【2022年版】CI療法におけるシェーピングとトランスファーパッケージ【Transfer Package】の重要性について
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CI療法とは?
CIMT(Constraint-Induced Movement Therapy)CI療法という用語は、脳卒中者の上肢機能に対する脳卒中の影響を軽減するために設計された一連の介入です。 CIMTは、「学習性不使用」に基づくニューロリハビリテーションの行動的アプローチです。
CI療法は典型的には脳血管障害(CVA)後の患者に対して行われます。
CVAの30~66%が手足に機能低下を経験するとされ、さらに、CI療法は脳性麻痺(CP)、外傷性脳損傷(TBI)、多発性硬化症(MS)の人に対しても行われています。
CI療法の目的は、非麻痺側の使用を制限しながら、麻痺側四肢の使用を改善・増加させることです。
CI療法の3つの構成要素
麻痺側上肢で、構造化された集中的な治療を繰り返すこと
非麻痺側上肢を拘束・固定する
臨床環境から現実世界【日常生活】に学習転移(すなわち、機能的にする)行動変容を設計していく
このように生活に自主トレや麻痺側使用の習慣を落とし込む作業が、
【トランスファーパッケージ】です。
CI療法の適応は?
脳卒中者がCI療法に参加するためには、ある程度の手の機能、高いモチベーション、最小限の認知機能障害、拘束具を装着している間の適切なバランスと適切な歩行能力が必要です。
セラピーに参加するための最低限の運動基準は以下の通りです。
手関節10°背屈
10°の母指外転
10°の指の伸展
CI療法の臨床介入における3ポイント
・参加者は起きている間の90%、非麻痺側にミトン装着する。
・患側の腕で1日6~7時間、課題指向の反復トレーニングを行う
・10~15回セッション連続して行う。
CI療法のメリットデメリットは?
利点 | 欠点 |
---|---|
1. 運動機能の改善 | 1. 集中的で時間がかかる |
CI療法は、運動障害のある患者(例:脳卒中患者)が運動 | CI療法は、通常2〜4週間で1日2〜6時間の |
機能を向上させるために、繰り返し、タスク指向の練習 | 大幅な時間を要求するため、一部の患者やその家族に |
を行います。これにより、より独立した生活や生活の質 | とって難しいことがあります。 |
が向上します。 | |
2. 持続的な効果 | 2. 対象患者の制限 |
CI療法は、治療プログラム終了後も持続する運動機能の | CI療法は、影響を受けた肢にある程度の運動が残って |
改善をもたらすことが示されています。 | いる患者に最も効果的です。重度の障害や禁忌症(例: |
痛み、骨折)がある患者には適していません。 | |
3. エビデンスに基づく | 3. 費用とアクセス |
CI療法は、さまざまな患者集団での有効性を示す大量の | CI療法は費用がかかることがあり、専門的な治療家や |
研究によって支持されています。 | 施設へのアクセスが限られている場合があります。特に |
地方や低リソースの地域では。 | |
4. 個別化されたアプローチ | 4. 潜在的な挫折 |
CI療法は、患者の個々のニーズ、能力、目標に合わせて | CI療法の集中的な性格と、難題に取り組むことに焦点を |
調整されており、より個別化された治療計画が可能です。 | 当てたため、進行が遅い、または停滞している患者にと |
っては挫折することがあります。 |
シェーピングとトランスファーパッケージは?
シェーピングとは、運動課題を徐々に難しくしていくトレーニング方法です。
シェーピングプログラムは、主に基本的な課題群から選択された10~15の課題で構成され、個人に合わせて作成されます。
各課題は通常、10~30秒の試行回数で行われ、10回の試行が終わるごとに課題が変更されます.
一度に変更されるシェイピング難易度は1つだけです。セラピストの継続的な関与が必要となります。 課題練習は、個々の機能的な課題の反復練習で、およそ15~20分かかります。
休息は必要に応じて提供され、励ましの言葉は不定期(例:5分ごと)に与えられ、課題終了時にはどのように行われたかについてのフィードバックがあります。
行動変容のトランスファーパッケージは、病院から日常生活に効果を持ち越せるよう設計されています。
また、運動記録を毎日管理することで効果を促進させます。
カテゴリー
タイトル
●脳卒中上肢麻痺患者の上肢機能をより高めるCI療法におけるtransfer packageの重要性
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●脳卒中患者においてCI療法はよく耳にするが、臨床で実際使用しているケースはあまり見ない。その対象や注意すべきポイントなどCI療法について学ぶべく本論文に至る。
内 容
背景
●CI療法は中枢神経系の損傷後の運動機能をリハビリするための治療法です。その主要な2つのコンポーネントである
①集中的なトレーニング ②transfer package(TP) の役割を評価しました。
方法
●参加者(n=40)は片麻痺を伴う脳卒中発症後1年以上経過した外来患者でした。
●麻痺側上肢を対象としたさまざまな治療は、平日10日間、1日に3.5時間の訓練が続きました。
●日常生活でのより麻痺側上肢の自発的使用とその最大運動能力は、それぞれMotor Activity Log(MAL)とWolf Motor Function Test(WMFT)で評価されました。
結果
●トレーニングの種類に関係なくTPを使用するとMALの利得はTPがない場合の2.4倍になりました。これらの臨床結果は、神経形成変化に対するTPの以前に報告された効果と類似しています。
● MALの増加は、治療後1年で損失なく維持されました。
●追加のサブスタディ(n=10)では、TPを実施した患者にて治療後1か月間の参加者との毎週の電話連絡により、6か月後のフォローアップでMALスコアが2倍になることを示しました。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者では、機能だけ回復を求めても、結局は生活上で上肢を使えていない状況になり得る事が本論文で示唆された。
●生活動作自体の練習や上肢を生活に参加させる患者自身の発想力を鍛えていく事は非常に重要であると感じる。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【脳卒中・上肢・CI療法】関連論文
●Vol.422.修正CI療法と他の治療を組み合わせるとより効果的?修正CI療法&メンタルプラクティスの介入効果
●vol 358 急性期~亜急性期における下肢CI療法について 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
塾講師陣が個別に合わせたリハビリでサポートします
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)