Vol.602.日常生活動作への効果は??慢性期脳卒中患者の上肢機能障害に対する筋電図(EMG)バイオフィードバックの効果
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カテゴリー
タイトル
●慢性期脳卒中患者の上肢機能障害に対する筋電図(EMG)バイオフィードバックの効果
●原著はThe effects of training using EMG biofeedback on stroke patients upper extremity functionsこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●感覚障害を有する患者の治療に関わることが多く、筋電図や視覚的フィードバックの有用性を感じる。世界的にはどのような手順や手法で用いられているのか学ぶべく本論文に至る。
内 容
背景
● 近年、IT(情報技術)分野では,リハビリテーションのための技術やサービス,健康増進のためのエクササイズなどが提供されている。その中で、筋電図バイオフィードバックは、IT産業やリハビリテーション分野に関連する産業的に特化したコンテンツの一つです。
● 筋電図バイオフィードバックは、筋収縮や動作に関する情報をリアルタイムで視覚・聴覚的に提供することで、適切な筋収縮や身体のアライメントを効果的に維持し、正常な動作を誘導するものです。筋電図(EMG)バイオフィードバックは,近年,脳卒中患者の様々な治療介入に使用されているが,その効果に関する研究は不足していた。既存の研究の多くは下肢の機能に限定されており,EMGバイオフィードバック・トレーニングを用いた上肢の機能回復に関する研究は限られている。
● 本研究では、EMGバイオフィードバックを用いたトレーニングが脳卒中患者の上肢機能に及ぼす影響を検討した。
方法
● 本研究の対象者は、発症から6か月以上が経過した脳卒中片麻痺患者30名である。
●従来のリハビリテーション療法を受ける対照群(n=15)と従来のリハビリテーション療法とEMGバイオフィードバックを用いたトレーニングの両方を受ける実験群(n=15)に無作為に分けられた。
●プログラムは合計4週間行われました。
●対象者の機能回復を調べるために、トレーニングの前後でFugl-Meyer AssessmentとManual Function Testを用いて上肢機能を評価し、Functional Independence Measure(FIM)を用いて日常生活動作を測定した。
結果
● EMGバイオフィードバックを使用したトレーニングが脳卒中患者の上肢機能に及ぼす影響を調べた。集中的にEMGバイオフィードバックを受けた脳卒中患者は、従来のリハビリテーション療法のみを受けた患者に比べて、より顕著な上肢機能回復を示した。しかし、日常生活動作に対照群と有意差はありませんでした。
● 補足:Franciscoらは、急性期脳卒中患者に対する筋電図バイオフィードバックトレーニングが、実験群の日常生活動作を対照群と比較して有意に改善したと報告しており、本研究の結果とは矛盾している。この矛盾した結果は、先行研究と本研究の研究デザインおよび被験者選択の基準の違いに起因すると考えられる。
私見・明日への臨床アイデア
●筋電図などを用いた視覚的バイオフィードバックの効果は近年報告されている。しかし、高価な機器が必要であったり現場で十分利用されていない印象である。自作するのも安価で使用でき、一つのアイデアです。
●機能を改善させるだけでは、日常生活を変化させるまでは至らないため、生活に繋げる介入が別途必要である。訓練の課題としては日常生活に直結するような課題がイメージもしやすく望ましいと思われる。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【脳卒中、上肢、筋電図(EMG)】関連論文
●vol.156:脳卒中者の上肢とEMGバイオフィードバック 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
●Vol.571.筋電駆動型のNMES(電気刺激)を使用した手関節背屈トレーニングの効果 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
●Vol.569.肩関節運動時の手関節・手指の筋シナジー(共同運動) 脳卒中/脳梗塞リハビリ論文サマリー
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)