Vol.616.股関節・頭頚部の関節角度と膝伸展筋活動の関係性について 脳卒中リハビリ論文サマリー
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カテゴリー
タイトル
●脳卒中患者における股関節の位置と膝伸展筋活動の関係性について
●原著はHip joint position modulates volitional knee extensor muscle activity after strokeこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●脳卒中患者において股関節戦略の獲得は立位・歩行能力の向上において非常に重要である。今回、股関節戦略について学ぶ上で、その姿勢の重要性について触れる本論文が目に留まり読むに至った。
内 容
背景
●動物やヒトのモデルから得られたエビデンスでは、反射経路を介して下肢の筋活動を調節する上で、股関節の固有感覚受容器と前庭の入力が重要であることを示されています。
●脳卒中後のこれらの感覚入力の役割を理解することは、機能的活動時の病的な筋活動を理解する上で重要であると考えられます。そこで、脳卒中患者と対照者を対象に、股関節と頭・体幹の位置関係が大腿四頭筋の活動に及ぼす影響を調べました。
方法
●膝を屈曲60度に保持した状態(biodex使用)で、体幹の向き(頭の傾き)と股関節の角度を0度(仰臥位)、45度(リクライニング座位)、90度(直立座位)に系統的に配置し、大腿四頭筋の最大の等尺性収縮を誘発しました。大腿四頭筋の筋電図での活動を群間および条件間で比較しました。
結果
●脳卒中患者は対照群と比較して股関節をニュートラルにしたときの大腿四頭筋の活動がより大きく正常化しました。
●頭の向きを垂直にすると仰臥位に比べて大腿四頭筋の活動が大幅に増加することがわかりました。また、頭の向きを変えると、大腿四頭筋の活動が変化することが確認された。この現象は相反する効果を生み出すと思われる股関節の角度を同時に変化させても生じました。結果は、頭の垂直方向の向きが、股関節の角度よりも強力な感覚入力となって、大腿四頭筋の活動を調節することを示唆しています。
●頭や体幹の向きだけでなく、股関節の姿勢から得られる感覚情報(前庭入力)が、膝伸展筋の自発的な活性化を調節していることを示唆しています。直立した状態で股関節をニュートラルにすると、大腿四頭筋の活動量が最も大きくなることが予想されます。この位置は、歩行時のつま先立ちに最も近い位置であり、歩行の立脚から遊脚への移行時に大腿四頭筋の不適切な活動が見られることを説明できるかもしれません。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中患者では各関節間で代償的な戦略を用いて、姿勢コントロールされる方は多く、各関節の位置関係の観察とそこからの推論は大切である。 本論文から、下肢伸展活動(特に大腿四頭筋)を得ようとする時に、股関節を中間位に姿勢コントロールしての練習は大切であることが示唆された。位置関係による筋活動の変化を臨床で感じ取りながら介入したい。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)