Vol.579.脳卒中患者のリーチ動作に対する心理的側面と二重課題による影響とは? – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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Vol.579.脳卒中患者のリーチ動作に対する心理的側面と二重課題による影響とは?

脳卒中患者のリーチ動作に対する心理的側面と二重課題による影響のまとめ図(1)

脳卒中患者のリーチ動作に対する心理的側面と二重課題による影響のまとめ図(2)

 

 

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カテゴリー

 

神経系、上肢、心理

 

タイトル

●慢性期脳卒中患者のリーチ動作に対する心理的側面と二重課題による影響とは?

 

●原著はThe effects of anxiety and dual-task on upper limb motor control of chronic stroke survivorsこちら

 

なぜこの論文を読もうと思ったのか?

 

●臨床では、心理的側面によりリハビリの進捗に影響を及ぼすと感じる。その心理面と動作の関連性を学びたく本論文に至る。

 

内 容

 

背景

 

●物体操作の基本的な部分であるリーチ~把持動作は感覚・運動・認知情報の統合を必要とし、多くの場合に他の認知タスクと同時に実行されます (たとえば、電話で話しているときにコーヒー1杯に手を伸ばして掴むなど)。

 

●不安は脳卒中生存者の間で2番目に一般的な精神障害であり、患者の最大24%に影響を及ぼします。不安症の症状は、脳卒中後10年まで持続し、機能転帰の低下、ADLの依存の増加、生活の質の低下に関連していることが示唆されています。不安はタスクに関係のない刺激 (つまり、注意制御の障害) による注意散漫を増加させ、運動計画および学習した動きの実行に必要な処理効率の低下につながります。

 

●本研究は年齢と性別を一致させた健康対象群(HC)と比較し、慢性期脳卒中患者のリーチ~把持動作の運動制御に対する「不安」と「二重課題:dual task」の影響を調査しました。

 

 

方法

 

●68人の参加者のリーチ~把持動作の運動学的データを脳卒中患者の強い不安を有する群(HA)不安が少ない群(LA)と健常者間で単一課題と二重課題の条件下で記録されました。

 

結果

 

 

●脳卒中患者の特に不安が強い群(HA)の二重課題で非効率的なリーチ~把持動作が単一課題や対照群と比較して観察されました。

 

●非効率さはより遅い動作時間、より低い位置でより早期にピーク速度が見られ、把持する際の手の開きが小さくなっていた。

 

●同時に認知課題を伴う十分に学習された上肢の動きを実行すると、健常者と比較して慢性脳卒中生存者の運動制御の効率が低下することを示しています。

 

●本研究の最も興味深い発見は、シングルタスクとデュアルタスクの両方の条件下で、強い不安を有する群(HA)のリーチと把持動作の運動学的測定のパフォーマンスが不安が少ない群(LA)と比較して悪いことでした。ただしそのパフォーマンスの低下は、難しいデュアルタスク条件でのみ観察されました。不安はタスクに関係のない刺激に注意が向くことで課題に対する注意の低下につながります。これは処理効率を低下させ、目標指向の行動の障害につながることが示唆されています。

 

 

 

 

私見・明日への臨床アイデア

 

 

●手は感情と繋がる面もあると言われるが、下肢と比べ上肢に関しては繊細な方が多い印象である。痛みを生じやすかったり、生活のほとんどと上肢は関わり反対の手で触れた時や目の前でその能力低下を実感してしまう。逆に目の前でしっかりと出来ていることを実感して頂くことが重要。注意が逸れ易い方も多く、練習環境も大事と言える。

 

 

執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表

・国家資格(作業療法士)取得

・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務

・海外で3年に渡り徒手研修修了

・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆

 

併せて読みたい【リーチ動作】関連論文

 

vol.354:脳卒中者のリーチ課題における運動戦略の解析  脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

 

vol.287:座位と立位のリーチ動作の違い   脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

 

vol.247:視覚フィードバック付きリーチ動作が上肢機能に与える影響  脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー

 

 

脳卒中の動作分析 一覧はこちら

 

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