【2022年最新版】皮質-赤核脊髄路の可能性ー脳卒中後の慢性期における運動機能回復への示唆 ー
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赤核脊髄路とは?
はじめに、「赤核脊髄路」という言葉を聞いても、その走行や役割についてイメージが湧かない療法士の方々がまだまだ多いと思われます。そこで、まず簡単に振り返っていきます。
赤核脊髄路(rubrospinal tract)は中脳被蓋部の赤核を起点として脊髄に下降する経路で、錐体外路系の一部です。
引用元:https://healthjade.net/upper-motor-neuron/
赤核脊髄路の神経走行
赤核脊髄路の神経線維は腹内側を通り、腹側被蓋交叉で反対側へと渡ります。側索の背側部を下行し、脊髄灰白質へと渡っていきます。
線維は脊髄を下降して、皮質脊髄路の腹外側に位置し、皮質脊髄路と連絡を取るようになります 。
赤核脊髄路の機能
赤核脊髄路は運動野と小脳からの求心性線維を受け取るため、間脳と運動ニューロンを通じて脊髄の活動に影響を与える錐体路外路として機能します。
●歩行時に四肢屈筋の緊張を制御する運動ニューロンを興奮させ、伸展を抑制します。
●頸椎・腰椎・遠位四肢の筋の屈筋の興奮、伸展の抑制を行います。
●赤核の神経活動は、力、速度、運動の方向と関連しています。
赤核脊髄路における病態
文献上、赤核や赤核脊髄路のみの選択的な病変は報告されていません。赤核領域内の病変は運動障害および振戦が引き起こされることがありますが、これらは小脳や基底核系に関連する神経線維の損傷と関連している可能性があります。
霊長類の研究では、赤核脊髄路が運動の分節化に関与していることが示唆されています。分節化とは、ある関節への動きを他の関節から分離させて行う能力です。
したがって、もし 赤核脊髄路に障害があれば、運動の微調整と分節化に影響を与える可能性があると仮定できます。
しかし、赤核脊髄路が機能回復を助けることが動物実験で示されているにもかかわらず、これがどのように人間に一般化できるかは不明なのが現状です。
赤核脊髄路に関する論文で学ぼう
カテゴリー
タイトル
脳卒中後の運動機能回復における皮質-赤核脊髄路の可能性
●原著はCompensatory role of the cortico-rubro-spinal tract in motor recovery after strokeこちら
なぜこの論文を読もうと思ったのか?
●脳卒中後の神経的側面から見た介入方法を学習したいと思い、まずは基本的な経路から学ぼうと思い回復過程に重要であると言われる赤核の経路に関する本論文に至った。
内 容
背景
●非ヒト霊長類に関する研究は、皮質-赤核脊髄系が錐体路(PT)への損傷を補うことができることを示している。ヒトでは皮質-赤核脊髄路を構成する可能性のある、いわゆる代替運動線維(aMF)が、脳卒中後の運動回復において同様の役割を果たすことが示唆されています。
●拡散テンソル画像を使用し、慢性期脳梗塞患者の機能的転帰にそれらの微細構造特性を関連付けることにより、人間の運動回復の過程でので錐体路と代替運動線維(aMF)を調べた。
方法
錐体路とaMFは18人の患者と10人の健康対照者における一次運動野、背側運動前野、補足運動野の起源に基づいて拡散テンソル画像を用い再構築されました。
●患者の運動回復の程度は、ウルフ運動機能検査(WMFT)を使用して評価されました。
結果
図引用元:Compensatory role of the cortico-rubro-spinal tract in motor recovery after stroke
●脳卒中後、重度の錐体路損傷にもかかわらず、慢性期脳卒中患者の麻痺肢では、同側運動野からの運動誘発電位が誘発される可能性があり、患者は麻痺手の個々の指を独立して制御することができました。これらの研究と現在の調査結果に基づいて研究では、重度の錐体路損傷があるが、機能回復のレベルが比較的高い脳卒中患者に対するaMFの代償的役割を仮定しています。
●コントロール群と比較して分数異方性(FA)は、慢性期脳卒中患者の同側PTおよびaMFに沿って低かったが、高FAのクラスターは、赤核の近くのaMFで両側に見られました。慢性期脳卒中患者の同側および反対側の赤核におけるより高いFA値は、運動回復の過程での構造的リモデリングを反映している可能性があります。この概念は、赤核と隣接する白質内のクラスターにおけるFAとWMFT間の有意な相関関係によってサポートされています。
●病変反対側の錐体路とaMFに沿って、赤核内のFAはWMFTスコアと有意に相関していました。
●両側の赤核の微細構造特性と慢性脳卒中患者の運動機能のレベルとの間に観察された強い相関関係は、回復中のリモデリングの可能性を示しています。結果は、さまざまな皮質赤核脊髄路の役割に光を当て、将来の治療のターゲットとして使用される可能性のある皮質-赤核脊髄系の代償機能を強調しています。
私見・明日への臨床アイデア
●脳卒中の回復において、運動機能を司る大脳皮質の運動野と脳幹の赤核を結ぶ軸索が優先的に増加することが報告されている。その神経回路がうまく働いていない場合は脳幹の網様体への軸索が増加し運動機能を回復しようとするとの報告も聞かれている。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
併せて読みたい【脳卒中、回復過程、赤核】関連論文
vol.353:皮質脊髄路の損傷後の運動ニューロンの接続 脳卒中/脳梗塞のリハビリ論文サマリー
Vol.501.皮質脊髄路は歩行速度の予測因子?脳損傷部位と歩行機能の関係性
Vol.593.脳卒中後の回復過程は部位によって異なるの??
脳卒中の動作分析 一覧はこちら
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)