視空間認知障害の改善には知覚-運動のリハビリが大切!? 脳卒中/脳梗塞論文サマリー
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カテゴリー:脳卒中 脳梗塞 視空間認知 視空間無視
タイトル
脳卒中後における視空間認知(視空間無視)と運動感覚欠如の関係性 Relationship Between Visuospatial Neglect and Kinesthetic Deficits After Stroke
内容
背 景
・脳卒中後,視空間無視と運動感覚(四肢の動きの感覚)の欠如は,それぞれの個体において約30-60%に共通して発生する
・視空間認知と運動感覚の低下の両タイプは,日常の機能に必要な空間処理の側面に影響を与えており,脳卒中後の視空間と運動感覚の欠如における両間の関係性を検討
目 的
・行動無視テスト(BIT)と運動感覚機能のロボット尺度を使用して,脳卒中後における視空間認知と運動感覚の欠如,両間の関係を特徴づけること
方 法
・視空間無視(BITを使用)と運動感覚(ロボットを使用)は,脳卒中後から平均18日の158人で測定した。
・Stroke群内でFIM&FIM Motorの点数度合いで群分けた。
・運動感覚の整合課題は,脳卒中の影響を受けている上肢を,予め設定された方向・速度・大きさにロボットが誘導した。
・脳卒中者の上肢は,脳卒中者の元来の上肢運動を感じとると,影響を受けないもしくは受けても影響の少ないロボットの動きに整合された。
◇視空間無視を認めない群と視空間無視を認める群での運動スピードと運動軌跡(運動コントロール)の違いが見て取れる。
◇深部感覚は客観的な評価は難しく,患者の反応から汲み取る主観的な要素が強いため,臨床的にもかなりグレーな機能の一つだが,知覚-運動統合の面からみた介入の重要性が浮かぶ。
結 果
・視空間無視を認めない脳卒中者の運動感覚は,59%が損なわれていたのに対し,視空間無視を認める脳卒中者は,運動感覚を100%の割合で損なわれていた。
・視空間認知障害を認めない脳卒中者おいて,BITにおける得点が満点または満点に近い得点の脳卒中者(49%)と比較して低得点ではあるが,許容得点を上回るBIT得点を持つ脳卒中者(78%)は,損なわれた運動感覚行動を高い割合で示した。
結 語
・脳卒中後における視空間無視の存在は,運動感覚の欠如を高度に予測する。
・しかしながら,運動感覚の欠如が必ずしも視空間無視の存在を示すわけではない。
・この結果は,視空間無視者において,脳卒中後の運動感覚の欠如の評価と治療の重要性を強調する。
明日への臨床アイデア
・深部覚自体には重度な低下がないにも関わらず,動作中における視空間処理の過程に麻痺肢の運動コントロールを組み込むことのできない何らかの要因があると思われる。
・高次脳のバッテリー上,あるいは静的な訓練場面では視空間無視症状は認めないが,更衣動作・歩行のようなDynamicな動作を要求される場面となると,無視症状を強める方を臨床上よく目にする。
・だた無視側に注意喚起を促す反復的治療ではなく,その要因は何なのか(姿勢不安定性etc.)を知覚・運動統合の側面,またはそれをしやすい状態は?といった観点から考えてみる必要性はあると思う。
・視空間訓練においても上肢運動を伴った知覚-運動アプローチの必要性が窺われる。
執筆監修|金子 唯史 STROKE LAB代表
・国家資格(作業療法士)取得
・順天堂大学医学部附属順天堂医院10年勤務
・海外で3年に渡り徒手研修修了
・医学書院「脳卒中の動作分析」など多数執筆
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1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)