では、運転に支障をきたします。そのため、下垂足に対する運動をすることで、再び車のアクセルとブレーキペダルを使えるようになります。運転時の筋活動についてもラボでは紹介しております。→脳卒中患者の運転時の筋活動は?

 

理学療法による運動は、腕や脚の運動機能を回復させますが、これらの運動を毎日練習することが重要です。実際、脳に変化をもたらすには約400600回の反復運動が必要だという研究結果があり、週に12回の運動だけでは足りません

 

 

参考文献

 

1) Christensen D, Johnsen SP, Watt T, Harder I, Kirkevold M, Andersen G: Dimensions of post-stroke fatigue: a two-year follow-up study. Cerebrovasc Dis 2008;26:134-141.

 

2) Devos H, Akinwuntan AE, Nieuwboer A, Truijen S, Tant M, De Weerdt W. Screening for fitness to drive after stroke :A systematic review and meta-analysis. 2011 76(8):747-756
ストロボ君
ストロボ君
それでは、関連論文を読んでさらに理解を深めていこう

 

 

 

脳卒中患者の運転復帰に関する論文紹介

 

 

カテゴリー

 

神経系

 

タイトル

●脳卒中患者の運転復帰の確率と予測因子とは?

●原著はPredictors of Return to Driving After Strokeこちら

 

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

●現代、車の運転は地域により欠かせないものである。運転が出来るにはどのような条件をクリアすべきなのか、まだ知識が不十分と思い本論文に至る。

 

内 容

背景

 

●多くの脳卒中生存者にとって運転に戻ることは大きな懸念事項ですが、脳卒中後に運転に戻ることを予測することは、リハビリテーションの専門家にとってしばしば難しく感じることがまだあります。 この研究の主な目的は、急性期脳卒中患者が運転に戻る予測因子を特定することです。

 

方法

 

●脳卒中急性期の入院リハビリテーションサービスを受けた参加者のデータのみが使用されました。脳卒中損傷半球、NIHSS、下肢及び上肢の運動指数、ARAT、BBS、キャンセルテスト、CBS、 Woodcock-Johnsonテスト、他認知高次脳検査、 FIM認知スコアなどが評価されました。

 

●参加者は脳卒中後6か月に電話で連絡を受け、健康、機能、気分、地域社会への参加等に関する質問を含む追跡調査を受けました。この調査は、参加者または代理人が行うことができます。この調査の質問では、「運転に戻りましたか?」と質問されました。参加者または代理人は、「はい」、「いいえ」、「脳卒中前から運転していない」と答えることができました。

 

結果

 

●リハビリテーションを受けた急性期脳卒中患者において、31%が脳卒中6ヶ月で再度運転することが可能になりました。この割合は、脳卒中後の運転への復帰を検討したいくつかの研究と一致しています。

 

●NIHSSのスコアが高いほど(0点が正常で点数の高いほど重症)運転が再び出来るようになる確率は低くなりました。

 

●入院時に測定されたFIM認知項目および下肢運動指数(LE)スコアが低いほど、運転できる可能性が低いことが示されました。下肢運動指数は下肢の3つの筋グループ(足関節背屈、膝関節伸展、股関節屈曲)の筋の単純なテストでした。

 

●この研究は、参加者が運転に戻ったかどうかにのみ焦点を当てました。参加者が安全に運転に戻ることができるかどうかの問題には対処していませんでした。

 

●運転の復帰に影響を与える可能性のある要因としては、個人的要因(例:運転できる家族の存在)、社会的要因(例:職場復帰の必要性)、または経済的要因(例:急性の医学的疾患の後に車を買う余裕がある)があるかもしれません。

 

 

 

私見・明日への臨床アイデア

 

現代では車の運転は必須の能力と言え、それができないことでQOLは大幅に低下してしまう。運動能力だけで言えば、改造車にすることで対応することも可能。ただ、脳卒中では、高次脳機能も併せて障害を受けるため、総合的な評価、実地的な評価が必要である。将来的には、ドライビングシュミレーターなどよりリアルを求めた評価が簡易的に行えると良い。その動向をしっかり見ていきたい。

 

 

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