Vol.613.トレッドミル中の下肢への抵抗運動が脊髄損傷(SCI)患者の歩行に及ぼす影響
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カテゴリー
タイトル
●トレッドミル中の抵抗運動が脊髄損傷患者の歩行に及ぼす影響とは
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●近年、同じトレッドミルでもアシストをしたり、抵抗をかけたり、スプリッドであったり様々のものが使用されている。それぞれの効果の違いを学ぶべく本論文に至る。
内 容
背景
●トレッドミルトレーニング中の運動適応の基本的なメカニズムを理解することは、脊髄損傷(SCI)患者におけるロボットによるトレッドミルトレーニングの効果を向上させるために非常に重要です。これまでの研究では、中枢神経系(CNS)は内部モデルを用いて歩行時の下肢の運動を制御していることが示唆されています。内部モデルとは,身体,タスク,環境に関する神経表現と定義されています。外部環境の摂動(例えば、ロボットが生成した力場)によって、予測された動きと実際の動きの間に不一致を検出すると、CNSは内部モデルを再調整して不一致を最小化します。これまでの研究で、健常者がトレッドミルでの足踏み中に力の摂動に適応して残効を示す場合があることがわかっています。
●トレッドミルトレーニングは、脊髄損傷(SCI)患者の歩行を改善するための有望な手法として使用されています。以前の調査結果では、歩行パターンがトレッドミルトレーニング中の力の摂動に適応することで、その後の通常歩行に影響する可能性があることを示しました。トレッドミルトレーニング中の下肢の振り出しを補助するのではなく、抵抗している場合によりその後の歩行に大きく影響すると仮定しました。
●SCI患者のトレッドミル中の下肢の振り出しを補助ではなく抵抗かけた場合の床歩行に与える効果を検証しました。
方法
●脊髄損傷不全麻痺を呈する10人の被験者が、2つのトレッドミルトレーニングセッションのためにこの研究に採用されました。1つはスイング時に抵抗を使用し、もう1つはトレッドミルステッピング中のスイング時にアシストを使用しました。
● カスタマイズされたケーブル駆動のロボットを使用して、制御された抵抗またはサポートが被験者の右膝に提供されました。被験者の空間的および時間的パラメータは、トレーニング中に記録されました。通常歩行中の同じパラメータは、計装された通路を使用したトレーニングセッションの前後にも記録されました。
結果
●ストライド長が抵抗負荷練習後に床歩行で増加しました。対照的にスイングのアシスト練習では補助を無くした際に歩幅が減少し、通常歩行に移った際は練習前と変化は見受けられませんでした。
●これらの知見は,力の摂動が摂動とは逆方向の残効を引き起こすというこれまでの知見と一致していました。抵抗型トレッドミルを用いたトレーニングでは、残効として立脚時間が増加したものの、通常歩行時の立脚時間は大きく変化しませんでした。この結果は、空間的な歩行パラメータ(歩幅)と時間的な歩行パラメータ(立脚時間)が異なって制御されている可能性を示唆しています。
● 今回の研究で得られた知見は、脊髄損傷不全麻痺患者において、抵抗性トレッドミルトレーニングにおける能動的関与の増加が、運動適応の移行を促進する可能性を示唆しています。一方、トレッドミルトレーニング中に下肢への補助はトレーニング中の被験者の努力を低下させ、随意的な駆動力を低下させ、その後の歩行に悪影響を与えている可能性があります。
私見・明日への臨床アイデア
●トレッドミル歩行において重錘負荷をした研究では、歩行速度の増大に伴い全体的な筋活動量が増したが、足部には大きな変化はなかったとの報告がある。下肢筋力を鍛えたいのか、楽に脚を出す感覚の練習をしたいのか等々目的によりアシストが良いか負荷が良いかなどは異なると思われる。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)