【2023年版】免荷式トレッドミル歩行トレーニング(BWSTT)メリット・デメリット・評価方法は?注意点は? – STROKE LAB 東京/大阪 自費リハビリ | 脳卒中/神経系
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【2023年版】免荷式トレッドミル歩行トレーニング(BWSTT)メリット・デメリット・評価方法は?注意点は?

脳卒中リハビリテーションにおけるBWSTTのメリットは?

 
A. 運動学習の促進:
BWSTTは、脳卒中後の運動学習の鍵となる反復的な課題別トレーニングのための安全で制御された環境を提供します。患者さんは転倒を恐れることなく歩行練習ができるため、自信と治療への意欲が高まります。
 
B. 神経の可塑性を促進する:
研究によると、BWSTTは、主に反復課題練習とトレーニングの強度の原則を通じて、脳卒中後の脳の神経可塑性変化を誘発する可能性があります。このような神経可塑的な変化は、機能的な転帰の改善につながる可能性があります。
 
C. 心血管系体力の向上:
BWSTTは、脳卒中生存者の心血管系フィットネスも向上させます。脳卒中に伴って心肺機能が低下することが多いため、BWSTTのこの側面は、重要な健康上の利益を提供します。
 

脳卒中リハビリテーションにおけるBWSTTのデメリットは?

 
A. 限られた適用範囲:
すべての脳卒中患者がBWSTTから同じように恩恵を受けるとは限りません。重度の認知障害や感覚障害、極度の筋力低下、その他の併存疾患を持つ患者は、BWSTTを困難または不適切と感じるかもしれません。
 
B. コストとアクセシビリティ:
BWSTT機器のコストは比較的高く、特に低資源環境ではそのアクセシビリティが制限される可能性があります。さらに、メンテナンスの継続的な費用や、機器専用のスペースの必要性が、経済的負担を増大させる可能性があります。
 
C. 専門的なトレーニングの必要性:
BWSTTは、医療従事者が機器を適切に使用・維持し、治療の安全性と有効性を確保するために、専門的なトレーニングを受けることを要求します。この要件は、特にリソースやトレーニングの機会が限られている医療環境では、大きなハードルとなる可能性があります。
 

姿勢制御上で問題となることはありますか?

脳卒中患者の場合、姿勢制御、つまり直立姿勢を維持する能力が低下していることが多く、バランスの問題が生じ、BWSTTの効果に影響することがあります。以下に、いくつかのデメリットを紹介します:
 
体重移動の困難さ: 体重移動は、歩行とバランス維持の基本的な部分です。しかし、脳卒中生存者は、片麻痺(体の片側が弱い)のために、体重移動に苦労することがよくあります。これは、BWSTTを効果的に使用する能力に影響を与える可能性があります。Pohlら(2002)の研究によると、脳卒中患者はBWSTT中に体重を移動させることが困難であり、この形態の療法の有効性を制限する可能性があることが分かっています。
 
バランス感覚の低下と転倒リスクの増加: BWSTTによるサポートがあったとしても、脳卒中患者の姿勢制御の障害は、転倒のリスクを高める可能性があります。Balasubramanianら(2014)の研究では、安全性を確保し、機能的な利益を最大化するために、BWSTTと組み合わせてバランストレーニングに焦点を当てた追加介入の必要性が強調されています。
 
地上歩行へのキャリーオーバーが限定的である: BWSTTでは、患者の体重の一部を支えるハーネスシステムを使用することが多いため、患者のバランスに十分に挑戦できなかったり、地上での歩行の要求を模倣できない場合があります。Lamontagneら(2010)の研究では、脳卒中生存者は、姿勢の要求の違いにより、BWSTTで向上した歩行スキルを地上歩行に移行できない可能性があることが確認されています。
 
これらの研究は、姿勢制御に障害のある脳卒中患者にとってBWSTTが不利になる可能性を強調していますが、必ずしもBWSTTが効果的でないことを示唆しているわけではないことを忘れてはならないです。むしろ、BWSTTと並行して姿勢制御の問題に対処する包括的なリハビリテーションの必要性を示しています。
免荷式トレッドミル歩行トレーニング (BWSTT)
メリット 1. 運動学習の促進:安全な環境での反復的な、特定のタスクに特化したトレーニングが可能で、これは脳卒中後の運動学習に重要です。
2. 神経可塑性の促進:反復的なタスクの実践と訓練の強度を通じて、脳の神経可塑性の変化を引き起こすことができます。
3. 心血管適応の改善:脳卒中患者の心血管適応を改善します。
デメリット 1. 適用性の制限:重度の認知障害や感覚障害、他の合併症を持つ脳卒中患者はBWSTTから同等の利益を得られないかもしれません。
2. 費用とアクセシビリティ:BWSTT装置の高額なコストとその維持費用は、特に資源が限られた状況でその利用可能性を制限する可能性があります。
3. 専門的なトレーニングの必要性:医療専門家は、装置の適切な使用と維持を行うために、専門的なトレーニングを受ける必要があります。これは資源が限られた状況での課題となり得ます。
 

仕様上で生じやすいトラブルはありますか?

 
体重支持トレッドミル(BWST)トレーニングは、脳卒中、脊髄損傷、その他の神経疾患からの回復を助けるために理学療法士がよく使用する方法です。しかし、この機器の使用にはいくつかの課題があります。
 
患者の安全性: 理学療法士の主要な懸念の一つは、患者の安全を確保することです。患者が適切にハーネスに固定されていない場合、転倒や他の事故のリスクがあります。また、患者がサポートを受けても立つ力やバランスを保つ力が不足している場合、怪我をする可能性があります。
 
サイズとフィット: BWSTの機器はさまざまなサイズがあり、各患者に最適なフィットを見つけることは挑戦となります。適切にフィットしないハーネスは、不快感、打撲、さらには患者の怪我を引き起こす可能性があります。
 
進行状況のモニタリング: BWSTでの進行状況を測定することは難しい場合があります。歩行速度や耐久性などの改善は比較的簡単に測定できるかもしれませんが、動きの質や歩行パターンなど他の要素は定量化するのがより困難です。
 
リソースの集中: BWSTトレーニングは、セットの手伝い、患者のサポート、進行状況のモニタリングを行うために、理学療法士に加えて一人以上のアシスタントを必要とすることがよくあります。これは、リソースが限られている場所での課題となります。
 
患者のモチベーション: 一部の患者はBWSTトレーニングが退屈で反復的であると感じ、治療へのモチベーションや参加を影響を受けることがあります。これは重要な問題であり、患者の参加度はリハビリの成功にとってよく重要な要素となります。
 
トレーニングの特異性: BWSTトレーニングは補助歩行の形のトレーニングで、一部の理学療法士はこれが最適な機能的または課題特異的なトレーニングを提供しないと主張します。例えば、実際の障害物を乗り越えたり、不均等な表面を歩く方法を患者が学ぶのに必ずしも役立たないかもしれません。
 
これらの問題は、BWSTトレーニングが効果的でないことを意味するものではありません。代わりに、これらは治療が成功するために認識し、管理する必要がある課題です。
 

STROKE LABでも近日中に導入予定です。

 

BWSTTの一般的チェック項目・評価方法を教えてください

 

以下に脳卒中患者のためのトレッドミル訓練の歩行評価フォームをお伝えします。

患者の詳細
名前:
日付:
年齢:
性別:
担当療法士:

歩行評価のパラメーター 訓練前 訓練後
歩行速度 (m/s)
ストライド長さ (cm)
ステップ長さ (cm)
ケイデンス (ステップ/分)
スイング時間 (秒)
スタンス時間 (秒)
ダブルスタンス時間 (秒)

機能的な移動能力 訓練前 訓練後
6分間歩行テスト (m)
Timed Up & Go テスト (秒)

バランス評価 訓練前 訓練後
Bergバランススケール
ダイナミックゲイトインデックス(DGI)

患者のフィードバック
トレッドミルは快適でしたか?
訓練中に痛みや不快感はありましたか?
コメントや提案はありますか?

医師/セラピストのフィードバック
観察された改善点
懸念点
今後の提案

このフォームは一般化されたものであり、患者の具体的なニーズと状態に基づいて修正する必要があるかもしれません。この種の評価フォームを使用する際は、資格を持つ医療専門家と密接に連携することが重要です。

 

 

参考文献

  1. Pohl, M., Mehrholz, J., Ritschel, C., Rückriem, S. (2002). Speed-dependent treadmill training in ambulatory hemiparetic stroke patients: a randomized controlled trial. Stroke, 33(2), 553-558.
  2. Balasubramanian, C. K., Neptune, R. R., Kautz, S. A. (2014). Foot placement in a body reference frame during walking and its relationship to hemiparetic walking performance. Clinical Biomechanics, 29(5), 518-522.
  3. Lamontagne, A., Fung, J., McFadyen, B. J., Faubert, J. (2010). Stroke affects locomotor steering responses to changing optic flow directions. Neurorehabilitation and Neural Repair, 24(5), 457-468.

カテゴリー| 脳卒中 装具系 歩行

 

タイトル|脳卒中後の体重免荷トレッドミル歩行と積極的装具介助歩行の比較

Comparison of Partial Body Weight-Supported Treadmill Gait Training Versus Aggressive Bracing Assisted Walking Post Stroke

Kosak MC:Neurorehabil Neural Repair.2000

 

内 容

 

目的

体重免荷トレッドミル歩行(以下、BWSTT) が積極的装具アシスト歩行 (以下、ABAW) プログラムより均等な支持で効果的な歩行練習を与えるだろうという仮説を検証するため
 
 


方法

・インフォームドコンセントに従って、著名な下肢脱力で少なくとも歩行中はある程度の介助が必要であり、起立性低血圧、呼吸困難の兆候、狭心症がないリハビリテーションプログラムを受ける入院患者が対象となり、無作為にBWSTTを受ける群とABAWを受ける群に分けられた.
 
・BWSTTは市販販売されている頭上から自動で持ち上げるパラシュート型体用ハーネスが取り付けられており、それがトレッドミル上で患者の体重の部分的に免荷に寄与する。
・セラピストは必要に応じて、体重移動や下肢の振り出し、足部の接地場所をアシストした。ABAWは膝-足の装具の組み合わせや、もし必要であれば片手手すりを使用するという積極的な早期のセラピストのアシスト歩行を含んだ。
 
・1週間のうち1日45分を5日間の治療セッションが入院患者の入院継続が許可された、もしくは介助なしで歩行ができた患者までに与えられた。それに加えて全患者は担当セラピストによる適切な判断で装具の有無にかかわらず、1日45分間の機能指重視の理学療法を実施した
キャプチャ
 
 
 

結果

56患者は年齢平均は71±1歳、標準偏差は脳卒中後40±3日。全体として2群の結果に有意差はなかったが、12を超える治療セッションを受けた片麻痺、半盲障害、片側感覚鈍麻の有無で定義された脳卒中の重度片麻痺患者では、PBWSTT vs. ABAWで耐久性(90±34m vs 44±10m)と速度(12±4m/min vs 8±2 m/min)それぞれで有意な改善がみられた
 
 
 


結論

 
ABAWのみを使用して動かすことが困難である一部の重度片麻痺患者を除けば、BWSTTとABAWは同様に効果的な歩行トレーニング手法であった
 
 
 

明日への臨床アイデア・感想

 
BWSTTとABAWでは歩行の実用性から大きな違いがあると思いますが、現状BWSTTがない現場も多いと思います。それぞれの方法のメリット・デメリットを明らかにすることで機器がない現場にも還元したいものです。 ABAWと比較してBWSTTは高い歩行の安定性・安全性から、歩行時の疲労が減少することや疲労や不安感に伴う筋緊張の亢進も防ぐことができるのではないかと考えられます。そう考えるとセラピストの経験年数でもABAWでは差がみられそうです。教育の充実も機器がない現場ではより一層必要になることでしょう
 

臨床後記:更新日2021/3/10

臨床ではBWSTTと装具の組み合わせの歩行も有用と感じる。特に重介助を要す患者ではハーネスを取り付ける事で安全性も確保できる。その上で、CPGの賦活など介助歩行で促通することが出来る。物理的な問題は人のハンドリングで足りない場合、機器の力を頼って良いと思う。

 

氏名 諸橋 直紀(理学療法士)

監修|金子 唯史     STROKE LAB代表

 
 
 

併せて読みたい【免荷歩行/トレッドミル】関連記事

 
●Vol.487.BWS歩行の免荷量は15~30%!?歩行のCPGについてのレビュー  
●Vol.436.脳卒中者に対するトレッドミル訓練の効果とは?トレッドミル歩行と通常歩行練習の違い(トレッドミル部分の抜粋)  
 
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