Vol.569.肩関節運動時の手関節・手指の筋シナジー(共同運動) 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
タイトル
●肩関節外転運動時の手関節・手指の筋シナジー(共同運動)
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●脳卒中患者の上肢治療に関わる事が多い。その中で、分離運動を促通していく事も多いが、どのような動きと他関節のどのような動きが結合してしまうのか、またその神経生理学的背景を学びたく本論文に至る。
内 容
背景
●慢性期脳卒中患者の屈筋シナジーの臨床観察では、肩の外転運動負荷時の筋シナジーは肩と肘に着目したものが多い。手関節と手指はそれとは別に単独で研究されてきました。
●本研究では、肩と肘の同時活性化中の麻痺手関節・手指の不随意的な活動を定量化しました。
方法
●慢性期の中等度から重度片麻痺の8人の患者と4人の健常者が研究に参加しました。
●手関節・手指(母指含む)の等尺性の屈曲力と手関節と指屈筋と伸筋の筋電図(EMG)を上肢を持ち上げるときの2つの位置(大腿の上ほどの位置と最大リーチ距離)で測定されました。
●課題は、麻痺側、非麻痺側および健常者の上肢による6つの肩の外転負荷を行えるロボットデバイスを使用しました。
結果
●麻痺側上肢を持ち上げるときにのみかなりの力とEMGが生成され、肩の外転運動負荷とともに徐々に増加しました。さらに、力は、大腿の上の前(胴体の前)の位置よりも最大リーチの位置の方が大きかった。
●麻痺側の手関節と手指屈曲は、特定の肩と肘の動きと無意識に結びついています。
●これは網様体脊髄路と手および手関節の運動ニューロン間の神経解剖学的接続を示していると推測されます。前腕と手指の筋を制御するかなりの数の運動ニューロンと介在ニューロンが、皮質脊髄路と網様体脊髄路の両方から収束するシナプス入力を受け取ることを示しています。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者では、例えば前腕回内外や肩の内外旋の動きを肩の外転や肩甲骨の挙上・体幹の動きで代償してしまうなど戦略の変化を見受けることが多い。どの動きがどのような角度、速さでは出来る、またはできずに代償してしまうのか明確にして課題難易度を適切に調整しながら分離を促通していく事は重要。
●課題難易度として手元で行うか、リーチした位置なのか「距離」も考慮することが重要であることが示唆された。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【脳卒中 上肢 片麻痺】関連論文
●vol.274:脳卒中後の異常筋シナジーを考える 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
●vol.402:脳卒中者の上肢機能の早期からの予後予測の観察ポイント 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)