Vol.578.拘縮の原因は痙縮か筋力低下か? 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
脳神経系論文に関する臨床アイデアを定期的に配信中。 Facebookで更新のメールご希望の方はこちらのオフィシャルページに「いいね!」を押してください。」 臨床に即した実技動画も配信中!こちらをClick!!(YouTube)
STROKE LABでは療法士向けの脳科学講座/ハンドリングセミナーを行っています!上記写真をClick!! PDFでもご覧になれます。→PDF
カテゴリー
タイトル
●脳卒中患者の肘の屈曲拘縮の原因は痙縮か筋力低下か?
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●臨床では、特に慢性期の患者において上肢の拘縮を有する方と遭遇する。どのような機序で拘縮に発展していくのか再度学ぼうと思い本論文に至る。
内 容
背景
●筋が痙縮によって反射的に収縮すると、収縮した位置を維持する傾向があります。時間が経つにつれ、この可動域の制限は筋腱複合体の長さに関連した変化、特にサルコメアの喪失を引き起こし、関節可動域の低下つまり拘縮を引き起こします。筋力低下は手足の可動性を低下させ、持続すると短縮が引き起こされ、関節可動域が失われます。
●研究目的は『拘縮』に対するweaknessと痙縮、脳卒中発症後12か月間の身体活動の制限の3つの障害すべての相対的な関与を調査することでした。
方法
●この研究は、脳卒中患者27名に対して肘の屈筋の弱化(最大の等尺性収縮時のトルク)、痙縮(伸張反射をEMGで評価)および肘の伸展可動域、身体活動について臨床スケールを用いて評価した。
結果
●拘縮の主な独立した要因は、脳卒中後の最初の4か月間の痙縮の状態とその後のweaknessでした。しかし、年間を通して身体活動の制限に大きくそして唯一独立して関与したのはweaknessでした。
●結論としては痙縮が脳卒中後の拘縮を引き起こす可能性があることを示しており、一般的な臨床的見解と一致しています。ただし、weaknessが活動制限の主な原因ということが示唆されました。
私見・明日への臨床アイデア
●臨床では同じような上肢機能の方でも自分の上肢の重さをコントロールできるだけの筋力があるかないかは活動に大きな影響を与えると感じる。その筋力低下は痛みを引き起こしやすかったり、ADL上でも上肢の不使用に結び付きやすく、上肢活動を制限する印象である。その結果として、痙縮の強い方などは拘縮を生じさせてしまうかもしれない。 動かしやすいコンディショニングと併せ、空間操作ができるように課題難易度を調整した中で量を確保していくことも重要である。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【拘縮・痙縮】関連論文
●Vol.538.脳梗塞患者の筋緊張増加・拘縮の予測因子とは?
●Vol.454.拘縮にストレッチ効果はある?拘縮の治療と予防について:システマティックレビュー
●vol.140:拘縮と固定期間の関係 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)