Vol.585.脳卒中患者のスティフネス【stiffness】の筋の硬さを増大させる要因とは? 脳梗塞/脳出血リハビリ論文サマリー
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タイトル
●脳卒中患者のスティフネスの評価について
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●脳卒中患者に関わることが多いが、治療する上でより基本的な解剖・神経生理から理解する重要性を感じ、学習の一助として本論文を読むに至る。
内 容
背景
●慢性期脳卒中患者の約半数は、神経および構造組織の特性の変化により、筋のstiffnessの増加、可動域減少、手指手関節の屈曲などの症状を有し、上肢機能の低下を経験します。
●研究目的は、手関節のstiffnessに関与する神経および構造的な特性を定量化し、健常者と脳卒中患者間で特性を比較することでした。
方法
●脳卒中患者(n = 32)と健常者(n = 14)は、図のような筋電駆動型の装置を使用し、神経(反射トルク)および構造(結合組織の剛性とたるみの長さおよび最適な筋肉の長さ)のパラメーターが推定されました。健常者、MASが0の脳卒中患者とMASが1以上の脳卒中患者の間の結果を比較しました。
●被験者は図のように肩をリラックスさせ肘を約 90°に曲げた状態の座位を取りました。haptic manipulator (Wristalyzer、自由度1 (背屈および掌屈)、オランダ製) が使用されました。前腕と手は、ベルクロ ストラップを使用し、それぞれカフとハンドルに固定されていました。手関節の回転軸は、視覚的にハンドルの回転軸と一致しました。ハンドルの回転は、垂直に配置されたサーボ モーター (Parker SMH100) によって駆動されました。
●筋の活性化の測定はDelsys を使用しFCRとECRで記録されました。
●測定プロトコルは、健常者では右手関節、患者では麻痺側上肢で行われました。可動範囲 (ROM) は、2 Nm の範囲でゆっくりと変化するトルクを加えた結果、最大屈曲角度と伸展角度の差として決定されました。その後、RoM 全体にわたって一定の速度で実行されました。測定ごとに 2回のramp-and-hold rotationsの試行が課されました。被験者は、実験中ずっとリラックスしたままで、手首の動きに反応しないように求められました。
結果
●MASが1以上の脳卒中患者はstiffnessの増加、反射トルクの増加、最適筋長の減少、屈筋の結合組織のたるみ長の減少の面で健常者とは異なりました。
●最適な筋長の推定を含む非侵襲的定量分析により、慢性期脳卒中患者の神経および非神経の変化を特定することができます。これらの時間的変化を観察することは、回復プロセスを理解し、治療を最適化するために重要です。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者において痙縮を有している患者はたるみの喪失、筋の短縮を有していることが示唆された。痙縮の改善の方法の一つの側面として筋・結合組織の「長さ」の改善が伸張反射を抑制し、結果的に痙縮を改善させることにつながると思われる。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)