【2022年度】大腿四頭筋 起始・停止・作用は? ストレッチ・筋トレ・痛み 大腿直筋、外側広筋、内側広筋、中間広筋
概要
大腿四頭筋は、人体で最も体積の大きい筋肉です。
股関節の屈曲と膝関節の伸展の役割を担っています。
3つの広筋と大腿直筋の4つの筋肉で構成されます。これらは、大腿部の主要部分を形成し、全体として、身体の中で最も強力な筋肉の1つです。大腿の前区画に位置しています。
大腿四頭筋を構成するの4つの筋は、大腿直筋(Rectus femoris)、外側広筋(Vastus lateralis)、内側広筋(Vastus medialis)、中間広筋(Vastus intermedius)です。
起始・停止
大腿四頭筋を形成する筋肉は、膝の近位で結合し、大腿四頭筋腱を介して膝蓋骨に付着しています。
また、膝蓋骨は膝蓋靭帯によって脛骨に付着しています。
外側広筋(Vastus Lateralis)
・起始:大転子および粗線の外側唇
・作用:膝関節を伸展させ、膝蓋骨を安定させます。
中間広筋(Vastus Intermedius)
・起始:大腿骨軸の前面および外側面
・作用:膝関節を伸展させ、膝蓋骨を安定させます。
内側広筋(Vastus Medialis)
・起始:大腿骨転子間線と粗線の内側唇
・作用:膝関節を伸展させ、特に遠位端の水平線維により膝蓋骨を安定させます。
大腿直筋(Rectus Femoris)
・起始:腸骨から寛骨臼のすぐ上(下前腸骨棘)
・作用:大腿四頭筋の中で唯一、股関節と膝関節の両方にまたがっている筋肉(二関節筋)です。股関節で大腿を屈曲させ、膝関節で伸展させます。
(左から、大腿直筋→中間広筋→内側広筋→外側広筋)
図引用元:VISIBLE BODY
神経・血管支配・作用
・大腿神経によって支配されています(L2、L3、L4)。
・主に、外側大腿回旋動脈によって栄養されています。
・大腿四頭筋は、いずれも膝伸展の作用があります。
・大腿直筋は股関節を屈曲させ、内側広筋は大腿を内転させ、大腿を伸展・外旋させ、膝頭を安定化させます。
大腿四頭筋は、主にキック、ジャンプ、サイクリング、ランニングなどで活躍します。
バスケットボールなど、ジャンプが必要なスポーツで多用します。
日常生活では、椅子から立ち上がる、歩く、階段を上る、しゃがむなどの動作に使われます。日常の動作に欠かせない筋肉です。日常生活における膝深屈曲の重要性に関する記事もあわせてご参照ください。
ウォーキングやランニングでは、歩幅を広げるときに使われ、特に下り坂では大きく使われます。
臨床的な関連性
スポーツの観点からは非常に重要な筋肉ですが、ストレスが大きいため、しばしば外傷を受けます。
大腿四頭筋の損傷は、痛みを伴い、パフォーマンスを低下させる可能性があります。
大腿四頭筋の捻挫、断裂、挫傷は、陸上競技、ラグビー、サッカーなど様々なスポーツでよく見られ、トレーニングや競技の時間を失う結果になります。
骨化性筋炎(MO)は、重度の大腿四頭筋挫傷に伴う合併症です。
これは、挫傷の損傷部位の骨と軟骨の非腫瘍性の増殖です。
挫傷では、9%から17%の発生率が報告されています。
骨化性筋炎は、2~3週間後に膝の屈曲障害と持続的な腫脹を伴って症状が悪化した場合に疑う必要があります。
疾患存在下での大腿四頭筋の適応
骨格筋は、全身性疾患の存在下で適応します。
つまり、筋肉の機能は代謝や体積、病状の悪化によって変化します。
加齢
加齢に伴う大腿四頭筋の筋適応は、その形態と機能を変化させます。
筋組織は質量と体積を失い(サルコペニア)、筋力と協調性が低下します。
運動単位が失われ(脱神経プロセス)、赤色線維の割合が増加します。
このため、線維化過程と筋肉内脂肪が増加します。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性心不全
COPDのような慢性および成長期の呼吸器系疾患があると、大腿四頭筋の筋量が減少し、結合組織が増加し、線維化現象が起こります。
その結果、収縮能力の低下、筋力の低下、歩行時や立位姿勢時のバランスの崩れなどが生じます。
嫌気性線維が増え、酸化性線維が減少し、筋肉が疲労しやすくなります。
筋肉内脂肪の増加、局所的および全身的な代謝の変化(心血管系のリスクの増加)も起こります。
男性よりも女性の方が、筋肉の機能的変化をより多く受けます。
多発性硬化症
白色線維は増加しますが、白色線維はより萎縮します。
線維の数自体は増加しますが、線維が萎縮しており、筋内脂肪や結合組織の増加があります。
Stiff Knee Gait(SKG)
脳卒中後に大腿直筋の過活動と膝屈曲モーメントを生成する筋の活動性低下により膝が伸びたまま曲がらない歩容「Stiff Knee Gait(SKG)」が観察されることがあります。
評価
徹底的な病歴聴取の後、観察、触診、筋力テスト、動作評価を含む慎重な検査が必要です。大腿四頭筋の筋損傷は、筋腹の膨隆または欠損のような明らかな変形を呈することがあります。
大腿前部の触診では、損傷した筋肉の長さ、最大圧痛部位の位置、および筋肉に欠損がないかどうかを確認する必要があります。
大腿四頭筋の筋力検査には、膝関節伸展と股関節屈曲の抵抗を含めるべきです。
大腿直筋の適切な筋力テストには、股関節を屈曲および伸展させた状態での膝伸展に対する抵抗が含まれなければなりません。
💡実際には、座位と腹臥位の両方で患者を評価することが最も効果的です。
腹臥位は大腿四頭筋の動きと柔軟性を最適に評価できます。
患者には、抵抗に抗して脚(膝)を伸ばすように指示します。
大腿神経が損傷している場合、大腿四頭筋の収縮は見られなくなります。
大腿四頭筋は、神経麻痺が疑われる場合に大腿神経を検査するために使用することができます。
痛みは、通常、抵抗性筋活動、受動的ストレッチ、および筋緊張を直接触診することで患者が感じるものです。
筋損傷発生時の圧痛、触知可能な欠損、および筋力の評価は、損傷の程度を決定し、さらなる診断検査と治療の方向性を示します。
個々の筋頭のアンバランスをチェックし、膝蓋骨の牽引力をみることも大切です。
例えば、ランナーは、強いハムストリングとあまり発達していない大腿四頭筋の間で不均衡になることがよくあります。
大腿四頭筋に関連する機能検査には以下のものがあります。
タイムド・アップ・アンド・ゴー・テスト(TUG)およびタイムド・ステア・クライミング・テスト(SCT)
大腿四頭筋の機能的連動性
大腿四頭筋の筋バランスは、膝蓋骨を正しく動かすために不可欠です。
大腿四頭筋の固有感覚神経は、適切な姿勢の維持に寄与しています。
最近の研究では、これらの求心性の活性化により、大腿四頭筋の協調性が向上し、姿勢のバランスが改善されることが示されています。
大腿四頭筋は自立歩行を可能にし、階段の昇降を助け、立ち上がることを可能にします。
大腿直筋
大腿直筋は、その線維を縦方向に活性化することができます。
最遠位の線維の収縮がなくても、近位の線維を活性化することができます。
大腿四頭筋の作用が続くと、多くの遠位線維が活性化され、多くの近位線維は活性化されません。
(おそらく疲労の発生を遅らせるためのメカニズムです。)
内側広筋
内側広筋の膝蓋腱の挿入部は小さく、膝伸展時に膝蓋骨を内側に安定させる力を発生させることができません。
伸展時に内側広筋が発揮する力は控えめです。
実際には、収縮時に中間広筋の骨膜を引っ張り、外側広筋が膝蓋骨にかける横方向の力を打ち消しています。
内側広筋は、その収縮力を大腿骨の中央軸に作用させ、間接的に膝蓋骨のスタビライザーとして働きます。
外側広筋が発現する力は、膝関節の屈曲が大きくなるにつれて大きくなります。
このメカニズムは、筋の結合構造と比較して線維の長さによるものです。
長い線維はより大きな力を発揮し、結合組織の弾力性や抵抗力をうまく利用することができます。
膝を伸展させるとき、外側広筋は小さな力を発揮し、最小限の努力で姿勢を維持するのに役立ちます。
💡大腿直筋:大きな力を発揮し動作をしやすくする。
💡内側広筋・外側広筋:小さな力を発揮し姿勢調節しやすくする。
大腿四頭筋を使用した運動
大腿四頭筋のエクササイズを行うにあたり、重要なことは4つの筋をバランスよく使うことです。
特に、二関節筋である大腿直筋が優位に働きやすく、場合によっては大腿直筋の活動を抑制して運動することも必要です。
大腿直筋は股関節の屈曲にも作用するため、股関節の屈曲やそれに伴う骨盤の前傾代償が起こっていないかどうかを確認することが望ましいです。
💡具体的例としては、座位にて大腿の後面にタオル等を敷いて、それを押しつけてもらいながら膝の伸展運動を行うことなどもアイデアとして考えられます。
また、大腿四頭筋を動作のどこで使用することを目的とした運動をするかも重要になってきます。
立ち上がりを円滑にしたいのであれば膝関節屈曲90°付近からの膝関節伸展運動を練習することが理にかなっています。
歩行時の膝折れを軽減したいのであれば、膝関節軽度屈曲~伸展位付近での筋制御機能や耐久性を上げていくことがターゲットとなるかもしれません。
また、膝関節は股関節と足関節をつなぐ関節です。
膝が内外側に偏倚する原因が隣接する関節にある場合もあります。
場合によっては膝の内外側広筋のみではなく股関節・足関節の位置関係も考慮した運動療法が必要となります。
💡具体例としては、ボールを内ももに挟んで股関節内転筋群や大殿筋下部線維の収縮を狙うといった運動も考えられます。
膝の可動域検査/練習の動画
まとめ:大腿四頭筋(Quadriceps)
単純な回数調整による運動量確保も必要ですが、目的に応じたバランスの良い鍛え方を行っていきたいですね。STROKE LABでは膝伸展に関する実技も動画で紹介していますので、併せて学んでみてくださいね。
1981 :長崎市生まれ 2003 :国家資格取得後(作業療法士)、高知県の近森リハビリテーション病院 入職 2005 :順天堂大学医学部附属順天堂医院 入職 2012~2014:イギリス(マンチェスター2回,ウェールズ1回)にてボバース上級講習会修了 2015 :約10年間勤務した順天堂医院を退職 2015 :都内文京区に自費リハビリ施設 ニューロリハビリ研究所「STROKE LAB」設立 脳卒中/脳梗塞、パーキンソン病などの神経疾患の方々のリハビリをサポート 2017: YouTube 「STROKE LAB公式チャンネル」「脳リハ.com」開設 現在計 9万人超え 2022~:株式会社STROKE LAB代表取締役に就任 【著書,翻訳書】 近代ボバース概念:ガイアブックス (2011) エビデンスに基づく脳卒中後の上肢と手のリハビリテーション:ガイアブックス (2014) エビデンスに基づく高齢者の作業療法:ガイアブックス (2014) 新 近代ボバース概念:ガイアブックス (2017) 脳卒中の動作分析:医学書院 (2018) 脳卒中の機能回復:医学書院 (2023) 脳の機能解剖とリハビリテーション:医学書院 (2024)