Vol.607.パーキンソン病患者に対するトレッドミル訓練の効果と安全性について
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カテゴリー
タイトル
●パーキンソン病患者に対するトレッドミル訓練の効果と安全性について
●原著はTreadmill training for patients with Parkinson’s diseaseこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●トレッドミル訓練を臨床で行うことが多く、パーキンソン病患者に対して使用しようと思い、その効果を学ぶべく本論文に至った。
内 容
背景
●トレッドミルトレーニングはパーキンソン病患者の歩行能力を改善すると言われており、リハビリテーションに用いられている。
●本研究ではパーキンソン病患者の歩行を改善するためのトレッドミル・トレーニングの効果と受容性と安全性を評価することであった。
方法
● Cochrane Movement Disorders Group Specialised Register,Cochrane Central Register of Controlled Trials,MEDLINE,EMBASEから検索をした。
● 選定基準はパーキンソン病患者において、トレッドミルトレーニングとトレッドミルトレーニングを行わない場合を比較した無作為化対照試験を対象とした。
● 2人の執筆者がそれぞれ研究を選択し、研究の質を評価し、データを抽出した。追加情報については研究担当者に問い合わせた。結果を連続変数では平均差(MD)、二分法では相対的なリスク差(RD)として分析した。
結果
●本レビューでは18の研究(n数=633)を対象とした。
●トレッドミルトレーニングは歩行速度(MD=0.09m/s:中程度のエビデンスの質)、歩幅(MD=0.05m;低いエビデンスの質)を改善したが、歩行距離(MD=48. 9メートル:非常に低いエビデンスの質)とケイデンスは試験終了時には改善しなかった。
●トレッドミルトレーニングは、患者が介入から脱落するリスクを増加させなかった(中程度のエビデンスの質)。有害事象は含まれる研究では報告されなかった。
●これらの改善がどのくらい持続するかは不明であり、いくつかの研究では対照群に介入を行っておらず、バイアスのリスクがあるため、結果を慎重に解釈する必要がある。さらに、結果にはばらつきがあり、患者の特徴、トレーニングの期間と量、適用されたトレッドミルトレーニングの種類などが試験間で異なっていることがわかった。
私見・明日への臨床アイデア
●患者の能力(筋力など)が低下している患者では免荷式(BWS)にて体重負荷を軽減するトレッドミルトレーニングが推奨される。体重の20%の免荷量でトレッドミル訓練を行うと、通常の腕振りを大きくしたり、歩幅を意識したような練習より歩行パラメーターを改善させたとの報告がある。トレッドミルでは、床が半ば強制的に動き続ける為、臨床的に歩行距離も確保しやすい。ハーネスで体幹をコルセットのように引き締める効果も得られやすいと思われる。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【パーキンソン病、トレッドミル】関連論文
Vol.487.BWS歩行の免荷量は15~30%!?歩行のCPGについてのレビュー
Vol.556.パーキンソン病患者のすくみ足に対するオプティカルフローと注意戦略
vol.281:閉眼とトレッドミル歩行の効果 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)