Vol.563.錐体外路と手指巧緻性の関連性:脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
タイトル
●錐体外路と手指巧緻性の関連性
●原著はAssociation of Extrapyramidal Tracts’ Integrity With Performance in Fine Motor Skills After Strokeこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●脳卒中患者を治療する際に、MASなどで良く測定される速度依存性のいわゆる痙縮反応でない方も時々見受ける。錐体外路系が臨床でどのような影響を及ぼしているのか学ぶべく本論文に至る。
内 容
背景
●拡散テンソル画像(DTI)によるトラクトグラフィー(神経線維の描出)は、脳卒中後の残存運動機能へのさまざまな経路への損傷の寄与に関する知識を拡張した。
●たとえば、トラクトグラフィー(神経線維の描出)により皮質脊髄路(CST)の完全性はその経過を特徴づけ予測するために特定されています。しかし、大脳基底核間の錐体外路経路が脳卒中後の運動機能に及ぼす影響を判断できるデータはほとんどありません。
●本研究では、錐体外路系の障害と脳卒中後の細かい運動技能のパフォーマンスとの関連を研究することを目的とした。
方法
●黒質と淡蒼球・回復に伴う再建された黒質-淡蒼球および26人の健常者のCSTを確率論的トラクトグラフィーにて解析しました。(補足:確率的トラクトグラフィーとは,ボクセルにおける水拡散情報を,確率密度関数として扱い追跡方向を決定する手法)
●トラクトグラフィーは脳卒中発症後3か月の20人の患者の画像が登録され、それらの微細構造の完全性は、部分的な異方性拡散によって測定されました。
●脳卒中1年後に、患者のグリップ力と巧緻性運動能力(9穴ペグテスト)の臨床検査を実施しました。 9穴ペグテストに影響を与える要因の評価には、多変量モデルを使用しました。
結果
●淡蒼球経路(錐体外路)はすべての参加者で追跡可能であり、CSTと重複せず、視床下核を通過しました。
●脳卒中患者では、脳卒中病変と同側の淡蒼球経路(錐体外路)が有意に減少した部分異方性拡散を示しました。(異方性拡散とは,一様ではなく,インクが制限されたある方向のみに広がる物理現象のこと。)
●脳卒中1年後、握力は両手で同等でしたが、9穴ペグテスト値は麻痺手で大幅に遅くなりました。淡蒼球路の完全性の低下は、CSTおよび若い年齢の完全性の低下と同様に9穴ペグテストのパフォーマンスの低下と関連していました。
●視床下核の接続を含む淡蒼球路は錐体外路系の関連部分を表しており、CSTのよく知られた貢献を超え脳卒中後の残存する細かな運動技能に特に貢献していることが示唆された。それらは、脳卒中後の運動回復を予測するための裏付けとなる情報を提供するかもしれません。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中後の筋の硬さというと一般的に速度依存性の痙縮を想像しやすい。しかし、臨床では錐体外路症状の方もいるので同じ片麻痺患者のでも患者にどのような症状が出ているのかしっかり評価する必要がある。筋の長さを作ることで静的動的に伸張反射による筋の硬さは生じにくくなると思われる。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)